「渋滞学」から学ぶこと
おはようございます。組織人事ストラテジスト新井です。
多くの方にとって、先週はお盆休み、今週より社会復帰ですね(「現実に戻る」とも言う)。帰省をされた方は渋滞にはまって大変だった方もいらっしゃると思います。また、東京に戻って暑さにウンザリされる方もいらっしゃるでしょうね。私もその一人です。去年の夏を過ごしたシンガポールやマレーシアは、朝晩はまだ涼しくなるのでむしろ東京より過ごしやすかった気がします。つまり東京は熱帯より暑いということですね!
さて、渋滞といえば、「渋滞学」をご存じでしょうか?東京大学の西成活裕教授が提唱されている学問です。渋滞の発生原因とその解消方法について研究をされています。
西成先生は渋滞のメカニズムを解明し、自然渋滞の原因が先頭車両のスローダウンに端を発する「車間距離の詰め過ぎ」にあることを解明しました。また、適切な車間距離を取ることにより、渋滞を解消出来る事も証明されております。
詳しくは、こちらにのまとめサイトに良くまとめられていますので、ぜひご一読を。
面白いけどマイナーな学問、「渋滞学」に光を当てたい。。 - NAVER まとめ
また、本も出版されています。
以前に、この本を読んでから、日常的な場面でも同様の「渋滞」メカニズムが働いていることを発見しました。
例えば駅などでのエスカレータで片側の列(東京だと右側、大阪だと左側、新大阪駅だとバラバラ(笑))をみんなで歩いて進んでいる時、突然流れが止まることがたまにあります。これは、先頭の人がエスカレーターを降りる直前に、歩くのをやめて止まるのが原因です。
また、渋滞時に交差点で右折する場合、1回に通過できる車両の数がその時によって大きく異なる時があります。これも実はドライバーの意識が原因で、「前の車が動き出すのを確認してから、サイドブレーキを下げて、ゆっくり発信する」といった車が中にいると、通過台数は減ります。前の車と車間が大きく開いた場合は、時間をロスしている証拠です。渋滞発生と同じメカニズムが「渋滞が解消しない」方向に働いているということです。
本来は、先頭車両が動き始めたと同時に全車両がが動き出し、前の車両と同じ速度で移動するのが一番効率的(なので、先頭車両の責任は重大です(笑))なはずなのですが、渋滞の時などは列の後ろにいると、信号が赤に変わってから自分の番が来て動き出す、というようなことも良くありますね。。
そして、これは組織(特に大企業のような階層の多い組織)に対しても同じように当てはまるのではないかと、気付きました。
例えば、Topが新しい戦略を発信し、それに沿って各部署で目標を設定するようなケースです。Topから各事業部に目標が周知されて、それを各部、課、チーム、個人単位でブレイクダウンして個別の目標を割り当てる場合が多いと思います。その際に、目標が個人単位まで全て決まってから初めて動き出す、というスタイルでは、下手をすると始動までに数か月もタイムラグが出てしまいます。
そうではなく、Topが発信した時点で全社員が大まかな方向性を見定めたうえで、まずは同時に走り出す、そして走りながら期中に適宜、適切に軌道修正を行っていく、というのが、組織がスピード感を失わないための方策ではないでしょうか。
運転の事例でもそうですが、無意識の場合、人は目の前に起きた事に”反応”する行動になりがちです。そうではなく、Proactiveに、「同時に走り出す」ためには、日ごろからメンバーに対して意識付けをしておく必要があります。
それもただ、「スピード!スピード!」と叫ぶだけではなく、まずは具体的に「こういう場合はこういう準備をしておくこと」という行動レベルまで落とし込んだ指示伝達(その目的、意味合いも伝える事)がまず必要で、それを繰り返すことで、メンバーは頭でなく体で覚え、あえて指示をしなくても無意識のうちにそのような行動を取れるようになるのではないでしょうか。これってスポーツで上達するメソッドとも同じ理屈ですね!