hrstrategist’s blog

組織人事ストラテジストのつぶやき、業務連絡など。。

大相撲の世界(角界)の報酬制度

 こんにちは、組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。

 8月ももうすぐ終わりですね。早いものです。お盆頃までの東京地方の猛暑はどこに行ってしまったのか、「残暑」という言葉も聞かないで済んでいますね。助かります。

 今月は天候も極端でしたし、今週の株式市場の大幅な変動も凄かったですが、私自身の状況もいろいろとありまして、自営業の怖さを感じると共に、自身も「何事にも動じない」精神を鍛えないとアカン、と実感している所です。

 そんな話はさておき、今週はちょっと軽めのお話を。

 人事評価、報酬制度の話をこちらではよく投稿するのですが、いろいろな事例を研究する中で、大相撲の力士、年寄の報酬の仕組みにたどり着きました。

 これがなかなか面白い。時間がある時にじっくり研究しようと思いますが、とりあえず今回は簡単にご紹介だけさせて頂きます。

なお、情報は主にこちらを参考にしております。

Wikipedia

 プロフェッショナルな興行としての「大相撲」は、公益財団法人日本相撲協会(以下、相撲協会)という団体が主催しています。

日本相撲協会公式サイト

 力士、年寄(親方、引退した力士)は協会に所属し、月給等を協会からもらいます。
詳しくは以下にありますが、ベースの月給は十両で100万強、横綱で300万弱といったところのようです(多いと見るか、少ないと見るかは意見が分かれそうです)。これに各種手当が上乗せされます。力士の場合は、関取(十両以上)が対象になります。

大相撲 - Wikipedia

 ご存じの方も多いと思いますが、関取以外の(幕下以下の)力士は給与がもらえず、僅かな額の手当しかもらえません(いわゆる「最低賃金以下」です)。まあ、部屋で生活し、食事も3食出るわけですから、とりあえず食べるには困らないですが、強くなって関取にならないと割に合わない実力社会であることがよく分かります。

 ちなみに、これらの収入は、所得税の扱いは、協会から支払われるもの(優勝賞金等の「力士褒賞金」も含めて)は概ね「給与所得」とされるそうです。国税庁から通達が出ていました。「後援会等から受ける祝儀」についてもしっかりと「一時所得」か「贈与」として扱いなさいとなっています(笑)。

力士等に対する課税について|申告所得税関係 個別通達目次|国税庁

 つまり、力士は、相撲協会で働くサラリーマンであると考えてよいでしょう。年寄(親方)も同様ですね。

年寄 - Wikipedia

 そこで、「相撲協会」を普通の会社、力士、年寄をそこで働く社員(役員)とみなした場合、一般の会社と異なる特徴はどこにあるのでしょうか?

 まず思いつくのは、「関取と関取以外の処遇の違い」です。関取では横綱から大関、関脇、小結(いわゆる三役)、前頭(ここまでが幕内)、十両、それ以下では幕下、三段目、序二段、序の口という地位(番付)があります。多少の幅はありますが、それぞれの地位には「定員」があるので、力士は年6回の本場所でより良い成績を残し、地位を上げていく必要があります。

 番付が上がれば月給が上がります。より沢山勝てばより月給が上がる訳ですが、実は、「1勝の価値」はそれぞれの力士によって違います。一番分かりやすいのが、優勝が懸かっている力士とそうでない力士です。また、勝っても負けても地位が変わらない力士(例えば前頭の中の変動)と、地位が変わってしまう力士(負けたら十両に落ちるとか、勝ったら三役に上がれるとか)でも同様です。一番極端な例は、幕下と十両の間で、ここでの差はまさに「天国と地獄」です。

 ちなみに、勝ち越し、負け越しの数で自動的に番付が決まる訳ではなく、番付の上下については最後は協会の裁量で決まります。特に、大関横綱への昇進に関しては、「審議」で決まる訳で、その辺は会社における「昇進」と同じかもしれませんね。

 また、力士にとって、「勝ち越す」というのは、単に番付が上がるだけでなく、それ以上の意味を持ちます。というのも、勝ち越すことにより、力士褒賞金(給金)がもらえるようになるのです。給金は、サラリーマンで言えば昇給であり、一回獲得した給金は関取である限りは受け取り続けることができます(幕下に落ちるともらえません)。つまり成績給であり、かつベテランほど有利になる年功給的な側面もある訳です。

力士褒賞金 - Wikipedia

 このように勝ち負けで報酬が決まる、「実力勝負」な点は普通のサラリーマン社会と比べても分かりやすい反面、いわゆる「八百長」を働くインセンティブが強くなるだろうという傾向も読み取れます。何年か前にアメリカの経済学者が「ヤバい経済学」という本で、千秋楽の7勝7敗力士の勝率の異常な高さについて取り上げたことは以前話題になりましたし、2011年の「八百長問題」は相撲界を揺るがす大問題となりました。

Amazon.co.jp: ヤバい経済学 [増補改訂版]: スティーヴン・D・レヴィット/スティーヴン・J・ダブナー, 望月衛: 本

大相撲八百長問題 - Wikipedia

 「給金」のように、今の実力が必ずしも今の報酬には反映されない(過去実績で今の給料が決まる)という仕組みは、かつての日本型賃金制度を思い起こさせます。しかしこれはある意味合理的で、大相撲は興行の世界である訳ですから、昔から活躍してきたベテラン力士はより人気があるはずで、興行面でも貢献をしているのだと思われるからです。

 ただ、そうは言っても実力勝負の世界ですから、関取として生き残るための実力を発揮できなくなれば幕下に落ちるか引退するしかないのです。そして、年寄として相撲協会に生き残れるのはその中でも限られている(100名強のようです)という、厳しい淘汰の世界な訳ですね。

 一方で、幕内で優勝すれば賞金は1000万円、さらにはスポンサーからの大量の賞金と賞品を貰える(千秋楽に延々とやる表彰式で贈与していますね)わけで、その点ではしっかりと今の実力が反映されるという部分もあるのです(会社で言えば特別賞与のようなものですね)

 という訳で、もう一つ複雑怪奇な「年寄の世界」もある訳ですが、こちらは気が向いたらまた書こうかなと思います。

 では、Have a nice weekend!