hrstrategist’s blog

組織人事ストラテジストのつぶやき、業務連絡など。。

「日本の経営」と採用の話

こんにちは、組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。5月下旬というのは、東京地方では1年で最も気候の良い時期なのではないかと思います。朝晩の冷たい風は最高ですが、とはいえ、昼間の日差しはもうキツいですね。

 さて、ありがたいことに、3月から5月にかけて忙しかった(自分比)こともあり、Blogの更新も滞り気味でしたが、最近少し落ち着いてきましたので、改めてBlogにも真剣に取り組んでいきたいと思います。それと並行して、しっかりと次に繋がる仕込み(営業ですね)にもしっかりと取り組んでいかないといけない、と自分を鼓舞しております。

 そのような中で、先日気付いたことがありましたので、備忘も兼ねて文章に残しておこうと思います。

 前回のエントリで紹介させて頂いた、5月14日の早稲田大学のETPプログラムの講演では、EU各国から来た学生(ビジネスパーソンです)に対して、IT企業のような日本の新しい企業の人事戦略について解説とディスカッションを実施しました。

早稲田大学 ETPプログラムで(英語で)講演しました! - hrstrategist’s blog

早稲田大学 EUビジネスマン日本研修プログラム

 その中で、私からは、James C. Abegglen(アベグレン)氏が、著書 "The Japanese Factory"(「日本の経営」:絶版になっているようです)で挙げた「日本企業の強み」を紹介しました。ちなみにこの本は1958年に出版されたようです。

Lifetime employment:(終身雇用)
Employment extends over the whole working life of the employee

Seniority-based wages:(年功序列賃金)
Compensation is determined by the number of years of employment in the company

Periodic hiring:(新卒一括採用)
Employing young people fresh out of school

In-company training:(社内教育)
Employing workers based on personal qualities rather than job suitability, providing on-the-job training after hire

Enterprise union:(企業内組合)
one labour union for each enterprise

Wikipediaより引用)

James Abegglen - Wikipedia, the free encyclopedia

 そこから約60年が経過した現在、Lifetime employmentなど、上記の強み(の一部)は今や弱みに変わってしまった。にも拘らず、多くの伝統的な日本企業とその経営者・従業員は変化への抵抗感によってこれに対応出来なくなっている。一方、新興企業、特にIT系の企業は過去のしがらみも無いこともあり、Periodic hiring(新卒一括採用)などといった従来の日本企業の強みも生かしつつ、グローバルな人材獲得競争に立ち向かうために必要な部分はしっかりとグローバルの基準にAdjustしようとしているという解説を加えました。

 EU諸国から来た学生の皆さんにも大変興味をもっていただき、ディスカッションも盛り上がりました。いわゆる従来型の「日本の経営」については彼達、彼女達もある程度知識があったと思いますが、新しいタイプの日本企業が何を考え、どのように行動をしているかについて知る機会はなかなか多くなかったのかもしれません。

 この話に関連するような、「新旧の日本企業の違い」に関する話を、先日聞きました。

 私がお手伝いしているある会社で、生産性向上と採用精度の向上を目指して中途採用のプロセスの見直しを検討しています。アドバイスを頂こうと、採用業界のある会社の方にお話をお伺いしたのですが、採用プロセスの生産性が上がらない「笑えない事例」として、

・採用担当者が候補者のレジュメを全て印刷し、求人部署に持っていて選考してもらう
・採用担当者がどの候補者にコンタクトするかを決める権限を与えられず、求人部署の指示を全て仰ぐ

といったような事例を教えて頂きました。

 私が、「その会社は日系で、IT系以外の古い会社でしょう」と言ったら大正解。やっぱりそうだよねえという話になりました。昔からやっているプロセスに何の疑問も持っていないのでしょうね。

 結局、採用に関しても積極的に新しいサービスを使っているのは外資系+日系IT系が今のところメインで、多くの従来型日本企業ではまだ様子見、といった会社が多いようです。おそらく、同業他社の動向を気にしているのでしょう。「横並び」とかでなく、自分でどんどん試さないとダメだと私は思うのですが、元々「自分で考える」習慣が少ないし、そのような動きも組織文化的に推奨されないのだろうという事が推測できます。

※友人のFacebookでこんな記事もシェアされていました。確かに「あるある」です。

【実録】本当に困った。人材紹介会社に聞いた残念な人事まとめ - NAVER まとめ

 日本企業における「新しい」会社と「古い」会社の温度差(変化に対する対応の違い)については、ずいぶん以前より私が感じている問題意識でもあります。もちろん全てとは言いませんが、多くの従来型企業において、何かを変えようとする時に、「事なかれ」「言い訳」「現状維持志向」の人達に足を引っ張られることは少なくないと感じます。

 実は、それもあって私はこれまでも「従来型」でない会社でばかり働いていたという面もありますし、今の「組織人事ストラテジスト」としての仕事も、明確に「新しい」会社をターゲットにしております。

 組織人事ストラテジストは、これからも「新しい」会社のために貢献したいと考えております。今後とも引き続き、よろしくお願いいたします。