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hrstrategist’s blog

組織人事ストラテジストのつぶやき、業務連絡など。。

労働者派遣法のもう一つの爆弾、「労働契約申込みみなし制度」に注意

 こんにちは、組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。東京地方は、週末は日差しが強く、夏の名残りがあった感じでしたが、今週からはいよいよ秋らしく涼しくなってきました。窓を開けて寝ると、もはや寒いですね。

 さて、先日、「労働者派遣法の改正」についてエントリを書きました。

労働者派遣法改正、取り急ぎ解説 - hrstrategist’s blog

 実は、法案の成立直後のこの時点では、いろいろ調べてもはっきりしなかった点があり、そこには意図的に触れませんでした。その後、9月30日の施行の前後で徐々に情報が出てきましたので、追記します。

 今回の法改正では、いわゆる「政令26業務」に従事する派遣労働者の派遣期間を新たに3年に制限するという変更が(改悪という意味で)非常に注目されましたが、この変更がどのタイミング(施行後からカウントして3年後なのか、過去に遡って3年なのか)で実際に適用されるのが不明でした。

 これについて、9月29日の日経新聞で以下のような解説が出ました。

「3年という期間をカウントする起点は、改正法が施行される9月30日以降に結んだ契約日になる。」

派遣で働く 改正法でこう変わる(上) 同じ職場3年まで キャリアアップ念頭に :日本経済新聞

 さらには、厚生労働省から新たに出た下記パンフレット(7ページ)でも、

「施行日時点で既に締結されている労働者派遣契約については、その契約に基づく労働者派遣がいつ開始されるかにかかわらず、改正前の法律の期間制限が適用されます。」

という解説が出たので、とりあえず、今から3年間は猶予がある、ということで大丈夫そうです。

平 成 27 年 労 働 者 派 遣 法 改 正 法 の 概 要

http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11650000-Shokugyouanteikyokuhakenyukiroudoutaisakubu/0000098917.pdf

 なお、なぜ今回派遣法の改正・施行を政府がこんなに急いだかというと、実は理由があったようです。遡ること3年前、2012年。当時の民主党政権時代の派遣法改正の内容がそれです。

 民主党政権時代には、「政令26業務の適用範囲の厳格化」という、派遣元・派遣先・派遣社員といった当事者の誰の得にもならないことを(民主党の支持母体である労働組合等の要請で)やったりして、現場にいた我々としては非常に迷惑だったのですが、その流れで、「労働契約申込みみなし制度」という仕組みを派遣法に紛れ込ませてしまったのです。

 この、「みなし制度」についてはパソナ社さんが解説してくれているので、こちらのページをご参照ください。

www.pasona.co.jp

 上記ページから、ポイントを抜粋させて頂きます。

「労働契約申込みみなし制度は、派遣先が違法派遣と知りながら派遣労働者を受け入れている場合、違法状態が発生した時点において、派遣先が派遣労働者に対して、派遣労働者の派遣会社における労働条件と同一の労働条件を内容とする労働契約の申込み(直接雇用の申込み)をしたものとみなされる制度です。」

「・違法派遣とは
1.派遣労働者を禁止業務に従事させること
2.無許可又は無届出の派遣会社から派遣を受け入れること
3.派遣期間制限に違反して派遣を受け入れること
4.いわゆる偽装請負等」

 つまり、上記のような「違法派遣」状態の場合、派遣労働者が直接雇用をして欲しいと意思表示すれば、その時点で直接雇用が成立するということです。この法律改正が、今年(2015年)の10月1日から施行されたのです。

 厚生労働省からの通達も9月30日付で出ています。

労働契約申し込みみなし制度について(職発0930第13号)

http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000092369.pdf

 ここで最も問題になりそうだったのが、1の「禁止業務」の解釈です。「政令26業務」の派遣契約をしていても、実態は「政令26業務に該当しない」と認定された場合、その人の派遣期間が3年を超えていれば、「労働契約申込みみなし」が成立してしまうことになるのです。

 「政令26業務の適用範囲の厳格化」(具体的に、どのような場合に26業務として認められるか(否か)は、以下のリンク参照。うんざりします。)により、「政令26業務に該当しない」とされるリスクは大幅に増大し、加えて「労働契約申込みみなし」の適用により、「違法派遣」とされた勤続3年以上の派遣労働者が大量に直接雇用化するという事態が起こるはずだったのです。

いわゆる「複合業務」における派遣受入期間の制限等について Q&A

http://tokyo-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/library/tokyo-roudoukyoku/campaign/pdf/fukugou_qa.pdf

 ところが、今年9月の派遣法改正により、「政令26業務」とそれ以外の区別がなくなってしまい、全ての職種において個人が3年を超えて同じ仕事を続けることが出来なくなってしまいました。つまり、今回の法改正によって少なくとも禁止業務の適用については、「労働契約申込みみなし制度」は有名無実化してしまったのです。

 このような記事もでていますね。

労働者派遣法改正:労働契約申込みみなし制度事実上骨抜き

http://mainichi.jp/select/news/20150910k0000m010131000c.html

 というわけで、「もう一つの爆弾」を不発弾化する、というのが、政府与党サイドが派遣法の改正を急いだ裏の大きな理由であったということですね。

 とはいえ、「労働契約申込みみなし制度」事体は、予定通り施行されている訳なので、各企業においても、これに抵触しないよう、慎重に派遣業者を選び、契約締結すること等が引き続き必要ですね。

 また、同一の派遣労働者を、3年毎に違う「課」で契約するという事を考えられている企業もあるかと思いますが、これが「実態として同一の業務内容を継続している」とみなされ、「労働契約申込みみなし」が適用されることとなる事態も予測されます。このあたりの動向は、情報を収集し、慎重に見極める事も肝要ではないかと思います。くれぐれも気を付けましょう。

 では、Have a nice day!