hrstrategist’s blog

組織人事ストラテジストのつぶやき、業務連絡など。。

失敗は成功の元!? : 新事業を成功させるには

 おはようございます。組織人事ストラテジストの新井です。

 

 内田洋行さんから送られてくるメールに、以下のコラムが紹介されておりました。なかな興味深く、かつ、ちょっと掘り下げてみたくなったので、紹介いたします。

 

★第331回 「失敗プロジェクト」は成功のもと~~社長賞再考
 MM総研代表取締役所長 国際大学(グローコム)教授 中島 洋 氏

U+(ユープラス) 奇論・暴論 | 内田洋行

 

 コラム内容を独断に基づき(笑)要約すると、概ね以下のようなものです。

 

------------------------------
・ある会社が社長賞として「大きな挑戦の失敗事例」を表彰したのが素晴らしい。イノベーションを目指した失敗者こそ、全社員の模範であるべき。

 

・米国のデータでは、社内の新事業の成功率は20%だが、失敗者が2度目に挑戦すると成功率は80%に上がる

 

・ただし1度失敗すると2度目の挑戦をしない人が80%

 

・よって、「失敗者が2度目の挑戦に取り組む勇気を与える」ということで成功事例を増やせるはず
------------------------------

 

 こういった確率の話が出てくると、すぐにデシジョンツリーを書きたくなります。デシジョンツリー大好きです:)。

 

挑戦-成功 0.2           0.2 ○
  -失敗 0.8-挑戦しない0.8    0.64 ×
       -再挑戦0.2-成功0.8 0.128 ○
             -失敗0.2 0.32 ×

 

 中島さんが仰っているのは、「失敗-挑戦しない」の発生確率64%の人たちがより多く再挑戦に回ることによって、全体の成功確率が上がるはずだ、という話です。

 

 その方法論としては「失敗を恥とせず、挫折感を持たずに次の挑戦に向かう社内風土を育てる」と提案をされていますが、どうやってその風土を育てるかについては、残念ながら言及されていらっしゃらない(文字数の制限でもあったのでしょうか?)ので、不肖私めが、もう少し掘り下げて考えてみました。

 

 そもそも、1度目の挑戦の成功確率が20%しか無いという事は、失敗した人たちは必ずしもダメな人たちではないという事です。(取りあえず)2:6:2の法則で考えても、少なくとも失敗者の大多数は真ん中の6割に入っているはずですし、そもそも上位2割の人も(成功確率は100%ではないでしょうから)含まれているはずです。

 

 そう考えると、むしろ「1度目の挑戦で失敗するのは当たり前、成功はラッキー」であり、かつ「(少なくとも1度目の)失敗は恥」という考え方はナンセンスでは?とは思えませんか?

 

 一方で、1度失敗して再挑戦をする人たちは特別な人であり、だからこそ2度目の成功確率が上がるのだ、という考え方もあり得ますし、おそらくそういう要素もあるのでしょう。

 

 ただ、もし、元々再挑戦をしない64%の方たち全員が2度目に挑戦した場合も、成功確率は0という事はないでしょうし、概ね20%から80%の間にはなりそう、という推定はできそうです。そうなると以下のような概算ができます。

 

◎成功確率20%の場合
挑戦-失敗0.8-再挑戦0.8-成功0.2 0.128 ○
            -失敗0.8 0.512 ×

 

◎成功確率50%の場合
挑戦-失敗0.8-再挑戦0.8-成功0.5 0.32 ○
            -失敗0.5 0.32 ×

 

◎成功確率80%の場合
挑戦-失敗0.8-再挑戦0.8-成功0.2 0.512 ○
            -失敗0.8 0.128 ×

 

間を取って成功確率50%だとしても、驚くべきことに「1回目に成功」+「1回目失敗+2回目成功」の発生確率合計0.328とほぼ同程度の発生確率で成功をするという事になりました。つまり、「失敗-挑戦しない」人たちを全員再挑戦させることで、成功確率は、ほぼ2倍、32.8%→64.8%となりました。*

 

*ここでは人あたりの成功確率である点は注意。プロジェクト単位の成功確率は、以下の計算となります。なお、1回目の成功者を2回目に投入すればこの確率は多分もっと上がるはず(ただし、「成功の驕り」で失敗する可能性もありそうですね)です。

 

◎1回目失敗→20%のみ再挑戦
成功確率(0.2+0.128)*100÷プロジェクト数(100+16)=0.283

 

◎1回目失敗→100%再挑戦(成功確率80%、50%)
 成功確率(0.2+0.128+0.32)*100÷プロジェクト数(100+16+64)=0.36

 


なかなか興味深い結果ではありませんか??

 


そこで、この考え方を元に、具体的な風土改革の方法論、かつ新事業創出の必勝法として、以下のようなアイデア(たたき台)を思い付きました。

 

------------------------------
1.できる限り多く、1回目の挑戦の失敗者を意図的に作り出す
  若いうちに「小さな失敗」をする機会を意図的に与える
例:新卒3年目~5年目位で、全員に「期間1年、資金300万円(各社の状況で適宜決めれば良いと思います)」を与えて起業をさせる。その事業が成功すれば儲けもの、失敗しても授業料・研修費と考える。(リスクは限定し、また、コントロールすること) 

 

2.「1回目の失敗」人材をプールする
小さい失敗を経験した「失敗人材」を日頃からプールしておき、会社としてより本気のプロジェクトにその人材を投入することで、成功の確率を上げることが可能になる。

 

全員が「小さいプロジェクト」を経験すれば、全社員の80%の人は失敗経験をする訳ですから、自ずと「失敗は恥」という風土は消え去るでしょうし、一方で、新しい事業に取り組む心理的ハードルも大きく下がります。かつ、経験者をプールすることで、新事業の成功確率も上がりますから一石二鳥です!
------------------------------

 

もちろん、現実が本当にこの通りうまく行くかは分かりませんが、少なくともやってみる価値はありそうに(少なくとも私には)思えます。皆さまはこれを見てどう思われますか?