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組織人事ストラテジストのつぶやき、業務連絡など。。

インターネットラジオ出演:ベンチャー・成長企業における、人事評価・報酬制度のあり方「楠田祐の人事アウトサイド・イン」

 おはようございます、組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。東京地方はようやく暑さの盛りが過ぎ、だんだんと秋に近づいてきた様子です。暑さが嫌いな私にとっては大変ありがたいことです。でも、涼しくなると眠くなりますね。

 人事業界(?)では知らない者はいない、中央大学大学院 戦略経営研究科(ビジネススクール) 客員教授の楠田祐先生(いつもお世話になっております)にお声掛け頂き、「楠田祐の人事アウトサイド・イン」というインターネットラジオの番組に出演いたしました!

【第11回】ベンチャー・成長企業における、人事評価・報酬制度のあり方

bizreach.biz

 

www.ks-hr-label.com

 内容については表題の通りで、ベンチャー・成長企業の成長と発展のために、人事評価・報酬についていかに考え、どのような仕組みを取り入れていくことが重要かについて私が語ります。自画自賛ですが、「組織人事ストラテジスト」が良いこと言ってますよ(笑)。
 
 番組の時間は約30分で、podcastでいつでも聞くことができますので、お手(耳?)空きの時間に一度聴いて頂けると嬉しいです。

「人事制度は必要悪。無くても良いかもしれないけど、無いと困るからある(もの)」

「社長の組織人事面での相談相手でありたい」

「従業員数十名から千名、一万名までの景色を見てきた」

「ローパフォーマーに余分に払われている給料がどこから来ているかというと、本来ならもっと高く給料をもらっても良いハイパフォーマーの分」

「(社名の由来は)ベンチャー・成長企業の成長の痛みを未然に防ぐ」

「(大事なのは)お医者さんと一緒で、予防だと思うんです。よほどコストが掛からないし、よほど簡単」


↓こちらは収録風景です。楠田先生との2ショット。

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 では、Have a nice day!

記事公開: 人件費のコントロール 「月刊 人事マネジメント クラウド人事部長に聞く経営人事のQ&A」

 おはようございます、組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。

 「月刊 人事マネジメント」の2016年8月号(連載7回目、最終回!)が、記事掲載より1ヶ月経ちましたので、記事内容をシェアをさせて頂きます。みなさまの参考になればと思います。

※こちらは前回のエントリです。

記事掲載:人件費のコントロール 「月刊 人事マネジメント クラウド人事部長に聞く経営人事のQ&A」 - hrstrategist’s blog

 Blogの仕様上PDFファイルを添付できませんので、もしPDFファイルがご希望の方は、arainoori[at]gmail.comまでご一報下さい!

以下、記事内容です。雑誌のページをJPG化して一番下にも貼りましたので、どちらか読みやすい方でご覧頂ければと思います。

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 急成長するなかで組織と人事に関する課題に日々悩むベンチャー企業の創業社長と、俯瞰的視座から人事アドバイザリーとして社長を助ける「クラウド人事部長」との対話の第7回目。今回は、「人件費のコントロール」がテーマです。

・第7回:人件費のコントロール

現場はすぐには止まれない
社長:うーん、今期は売上の伸びがイマイチなんだ。赤字を回避するためにも、なんとか経費を減らさないといけないよね。何かいいアイデアある?特に人件費の比率が上がっているようだ。

クラウド人事部長:あまり安易に考えないほうがいいですよ。「経費節減」の掛け声のもとで、本当に必要な経費まで削ることは避けるべきです。一方、もし簡単に減らせる経費があるなら、これまで無駄遣いを見過ごしてきたということです。まずは会社にとっての費用の「優先順位」を見極めるべきです。

社長:個別の経費の必要・不要をまず判断するということだね。ただし、それを細かく見極めるには手間が掛かりそうだ。

クラウド人事部長:その手間をさぼるために、「一律〇%カット」の方法を採る会社もありますが、おすすめできません。ちなみに、「赤字になるかも」と判明したのはいつですか?

社長:先月の決算を締めたら、売上が予算をだいぶ下回っていたんだ。営業部長は、今月以降も「売上予算達成は厳しいかもしれない」と言っていた。

クラウド人事部長:費用はどうですか?予算で計上していても先送り・削減できそうな費用があるはずです。採用費などは最たるものですが。

社長:増員の計画は今のところ変えていないけど、今の成長ペースだと予算で見込んだ人数は必要ないかもしれないね。ただ、現場はいつも「忙しいから人を増やして欲しい」と言っているからな。

クラウド人事部長:早めに手を打たないと、現場は惰性で予算計画通り動き続けますよ。「売上予算は未達」にも関わらず「経費予算は達成」、「結果は赤字」というのはよくある話です。

社長:えっ、どういう意味?

クラウド人事部長:売上・利益の進捗に関わらず、予算の範囲内では好きに費用を使っても良いと現場が考え、売上が未達でも、経費は予算通りに使い切ってしまうのです。

人材の採用は「投資」
社長:うちの会社はベンチャーなのに、役所みたいな発想だね。困ったもんだ。そうならないためにはどうすればいい?

クラウド人事部長:利益目標の達成こそが「目標」であり、売上増、経費減は単なる手段であるという優先順位付けが従業員の中に徹底していないと、「利益より売上優先」「予算内なら経費は使い切ってよい」という、部分最適の発想になります。
 とはいえ、そもそも自社の売上・利益が最低でも月次で従業員に公開されていなければ、自身の活動がどう「利益達成」に結びついているか従業員は判断できません。全体最適が見えなければ、自身に課された局地的な部分最適目標をひたすら追うしかないのです。

社長:経営情報の公開をしなければ、「利益達成」を目標にできないということか。

クラウド人事部長:それだけではありません。個人の報酬に結び付く人事評価の基準が、「部分最適」の指標に基づくものであれば、行動がそれに従うのはやむを得ません。これは従業員に誤ったメッセージを伝えている会社側の責任です。

社長:従業員は「自分の得にならないことはやらない」と考えるわけだね。思ったより問題の根が深いなあ。そういえば採用費の話が出ていたけど。

クラウド人事部長:現場の責任者は、予算を立てる時に「この売上を達成するためにはこれだけの人員が必要です」といって、要員計画・採用計画を立てがちです。しかし、売上が予算比で全く足りないのに人員だけ増えると会社の収支はどうなるでしょうか?そもそも採用した人がすぐに売上・利益をもたらしてくれるでしょうか?

社長:どんな人でも会社に貢献できるレベルになるまでは最低数ヶ月は掛かるよね。

クラウド人事部長:その通りです。誰かを採用したら、その人の採用費・人件費は当期の売上・利益には貢献せず、その期の費用純増になると想定すべきです。

社長:とはいえ、継続的に人を採っていかないと、会社が成長していくことはできないよね。それに、退職者の欠員補充も必要だから採用を止める訳にはいかないよ。

クラウド人事部長:賛成です。人材の採用は、短期的には「費用増」ですが、長期的には収益に貢献する(可能性がある)という点で、「投資」として捉えるべきです。気を付けるべきは、発生する費用と会社が得る収益にはタイムラグがあることです。採用費や人件費は、資産計上・費用繰延等の会計処理はできませんので、会社は会計上の許容範囲内で「要員計画」「人員計画」を立てる必要があります。採用数とそのタイミングのコントロールが大事なのです。

社長:なるほど。でも、要員計画と人員計画の違いがよく分からないなあ。

クラウド人事部長:業務に必要なヘッドカウントを見積もるのが「要員計画」で、その業務に適した人の要件を具体的に定義し、誰を当てるかを決めるのが「人員計画」です。「要員計画」だけで予算はある程度策定できますが、「人員計画」まできちんと作りこむと、必要な人員を調達するための採用費などが具体的に見えてくるので、より詳細に予算に反映することができます。

社長:要員計画でヘッドカウントと人件費をある程度固め、人員計画で「誰」を充当するかの要件を明確化するわけだね。そこまで見えれば、かなり現実的な予算が作れるね。

クラウド人事部長:要員・人員計画は事業計画と連動すべきであり、特に売上・粗利(売上総利益)が予算に未達の場合、連動して随時修正すべきです。そして、このプロセスを実行するためには、綿密な予実(予算実績)管理を行う必要があります。
 現場は目先の多忙さを解消することを最優先に考えがちですから、採用活動を現場任せにすると、要員・人員計画のコントロールが効かなくなります。全社視点・長期的観点からの要員人員計画を立て、それに基づく当期の人員計画を予算に反映し、予算の達成状況(実績)に応じてそれを修正していくというプロセスが必要です。

社長:人事というより、むしろ経営企画的な仕事のようだけど。

クラウド人事部長:そうなのですが、人事の経験・専門性がないとできない仕事です。さらには、人件費のコントロール範囲として昇給率・賞与引当額等も戦略的に考える必要があります。加えて、等級別の人員構成を鑑みて5年、10年先を見越した人材ポートフォリオを組むことも大事です。ここまでできれば、新卒採用をメインにして足りない人材の補充を中途採用で補充するといった、戦略的な採用計画ができるようになりますよ。

社長:うちの会社もそこまでできるようにならないといけないね。頑張るよ!

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『週刊SPA!9/6号(8/30発売)』コメント掲載

 こんにちは、組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。 昨日は業務で山口県に日帰り出張に行ってきました。目的地と空港までの距離や飛行機の便数との関係で新幹線を選択したのですが、片道4時間はさすがに長く感じました。「のぞみ」の窓際の席で電源も確保ができたので、PCを使った作業はたっぷり集中してできましたので、たまにはこういうのもアリかな、とも思いましたが。。

 さて、昨日8月30日発売の「週刊SPA!」の特集記事「死ぬほど忙しいの正体」で、私のコメントが掲載されました。

nikkan-spa.jp

 ありがたいことに取材の依頼をいただき、1時間くらい話をした中で、記事に反映していただいたのはほんの一部(笑)ですが、以下のようなコメントを載せて頂いています。

「(多くの日本企業について)専門性が育たないので市場価値が高まらず、企業も中途採用に消極的。結果、労働力が非流動的で固定化するので、雇用契約がそのまま隷属的な身分制度になってしまうのです」

「そもそもアラフォー世代が置かれるプレーイングマネジャーという立場が、本来ならば非常事態。プレーヤーとマネジャーの業務はまったく別であり、『どっちもやれ』と社内の帳尻合わせに都合よく利用されているにすぎない」

 ぜひご一読ください!

「組織が壊れる」PCデポへの懸念

 こんばんは、組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。

 神奈川、東京を中心にパソコンを中心に取り扱う家電量販店の株式会社ピーシーデポコーポレーション(以下PCデポ)に関して、高齢者に対して高額のサポート料金が発生する契約をさせ、加えて解約時に高額の解約料を請求したという問題が話題になっております。

 横浜市の北部で育ち、今も川崎に住んでいる私としては、PCデポは昔からよく知る「地元の会社」です。以前に住んでいた家の近所にも店舗があり、何度か買い物をしたこともあります(値段が安くないので、あまり積極的には利用しませんでしたが)。

www.pcdepot.co.jp

本件に関する経緯はこちらに詳しくあります。
(個々の記事に対する見方は色々とあろうかと思いますが、本題ではないのでここでは触れません)

bylines.news.yahoo.co.jp

 

kabumatome.doorblog.jp

 

toyokeizai.net

会社側のリリースはこちら。

http://v4.eir-parts.net/v4Contents/View.aspx?cat=tdnet&sid=1396227

 この件、ネット上だけでなく、既にテレビでも放映されたようで、株価にもだいぶ大きく影響しています。8月上旬の高値から約2週間でほぼ半値まで落ちました(8/24現在)。

(株)ピーシーデポコーポレーション【7618】:株式/株価 - Yahoo!ファイナンス


 一応会社側は、上記リリースにて、「お客様の使用状況にそぐわないサービス提供があったこと」については認めています。少なくとも、グレーである(後ろめたい)という認識はある、という解釈で良いと思います。

 また、これが単に「個別の店舗の勇み足(店員または店長が悪い)」なのか、それとも「会社(経営陣を含めた全社)ぐるみ」なのかという点が気になりますが、そもそ全店共通の料金プラン自体が極端に会社に有利(消費者に不利)と考えられるもの(実際に会社の最初の反応は「料金プランの変更」でした)である以上、「担当者が勝手にやりました」という言い逃れはできないように思えます。
(上記「ヨッピー」氏の記事によれば、クレーム対応にわざわざ「取締役部長」の人が出てきているのも、「会社としての後ろめたさ」を感じます。)

 この件の他にも、「元従業員の告発」「私もこんな被害に遭った」といった情報がネット上に次々に溢れ出している状況を見ると、この件もあくまで氷山の一角でしかなく、故に会社側の対応にも遅れ・油断があったのではないかとも推測されます(以下の記事はそのあたりの事情について推測しています。)

www.itmedia.co.jp

 ここまで事態が拡大している以上、PCデポとしてはどのように事態を収拾するか、厳しい選択が迫られています。あくまでシラを切り通すのか(ここまで来たら良手とは思えませんが)、会社が責任を認め、改めて謝罪をするのか、会社の対応に注目です。

 とはいえ、この「炎上」をどう収束させるがが会社にとって最も緊急の課題であることは間違いありませんが、一方で、もし今後、会社が素晴らしい「神対応」でこの「炎上」を収束させたとしても、それはこの事態の問題解決を意味しません。

 組織が既に壊れ始めている(と推測される)からです。

 このような状況の元では、良心のある従業員たちの多くは、既に会社に見切りをつけ、社外に流出しているでしょう。一方で、これまで積極的に"〇〇"な(お好きな言葉を入れて下さい)営業施策を推し進めていた人たちは、その「実績」を基に社内で出世し、大きな権限を持つようになっているでしょう。たとえ、会社が過去の行いを懺悔し、悔い改めると宣言したとしても、経営陣が積極的にその人たちを要職から外すことは期待できません(これまでの業績を築いた手法を否定するという事は、今の経営陣の存在価値を自己否定することになりかねません)。

 結局、経営陣も含めて皆、「同じ穴のムジナ」だからです。会社が「方針を転換する」と謳ったところで、従来のやり方でのし上がった人達がいままで通り自分の上司として残るのであれば、従業員はその人たちのいう事を無条件に信じることができるでしょうか。

 そのような組織に情熱は生まれません。末端の従業員は(自らを守るために)、「いかに上に怒られないか」だけ考え、言われた通りのこと以上のことはやりません。一方でこれまで利益を捻出していた「〇〇な」やり方は封じられてしまうのでは、その会社の業績は好転する理由がありません。そして、その影響は遅行指標として、数年遅れて業績に表れていくのです。

 従業員の過労自殺を始めとする一連の事件により(もちろんそれだけが原因ではありませんが)業績を大幅に悪化させ、経営陣を刷新した後も未だに業績が回復しない「ワタミ」などはその一例でしょう。

 では、どうすれば良いか。私の意見は、ドラスティックに「経営陣を全て入れ替えたらいかがでしょう?」というものです。「ヤキが回らないと変革しない」というのは、経営破綻した多くの企業で見受けられます。優秀な経営陣が確保できるのであれば、「総とっかえ」により、むしろより確実に、会社は変わることができるでしょう(現実的に可能性はほぼゼロでしょうが)。

 ただ、そこまで行かなくても、経営者と本件に関わっていた部署の責任者は全て退任し、一切の権限を取り上げる、というやり方はあり得ます。当人たちは、会社に残るなら一兵卒からやり直すこと、それが不満であれば、会社を辞めて外部に機会を求めてもらうのです。

 それも難しいとすれば、少なくとも、「これまでの営業方針を撤回し、経営陣から幹部社員全てが心を入れ替え、反省・懺悔し、再出発」しない限りは、今回の出来事で受けたダメージから回復するのは難しいのではないかと思います。どのような対応をするにせよ、結局トップ(社長)自らが「自己否定」出来るか否かが今後PCデポの組織が再生し、変革できるかの重要なポイントであると私は考えます。

 多くの企業にとって学ぶべきところの多い「ケース」です。今後の経緯に注目しましょう。

記事公開: ローパフォーマーへの対応 「月刊 人事マネジメント クラウド人事部長に聞く経営人事のQ&A」

 こんにちは、組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。

 「月刊 人事マネジメント」の2016年7月号(連載6回目)が、記事掲載より1ヶ月経ちましたので、記事内容をシェアをさせて頂きます。みなさまの参考になればと思います。

※こちらは前回のエントリです。

記事掲載:ローパフォーマーへの対応 「月刊 人事マネジメント クラウド人事部長に聞く経営人事のQ&A」 - hrstrategist’s blog

 Blogの仕様上PDFファイルを添付できませんので、もしPDFファイルがご希望の方は、arainoori[at]gmail.comまでご一報下さい!

以下、記事内容です。雑誌のページをJPG化して一番下にも貼りましたので、どちらか読みやすい方でご覧頂ければと思います。

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 急成長するなかで組織と人事に関する課題に日々悩むベンチャー企業の創業社長と、俯瞰的視座から人事アドバイザリーとして社長を助ける「クラウド人事部長」との対話の第6回目。今回はなかなか表だっては取り上げづらい、しかし経営者・人事担当者には避けて通れない、ローパフォーマーへの対応がテーマです。

・第6回:ローパフォーマーへの対応

“ロー”と“ノー”の峻別
社長:前にも相談したかもしれないけど、”ローパフォーマー”への対応に悩んでいるんだ。

クラウド人事部長:頭が痛い問題ですよね。とはいえ、本人だけでなく周囲に与える悪影響を考えると放置はできません。
 ちなみに、いわゆる”ローパフォーマー”には2つの種類があることは認識されていますか?

社長:いや、意識したことがなかった。それってどういうこと?

クラウド人事部長:もしその人がいなくても、業務を行ううえで全く困らないかどうかです。ちなみに、社長の言う”ローパフォーマー”はどちらですか?

社長:うむ、どっちだろう…

クラウド人事部長:もしその人抜きでも職場は困らない、その存在自体がむしろ他の人たちに迷惑になるような人を私は“ノーパフォーマー”と呼んでいます。このような人はごく稀ですが、残念ながら一定の確率で存在します。この方たちには、いかにして「お引き取り願うか」を考える必要があります。

社長:なるほど。あまり考えたくない話ではあるけどね。

クラウド人事部長:一方、いないよりいた方がましですが、給料に見合った働きはしていない人たちは、本当の「ローパフォーマー」です。この人たちには、その働きに見合った報酬水準を見極め、適用すればよいのです。

社長:それはつまり、その人たちの給料を減らすということだよね。それって、口で言うほど簡単ではないのでは?

クラウド人事部長:もちろん簡単ではありません。とはいえ、そもそも働きに見合わない報酬を与えていた会社と経営者にも責任があります。その人たちが余分に受け取っていた報酬は、本当はより頑張っている別の従業員がもらうべき分だったはずです。それを「あるべき姿」に是正するために、経営者はリーダーシップを発揮すべきと私は考えます。

社長:おっしゃる通り、俺の責任だよね。それについては異論はない。だからこそ君にアドバイスをお願いしているんだ。

クラウド人事部長:ありがとうございます。社長が同じお考えで安心しました。

準備は周到かつ手際よく
社長:それで、具体的にはどうすればいいんだ?

クラウド人事部長:自社の報酬制度が「減給」を想定していない場合には、まずはその制度を変えることから始めないといけません。人事制度の変更ですから、ある程度の準備・移行期間が必要です。さらには、制度変更後も数年間の調整期間を設ける場合もあります。

社長:長期に渡る周到な準備が必要ということだね。それだけ時間が掛かるのでは、思いつきでやるという訳にはいかないね。

クラウド人事部長:とはいえ、対策を先送りして、事態が悪化してから慌てても手遅れです。禁煙や生活習慣病の予防と同じです。

社長:耳が痛いな。でも、制度を変えたとしても、本当に減給をしたら本人のやる気がなくなるのでは?

クラウド人事部長:元々やる気があり、会社に貢献している人には関係ない話です。もしやる気があるのにパフォーマンスが低いなら、その仕事に向いていないと判断せざるをえないです。

社長:最悪、その人が辞めてしまうかもしれないよ。

クラウド人事部長:別の仕事をするのがおそらく本人にとっても幸せではないでしょうか。それに、パフォーマンスに見合わない報酬を会社が長期間払い続けることはできません。会社に貢献している人たちが不公平に感じ、会社へのロイヤリティが下がったり、離職やモチベーション低下の原因となるほうがよほど重大な損失です。

社長:でも、誰が本人に伝えるんだ?俺はやりたくないなあ。

クラウド人事部長:直属の上司が伝えるのが基本です。もしその上司では頼りない場合はその上の上司ですね。
 伝え方も慎重に行う必要はあります。本来は、人事評価のフィードバックや日頃のコミュニケーションでちゃんと「ダメだし」をしておくことが大前提です。「今のあなたはここを改善しないといけない」と率直に伝え、それを受けて本人が改善に取り組むのに十分な時間を与える必要があります。このプロセスを経ることで、パフォーマンスが改善する場合もあります。まあ、確率としては多くないのですが。

社長:いきなり伝えるのでなく、あらかじめアラームは出しておくということだね。

クラウド人事部長:おっしゃる通りです。本人に「会社が悪い」と言い訳をさせないためにも、単に給料を減らすだけでなく、会社として改善の手立ては尽くすべきです。そうしないと本人としても納得感が生まれません。そして、そもそも「なぜそんな従業員を採用したのか」と振り返り、反省しないと、また会社は同じ失敗を繰り返します。

責任は経営者が負うべし
社長:なんであんな人を採ったんだろう。魔がさしたのか。

クラウド人事部長:「あんな人」でも通ってしまう甘い採用基準が原因でしょう。または、基準がその時によってブレたりしませんか?候補者が少なければ来た人の中で決めてしまうとか。欠員補充が至上命令だと、そのような「数合わせ採用」が横行します。

社長:確かにそれは身に覚えがある…

クラウド人事部長:応募者は自分から悪いことは言いませんし、ボロが出ないように取り繕います。それに騙されて採用しても、入社後に化けの皮ははがれます。でもその時は手遅れです。そういう人は「自分は(この会社では)ローパフォーマーだ」と自己認識していませんから、反省も改善もあまり期待できません。

社長:だからこそ適切な対応が大切なんだよね。

クラウド人事部長:はい。現場の上司がローパフォーマーと向き合い、適切な対応を行うことが大事です。そして同時に重要なのは、対応を「現場任せ」にはしないことです。実際には、現場のマネージャーは自身の業績目標を達成することに必死で、任せておくとローパフォーマーには積極的に介入せず、「放置」しがちです。でも、その場合にあおりを受けるのは周りの社員です。「放置」はその人たちのモチベーションに悪影響を与えます。

社長:では、どうすればいいんだ?

クラウド人事部長:専門知識を持つ(または専門家の支援を受けた)人事が現場のマネージャーを積極的に支援することです。そして経営者が「何かあれば責任は自分が取る」というオーナーシップの姿勢を示すことも必要です。「自分は関係ない」という経営者の態度を感じたら、現場は失望し、腐ります。その意味で、社長も覚悟を決め、腹を括る必要がありますよ。そして、最も避けるべきは、「問題の先送り」です。先に送ったところで問題が悪化することはあっても無くなることはありません。原因を取り除く決断をどれだけ早くできるかです。

社長:わかった。俺も腹を括ってがんばるよ。
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