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組織人事ストラテジストのつぶやき、業務連絡など。。

某テレビ局のアナウンサー採用内定取消事件について

 こんにちは、組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。

 最近、Blogの更新が滞りがちで申し訳ございません。ほぼ1週間ぶりの更新となってしまいました。

 というのも、本日開催の人事セミナーの資料作成に追い込まれていた、という事情がありまして(というのは、結局言い訳ですね)。。

11月13日にセミナーを開催します! - hrstrategist’s blog

 幸い、(予想以上に!)非常に多くの方に申込を頂きました。共催の人材研究所様と共々、非常に喜んでおります。ぜひ頑張って講演したいと思いますので、ご参加予定の皆さん、後ほどよろしくお願いいたします!懇親会もありますので、皆さまとお話が出来ることを楽しみにしております。

 さて、以下、本題です。
 
 某テレビ局による、「アナウンサー内定取り消し」が、巷で話題になっているようです。該当の記事(週刊現代)をしっかり読んだ訳ではないので、一般論にはなってしまいますが、今日はこの件を取り上げてみたいと思います。

「銀座でバイト」が原因で 「局アナ内定」を取り消された 女子大生が日本テレビを訴えた | 賢者の知恵 | 現代ビジネス [講談社]

ミス東洋英和、アナウンサー内定取り消しで日テレ提訴 「週刊現代」報じる(1/2ページ) - 産経ニュース

 この話を聞いて何となく既視感があったのですが、実は先日に弁護士の熊 隼人先生に献本頂いた本(熊先生、いつもありがとうございます。)に、ちょうど類似の事例が出ていたのを思い出しました。

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 熊先生は、以前勤めていた会社で顧問をして頂いており、当時から大変お世話になっておりました。この本は、「まえがき」で熊先生ご本人が書かれているように、実際に起きた案件をアレンジして小説(フィクション)としたものです(当然ながら、人事・労務担当者は必読です!)。よって、ここに出てくる企業の人事担当者のモデルが誰なのか(幸い、私自身はモデルになっていないです)、実際の案件がどのようなものだったのか、何となく類推しながらこの本を読みました。

 そして、この本の第1章、11ページから18ページで、新卒入社の採用内定者について、以下のような事例に対し、内定を取り消すことが出来るかどうかについて取り上げられております。

1.キャバクラで働いている者
2.サラ金から多額の借金をしている者
3.入社までにTOEICの点数が基準点に達しそうにない者

 3についてはモデルとなった企業が何となく類推できそうですが(笑)、それはさておき、1はまさに今回とほぼ類似の事例と考えてよさそうです。

 作中の主人公、「隼耕作」弁護士は以下のような話を、クライアント「ITメディアクレスト」社の「田村部長」と「西村課長」(実はこの両名のモデルも知っていたりします(笑))にしております。

「内定の取り消しは、なかなか認められないのですよ。というのは、判例では、内定の法的性質を解約権留保付始期付労働契約と考えているからです。」

「内定を出した時にすでに労働契約が成立しているということなのです。そして、判例では、内定の取消しを解雇と同じように考えていて、内定の取消しには、解雇と同じような正当な理由が必要としています。」

 さらに、1の「キャバクラで働いている者」については、以下のように述べています。

「履歴書に書いていなかったことが職歴の詐称といえるのかどうかが問題となりますね。判例上、職歴の詐称であれば、比較的容易に内定の取消しを認めています。」

「けれども、大学生の時のアルバイトの職歴まで全て履歴書に記載しなければいけなかったのか、ということが問題となりますね。履歴書の記載方法において、学生時代のアルバイトまで全て正確に記載するように指示されていた場合には、職歴のの未記載が職歴詐称となると考えてよいかもしれません。しかし、そうでない場合には、内定の取消しは諦めるしかありません。」

 これを今回の事例に当てはめると、会社側が本人にどの程度厳密に、大学時代のアルバイトの職歴を記載・報告するように指示をしたかが、裁判所の判断のポイントになりそうですね。
(2、3については、ぜひ直接本をご覧ください!)

 なお、労働法関連では著名な神戸大学 大内伸哉先生のBlogでも本件について取り上げられていますが、こちらでは今のところ、様子見といったところでしょうか。

労働法的には,この内定が留保解約権付きの労働契約と解されるならば,その解約が労契法16条等に照らして有効かどうかが問題となります。」

採用内定取消: アモーレと労働法

労働契約法 第16条 (解雇)
 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 ちなみに、今回、原告が「内定取り消しの取り消し(テレビ局への入社)」を求めているのに対して、「もし裁判に勝って入社できても入った後に本人が大変」「お金で解決した方が良いのでは」といったコメントをしている人たちもおりますが、実は、今回のような労働系の裁判(解雇の撤回要求等)の場合は、たとえ求める着地が金銭解決だとしても、まずは「解雇(今回は内定取り消し)を撤回し、職場に戻してほしい」と訴えた方が、最終的に和解に持ち込む際にも金銭的により多く獲れる、という傾向があるようです。なので、これに関しては、あくまで法廷戦術上の方便かもしれません。実際本人がどう考えているかは正直分からないですね。

 それはさておき、確実に言えるのは、テレビ局側の対応のイマイチさです。本人から訴えられることなどない、とタカをくくっていたのか、それともそもそもリスクに気付いていなかったのか。。人事担当者、法務担当者、顧問弁護士の方たちのお考えをぜひ、聞いてみたいなあと思います(まあ無理でしょうが)。

 改めて、「未然に防ぐ」事の大事さ、リスクマネジメントの大事さを感じさせる事件だと思います。各企業に置かれても、ぜひ、自社の事業運営上のリスクについて、改めてチェックすることをお勧めします(お手伝いしますよー)。

 では、Have a nice day!