hrstrategist’s blog

組織人事ストラテジストのつぶやき、業務連絡など。。

人事評価と、まんじゅう(饅頭)の関係とは?

 こんにちは、組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。

 今年のゴールデンウィークは、渋滞に遭遇する恐れの高い遠出はせず、ひたすら都内と川崎・横浜の範囲内で小さく動き回っておりました。お盆や正月もそうですが、大型連休の時期はむしろ都心に近づくにつれて、いつもより車や人が少なくなりますね。その代わり、行きたかったお店も休みだったりする場合もあるので良し悪しなのですが。

 本エントリでは、前から書こうと思っていたネタを取り上げたいと思います。それは、「人事評価って"まんじゅう"だよね」という話です。

 実はこの話、私がお手伝いをしている株式会社サーバーワークスの大石代表とディスカッションをしている際に、大石さんが思いついたのがきっかけなのですが、非常に分かりやすい例え話なので私もいろんな所で使わせて頂いております。

 大石さんご自身もこの考え方について以下に詳しく書かれています。

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blog.serverworks.co.jp

「皿=人として基本的な資質
 まんじゅう=成果の大きさ・会社への貢献度合い
 皮=当然やるべき仕事
 あん=個人毎に特徴づけられる達成目標」

「本質的に成果というものは「まんじゅう」の様なもので、明文化されることは少ないが成果の大半を占めている「皮」の部分と、個人を特徴づけ、かつ目標管理プロセスの中で明確化される「あん」の部分との2つで成っている」

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 「まんじゅう」に対する大石さんの解釈は上記をご覧頂ければと思いますが、ここでは私なりの解釈をお伝えしようと思います。人事評価を私がまんじゅうに例えるならば、

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 あんこ=設定した目標に対する成果
 皮=目標設定した業務以外の貢献
 まんじゅう=上記2つを合わせた会社への貢献度
 人事評価=まんじゅうの「価値(例えばいくらで売れるか)」に対する評価
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となります。

 まんじゅうの「価値」とは、お客さんがそのまんじゅうをいくらの値段で買いたいと思うかどうかです。買いたいと思う条件は、「味」であり、「大きさ」であり「見た目」であるはずです。

 まんじゅう評価を人事評価になぞらえると、あるべき人事評価の姿が分かります。

 例えば、サイズがやたらと大きいけど味は不味いまんじゅうを食べたいと思いますか?または、あんこを丸めただけのものを「まんじゅう」と認めますか?

 ところが、実際の人事評価では同様のことが行われているのです。

 目標評価を行う際に、「できるだけ定量化しなさい」というアドバイスはよく聞きます。それ自体は間違いではありませんが、これを曲解して、「定量化できる指標だけを評価対象とすべきで、定量化できない要素は評価対象とすべきでない」といった主張をする人は少なからずいますし、さらには人事部門がそのように評価者に指示をする場合もあります。

 「定量化された指標だけ評価する」というのは、「味に関わらず、まんじゅうは大きければ大きいほど良い」と言っているのと同じことです。昔のソビエトや中国のような共産主義の計画経済では、割り当てられた生産数を達成するために、実際には使い物にならない「製品」をやみくもに生産するということもあったようです。その結果何が起きたかは、歴史が証明していますね。

 また、「目標評価のみ」で人事評価を決めるのは、皮≒"目標設定した業務以外の貢献"を全て無視することになります。これは皮も含めたまんじゅうの評価ではなく、単に「あんこ評価」をしているということです。

 更には、設定した目標の達成度だけで評点を決めるやり方も見受けられます。これも運用に気を付けないと、難易度をできるだけ下げて目標を設定し、達成度を高めることで評点はいくらでもかさ上げできることになります。「あんこ評価」ですらなく、「予め決めたあんこの量の達成度評価」でまんじゅうの値段が決まるとしたら、どう思いますか?

※参考エントリ

hrstrategist.hatenablog.com

 逆の話もあります。「あんこが少なく、皮がやたらに厚いまんじゅう」ってどう思います?

 会社が求める本来の業務を疎かにして、周辺業務の貢献(概ね、本人がやりたいからやっているのですが)を評価して欲しいと言われても、それは筋が違うという話です。「あんこだけ」のまんじゅうもダメですが、皮だけの「花巻き」をまんじゅうとして評価して欲しいというのと同じ話ですね。

 理想のまんじゅうとは、あんこが多くて皮が適度に薄い、かつ、皮とあんこの両方がおいしいだけでなく、見た目も美しいもので、できれば小さいよりは大きい方が良いでしょう。味や見た目の評価は定性的な評価となります。

 ただし、味と大きさと見た目のバランスの理想形は、人によって異なります。味や見かけよりも大きい方が良い人、味覚が最優先の人、見た目が一番大事な人、どれも間違いではないですよね。

 だからこそ、人事評価では会社としての評価基準を決め、評価者にそれを徹底させるべきなのです。まんじゅうにおける味や見た目の評価は主観的にならざるを得ませんし、社内の複数の評価者の目線を合わせる努力をせず、それぞれが自分の好みだけでバラバラに「まんじゅう評価」を行うべきではないということは理解できると思います。

 そして、会社としての評価基準を決める元になるのは、その会社が何を目指し、どのような価値観を大事にしているかという「経営理念」です。経営理念(ビジョン、ミッション、バリュー)は、その組織が存在・存続する目的・価値(感)を説明します。

※参考

hrstrategist.hatenablog.com

hrstrategist.hatenablog.com

hrstrategist.hatenablog.com

 一方で、自社の評価基準(どのまんじゅうを高く評価するか)だけでなく、市場における価値(一般の消費者に売った時にどれだけ高い価格を取れるか)も重要です。自社の評価に比べて市場の評価が高いのであれば、そのまんじゅう(人材)は自前で消費するより、より高く評価する所で消費(雇用)される方が本人にとっては幸せですよね。

 つまり、"まんじゅうの価値評価"は自社にとっての価値と市場価値の両方を考慮する必要があるということです。

 「社内での貢献度>市場価値」と、「社内での貢献度<市場価値」に対してどう処遇するかについては、以下のエントリで取り上げています。

hrstrategist.hatenablog.com

 ここまで人事評価のあり方を「まんじゅう」に例えて説明してきましたが、この例え話が皆さまにとって人事評価についての理解を深めるお役に立てば幸いです。

 では、Have a nice day!

副業・兼業を推進する前に押さえておくべきこと(2)

 こんにちは、組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。

 「我が家(マンション)の前の公園のサクラは満開」と先週のエントリで書きましたが、週末の雨にもかかわらず、まだまだ頑張ってくれています。

副業・兼業を推進する前に押さえておくべきこと(1) - hrstrategist’s blog

 そのエントリの続き、副業の話です。

 前回のエントリでは、多くの企業がなぜこれまで「副業禁止」のスタンスを取っている(いた)かについて、以下3つの主な理由を挙げました。

1.複数の雇用元に雇用されることによる労働時間管理と安全配慮義務の問題
2・競業・情報漏洩の問題
3.レピュテーションリスクの問題

 このうち、1番目の「労働時間管理と安全配慮義務」については前回エントリで説明しましたので、今回はそれ以外の理由について解説すると共に、従業員の副業に対して会社が取るべき望ましいスタンスについて考えてみたいと思います。

 競業とは、従業員が副業として本業の仕事と競合する会社に雇用されたり、自らそのような事業を営むことです。雇用主としては従業員の持つスキルや経験、人脈等を期待して雇用している訳で、それを利用して競業をされてしまえば堪ったものではありません。よって、一般的には「競業避止義務」は(少なくとも在職中は)従業員に課されるものとされています。

「競業避止義務」とは? - 『日本の人事部』

 情報漏洩に関しては、例えば自社の顧客リストが従業員の副業先に流れるといった類の事態が起こり得るのでないかという懸念です。これに関しても、従業員は秘密保持義務を負うものとされます。

従業員等による情報漏洩や競業行為に対する法的手段

 よって、いずれも「競業行為」「情報漏洩行為」自体の問題であり、競業でもなく情報漏洩も起こり得ない「副業」まで会社が一律に禁止するのは行き過ぎのように思われます(「危ないから」といって何でも子供に禁止する過保護な親のようですね)。

 最後のレピュテーションリスクとは、従業員が行う副業が、自社の評判に悪影響を与える可能性を指します。本業はお堅い仕事にもかかわらず副業がいわゆる水商売系だったり、または本業の会社名や肩書を利用して(例えばマルチ商法アフィリエイトビジネス的な)副業の宣伝を行ったりした際に、会社がそれによって自社の評判に悪影響を被ると(会社が)みなす場合にこれに当てはまります。

 これらの「副業禁止の口実・理由」を検証していくと、従業員の副業自体を会社が一律に禁止するのは、実は合理的ではないことに気付きます。実際に以下のような判例も出ています。

判例:兼職の発覚を理由とする懲戒解雇

http://www.mhlw.go.jp/churoi/chyousei_jirei/dl/29.pdf

就業規則は使用者がその事業活動を円滑に遂行するに必要な限りでの規律と秩序を根拠づけるにすぎず、労働者の私生活に対する一般的支配までを生ぜしめるものではな い。兼職(二重就職)は、本来は使用者の労働契約上の権限の及び得ない労働者の私生活における行為であるから、兼職(二重就職)許可制に形式的には違反する場合であっても、職場秩序に影響せず、かつ、使用者に対する労務提供に格別の支障を生ぜしめない程度・態様の二重就職については、兼職(二重就職)を禁止した就業規則の条項には実質的には違反しないものと解するのが相当である。」

 就業規則で規定したからといって、会社は従業員に対してあらゆる副業を一律に禁止することはできない、ということです。

 裏を返せば、会社が副業を禁止または制限をする口実・理由として合理的・妥当なのは、従業員がその副業を行うことよって、「会社に迷惑が掛かる場合」に限定されるべきということです。

 そこで、従業員の副業に対し、会社が取るべき望ましいスタンスについて、具体的に考えてみましょう。

 「雇用される労働者」という立場で従業員が副業を行うことは、(前回エントリで指摘したように)会社が割増賃金を負担する義務が発生する可能性や、従業員の健康上に問題が生じた場合に会社が安全配慮義務を問われる可能性を鑑みると、会社が禁止することは合理性の面から見ても妥当性を十分に説明できます。

 一方で、「競業禁止、情報漏洩の禁止」は確かに会社に迷惑が掛かりますが、これらの事象は副業の有無に関わらず、そもそも競業行為、情報漏洩行為自体が問われるべきです。要は、競業でなく、かつ情報漏洩の懸念が無い副業まで禁止する合理的理由にはならないということです。

 レピュテーションリスクに関しては、自社の評判に悪影響になる(会社の迷惑になる)と思われる副業だけを禁止すればよいのです。

 なお、従業員個人に、自分がやろうとする副業が「会社に迷惑を掛けるか否か」の判断を委ねることは避けるべきです。迷惑かどうかの判断は「迷惑をかける方」ではなく、「迷惑を受ける方」の判断を尊重すべきであり、あくまで会社が判断する必要があります。

 故に、従業員が副業を行うにあたっては事前に会社の許可を取る(または会社が示す条件を満たしたうえで届出制とする)というプロセスは妥当であると言えます。

 その上で、会社が副業を許可する判断基準の大原則は、「業務時間以外の個人での活動は、会社に迷惑を掛けないのであれば本人の自由である。」であり、これに照らして考えていけばよいのです。

 先月に取り上げた「副業採用」の話などもあり、副業に対して企業がどの程度容認し、または積極的に推進していくかが今後企業の採用力や組織競争力に影響していく時代になり始めているのかもしれません。「副業禁止の見直し」は、今からでも遅くありません。貴社でもぜひ、真剣に検討を始めましょう!

「副業採用」のススメ - hrstrategist’s blog

 では、Have a nice day!

※副業に関しては、こちらのエントリもぜひご覧ください。

副業・兼業を推進する前に押さえておくべきこと(1)

 こんにちは、組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。

 東京地方は桜の季節です。我が家(マンション)の前の公園のサクラは満開ですが、今年は場所によって開花の状態にかなりバラツキがあるそうですね。

 さて、先日「副業採用」というエントリを書きましたが、これに関連して副業の話をもう少し掘り下げてみようと思います。

「副業採用」のススメ - hrstrategist’s blog

 そもそも、「副業」という単語の定義とはどのようなものなのでしょうか。久々に手元の「新明解国語辞典 第三版」で調べてみました。

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副業:
内職
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なんと、シンプルな。

仕方がないので、「内職」の意味も調べます。

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内職:
一 本来の仕事の片手間にする仕事。〔俗に、授業・(会議)中に、本題を聞いているふりをして、別の事をする場合にも使われる〕
二 主婦が家計の、学生が学費・生活費の足しにするための賃仕事。〔後者は特に、アルバイトと言う〕
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 最近使われる「副業」のニュアンスとは多少異なりますね。私の「新明解 第三版」は1981年に発行なので、当時はサラリーマンが副業をするという事は全く想定されていなかった雰囲気が伝わります。裏を返せば、「副業」の位置づけや人々の意識も近年変わってきているということでしょう。

 その中で、多くの企業がなぜこれまで「副業禁止」のスタンスを取っている(いた)かについては、一応押さえておく必要があると考えています。

 大まかにいうと、以下の3点が理由と考えられます。

1.複数の雇用元に雇用されることによる労働時間管理と安全配慮義務の問題
2・競業・情報漏洩の問題
3.レピュテーションリスクの問題

 まずは、労働時間管理と安全配慮義務について。労働基準法第38条では、

「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。」

としています。よって、本業と副業を通算して8時間を超える労働をすると、時間外労働(残業)の割増賃金を払わなくてはいけなくなります。その場合に、割増賃金を本業の会社と副業の会社のどちらが負担すべきかが問題となります。これについては、明確な決まりは存在していないようです(「後から雇用契約をした側」が負担すべきなのでは、という解釈をされる方が多いようですが、特に判例なども無いようですね)

※参考

www.adecco.co.jp

d.hatena.ne.jp

 正直なところ、この辺の考え方がはっきりしないと、従業員が副業を始めた結果として従来の労働時間に対して追加で割増賃金が発生するというリスクを会社は考えないといけない訳です。

 問題は割増賃金だけではありません。例えば、もし副業を行っていた従業員が死亡し、その原因が(例えば)通算で月100時間以上の時間外労働を行った結果であると類推される場合に、それが労災認定されるのか、また民事上の損害賠償が発生した場合に本業・副業の雇用主の責任(按分)はどのようにして決まるかなど、不透明な部分が多くあります。

※参考

eulabourlaw.cocolog-nifty.com

 このように不確定な要素が多くある中では、少なくとも「雇用される労働者」という立場での従業員の副業・兼業に関して会社が「禁止」することは、リスク回避の点では無理もないかなという気がします。

 この話、続きます。。

副業・兼業を推進する前に押さえておくべきこと(2) - hrstrategist’s blog

「プレミアムフライデー」ってどうなのよ?

 こんにちは、組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。

 先月から始まった「プレミアムフライデー」(「プレ金」という略語も早速出ていますね)、本日が2度目となりますが、何だか全然盛り上がっていないような気がするのですが、気のせいでしょうか?

newswitch.jp

 上記の記事でも、「まだ手探り。」「実施・奨励の割合は企業規模に比例する」などという微妙な話が出ております。

 私の知り合いに聞いた意見も、「ニュースを見ても実施をしているのは大企業ばかり」「大企業勤めだけど自分に関係ない」「そもそも興味がない」「うちのお店ではセールをしています(お店の人達は働いている訳ですね)」といった冴えない意見ばかりです。

 実は私は「プレミアムフライデー」については元々懐疑的なので、「やっぱりな」という感想しかないのですが、そもそも「プレミアムフライデー」ってなぜ始まったのでしょうか?

■誰が「プレミアムフライデー」を始めたのか?
 まずはこちらをご覧ください。

premium-friday.go.jp

プレミアムフライデー事務局とは、平成28年度の経済産業省の委託事業を受託した株式会社博報堂プレミアムフライデーを広く普及させるための事務局です。」

とあります。経緯は以下にある通りです。

「主導する経産省は広告費などとして、2016年度の補正予算に2億円を計上。」

www.asahi.com

そして、このWebサイトに出ている「プレミアムフライデー推進協議会」なる組織の中身もなかなか興味深いものになっております。

プレミアムフライデー推進協議会委員名簿」

http://www.meti.go.jp/press/2016/12/20161212001/20161212001-1.pdf

委員の人達の大半が小売業界の団体の人達(あと旅行業界)であり、要するに経済産業省が広告代理店に予算を付けて、小売や旅行業界の販促をやるというのが真の狙いなのです。
(委員の方達の名前をググって経歴などを調べるととても興味深いです)

 ちなみに、この取り組みに厚生労働省は直接関わっておりません。「働き方改革」の一環で云々という話がよく出ますが、それは後付け、または単なる口実に過ぎないのです。

そういう目で見ると、この記事はなかなか皮肉で面白いと思いませんか。

プレミアムフライデー
初日 冷ややか 「大手と中小の格差感じる」 3時退庁は一部

http://mainichi.jp/articles/20170225/ddm/012/020/080000c

「「働き方改革」を担う厚生労働省の広報室は「3時をめどに退庁するよう庁内放送で呼びかけるなどしたが、職員の参加率は分からない」。ある職員は「人数の多い部署は何人か3時に退庁できるかもしれないが、少ない部署は無理。3時以降に役所の電話がつながらなくなれば苦情が来る。まずは民間で定着してほしい」と漏らした。」

 要は、政府の方針なので従わざるを得ないが、自分たちは積極的に関わらないというのが厚生労働省のスタンスなのです。

■「プレミアムフライデー」、実施事例
 私は人事が専門なので、プレミアムフライデーの「15時退社」を実施するために、各社はどのような取り決めをしているかに興味があります。

 いくら政府が、「プレミアムフライデーやります」と宣言しても、例えば就業時間が「9時~18時」と決まっていたら従業員は勝手に15時に帰る訳には行きません。よって、管理監督者裁量労働等の対象者以外にプレミアムフライデーを実施させるには、フレックスタイム制が導入されていない限り「有休を取らせる」または「15時退社に就業規則を変更する」しか方法はありません。

 厚生労働省が主導しているのであれば、「勤怠の扱いはこうすれば良いですよ」とか指針が出てくるのでしょうが、なにしろ他所の役所がやっていることですから、今のところ厚労省からは何の方針も出ていませんね(勝手にしろ、俺は知らん、ということなのでしょう)。

 そのような中で、「プレミアムフライデー」実施の各社の事例を拾ってみました。

日立ソリューションズ

プレミアムフライデーに賛同し、働き方改革を加速 年次有給休暇の取得推進や20時以降の残業の原則禁止、インセンティブの付与も導入|株式会社日立ソリューションズ

プレミアムフライデー」に賛同し、2月24日と3月31日に、15時退社または午後半日年休の取得を推奨します。
※4月以降は「労使でプレミアムフライデーを含む複数候補日を年休推奨日と定め、年休取得を強力に推進します。」
→15時退社 or午後半休の取得の推奨はせず、全日の有休取得を推奨しているようです。

大和ハウス

「プレミアムフライデー」を開始します|大和ハウス工業のリリース|会社情報 About Us|大和ハウスグループ

「今回の「プレミアムフライデー」では、推奨される「遅くとも午後3時までの業務終了」の一歩先を行く、「午後休」とします。」
「該当日は就業時間を「9~18時」等から、全社一律で「8~17時」に変更し、午後は半日有休とします。」
→有休を強制取得させるという事のようです。恐らく有休消化率が悪く、有休消化の促進策として好都合だったのかもしれません。迷惑に思う社員もいるのではないでしょうか。

日産

働き方改革/日産、月末金曜は15時退社−「プレミアムフライデー」推進 | 自動車・輸送機 ニュース | 日刊工業新聞 電子版

「勤務体系は毎日7時半―22時のうち原則8時間を労働時間に充てるフレックス制。1カ月間の総労働時間で勤怠管理しており、ハッピーフライデー実施日の出社時間は各部署や個人の裁量に委ねる。15時以降の会議を減らすことなどを呼びかける。」
フレックスタイム制の範疇でやれ、ということです。会議を入れない等の少しの工夫で対応すればよいので呼びかけは簡単そうです。

住友商事

「プレミアムフライデー」を導入 | 住友商事

「「プレミアムフライデー」当日を全休・午後半休取得奨励日とする。」
「有給休暇取得が難しい場合は、フレックスタイム制度を活用しコアタイム終了時刻(15時)の退社を奨励」
→日産も同様、フレックスタイムを活用の場合は導入(呼びかけ)は容易ですね。

■「プレミアムフライデー」は普及するのか
 そもそも導入の動機が不純であり、そのうさん臭さにみな気付いているように思えます。
企業としても、わざわざ就業規則を変更してまでの対応は考えづらいので、せいぜい「有休取得の推奨」レベルに留まりそうですし、そもそもろくに休みを取れない多くの中小企業にとっては、「うちには関係ない」とスルーされてしまうのが関の山かなという気がしまうす。
 その結果、結局大企業の社員だけしか休めないのであれば、金曜の夕方早い時間に食事や買い物をしている人達に対して「あいつらだけ何だよ」というねたみ、ひがみの空気が今後強くなるかもしれません。そうなるとますます、プレミアムフライデーの普及のハードルは高くなりそうです。

 もしかしたら、1年後には「E電(古い!)」のように、みんな忘れてしまうかもしれませんね。。

 では、Have a nice weekend!

「副業採用」のススメ

 こんにちは、組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。

 Blogの更新を1ヶ月以上サボっているうちに、東京地方はすっかり春めいてきました。外を歩いていても、公園でぼんやりしても寒さを感じませんから、外出する際の気分も軽くなりますね。とはいえ、花粉の問題が一方でありますが。。

 さて、今日は「副業」についての話です。多くの日本企業が従来認めず、就業規則等で従業員に禁止してきた「副業」に関し、「むしろ積極的に認めていこうではないか」という傾向がここ数年大きな流れになり始めています。
(以下の調査結果などは参考になります)

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※参考
リクルートキャリア 「兼業・副業に対する企業の意識調査」

www.recruitcareer.co.jp

https://www.recruitcareer.co.jp/news/20170214.pdf

「① 兼業・副業を容認・推進している企業は全体の22.9% ※正社員を対象とした調査結果

② 兼業・副業の禁止理由は、「社員の過重労働の抑制」が55.7%と最も高い
③ 兼業・副業の容認・推進理由は「特に禁止する理由がない」が68.7%と最も高い」

 

同 「副業を含む社外活動がキャリア意識に与える影響」

www.recruitcareer.co.jp

https://www.recruitcareer.co.jp/news/20170313_01.pdf

「社外活動は目的・内容により、キャリアに対する自信への影響が異なる。社外活動に参加すればキャリアへの自信がつくわけではない。」
「「他者と影響を与え合う機会」のある活動(社会に影響を与えたり、他者からフィードバックを得られるなど)が、キャリアに対する自信を強める。」
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 私はこの傾向はとても良いことだと思いますが、もっと凄い(素晴らしい)話を、先日、ある方から教えて頂きました。それが「副業採用」の話です。

 その方の会社はつい先日IPO(新規上場)したばかりの成長企業なのですが、なんと「すでに副業を持っている人」をターゲットとして、積極的に採用しているそうなのです。今いる社員の副業を認めるか否かではなく、始めから副業をしている前提で採用をする訳です。就業日数・時間等についても本人の希望を聞いて、柔軟に対応しているそうです。

 実際にどのような方が入社されるかというと、例えばWeb系やマーケティング系などで個人でコンサルティングを行っているような方が入社されるそうです。副業で十分稼いでおり、それを辞める気はないのですが、一方で、「組織に所属したい」「チームで仕事をしたい」という気持ちもあり、そのような働き方が出来る転職先を探してた所、その方の会社と出会い、転職を決めてくれたそうです。

 そして、そのような方たちがどの程度活躍されているかというと、非常に高い成果を挙げられているようです。考えてみれば個人でも稼げるスキルを持っている訳ですから、ある意味当然なのですが。

 にも関わらず、未だに多くの会社では「副業禁止」の前提で、このような優秀な方への転職の門戸を閉ざしてしまっている訳です。つまり逆に考えれば、「副業歓迎ですよ!」と宣言し、そのような方たちを積極的に取りに行くというのは、逆張りの戦略としては非常に賢いと思いませんか?

 実は、この話をもっと突き詰めると、「今後、優秀なフリーランサー(個人事業者)が増えていくことが予想される」「そもそも雇用契約が必要なのか」「そうなると会社はどのような人たち(だけ)を従業員として雇用契約すべきか」という議論になってきますね。

※参考図書 名著です。
フリーエージェント社会の到来―「雇われない生き方」は何を変えるか

 その話になるとまた話が長くなりますので、今日のエントリはここまでにしておきます。 では、Have a nice weekend!

副業・兼業を推進する前に押さえておくべきこと(1) - hrstrategist’s blog

副業・兼業を推進する前に押さえておくべきこと(2) - hrstrategist’s blog