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記事公開: ローパフォーマーへの対応 「月刊 人事マネジメント クラウド人事部長に聞く経営人事のQ&A」

 こんにちは、組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。

 「月刊 人事マネジメント」の2016年7月号(連載6回目)が、記事掲載より1ヶ月経ちましたので、記事内容をシェアをさせて頂きます。みなさまの参考になればと思います。

※こちらは前回のエントリです。

記事掲載:ローパフォーマーへの対応 「月刊 人事マネジメント クラウド人事部長に聞く経営人事のQ&A」 - hrstrategist’s blog

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以下、記事内容です。雑誌のページをJPG化して一番下にも貼りましたので、どちらか読みやすい方でご覧頂ければと思います。

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 急成長するなかで組織と人事に関する課題に日々悩むベンチャー企業の創業社長と、俯瞰的視座から人事アドバイザリーとして社長を助ける「クラウド人事部長」との対話の第6回目。今回はなかなか表だっては取り上げづらい、しかし経営者・人事担当者には避けて通れない、ローパフォーマーへの対応がテーマです。

・第6回:ローパフォーマーへの対応

“ロー”と“ノー”の峻別
社長:前にも相談したかもしれないけど、”ローパフォーマー”への対応に悩んでいるんだ。

クラウド人事部長:頭が痛い問題ですよね。とはいえ、本人だけでなく周囲に与える悪影響を考えると放置はできません。
 ちなみに、いわゆる”ローパフォーマー”には2つの種類があることは認識されていますか?

社長:いや、意識したことがなかった。それってどういうこと?

クラウド人事部長:もしその人がいなくても、業務を行ううえで全く困らないかどうかです。ちなみに、社長の言う”ローパフォーマー”はどちらですか?

社長:うむ、どっちだろう…

クラウド人事部長:もしその人抜きでも職場は困らない、その存在自体がむしろ他の人たちに迷惑になるような人を私は“ノーパフォーマー”と呼んでいます。このような人はごく稀ですが、残念ながら一定の確率で存在します。この方たちには、いかにして「お引き取り願うか」を考える必要があります。

社長:なるほど。あまり考えたくない話ではあるけどね。

クラウド人事部長:一方、いないよりいた方がましですが、給料に見合った働きはしていない人たちは、本当の「ローパフォーマー」です。この人たちには、その働きに見合った報酬水準を見極め、適用すればよいのです。

社長:それはつまり、その人たちの給料を減らすということだよね。それって、口で言うほど簡単ではないのでは?

クラウド人事部長:もちろん簡単ではありません。とはいえ、そもそも働きに見合わない報酬を与えていた会社と経営者にも責任があります。その人たちが余分に受け取っていた報酬は、本当はより頑張っている別の従業員がもらうべき分だったはずです。それを「あるべき姿」に是正するために、経営者はリーダーシップを発揮すべきと私は考えます。

社長:おっしゃる通り、俺の責任だよね。それについては異論はない。だからこそ君にアドバイスをお願いしているんだ。

クラウド人事部長:ありがとうございます。社長が同じお考えで安心しました。

準備は周到かつ手際よく
社長:それで、具体的にはどうすればいいんだ?

クラウド人事部長:自社の報酬制度が「減給」を想定していない場合には、まずはその制度を変えることから始めないといけません。人事制度の変更ですから、ある程度の準備・移行期間が必要です。さらには、制度変更後も数年間の調整期間を設ける場合もあります。

社長:長期に渡る周到な準備が必要ということだね。それだけ時間が掛かるのでは、思いつきでやるという訳にはいかないね。

クラウド人事部長:とはいえ、対策を先送りして、事態が悪化してから慌てても手遅れです。禁煙や生活習慣病の予防と同じです。

社長:耳が痛いな。でも、制度を変えたとしても、本当に減給をしたら本人のやる気がなくなるのでは?

クラウド人事部長:元々やる気があり、会社に貢献している人には関係ない話です。もしやる気があるのにパフォーマンスが低いなら、その仕事に向いていないと判断せざるをえないです。

社長:最悪、その人が辞めてしまうかもしれないよ。

クラウド人事部長:別の仕事をするのがおそらく本人にとっても幸せではないでしょうか。それに、パフォーマンスに見合わない報酬を会社が長期間払い続けることはできません。会社に貢献している人たちが不公平に感じ、会社へのロイヤリティが下がったり、離職やモチベーション低下の原因となるほうがよほど重大な損失です。

社長:でも、誰が本人に伝えるんだ?俺はやりたくないなあ。

クラウド人事部長:直属の上司が伝えるのが基本です。もしその上司では頼りない場合はその上の上司ですね。
 伝え方も慎重に行う必要はあります。本来は、人事評価のフィードバックや日頃のコミュニケーションでちゃんと「ダメだし」をしておくことが大前提です。「今のあなたはここを改善しないといけない」と率直に伝え、それを受けて本人が改善に取り組むのに十分な時間を与える必要があります。このプロセスを経ることで、パフォーマンスが改善する場合もあります。まあ、確率としては多くないのですが。

社長:いきなり伝えるのでなく、あらかじめアラームは出しておくということだね。

クラウド人事部長:おっしゃる通りです。本人に「会社が悪い」と言い訳をさせないためにも、単に給料を減らすだけでなく、会社として改善の手立ては尽くすべきです。そうしないと本人としても納得感が生まれません。そして、そもそも「なぜそんな従業員を採用したのか」と振り返り、反省しないと、また会社は同じ失敗を繰り返します。

責任は経営者が負うべし
社長:なんであんな人を採ったんだろう。魔がさしたのか。

クラウド人事部長:「あんな人」でも通ってしまう甘い採用基準が原因でしょう。または、基準がその時によってブレたりしませんか?候補者が少なければ来た人の中で決めてしまうとか。欠員補充が至上命令だと、そのような「数合わせ採用」が横行します。

社長:確かにそれは身に覚えがある…

クラウド人事部長:応募者は自分から悪いことは言いませんし、ボロが出ないように取り繕います。それに騙されて採用しても、入社後に化けの皮ははがれます。でもその時は手遅れです。そういう人は「自分は(この会社では)ローパフォーマーだ」と自己認識していませんから、反省も改善もあまり期待できません。

社長:だからこそ適切な対応が大切なんだよね。

クラウド人事部長:はい。現場の上司がローパフォーマーと向き合い、適切な対応を行うことが大事です。そして同時に重要なのは、対応を「現場任せ」にはしないことです。実際には、現場のマネージャーは自身の業績目標を達成することに必死で、任せておくとローパフォーマーには積極的に介入せず、「放置」しがちです。でも、その場合にあおりを受けるのは周りの社員です。「放置」はその人たちのモチベーションに悪影響を与えます。

社長:では、どうすればいいんだ?

クラウド人事部長:専門知識を持つ(または専門家の支援を受けた)人事が現場のマネージャーを積極的に支援することです。そして経営者が「何かあれば責任は自分が取る」というオーナーシップの姿勢を示すことも必要です。「自分は関係ない」という経営者の態度を感じたら、現場は失望し、腐ります。その意味で、社長も覚悟を決め、腹を括る必要がありますよ。そして、最も避けるべきは、「問題の先送り」です。先に送ったところで問題が悪化することはあっても無くなることはありません。原因を取り除く決断をどれだけ早くできるかです。

社長:わかった。俺も腹を括ってがんばるよ。
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記事掲載:人件費のコントロール 「月刊 人事マネジメント クラウド人事部長に聞く経営人事のQ&A」

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こんばんは、組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。

 さて、株式会社ビジネスパブリッシング様の「月刊人事マネジメント」誌 2016年8月号(8/5付発刊)にて、私の連載「クラウド人事部長に聞く経営人事のQ&A」の連載第7回目(最終回!)が掲載されています。今回のテーマは、「人件費のコントロール」です。

 ベンチャー企業の創業社長と、人事アドバイザリーとして社長を助ける「クラウド人事部長」との対話を通じて、人件費の予算管理と要員・人員計画について解説しています。

 定期購読が必要な業界誌ですので、なかなか手に取る機会は無いかもしれませんが、もし機会がありましたら、ぜひご一読ください!

個人の「頑張り」は人事評価に反映されるべき?

 こんばんは、組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。「今年は猛暑」という予想でしたが、少なくとも東京地方ではそこまで至っていないように思います。願わくばこのまま何事もなく真夏が過ぎて頂くと個人的にはありがたいですね。一方で、突発的な大雨(ゲリラ豪雨)は多くなった気がします。以前住んでいた(赤道直下の)シンガポールでよく経験したようなスコールです。もはや東京は熱帯ですね。

 さて、今回は人事評価に関するトピックです。多くの会社において、人事評価の手段として「目標管理」「目標評価」という手法が導入されています。評価期間の初めに各個人ごとの目標を設定し、期末(または期が終わった後)に設定した目標の進捗状況を確認し、評価に反映するという仕組みです。

 目標評価・目標評価の「あり方」については様々な意見・主張がありますが、その話から始めると話が広がりすぎますので、「被評価者の個人的な「習熟目標」を人事評価に反映すべきか、否か」という点にテーマを絞ります。

 ここでは「習熟目標」を、「会社の業績向上のための直接的な活動」でない活動に対して設定された目標、と定義します。例えるなら、プロスポーツ選手の「練習」に当たるものです。「ランニング〇キロ」「腕立て伏せ〇回」「素振り〇回」「ノック〇本」といった類のものです。ビジネスでいえば「(業務上必須ではない)資格取得」「TOEIC〇点」「〇〇関連本を〇冊読む」といったものですね。

 このような「習熟目標」を従業員に決めさせ(会社や部署の業務目標とは連動しないものなので、従業員が自ら決めるのが自然です)、その結果を人事評価とそれによる報酬(給与・賞与等の増減)に反映させている会社は少なくありません。

 その意図は、「従業員の育成」です。経営者や人事担当者は、「ぜひとも従業員には成長して欲しい」と考えます。100%善意です。そこで、「業務の目標とは別に、成長のために必要な自己啓発をやらせるために、仕組みとして目標を立てさせよう」、「単に目標を立てさせるだけではインセンティブがないから評価に反映させよう」というロジックです。

 気持ちは分からないでもありませんが、このやり方には私は反対です。

 目標を立てさせること自体は良いことですが、それを報酬に連動させると話がおかしくなるのです。

 スポーツ選手(例えばプロ野球選手)が試合に勝つために沢山練習したとします。その人の報酬は練習量に比例するでしょうか?練習をするのは試合で良い結果を出すためであり、たとえ人一倍練習をしたとしても本番で良い結果が出なければ評価されないのがプロの世界です。目的は「本番の結果」であり、あくまで練習はそのための「手段」です。

 だからといって練習の手を抜けば、それは結果に反映されます。人一倍練習をしなければ(少なくとも長期的に)活躍を続けることはできません

 「成果(結果)」に関わらず、「習熟目標」の出来を報酬に反映するとなると、「練習をすること」が手段でなく目的になってしまいます。それは、子供に対して「勉強をしたらお小遣いをあげる」と言うのと同じことです。お小遣いをもらうために勉強する子は、お小遣いを貰わないと勉強する気を失ってしまいます。

 考えてみて下さい。「あなたは毎日ランニング〇キロという目標を達成したから、来年の年俸を10%上げましょう」というプロスポーツチームがあるでしょうか?自分がチームのオーナーだとして、「私はこれだけ練習を頑張ったのに、なんで年俸を上げてくれないのですか?」と、二軍の選手に言われたら、どう思いますか?

 「習熟目標の評価反映」はそれと同じことです。会社の業績には全く貢献せず、熱心に「習熟目標」の達成だけを追求する従業員が現れることになりかねません。そして、(皮肉なことに)会社の人事制度がそれを促進しているのです。

 頑張ること(Input)は大事ですが、それはあくまで結果(Output)を出すための手段に過ぎないのです。頑張っている人に共感する気持ちは分かりますが、「頑張っているかどうか」はあくまで主観的な印象に過ぎません。
 
 報酬はあくまで成果(結果)と「成果に繋がる(会社が正しいとする)行動をどれだけやったか度」で決まるべきです。よって、「習熟目標」に限らず業務目標に関しても、頑張り基準(労働時間とか、訪問件数とか)でなく、成果基準(やった前後の変化度や、訪問後の獲得件数等)、生産性を反映させるべきです。たとえサラリーマンであっても、業務の対価として、成果・貢献度に応じて報酬をもらうというプロフェッショナルです。プロは「結果(Output)」で勝負すべきというのが私の主張です。

 「手段」に対する頑張り度を評価に反映するのは、その人を「プロ」として認めていないことになりませんか?と私は思うのです。プロに対して失礼である、と。

 人事制度は会社が従業員に伝える、重要なメッセージなのです。

 では、Have a nice day!

会社から受けた仕打ちを従業員は忘れない

 こんにちは、組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。ここしばらく暑い日が続き、「実は、もう梅雨は明けてるんだろ!!」と叫びたくなるような(実際に叫びました)東京地方でしたが、本日は打って変わって梅雨らしい雨降りですね。まさかこの時期に上着のジャケットを着ないと寒く感じるとは。。

 最近、Blogでは雑誌等の記事掲載の紹介が多かったのですが、それもひと段落しましたので、また以前のようにBlogでつらつらと思ったことを書いていこうと思います。という訳で、先日、Kさんにノマドワークの穴場として教えて頂いた神楽坂の上島珈琲で、この原稿を書いております。

 今日の話は、私の昔話、個人的には嫌な思い出です。どの会社の話かは、分かる人には分かると思いますが、もう20年位前の話ですし、本当の話なのでもう時効ということでご勘弁ください。

 ひとつめの話は、新人時代に私がバイクで転んで骨折入院し(右足が砕けました)、1か月ほど休んだ際の話です。当時持っていた有給休暇の残数では当然足りず、期間の半分以上は欠勤(無給)扱いとなりました。

 当時は研修目的で、とある事業所に一時的に配属されていました(当時の現場の皆さんには大変ご迷惑をお掛けしました。。)が、復帰して数ヶ月で本社に戻ることになり、その約1年後に人事部門に異動になりました。

 初めて人事の仕事をすることになり、まずは所得税、労働保険などの仕組みの勉強から始めるのですが、社会保険の本を読んで初めて「傷病手当金」という制度を知ることとなります。

傷病手当金は、病気休業中に被保険者とその家族の生活を保障するために設けられた制度で、被保険者が病気やケガのために会社を休み、事業主から十分な報酬が受けられない場合に支給されます。」

病気やケガで会社を休んだとき | 健康保険ガイド | 全国健康保険協会

 これは簡単に言ってしまうと、欠勤・休職等で無給となった場合、元々貰えたはずの給料額の2/3を支払いますという社会保険の仕組みです。いくつか条件があるのですが、私の場合はそれを満たしており、申請すれば(確か)10万円程度はもらえることができたのです。

 ところが、たまたま私が気付くまで、会社の人事の人たち(配属された部署の上司・先輩たち)は何もしてくれていませんでした。私が欠勤していたことは当然知っていたにも関わらず。。先輩たちには「何で教えてくれなかったのですか!」と文句は言いましたが、「(配属されていた)事業所で手続きをやっていたかと思っていた」という意味不明の言い訳でごまかされました。おそらく単に忘れていたのでしょう。

 仕方がないので、自分で調べて書類を書き、傷病手当金支給の手続きをしました。請求は2年で時効なので、その前に気付いて助かりました。

 加えて、社内規程の中に「傷病への見舞金」の項目も発見しました。これも誰も教えてくれなかったものです。仕方なくこれも自分で申請書を書いて上司に持って行ったところ、その上司から「こういうものは自分で出すものでないだろう!」との一言の下にあえなく却下されました。

 結局この会社は、数年後に退職することになりました。

 もうひとつの話です。数年後、転職した別の会社でも、入社後にいろいろと「話が違う」出来事が発覚しました。

 まず、入社前には「社宅はありません」と言われており、やむを得ず自分で家を借りたのですが、入社してみると、多くの人が借上社宅の提供(家賃折半)を受けており、さらには自分より後に入社した人も新たに社宅を提供されているではないですか。どうやら社宅の廃止が当時検討されていたのですが、採用の際に担当者によって社宅の扱いについて見解の統一が図られておらず、対応がバラバラであったということのようでした。。

 しばらくして社宅制度は廃止されたのですが、元々社宅に入っていた人達は、それまで会社が負担していた家賃相当分(月3~4万円くらい)が基本給に上乗せされたのです。当然私は対象外です。

 さらには、「一刻も早く入社して欲しい」と言われて、前の会社で貰えるはずの賞与の権利を捨てて、1か月繰り上げて入社をしたにも関わらず、従業員へのストックオプション付与の基準日が入社日の「1日前」だったのです。こちらも私は対象外です。一言教えてくれれば、1日くらい入社日を早めることも全く可能だったのですが。。

 結局この会社も、長くいることはありませんでした。
 
 いずれの会社も退職理由はそれだけではないのですが、これらの出来事が要因の一部であったことは否定できません。このような仕打ちを受けてもなお、会社に対して信頼感を持ち続けることは私にとっては難しいことでした。

 私はどちらの会社でも人事系の部署にいたこともあり、自分に対する扱いだけでなく他の従業員に対する扱いもかなり見えていました。その中で、不公平な扱い・理屈の通らない措置を行って(またはなすべきことをやらずに)平気でいられる会社の考え方が我慢ならなかったのです。

 以上が自分の遠い過去の話なのですが、大昔のことを未だに恨みがましく覚えていて、ネチネチと自分のブログで書いている自分の器の小ささは正直恥ずかしいです。しかし、恥を忍んでこれを書いてるのは、これを読まれている方に、以下のことを知ってもらいたいからです。それは、

 「従業員に対して意識的・無意識的に行った不誠実・不公平な扱いは、たとえそれをやった側(会社・経営者)が忘れたとしても受けた側(従業員)は決して忘れない」

 という教訓です。

 私自身も、当時感じた悔しさが、今に至るまで自身の価値観、職業観に(良かれ、悪しかれ)無意識的に影響していることを感じます。

 だから、「組織人事ストラテジスト」として自分が関わる会社で、そのような事象が起きそうになると、とても気になるのです。「それをすることによって、相手が何を感じるか、どんな印象を与えるのか、ちゃんと考えた上でその結論を出しているのですか?単なる思い付きではないですか?」、と。

 そういう意味では、いわゆる「えこひいき」は、最悪です。往々にして、「えこひいき」をする人は、「自分は部下に優しい人格者である」という間違えた自己認識をしています。でも、きちんと説明できる理由もなく誰かを「えこひいきする」というのは、それ以外の人を「蔑ろにしている」ということです。自らが「公平」さの価値をを放棄しているわけです。

 そして、その他大勢の人は何も言わなくてもその「えこひいき」に対して白け、呆れて、会社や上司・経営者に対する信頼貯金を低下させています。
 
 「声なき声を聞く」意識の重要さを、人の上に立つ人はぜひとも認識、理解をして頂きたいです(もちろん、私自身への次回と反省も込めています)。このエントリが少しでもその助けになると幸いです。

 では、Have a nice day

記事公開: 福利厚生の考え方 「月刊 人事マネジメント クラウド人事部長に聞く経営人事のQ&A」

 こんにちは、組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。

 「月刊 人事マネジメント」の2016年6月号(連載5回目)が、記事掲載より1ヶ月経ちましたので、記事内容をシェアをさせて頂きます。みなさまの参考になればと思います。

※こちらは前回のエントリです。
http://hrstrategist.hatenablog.com/entry/2016/06/06/175809

 Blogの仕様上PDFファイルを添付できませんので、もしPDFファイルがご希望の方は、arainoori[at]gmail.comまでご一報下さい!

以下、記事内容です。雑誌のページをJPG化して一番下にも貼りましたので、どちらか読みやすい方でご覧頂ければと思います。

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 急成長する中で日々組織と人事に関する課題に悩むベンチャー企業の創業社長と、人事アドバイザリーとして社長を助ける「クラウド人事部長」の対話の第5回目です。今回は福利厚生がテーマです。ベンチャー・成長企業にふさわしい福利厚生の考え方とは?

・第5回:福利厚生の考え方

福利厚生費は人件費の一部
社長:昨日、久しぶりに企業経営者の先輩と飲みに行ったのだけれど、先輩から、「お前の会社の福利厚生はどうなっているんだ?従業員のためにも福利厚生を充実させないとダメだぞ」なんて言われたんだ。福利厚生なんて儲かっている大企業にだけある特典で、自分の会社には関係ないと思っていた。だからそんな風に先輩から言われるとは意外だったんだが、従業員にとって福利厚生はそんなに大事なのかな。うちの会社は十分に給料を払ってるつもりだし、それ以上要求するのは単なるわがままじゃないか?

クラウド人事部長:飲み過ぎないように気をつけて下さいね。福利厚生については、会社によっていろいろな考え方があっていいと思います。手厚い福利厚生を用意するのも、逆に「すべて給料で還元するから福利厚生は最低限」とするのもありです。実際に、大企業でなくても福利厚生を充実させている会社はたくさんありますよ。要は、自社の経営理念・戦略と整合性があり、かつメリットがあると思えばやればよいのです。

社長:福利厚生を手厚くすることでこれまでより良い人材を採れたり、離職率が下がるならやる価値もあるかもしれないな。

クラウド人事部長:従業員や応募者にとっては、福利厚生がないよりあった方がいいでしょうね。でも、そのコストはどうやって捻出するのですか?

社長:えっ、それは考えていなかったなあ。

クラウド人事部長:それはまずいでしょう。福利厚生費は人件費の一部です。新たに何かを始めるなら、現行の人件費予算の枠内でやるか、または人件費予算を増やすかを決めなければいけません。単なる思いつきで実施するのでなく、人件費の中で他の使い道と費用対効果を比較検討すべきです。
 また、「何か」をやるということは、「他の何か」を(少なくとも現時点で)やらない理由を従業員に説明できなければいけません。例えば、「新しい施策よりも、その分の費用を昇給に回してほしい」と言われたら、何と答えますか?

社長:それも考えてなかったなあ。うちの従業員はそんなことを言ってこないと思うけど。

クラウド人事部長:でも、思っていますよ。社長が聞く耳を持たないと思って、あえて言わないだけです。

社長:確かにそんなことを言われたらイラッとくるかも…。

クラウド人事部長:会社が「使うべきところに使わず、無駄なことにお金を使っている」と感じると、頑張っている従業員ほど意欲が萎えます。その施策の意義を、メリットを受益しない従業員に対してもきちんと説明し、感情面と論理面の両方で理解させる必要があります。これは結構難しいです。
 そういえば、やたらと報酬や福利厚生を手厚くした結果、潰れてしまったベンチャーもありました。あくまで予算は有限ですから、「生産性向上につながるか」「費用対効果が見込めるか」「他の施策と比べて効果が高いか」を基準に判断しないといけませんね。

既得権にしない仕掛けを
社長:そう言われてしまうと、なかなか悩ましいね。今の給料を削って福利厚生に回すなんて言ったら、みんな怒るだろうし。

クラウド人事部長:高度成長期以前のわが国では、「生活給」という概念が一般的でした。従業員とその家族の生計費を保証し、生活の心配のない状態をつくることを従業員は会社に求め、会社もこれに応えてきました。加えて長期雇用の前提もあり、従業員は安心して働くことができたし、企業の生産性も向上した時代でした。生活給を前提とした年功序列的な報酬制度や、社宅や住居・家族手当といった福利厚生はそのような前提の下で最適化された仕組みでした。
 ところが、今はもう時代が変わりました。旧来型の手厚い福利厚生を提供してきた伝統ある会社は、その仕組みを改革するのに苦労しています。何かを変えるということは、必ずその変更に伴って(少なくとも短期的には)不利益を被る人たちが出てきます。これを「不利益変更」といいます。従業員(労働者)の合意なく労働条件の変更は原則できない(労働契約法)のですが、自身の不利益になる条件変更を従業員は簡単には認めたくないというのは理解できるかと思います。
 一方で、我々のようなベンチャーは、古いしがらみはありませんから、今の時代のニーズに合わせ、報酬や福利厚生などの労働条件を一から作ることができます。これは大きなメリットです。

社長:そうなんだ。大企業は大企業なりに大変なんだね。

クラウド人事部長:ベンチャーであるメリットを生かすためにも、既成の概念にとらわれずに福利厚生のあり方を考えましょう。大企業のマネをしても意味がありません。旧来型の福利厚生が欲しい人は、ベンチャーでなく大企業に就職すればよいのです。
 注意すべきは、一旦導入された福利厚生施策は「既得権」になってしまうことです。特に、施策の導入後に入社した従業員にとっては、それは「あって当たり前」であり、ありがたみがありません。そこで、新たな施策はまずトライアルとして試験的に導入し、一定期間経過後に効果検証を行った上で正式な導入の可否を判断する、または、あらゆる施策を定期的に見直し、改廃できるようにする等、「既得権」にしないための仕掛けをあらかじめ仕込んでおくのがよいでしょう。
 他にも、自分にとって優先順位の高い福利厚生施策を個々の従業員が選べる「カフェテリアプラン」を取り入れるという手もありますね。ただし、管理に手間がかかるのが難点ですが。

勇気と覚悟で突き抜ける
社長:確かに、「あって当たり前」と思われるより、感謝してもらえるようなものにしたいね。かつ、リクルーティングに繋がるような面白いものがいいな。

クラウド人事部長:「面白い福利厚生施策」を売りにして、積極的に宣伝している会社は確かにあります。「他社と違う、面白そうな会社」をアピールし、好感度を上げるという意味では有効なやり方です。ただし、やるなら徹底してやるべきです。中途半端では埋没します。自社への「アンチ」ができるくらい、突き抜けないと。

社長:「嫌われる勇気」か。分かってくれる人だけに分かってもらえばいい、と割り切るのはなかなか勇気が要るなあ。

クラウド人事部長:社長が腹を括らないとダメですよ。そうしないと担当者は萎縮します。 なお、「他社より福利厚生が手厚い」状態を目標にしてはいけません。待遇で釣られる従業員は他社から好待遇を提示されたらそちらに行ってしまいます。
 福利厚生は「衛生要因」です。他社に劣るのであれば離職(または入社をためらう)の原因になりますが、この会社で働きたい!と思わせる「動機づけ要因」は「経営理念への共感」、「仕事のやりがい」にあります。ここでも経営理念、戦略とのストーリーの一貫性が大事です。そこがぶれると施策が嘘くさくなり、「裏の意図があるのでは」と勘繰られます。

社長:結局、経営理念に行きつくんだね。
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