hrstrategist’s blog

組織人事ストラテジストのつぶやき、業務連絡など。。

ストックオプションと従業員のインセンティブ

 こんにちは、組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。

 今日の東京地方は湿気が少なく爽やかな天気ですね。生まれてからほとんどの時期を神奈川・東京・千葉界隈で暮らしてきた経験からすると、9月下旬から2か月くらいが1年で最も過ごしやすい季節なのではないかと思います。何はともあれ暑いのが一番の苦手なので、夏の盛りが過ぎでほっとしております。

 さて、前回に引き続きmixiから発掘した、2005年の11月頃に頃に書いたネタです。大学院(KBS)では小幡績先生の下(?)で財務の勉強を主にしており、金融先進国であるカナダの交換留学先(Richard Ivey)でも財務系の授業を主に受講していました。楽天に就職した後は、結局人事の業務がメインになってしまったのですが、財務系の知識は人事施策の企画や子会社の経営管理においては非常に役に立ちました。
 
 今回のTopicは、財務と人事が交わる話としての「ストックオプション」についての考え方について書いております。

 

 以下、投稿からの引用です。

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 今日はストックオプションと従業員のインセンティブの話です。

 ゼミの先輩、M26本多さんの同僚である(注:当時)ベンチャーキャピタリストの小林雅氏のブログでストックオプションが取り上げられていました。

小林雅のBlog: ストックオプションや持株会制度をどのように活用すべきか?

 ちょうど、"Corporate financial reporting"の授業で従業員への報奨とその会計処理についてやっているので、この話題を取り上げてみます。

>従業員に万遍なくストックオプションを配布する考え方は
>私は賛成していない。

 私も同意見です。「みんな仲良く少しづつ」オプションをばら撒くのは非効率的なだけでなく、本来多くオプションをもらえるべき人材(会社としてはリテンションすべき人材)に不公平感を与えます。

>入社のタイミングで不公平感がある。

 これは仕方がない気がします。ただ、ブラックショールズ式などの何らかの「客観的」プライシングを算出して、企業側で費用を把握しておくことは必要でしょう。現金支出が無いので見えにくいですが、ストックオプションも立派な費用です。行使価額と時価の差額を負担するのは会社なのですから。

 ある程度会社が大きくなればキャッシュをあげれば済む話ですが、特にアーリー期のベンチャーでは常に資金が不足し、従業員は低めのサラリーで働いてもらうことになりがちです。なので、キャッシュの代替としてのストックオプションという使い方はアリだと思います。

 つまり、能力のある人に与えるストックオプション(未来への期待)とボーナスとしてのストックオプション(結果への報酬)の両方にストックオプションは使えるという事です。

 もちろん、オプションの価値を分からない人には付与すべきでないと思います。

 また、能力や成果に対する報酬が入社時期により結果として不公平になるという問題は、後から入社した優秀な人にはより多くの権限を与えていき、先に入社してキャピタルゲインを得た優秀でない人は、場合によってはリタイヤしていただくという事で良いと思います。

 よくあるパターンは、先に入社したというだけで能力がないのにエラくなり、その下で後から入社した優秀な部下が働くというものです。こうなると先に入社した人は「先行入社のキャピタルゲイン」と「能力以上の地位にいることによるサラリー」の二重取りをしていることになります。

 こうなると「優秀な部下」→リテンションすべき人材のモチベーションが下がるだけでなく、先に入社したエラい上司が企業の成長の阻害要因となってしまいます。これで部下が辞めようものならまさに「悪貨が良貨を駆逐する」状況です。笑えない話ですが、実によくある話でもあります。

 「能力のある人には権限を与え、結果を出した人には(金銭的)報酬を与える」

 というのが報奨の基本的な考え方だと思います。経営者はよくよく気をつけないといけません。

>ストックオプションはマネジメント層に傾斜配分し

 もちろんそうなのですが、さらに言うなら経営陣はoptionだけでなく株式自体を所有すべきです。optionだけを持っているとリスクを省みずアップサイドを追求してしまうagency問題が発生してしまいます。ダウンサイドリスクを投資家と共有することで双方の利害の一致が期待できます。

 税制の問題や有利発行の問題もありますが、経営陣に株式自体を付与するのも手ではないでしょうか。ちなみに北米ではRSU(Ristrict stock units)という株があり、最近ストックオプションの代わりによく使われているそうです。

>一般従業員は持株会制度と業績連動給(ボーナス)を活用
>すべきだと考えている。

 理解不足であまり偉そうなことは言えないのですが、「持株会制度」というのは従業員にとってどれだけインセンティブになるのでしょうか?それとも、「お前はよく頑張ったから、今月から月に5万円まで入れていいぞ」というように業績に応じて持株を買う権利に差をつけるという意味でしょうか?
 
 企業が従業員持株制度をやる意義とか利点というのはなんとなく分かるのですが、従業員にとってはあくまで福利厚生の一環であって、それ以上の効果はあまり無いような気もします。ストックオプションに興味が無い人が持株会をやるとも思えないです。

>ストックオプションの費用計上の問題もあるため、原点に
>返って持株会制度をしっかりつくっていくという点が重要
>ではないかと思う。

 という訳で、ストックオプションと持株会は全く別の問題の気がします。

 なんだか長文になってしまいました。私なりのインセンティブに関する考えはこんな感じです。

ストックオプションは費用であり、付与対象と付与する株数は費用対効果をよーく考えて決めるべき(小林雅氏に賛成)
・能力のある人には権限を与え、結果を出した人には(金銭的)報酬を与える
・平等より公平
・だれをリテンションすべきか優先順位を決めること