hrstrategist’s blog

組織人事ストラテジストのつぶやき、業務連絡など。。

気付いたら、独立開業3周年

 すっかり忘れていましたが、昨日6月9日は、私が独立して事業を始めた3周年の記念日でした。

 なにしろ結婚記念日ですら(夫婦そろって)忘れる気質なので、本当に忘れていました。

 過去2年は、以下のようなコメントをしていたのですが。。

hrstrategist.hatenablog.com

 

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 まあ言い訳なのですが、仕事が忙しくて忘れていた、というのが本音です。
とはいえ、それだけ仕事に集中していた、というのはとても良いことですよね。

 率直な現状の状況を申しますと、本当に皆様のお蔭で、当面食うには困らない位のお仕事は頂けております。さらには、有難いことに、これまでの実績を元に新規のお話も(ポツポツと)頂けております。

 という訳で、皆さまにおかれましては、何か新井がお手伝いできそうな話がありましたら、恐れずにお気軽にお声がけ頂ければと思います。

 今後とも引き続き、よろしくお願いいたします!

部下は、"資産"

 こんにちは、組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。外出先で原稿を書いていると、外を見るといきなり雹(ヒョウ)?が降ってきました。勢いが凄かったのは一瞬で、今はやんでいますが。「熱帯かよっ」って一瞬思いましたが、熱帯ではヒョウは降らないそうですね(その後夕方になって、爽やかに晴れてきました!)。

 それはさておき、先日ある会社でリーダー研修の講師をしたのですが(研修系の仕事もたまにやっております)、そのような場で、部下を持つ管理職(マネージャー)の方たちにいつもお伝えしていることがあります。それは、「上司(管理職)の最も重要な仕事は、部下を育成する事」であるということです。

 そもそも、上司(管理職)に求められる役割とは何でしょうか。私は以下のように考えます。
 
 「上司(管理職)の役割とは、会社から人材(部下)・設備・資金等のリソースを使って、会社から求められた以上の成果を挙げること」

 これに対しては、違和感を感じられる方はあまりいないのではと思います。

 では、成果を挙げるために管理職に提供される「リソース」の意味について考えたことはあるでしょうか?

 気を付けなければいけないのは、これらのリソースは上司に与えられたものではないという事です。言い換えると、それは上司の「所有物」ではないのです。

 部署に与えられた予算は、会社が収益を上げるために正しく使われなければいけません。管理職はそれを正しく使う権限と責任を持っているに過ぎません。それを勘違いして私的に流用したことが判明したら、会社はその人を叱り、場合によっては(懲戒処分などで)罰することになります。

 また、オフィスの備品等のリソースは、通常の範囲の損耗であれば問題がありませんが、例えばパソコンを乱暴に扱ってしょっちゅう壊すような使い方をしていれば、それは問題になるでしょう。

 では、「部下」という、会社から提供された人材に関してはどうでしょうか。会社が自社の従業員に期待しているのは、短期的な成果だけでなく、(少なくともある程度以上の)長期的な活躍のはずです。ということは、会社は、部下を「損耗」させてでも短期的な成果を挙げることを上司(管理職)には求めていないのです。

 むしろ、会社は上司(管理職)に、部下という「資産」を貸しているのです。そして、貸し手である会社は借り手である上司に対し、元本だけでなく、「部下の成長」という利子をつけて会社に返すことが求められているのです。

 部下の成長=利子を付けるためには、上司(管理職)は預かった部下を励まし(時には叱り)、様々な経験を積ませて能力を向上させる必要があります。そして、成長する部下たちの活躍によって初めて上司は十分な成果を挙げることができるのです。

 だから、「上司(管理職)の最も重要な仕事は、部下を育成する事」なのです。

 一方、上司(管理職)が一番やってはいけないのは、部下という資産を「壊してしまう」ことです。具体的には、上司のマネジメントが原因の退職・休職・デモチベーション、メンタル疾病の発症などが挙げられます。

 そのような、パワハラ的な振舞いで部下を追い詰め、退職や病気に追い込む上司を「クラッシャー上司」と呼んだりしますね。

 

クラッシャー上司 - Wikipedia

 こちらの河合薫さんの記事も参考になります。

business.nikkeibp.co.jp

business.nikkeibp.co.jp

business.nikkeibp.co.jp

 例えば、会社の資産(費用計上済み)を勝手に売り払って「これだけ利益がでました!」と自慢する管理職を会社はどう評価しますか?部下を「消費」して成果を挙げようとする上司はそれと同じです。本来なら部下の「損耗」分を差し引いた上司評価を会社はすべきなのです。

 もちろん、部下の損耗度を定量的に評価をするのは容易ではありませんが、「定量化できないから」といって評価の対象から外してしまうと、「部下をいくら使い潰しても短期的な成果を挙げれば評価される」という焼畑農業のような社風になってしまいます。

※「定量評価」の扱い方については、以前にエントリをを書きました。

hrstrategist.hatenablog.com

 「いや、我が社はそれでいいんだ」と経営者が仰るのであれば、考え方は人それぞれなので止めはしません。

 しかし、少なくとも私はそんな会社で働きたくありませんし、自分の知り合いがそのような会社で働こうとしていれば、全力で引き留めます。
(まあ、そのような考え方の経営者は私のBlogなど読まないでしょうが)

 というわけで、上司(管理職)と部下の関係のあり方について、このエントリが参考になれば幸いです。

 では、Have a nice day!

人事評価と、まんじゅう(饅頭)の関係とは?

 こんにちは、組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。

 今年のゴールデンウィークは、渋滞に遭遇する恐れの高い遠出はせず、ひたすら都内と川崎・横浜の範囲内で小さく動き回っておりました。お盆や正月もそうですが、大型連休の時期はむしろ都心に近づくにつれて、いつもより車や人が少なくなりますね。その代わり、行きたかったお店も休みだったりする場合もあるので良し悪しなのですが。

 本エントリでは、前から書こうと思っていたネタを取り上げたいと思います。それは、「人事評価って"まんじゅう"だよね」という話です。

 実はこの話、私がお手伝いをしている株式会社サーバーワークスの大石代表とディスカッションをしている際に、大石さんが思いついたのがきっかけなのですが、非常に分かりやすい例え話なので私もいろんな所で使わせて頂いております。

 大石さんご自身もこの考え方について以下に詳しく書かれています。

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blog.serverworks.co.jp

「皿=人として基本的な資質
 まんじゅう=成果の大きさ・会社への貢献度合い
 皮=当然やるべき仕事
 あん=個人毎に特徴づけられる達成目標」

「本質的に成果というものは「まんじゅう」の様なもので、明文化されることは少ないが成果の大半を占めている「皮」の部分と、個人を特徴づけ、かつ目標管理プロセスの中で明確化される「あん」の部分との2つで成っている」

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 「まんじゅう」に対する大石さんの解釈は上記をご覧頂ければと思いますが、ここでは私なりの解釈をお伝えしようと思います。人事評価を私がまんじゅうに例えるならば、

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 あんこ=設定した目標に対する成果
 皮=目標設定した業務以外の貢献
 まんじゅう=上記2つを合わせた会社への貢献度
 人事評価=まんじゅうの「価値(例えばいくらで売れるか)」に対する評価
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となります。

 まんじゅうの「価値」とは、お客さんがそのまんじゅうをいくらの値段で買いたいと思うかどうかです。買いたいと思う条件は、「味」であり、「大きさ」であり「見た目」であるはずです。

 まんじゅう評価を人事評価になぞらえると、あるべき人事評価の姿が分かります。

 例えば、サイズがやたらと大きいけど味は不味いまんじゅうを食べたいと思いますか?または、あんこを丸めただけのものを「まんじゅう」と認めますか?

 ところが、実際の人事評価では同様のことが行われているのです。

 目標評価を行う際に、「できるだけ定量化しなさい」というアドバイスはよく聞きます。それ自体は間違いではありませんが、これを曲解して、「定量化できる指標だけを評価対象とすべきで、定量化できない要素は評価対象とすべきでない」といった主張をする人は少なからずいますし、さらには人事部門がそのように評価者に指示をする場合もあります。

 「定量化された指標だけ評価する」というのは、「味に関わらず、まんじゅうは大きければ大きいほど良い」と言っているのと同じことです。昔のソビエトや中国のような共産主義の計画経済では、割り当てられた生産数を達成するために、実際には使い物にならない「製品」をやみくもに生産するということもあったようです。その結果何が起きたかは、歴史が証明していますね。

 また、「目標評価のみ」で人事評価を決めるのは、皮≒"目標設定した業務以外の貢献"を全て無視することになります。これは皮も含めたまんじゅうの評価ではなく、単に「あんこ評価」をしているということです。

 更には、設定した目標の達成度だけで評点を決めるやり方も見受けられます。これも運用に気を付けないと、難易度をできるだけ下げて目標を設定し、達成度を高めることで評点はいくらでもかさ上げできることになります。「あんこ評価」ですらなく、「予め決めたあんこの量の達成度評価」でまんじゅうの値段が決まるとしたら、どう思いますか?

※参考エントリ

hrstrategist.hatenablog.com

 逆の話もあります。「あんこが少なく、皮がやたらに厚いまんじゅう」ってどう思います?

 会社が求める本来の業務を疎かにして、周辺業務の貢献(概ね、本人がやりたいからやっているのですが)を評価して欲しいと言われても、それは筋が違うという話です。「あんこだけ」のまんじゅうもダメですが、皮だけの「花巻き」をまんじゅうとして評価して欲しいというのと同じ話ですね。

 理想のまんじゅうとは、あんこが多くて皮が適度に薄い、かつ、皮とあんこの両方がおいしいだけでなく、見た目も美しいもので、できれば小さいよりは大きい方が良いでしょう。味や見た目の評価は定性的な評価となります。

 ただし、味と大きさと見た目のバランスの理想形は、人によって異なります。味や見かけよりも大きい方が良い人、味覚が最優先の人、見た目が一番大事な人、どれも間違いではないですよね。

 だからこそ、人事評価では会社としての評価基準を決め、評価者にそれを徹底させるべきなのです。まんじゅうにおける味や見た目の評価は主観的にならざるを得ませんし、社内の複数の評価者の目線を合わせる努力をせず、それぞれが自分の好みだけでバラバラに「まんじゅう評価」を行うべきではないということは理解できると思います。

 そして、会社としての評価基準を決める元になるのは、その会社が何を目指し、どのような価値観を大事にしているかという「経営理念」です。経営理念(ビジョン、ミッション、バリュー)は、その組織が存在・存続する目的・価値(感)を説明します。

※参考

hrstrategist.hatenablog.com

hrstrategist.hatenablog.com

hrstrategist.hatenablog.com

 一方で、自社の評価基準(どのまんじゅうを高く評価するか)だけでなく、市場における価値(一般の消費者に売った時にどれだけ高い価格を取れるか)も重要です。自社の評価に比べて市場の評価が高いのであれば、そのまんじゅう(人材)は自前で消費するより、より高く評価する所で消費(雇用)される方が本人にとっては幸せですよね。

 つまり、"まんじゅうの価値評価"は自社にとっての価値と市場価値の両方を考慮する必要があるということです。

 「社内での貢献度>市場価値」と、「社内での貢献度<市場価値」に対してどう処遇するかについては、以下のエントリで取り上げています。

hrstrategist.hatenablog.com

 ここまで人事評価のあり方を「まんじゅう」に例えて説明してきましたが、この例え話が皆さまにとって人事評価についての理解を深めるお役に立てば幸いです。

 では、Have a nice day!

副業・兼業を推進する前に押さえておくべきこと(2)

 こんにちは、組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。

 「我が家(マンション)の前の公園のサクラは満開」と先週のエントリで書きましたが、週末の雨にもかかわらず、まだまだ頑張ってくれています。

副業・兼業を推進する前に押さえておくべきこと(1) - hrstrategist’s blog

 そのエントリの続き、副業の話です。

 前回のエントリでは、多くの企業がなぜこれまで「副業禁止」のスタンスを取っている(いた)かについて、以下3つの主な理由を挙げました。

1.複数の雇用元に雇用されることによる労働時間管理と安全配慮義務の問題
2・競業・情報漏洩の問題
3.レピュテーションリスクの問題

 このうち、1番目の「労働時間管理と安全配慮義務」については前回エントリで説明しましたので、今回はそれ以外の理由について解説すると共に、従業員の副業に対して会社が取るべき望ましいスタンスについて考えてみたいと思います。

 競業とは、従業員が副業として本業の仕事と競合する会社に雇用されたり、自らそのような事業を営むことです。雇用主としては従業員の持つスキルや経験、人脈等を期待して雇用している訳で、それを利用して競業をされてしまえば堪ったものではありません。よって、一般的には「競業避止義務」は(少なくとも在職中は)従業員に課されるものとされています。

「競業避止義務」とは? - 『日本の人事部』

 情報漏洩に関しては、例えば自社の顧客リストが従業員の副業先に流れるといった類の事態が起こり得るのでないかという懸念です。これに関しても、従業員は秘密保持義務を負うものとされます。

従業員等による情報漏洩や競業行為に対する法的手段

 よって、いずれも「競業行為」「情報漏洩行為」自体の問題であり、競業でもなく情報漏洩も起こり得ない「副業」まで会社が一律に禁止するのは行き過ぎのように思われます(「危ないから」といって何でも子供に禁止する過保護な親のようですね)。

 最後のレピュテーションリスクとは、従業員が行う副業が、自社の評判に悪影響を与える可能性を指します。本業はお堅い仕事にもかかわらず副業がいわゆる水商売系だったり、または本業の会社名や肩書を利用して(例えばマルチ商法アフィリエイトビジネス的な)副業の宣伝を行ったりした際に、会社がそれによって自社の評判に悪影響を被ると(会社が)みなす場合にこれに当てはまります。

 これらの「副業禁止の口実・理由」を検証していくと、従業員の副業自体を会社が一律に禁止するのは、実は合理的ではないことに気付きます。実際に以下のような判例も出ています。

判例:兼職の発覚を理由とする懲戒解雇

http://www.mhlw.go.jp/churoi/chyousei_jirei/dl/29.pdf

就業規則は使用者がその事業活動を円滑に遂行するに必要な限りでの規律と秩序を根拠づけるにすぎず、労働者の私生活に対する一般的支配までを生ぜしめるものではな い。兼職(二重就職)は、本来は使用者の労働契約上の権限の及び得ない労働者の私生活における行為であるから、兼職(二重就職)許可制に形式的には違反する場合であっても、職場秩序に影響せず、かつ、使用者に対する労務提供に格別の支障を生ぜしめない程度・態様の二重就職については、兼職(二重就職)を禁止した就業規則の条項には実質的には違反しないものと解するのが相当である。」

 就業規則で規定したからといって、会社は従業員に対してあらゆる副業を一律に禁止することはできない、ということです。

 裏を返せば、会社が副業を禁止または制限をする口実・理由として合理的・妥当なのは、従業員がその副業を行うことよって、「会社に迷惑が掛かる場合」に限定されるべきということです。

 そこで、従業員の副業に対し、会社が取るべき望ましいスタンスについて、具体的に考えてみましょう。

 「雇用される労働者」という立場で従業員が副業を行うことは、(前回エントリで指摘したように)会社が割増賃金を負担する義務が発生する可能性や、従業員の健康上に問題が生じた場合に会社が安全配慮義務を問われる可能性を鑑みると、会社が禁止することは合理性の面から見ても妥当性を十分に説明できます。

 一方で、「競業禁止、情報漏洩の禁止」は確かに会社に迷惑が掛かりますが、これらの事象は副業の有無に関わらず、そもそも競業行為、情報漏洩行為自体が問われるべきです。要は、競業でなく、かつ情報漏洩の懸念が無い副業まで禁止する合理的理由にはならないということです。

 レピュテーションリスクに関しては、自社の評判に悪影響になる(会社の迷惑になる)と思われる副業だけを禁止すればよいのです。

 なお、従業員個人に、自分がやろうとする副業が「会社に迷惑を掛けるか否か」の判断を委ねることは避けるべきです。迷惑かどうかの判断は「迷惑をかける方」ではなく、「迷惑を受ける方」の判断を尊重すべきであり、あくまで会社が判断する必要があります。

 故に、従業員が副業を行うにあたっては事前に会社の許可を取る(または会社が示す条件を満たしたうえで届出制とする)というプロセスは妥当であると言えます。

 その上で、会社が副業を許可する判断基準の大原則は、「業務時間以外の個人での活動は、会社に迷惑を掛けないのであれば本人の自由である。」であり、これに照らして考えていけばよいのです。

 先月に取り上げた「副業採用」の話などもあり、副業に対して企業がどの程度容認し、または積極的に推進していくかが今後企業の採用力や組織競争力に影響していく時代になり始めているのかもしれません。「副業禁止の見直し」は、今からでも遅くありません。貴社でもぜひ、真剣に検討を始めましょう!

「副業採用」のススメ - hrstrategist’s blog

 では、Have a nice day!

※副業に関しては、こちらのエントリもぜひご覧ください。

副業・兼業を推進する前に押さえておくべきこと(1)

 こんにちは、組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。

 東京地方は桜の季節です。我が家(マンション)の前の公園のサクラは満開ですが、今年は場所によって開花の状態にかなりバラツキがあるそうですね。

 さて、先日「副業採用」というエントリを書きましたが、これに関連して副業の話をもう少し掘り下げてみようと思います。

「副業採用」のススメ - hrstrategist’s blog

 そもそも、「副業」という単語の定義とはどのようなものなのでしょうか。久々に手元の「新明解国語辞典 第三版」で調べてみました。

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副業:
内職
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なんと、シンプルな。

仕方がないので、「内職」の意味も調べます。

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内職:
一 本来の仕事の片手間にする仕事。〔俗に、授業・(会議)中に、本題を聞いているふりをして、別の事をする場合にも使われる〕
二 主婦が家計の、学生が学費・生活費の足しにするための賃仕事。〔後者は特に、アルバイトと言う〕
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 最近使われる「副業」のニュアンスとは多少異なりますね。私の「新明解 第三版」は1981年に発行なので、当時はサラリーマンが副業をするという事は全く想定されていなかった雰囲気が伝わります。裏を返せば、「副業」の位置づけや人々の意識も近年変わってきているということでしょう。

 その中で、多くの企業がなぜこれまで「副業禁止」のスタンスを取っている(いた)かについては、一応押さえておく必要があると考えています。

 大まかにいうと、以下の3点が理由と考えられます。

1.複数の雇用元に雇用されることによる労働時間管理と安全配慮義務の問題
2・競業・情報漏洩の問題
3.レピュテーションリスクの問題

 まずは、労働時間管理と安全配慮義務について。労働基準法第38条では、

「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。」

としています。よって、本業と副業を通算して8時間を超える労働をすると、時間外労働(残業)の割増賃金を払わなくてはいけなくなります。その場合に、割増賃金を本業の会社と副業の会社のどちらが負担すべきかが問題となります。これについては、明確な決まりは存在していないようです(「後から雇用契約をした側」が負担すべきなのでは、という解釈をされる方が多いようですが、特に判例なども無いようですね)

※参考

www.adecco.co.jp

d.hatena.ne.jp

 正直なところ、この辺の考え方がはっきりしないと、従業員が副業を始めた結果として従来の労働時間に対して追加で割増賃金が発生するというリスクを会社は考えないといけない訳です。

 問題は割増賃金だけではありません。例えば、もし副業を行っていた従業員が死亡し、その原因が(例えば)通算で月100時間以上の時間外労働を行った結果であると類推される場合に、それが労災認定されるのか、また民事上の損害賠償が発生した場合に本業・副業の雇用主の責任(按分)はどのようにして決まるかなど、不透明な部分が多くあります。

※参考

eulabourlaw.cocolog-nifty.com

 このように不確定な要素が多くある中では、少なくとも「雇用される労働者」という立場での従業員の副業・兼業に関して会社が「禁止」することは、リスク回避の点では無理もないかなという気がします。

 この話、続きます。。

副業・兼業を推進する前に押さえておくべきこと(2) - hrstrategist’s blog