hrstrategist’s blog

組織人事ストラテジストのつぶやき、業務連絡など。。

「おためしナガノ」、終わりました。

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 大変ご無沙汰しております。みぜん合同会社 組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。7ヶ月ぶりの更新です。

 新型コロナウイルス関連の様々な自粛や買い占めなど、近頃世の中はちょっとしたパニック状態ではないかと思われる状況ですね。私は既にリモートワーク的な自宅勤務なので、幸いにもあまり日常生活には変化はありませんが。。

 とはいえ、この騒ぎは景気に悪影響を及ぼすことは間違いなさそうで、ここしばらく(半年程度か)は当社の業績にも影響が及ぶ恐れはあります。まあ、自分で何とかできる話でもありませんし、引き続き渋太く(この漢字は当て字のようですね。競馬で使われる用語のようです。)粛々と生き延びていくしかないと思っている次第です。

 そのような状況の中、昨年から長野県の「おためしナガノ」という施策の助成を受け、川崎と長野を行ったり来たりする、二拠点生活(二拠点居住)を実施していましたが、ついに(残念ながら)その期間が2月末で終了しました。

otameshinagano.com

 長野県立科町で二拠点居住を始めることを本Blogにて報告をしたのが昨年8月でした。そこからこれまで記事を書くのをさぼってしまいましたが、記事を書く暇も無いほどに忙しく、充実した日々だったということでご容赦を(笑)。

前回の記事

hrstrategist.hatenablog.com

 ともあれ、楽しい日々もいつか「終わり」が来るのは仕方ありません。区切りということもあり、これまでの7ヶ月間を振り返る備忘録を残しておこうと思います。

■「おためしナガノ」とはなにか?
 簡単に説明すると、長野県内に特定の拠点を決め、8月~2月までの7ヶ月間居住(二拠点居住も可)するIT関連事業の個人・法人に対して県が交通費等の補助をしてくれる施策です。2019年度は8市町村で13組の個人・法人が参加したそうです(当社もそのうちのひとつです)

おためしナガノ2019 参加者紹介

 今回私は、長野県の東信地区にある「立科町」にお世話になりました。

■「おためしナガノ」の活動内容
 「テレワークを活用した、成長企業向け組織人事コンサルティング事業」を実施するという名目でしたが、具体的な活動パターンは、「平日の火曜~木曜は川崎に滞在、金曜朝に立科に移動し月曜朝まで立科滞在、月曜朝に立科を出発して昼すぎに川崎に帰る」というものでした。川崎にいる週の真ん中に営業先へのアポイントや客先とのミーティング等、人と会う仕事をその間に集中させ、立科では資料作成や調査等の(PCがあれば)ひとりでできる仕事を行うようにしました。

 立科ではコワーキングスペースの「立科町ふるさと交流館「芦田宿」」で、Wifiやプリンタを無料で使用できました。また、提供頂いた住居でもWifi完備でしたので、ネット環境では全くストレスはありませんでした。

www.town.tateshina.nagano.jp

 特に10月以降はほぼ毎週末立科に行っておりましたが、この週間パターンで業務をこなすことは十分可能であることが確認できたのが、今回の「おためしナガノ」における最大の収穫でした。「二拠点リモートワーク、やればできるじゃん!」という感想です。

 期間中の往復回数・日数を数えたところ、合計「26往復、64泊90日」を立科界隈で過ごしていました。7ヶ月のうち半分近くの時間を現地で過ごしていた訳ですね。

■川崎-長野間の移動について
 川崎と立科との移動手段は、主に自動車でした。川崎の家を朝6時に出れば、環八・関越道・上信越道経由で概ね3時間強で立科に到着することが出来ます(と偉そうに言っていますが、行きの運転はいつも嫁の役割で、私は助手席で寝ていました)。2名での移動の場合は、車が一番気楽で良かったです。帰りは月曜の朝に立科を出て、概ね昼過ぎには川崎に到着することが出来ました。

 なお、例の「台風19号」の影響で上信越道が一部通行止めになっていた間は、群馬の下仁田インターで降りて下道(国道254号)を利用すればプラス30分程度の差でしたので助かりました。
 
 わたし1人での移動の場合は、新幹線やバイクを使っての移動も試しました。佐久平駅から路線バスに乗れば、40~50分程度で立科に到着します(昼寝をしていたらすぐです(笑))。バイクで行けば、現地での休日にビーナスラインなどのツーリング名所にすぐに行けたのも楽しい思い出です。

■現地での楽しみ
 働き方に関しては上記の通りですが、景色や空気が良い地方で働いたからといって劇的に「生産性向上」が実現する訳では(もちろん)ありません。二拠点居住を実施する最大の理由は、むしろ仕事以外での「生活の質の向上」にあります。

 長野に滞在して「良かったこと」「楽しかったこと」は何かと言えば、「温泉が多い」「食べ物が美味しい」「景色が素晴らしい」といった所でしょうか。

 まず温泉について。長野県は温泉地数が北海道に続いて全国2位の「温泉県」です。

www.env.go.jp

https://www.env.go.jp/nature/onsen/pdf/2-4_p_1.pdf

 期間中は「温泉リモートワーク」の名に違わず、温泉にはよく行きました。立科の近隣に多くの温泉施設があり、露天風呂やサウナのあるような施設でも500円程度で入ることが出来ます。

 加えて長野県は「物味湯産手形」というパスポートを販売しており、1300円で12か所の温泉に入ることができるという大盤振る舞いです(3か所行けば元が取れます)。これを存分に活用しました(10月から10か所を制覇し、すでに2冊目に突入しました)。

www.monomiyusan.jp

 また、立科町営の「権現の湯」の無料入湯券を沢山頂いたので、毎週に近いペースで通い詰めました。昨年秋にリニューアルオープンした、露天風呂・サウナ完備の清潔な温泉施設でオススメです!(入湯券が無くなった後は自腹で行っていましたので本当です)

www.town.tateshina.nagano.jp

他にも周辺に、佐久市の「布施温泉」「春日温泉」など、泉質の良い温泉が多くあり、飽きません。

www.shinkou-saku.or.jp

www.shinkou-saku.or.jp

(もちづき荘は日帰り入浴可、「物味湯産手形」の対象施設)

 それ以外にも車やバイクでドライブして長野県内各地の温泉を巡りました。回数を数えたら、「21か所、37回」に上りました。1滞在中平均1.5回は温泉に行っていたことになりますね。

 温泉だけでなく、「グルメ」も楽しみでした。東京地方と比べて明らかに食べ物が安くておいしいのです。お米も肉も美味しいですが、特に地元産の野菜は新鮮さというか、勢いが明らかに違います。また、秋から初冬にかけては立科の特産品であるりんご(特に「五輪久保」ブランドが有名)を頂いたり、格安で買う事ができました。立科のリンゴ(特に「サンふじ」)は本当に美味しくて、文字通り他所のりんごが食べられなくなります。海なし県なので、魚に関しては期待できませんが、強いて不満があるとすればその位です。

 また、立科は「お水」の味がそもそも違います。水道の水をタンクに汲んでよく川崎に持ち帰っていました(隣の佐久市には日本酒の酒蔵が多くあります)。
 
 レストランでの外食も、近所のちょっとしたお店に入っても平均のレベルが高く、満足感が高い(コスパが素晴らしい)です。こちらも回数を数えたら、延べ「29店、50回」食べました。

立科では以下のお店などは特にお気に入りですし、隣の佐久にも通いたくなるお店は沢山あります。

tabelog.com

(双子のおばあちゃん姉妹がやっている名店。「町中華で飲ろうぜ」(大好きです)の玉ちゃんが来たら号泣間違いなし。)

www.hotpepper.jp

tabelog.com

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(「権現の湯」の食堂。こちらも昨年秋にリニューアルして業者が変わったようです)

 さらに、田舎暮らし(すみません)の楽しみは、雄大な自然の景色ですね。好天時の昼間は常に視界の端に浅間山八ヶ岳蓼科山)が見えます。

 夜には星がよく見えます。星座には詳しくない我々でも、オリオン座、カシオペア座、北斗七星などは比較的容易に見つけることができましたし、目を凝らせば頻繁に流れる流れ星を見ることもできました。望遠鏡が欲しくなりました。

立科町について
 今回立科町を拠点として選んだのは、以前に「ときどきナガノ」という施策で、こちらも長野県の補助を受けて長野県内のいくつかの場所を訪れたことがあり、その時の立科町の印象が良かったことと、立科町の場合築浅の住居(家具備品つき)が町から無料で提供されていて(他の場所だと自身で物件を探す必要があったり、提供される住居が古かったりしました)条件が良かったことが理由です。

tokidoki.otameshinagano.com

 実際に立科で暮らしてみると、町役場やふるさと交流館のスタッフの方々、さらには町民の方たちは我々に大変親切に接してくださりました。
 10月の台風19号の際には立科町でも道路寸断、床上浸水、断水等の被害が出たのですが、当日に立科の住居に滞在していた私達にも気を遣って頂き、「いざとなったら避難できる」という安心感を持って夜を超すことが出来ました。

 りんごや野菜、さらにはお祭りのときにはお肉やお酒まで頂いた食べ物も数多く、一方で過剰に干渉されず、適度な距離感のコミュニケ―ションが我々にとっては心地よく、有難かったです(よそ者に対してオープンな気質は、おそらく立科が芦田宿という中山道の「宿場町」であったという歴史から来ているのではと推測しています)。

■課題
 もちろん、憧れの「二拠点生活」も必ずしも良いことばかりではありません。あえてネガティブな要素を挙げるなら、やはり「移動」に掛かる時間と費用がネックとなり得ます。

 「おためしナガノ」では交通費に対して補助を頂けましたが、もし自腹で交通費を出すとなれば、往復で高速代が約8000円、加えて往復4百数十キロ分のガス代が掛かります(我が家の車の場合ハイオクでリッター10キロの燃費のため、6000円強)。毎週通えば5万6000円ですから、バカになりません。

 また、移動時間3時間というのも、そう気軽に往復できる距離ではありません。もし長野に拠点を本格的に構えるなら練馬インター近くに自宅を移すことも真剣に考える必要があるかもしれません。
 
■まとめ
 今回の「おためしナガノ」を体験することで、二拠点居住のメリット・デメリットや具体的な生活のイメージを掴むことができたのはやはり大きな収穫で、「やってみて良かった」と心から思います。我が家では「二拠点居住」の可能性については引き続き別の方法で実現できるよう、次の手段を準備したいと考えております。

 おそらく来年度も「おためしナガノ」の募集は出ると思いますので、二拠点居住や地方移住に興味のある方はぜひ応募されることを強くお薦めします。特にフリーランスの方や、企業勤務でもリモートワーク勤務が可能な方は本当にオススメですよ。とにかく「楽しい」日々を過ごすことが出来ますから!

「二拠点生活での温泉リモートワーク」、始めました

 こんばんは、みぜん合同会社 組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。

 「冷やし中華始めました」的なノリでタイトルを書きましたが、この8月より、川崎と長野を行ったり来たりする、二拠点生活(二拠点居住)を始めることになりました!

 現状、仕事のクライアントは全て東京でありながら、別に常駐をしている訳ではないので、「別にどこで仕事をしても同じじゃねえ?」という想いか元々ありました。そこで昨年の秋より、「温泉リモートワーク」(地方でリモートワークを実践しつつ、ローカルの素晴らしい温泉を満喫する活動!)を実践し、その素晴らしさを実感していました。その際にお世話になったのが、「ときどきナガノ」という、現地までの往復交通費と現地宿泊費を長野県から助成頂けるという大変ありがたい制度でした。hrstrategist.hatenablog.com

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 そして、今年度は同じく長野県が実施する「おためしナガノ」に満を持して勇躍(?)応募し、無事参加できることになったのです。

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 「ときどきナガノ」と異なり、「おためしナガノ」に参加するためにはよりディープに、長野県内に特定の拠点を決めて「居住」することが求められます。今回私は、長野県の中部にある「立科町」にお世話になることになりました。

www.town.tateshina.nagano.jp

 おためしナガノでは、参加する各市区町村がそれぞれ参加者に対して生活面でのサポートをいろいろとして下さいます。その内容は自治体によって濃淡まちまちなのですが、その中でも立科町は、築浅の綺麗な家(本来の用途は移住希望者向けの体験住宅)をなんと無料(家賃だけでなく水道光熱費も)で貸してくれ、かつ、コワーキングスペースの利用料金も無料という、至れり尽くせりのオモテナシ(?)を提供して下さいます。

 立科町の担当者、Uさんに話をお伺いすると、(それだけの好条件ですから)立科町には今回多くの応募者が集まっていたそうです。その中で選んでいただけたのは、大変にありがたいことだと感謝しております。

 もう少し前に内定は頂いていたのですが、無事8月1日に「おためしナガノ」の事業費補助決定の通知を長野県の担当者Tさんより頂き、本日さっそく立科町にやってまいりました。 

 まずは住宅に荷物を運びこみ、住環境を整えますが、住宅の設備(給湯器やエアコン、洗濯機、クッキングヒーター、掃除機、さらには電動自転車まで)は我が自宅のものより全て新しい最新のものですから、まずはその高性能にビックリです(繰り返しますが、利用料金は全部タダですよ!)。

 荷物整理の後、町役場前のお蕎麦屋「ときん亭」さんで昼食を頂きます。素朴な田舎そばと具沢山の天丼を、おいしく頂きました。

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 午後はコワーキングスペースの「ふるさと交流館「芦田宿」」で仕事に励みます。明日は年1度の夏祭りということで、準備をされる皆さんが大勢行き来をされて賑やかでした(その中でもしっかり集中して業務は捗りました)。

www.town.tateshina.nagano.jp

 夕方には住宅に戻り、嫁が近所のスーパー「ツルヤ」で買ってきた&先ほど交流館でおすそ分け頂いた野菜を材料にした夕食を美味しく食し、その後に(あえて)自転車で近所の温泉施設「権現の湯」に突撃です(温泉リモートワークらしくなってきましたw)。

www.tsuruya-corp.co.jp

www.town.tateshina.nagano.jp

 なんでも最近改装したらしく、施設は大変綺麗、かつ広々として、気持ちよく露天風呂&サウナをエンジョイしました。

 そんな濃密な1日を過ごした後に住宅に戻ってこのBlog記事を書いており、温泉リモートワークの初日が終わろうとしていますが(眠いです)、とりあえずの感想として、仕事や住まいの環境を変えるって大事だと本当に思いました。集中して仕事をしても自宅よりもストレスが少ない気がします。綺麗な空気や(相対的に)涼しい気候、見渡せば広い空と緑がある環境が本来人間が安らげる環境なのでしょうね(横浜の外れの中途半端な「トカイナカ」育ちの人間感想です)。初日の満足度は120%です。

 今回はあと数日こちらに滞在する予定なので、明日は自転車いろいろと近所を巡ってみようかと思います。そんな様子はまた改めて報告をさせて頂きます。

 ではでは、Have a nice weekend!

みぜん合同会社、設立3周年です。

 おはようございます、みぜん合同会社 組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。 

 東京地方は相変わらずの梅雨空です。暑さが苦手な身としては涼しくて助かる面もありますが、雨(バイクに乗れない!)も湿気も嫌いなので、それはそれで困る部分もありますけどねえ。

 ちなみに昨年の今頃は早々に梅雨明けをして既にクーラーを使っていたようです。去年は特別に暑かったですからね。

hrstrategist.hatenablog.com

 上記の通り、本日7月1日は、「みぜん合同会社」の設立記念日です。2016年設立(この日に横浜の法務局に行ったことを思い出します)ですから3周年、今日から4期目(個人事業として創業してからは6年目)に突入です。

 おかげさまで、しぶとく生き延びております。これもひとえに、日頃から何かと気に掛けていただき、また、応援して下さる皆さまのお蔭だと思っております。いつもありがとうございます!

 前回(6月9日)のエントリで近況報告はしておりますので繰り返しませんが、新年度では新しい取り組みなども考えております(仕込み中なので、また改めて報告します)。

hrstrategist.hatenablog.com

 今後とも引き続き、よろしくお願いいたします!

みぜん合同会社
代表社員 CEO
組織人事ストラテジスト
新井 規夫

mizen.co.jp

(とりあえず)独立開業5周年

 こんばんは、みぜん合同会社 組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。今週末は、嫁の買い出しに付き合わされました。趣味のスキーに使うブーツの買い替えの同伴です。30年ほど前の学生時代にスキーショップでアルバイトをしていたのですが、さすがに最新の技術動向には疎くなっています(特に素材の技術進歩は凄いようです)。専門的なアドバイスは店員さんにお任せして、私は自分の後継機種(?)の選定の参考にすべく、1人離れて試し履きをしておりました(個人的にはAtomicとNordicaが好感触)。

 嫁は無事に新しいブーツ購入を決めて大満足の様子。私も来期予定のブーツ更新に向け、予備知識を増やすことができました。という訳で、スキーヤーは1年中忙しいのです(笑)。

 さて、ここからが本題。2014年に会社を辞めて独立開業をしてから、本日で5周年となります。昨年の4周年のエントリを読み返してみましたが、なんだか1年経っても進歩がありませんねえ。。

hrstrategist.hatenablog.com

 仕事に関しては、引き続き低空飛行な感じで「しぶとく」生き延びております。昨年から今年にかけては、長野県から補助金を受けながらリモートワークの試行(ときどきナガノ)を行っていたのが、特記事項でしょうか。

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 元々東京地方の暑さには辟易していることもあり、このリモートワークの取り組みは続けていくつもりです(これも「働き方改革」ですね)。

 また、リモートワークに限らず、企業の組織・人事課題の解決に引き続き貢献していきたいと考えております。

 最近お付き合いの各社から聞こえてくる組織・人事課題の多くは、「いかに今いる人材を繋ぎ止め(離職率低下)」、かつ「一定以上のレベルの人材を採用を十分に採用できるか(新卒・中途採用)」という課題感です(特に採用の課題はここ最近より緊急度を増しているようです)。なぜ優秀な人材が離脱してしまうのか、なぜ必要な人材を採用できないのかという理由は単純でなく、目先の課題を闇雲に、モグラ叩きのように潰していくだけでは本質的な課題解決となり得ません。そのような状況においては、(できれば外部の)専門家による現状分析と課題解決の優先順位付け、改善施策の提案と施策実行時の長期に渡る継続的支援が不可欠になります。

 そこで、当社(みぜん合同会社)の出番となります(笑)。

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「私がお手伝いすることで(略)強力な組織・人事体制を作りあげ、企業の成長に貢献することを実現したいと考え、日々活動しております。もし、このような取り組みに興味を持ち、新井と話をしてみたい、相談してみたいという方がいらっしゃれば、ぜひお気軽にお声掛け下さい。」(開業1周年の際のコメント)

 今後とも引き続き、よろしくお願いいたします!

「即戦力採用」の罠(3)

 こんにちは、みぜん合同会社 組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。

 6月に入りましたが、東京地方はまだ湿度も低く爽やかな気候です。冷たい風が吹いてくれるのが嬉しいです。どうやら数日内に梅雨入りするとのこと。良い季節は本当に短いですねえ。。

さて、これまで、「即戦力採用」人材は実は全然「即戦力」でなかったのではないか、定義・基準が曖昧なまま「即戦力採用」という言葉に拘るのはむしろ害悪になるのではないか、という話をしてきました。

hrstrategist.hatenablog.com

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 とはいえ、たとえ「即戦力採用」と謳わなくても、採用する人が結果として「即戦力」であるに越したことはありません。それはどのような人でしょうか?

 「結果として即戦力となりやすい」人材とは、「異なる環境に柔軟に対応・適応できる力」がある人ではないでしょうか。

 たとえ同じような類の仕事でも、組織・会社によって異なる「組織文化」が存在し、意思決定の優先順位や仕事の進め方はそれぞれの組織において異なります。しかも、そのような独自の「しきたり」は明文化されておらず(暗黙知です)、組織の中で経験を積んで「振る舞いかた」を徐々に学ぶ必要があります。

「組織文化」の解説

組織文化とは―

※参考図書

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■いくつかの「組織文化」の事例
・某メガバンクでは、合併前の出身行によって札束の数え方(札勘)が違ったそうです。なので、札勘を見ると「あの人は〇〇出身」とすぐ分かるらしい。
・「拝承」「毎々」(IMEの変換で出た!)など、その企業でしか用いられない「独自の言葉」というのもあるようですね。

togetter.com

エドガー・H・シャイン先生による、あるIT企業(DEC社)の組織文化が企業の急成長とその後の停滞・崩壊にどのように影響したかが観察・分析されています。
(大変興味深いです)

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 言い換えれば、前職の経験や仕事の進め方がそっくりそのまま新しい職場で通用するような仕事は(ほとんど)ありません。新天地で成果を挙げるためには、新しい組織の文化や慣習等に合わせ、自身の仕事のやり方を(程度はともあれ)変えていく必要があるということです。特に人材の流動性が低いドメスティックな日本企業は、高コンテキストの「言わなくても察する」文化になりがちで、適応の難易度はより高くなります。

 いかにスキルや能力が高くても、そのような組織文化にいち早く適応(adjust)できなければ、それを十分に活かすことができません。自分の考えや前職のやり方に(悪い意味で)頑固に固執していてはうまく行かないのです。

 たびたび野球の事例で申し訳ありませんが、この「適応力」の好事例で思いだすのは、元カープの黒田投手と現ヤクルト青木選手です。それぞれ日本⇒アメリカ⇒日本と活躍の場を変えながら、きっちりと環境に適応し、どの場所でも素晴らしい成績を残しています。

 また、退職した社員が元の会社に戻る「出戻り社員」が注目され始めているのも、組織文化が既知の分、すぐに適応できるというメリットがあるからという面があります(この場合は適応力という能力でなく、職場経験がプラス評価されています)。

toyokeizai.net

 さらに、転職経験それ自体が、自身の「適応力」を高める鍛錬の機会になるという側面もあります。これについては以前のエントリ(以下)で触れました。
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hrstrategist.hatenablog.com「(1回目の)転職をすると、その人は新しい職場でカルチャーギャップに遭遇することになります」
「比較は「前の職場」と「今の職場」の2つだけなので、どちらが正しくてどちらが変なのかは自分だけでは判断が付きません。」
「2回目以降の転職、つまり3社以上経験すると、状況が変わります。つまり、「多数決」で判断できるようになるのです。」
中途採用の場合は、「2社(できれば3社)以上経験をした方」は、より新しい職場での適応が早く、かつ不適応を起こすリスクが低いのではないかと考えられます。」
「リスクがあると思うのは、長年1社で働いていて、勤続10数年~20数年で初めて転職というパターンです。」
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 という訳で、「即戦力採用」について思うところを3回のエントリに分けて書いてきました。余談ですが、最後に1点だけ気になることを。

 女性タレントが人差し指を立てて「〇〇〇ー〇」と社名を叫ぶ、「即戦力採用」のコマーシャルをよく見かけます。個人的な感想としては陳腐な演出ですし大変にイラつくのですが(上司役の方をドラマで最近お見かけするのは悪役が多いので、余計に胡散臭い(笑))、一方で「大変に興味深い」と感じています。

 というのも、コマーシャルは世の中の状況を映し出す鏡だと思うのです。「即戦力採用」についての一般的な認識を分かった上で、会社側も制作サイドも明らかに意図的にこういうトーンで作っている、確信犯に違いありません。

 私が思うに、このコマーシャルで訴求したいターゲットは人材採用(特に中途採用)に対して従来あまり熱心でなく、懐疑的な会社の経営者です。かなり絞り込んでいまね。「意識の高い」採用担当者は(コマーシャルなど見なくても)とっくにこの会社とサービスを認知しているはずですし、必要に応じて利用しているはずですから、その人たちはターゲットではなく、イライラされても構わないのです(笑)。
 
 そういうターゲットの方たちに、「〇〇〇ー〇」を使うと「即戦力採用」が出来るのか!と期待をさせ、関心を持ってもらうことが狙いなのです。
(一方で、求人系のコマーシャルでは、「仕事バイト探しは〇〇〇〇ー〇」のやつも、「あんまり難しいことを言わないでください」「難しくないのよ」というやり取りなど、物凄く割り切ってターゲット層を絞り込んでいて大変感心します。)

 よって、良い子たちはあのコマーシャルを見て騙されてはいけません。コマーシャルで描かれたのは大げさに誇張されたファンタジーの世界です。むしろ、あえて大げさな演出にすることで、「これは現実ではなく、あくまで誇張したコマーシャルです」と伝えているように感じます。リアルな感じに作り過ぎると、「話が違う」とクレームになりますからね。

 なお、「〇〇〇ー〇」の名誉のために言うと、人事採用界隈では、ミドル層の中途採用ではそれなりに利用されているサービスですよ!

 なお、「即戦力採用」への考えについては、数年前に「人事マネジメント」という専門誌にて記事を書いておりますので、こちらも参考にしてみてください。

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hrstrategist.hatenablog.com

「過去の経験・スキルのうち何割かは新しい仕事で生かせるかもしれませんが、その人が戦力として会社に貢献するためには、残りの差分を自身の力と周囲のサポートで埋めていかなければいけません。」

「「差分をアジャストできるポテンシャルがある人かどうか」の視点が、「職歴・スペック重視」だと欠けてしまう場合が多いのです。」

「「即戦力」を採用してそのまま期待通りの即戦力にならず、期待外れだったことは確かに少なくないな。」

「「欲しい人」の基準が曖昧で、社内でコンセンサスが取れていないのです。そのために、採用に関わる人たちが、それぞれ自分の考えるバラバラな「欲しい人」像を候補者に伝えることになります。」
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