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hrstrategist’s blog

組織人事ストラテジストのつぶやき、業務連絡など。。

社長、就業規則の中身をしっかり確認しましょう

 こんにちは、組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。ここ数日の東京地方は爽やかな青空に恵まれましたね。1年で最も良い季節かもしれません。外出が楽しいですね。

 先週は連休明けで予想以上に忙しくなってしまい、更新をサボってしまいましたので、2週間ぶりの更新となってしまいました。。

 ちかごろ毎朝楽しみにしているのは、日経新聞の「私の履歴書」、JR西日本葛西敬之さん編です。先週から今週にかけて、いよいよ面白くなってきました。分割民営化に至るまでの国鉄改革と労組との戦いの歴史は、人事と企業再建に関わるプロフェッショナルは必ず知っておくべきです。以下はお勧め図書です。興味ある方はぜひ。

Amazon.co.jp: 国鉄改革の真実―「宮廷革命」と「啓蒙運動」: 葛西 敬之: 本

未完の「国鉄改革」―巨大組織の崩壊と再生-葛西-敬之

http://www.amazon.co.jp/dp/4492061223

語られなかった敗者の国鉄改革-秋山-謙祐

http://www.amazon.co.jp/dp/4795849927

 葛西氏の「21人の要員がいた会津若松保線区内の支区では、1年間に行われた業務は21本の枕木の交換だけだった。」などという話は、当時の(一部ではあっても)労働組合と組合員の醜さを象徴するような話ですが、このような目に見える形ではなく、表だって目に見えない形で従業員が会社や経営者を欺いたりする場合も時にはあります。今回は私の過去の経験を、事例としてシェアさせて頂きます。

 人事制度の見直しのため、私が関わったあるベンチャー企業の話です。

 就業規則など人事関係の規程類をチェックしたところ、その会社の業績や規模感から考えて、従業員に対し異様に手厚い制度となっていることを発見しました。

 例えば、高年齢者雇用の措置として、再雇用制度ではなく定年年齢が65歳まで引き上げられていました。「労政時報」の調査(2010年、第3784号、「65歳雇用時代 高年齢者雇用の最新実態」)によれば、高年齢者雇用確保措置の方法として、「定年年齢の引き上げ」を実施している企業はわずか6.8%に過ぎません(「再雇用制度で対応」は91.6%)。

 また、従業員が死亡した時の「弔慰金」についても、支給額が「数百万円」となっていました(具体的な金額は忘れました)。このような場合、通常は企業が弔慰金に充当するための生命保険等に加入しているのが前提ですが、この会社では未加入でした。同じく「労政時報」(2011年、第3802号、「慶弔見舞金の支給実態」)によれば、保険に加入してない企業の中で、200万円以上の弔慰金を支払う企業の割合はわずか1.4%しかありません。

 さらには、個人的な病気、ケガ(私傷病)で会社を休み、休職となった場合にも賃金を一部支払う規定(通常は無給とし、健康保険の「傷病手当金」を適用させる場合が一般的)となっていました。

 他にも同様に、一般的な水準と比べて「手厚い(従業員に有利な)」規定がいくつも見つかりました。

 どのような人事制度、方針を取るかはそれぞれの会社、経営者の意思決定です。経営者が意図的にこのような施策を取っているのであれば、(中身には全く賛同しませんが)意思決定の背景としては理解できなくもありません。

 ただ、その会社に関しては、創業者(当時すでに退任)は技術畑出身の人で、人事の細かい規定をいちいちチェックして、口をだすようなタイプだとは思えませんでした。むしろ、担当者に任せた(放任した)結果、このような規定になったというのが実情ではと推測されました。

 規程の制定当時の担当者はすでに退職をしていたので真相は分かりません。しかし、経営者が人事に関して専門知識が無く、関心も薄いことを逆手にとり、「お手盛り」で、できるだけ従業員に有利な規程を提案し、そのまま通してしまったのではないかというのが、私の推測です。

 その担当者は、会社にとっての全体最適ではなく、自身を含めた従業員にとっての部分最適を追求した(と思われる)訳です。

 結局その会社に関しては、紆余曲折の後に、妥当な水準になるように規程を変更することができましたが、そもそも規程を作る最初の時点で、経営目線でしっかりチェックをし、適切なものとしていれば、後から無用な工数と苦労をしなくて済んだ訳です。当然規程変更のプロセス自体にも費用が掛かっています。

 人事労務に詳しくない経営者の方は軽視しがちですが、一度決めた人事関連のルールを変更することは、実は簡単ではありません。特に従業員にとって不利になるルール変更は、「不利益変更」と言い、会社が一方的に行うことは原則としてできません。(実は、例外として出来る場合があるのですが、長くなるのでここでは詳しく説明しません。詳細は下記リンクをご参照ください)

www.jil.go.jp

 なので、福利厚生にしろ、手当にしろ、安易に決めて就業規則等に組み込んでしまうと、後から大きな禍根を残す場合が少なからずあります。

 労働基準法によれば、常時10人以上の労働者を使用する使用者は就業規則を作成し、労働基準監督署に届け出ることになっております。

www.jil.go.jp

 ベンチャー・成長企業の場合、ネット等にあるサンプルをそのまま使ったり、人事総務の担当者に「とりあえず作って」と作成を指示する場合も多いでしょう。

 その際に、ぜひやって頂きたいのは、まずは社長(経営者)ご自身が、自分の目で規程の内容を漏れなくしっかりと確認することです。そして、その中で疑問に感じたこと、不明点については専門家のアドバイスを求めて下さい。これを怠ると、上記のような「お手盛り」事例が起きる可能性があります。また、作った本人が意図していなくても、予想をしていなかった抜け漏れがあったりして、後々困ることになったりする場合が少なくありません。

 手近な専門家としては、社会保険労務士(社労士)さんもおりますし、私のような人間にご相談いただくのも良いかと思います。その場合に掛かる費用(せいぜい数万円、多く見積もっても数十万円のレベルでしょう)は、後々のトラブルを防ぐための保険料のようなものです。

 立場の異なる複数の視点でチェックする、不正やミスを仕組みで防ぐというのが、就業規則に限らずコンプライアンス遵守には必要な考え方です。

 適切な人事労務管理を進める上で、適切な人事制度・規程の存在は欠かせません(ただしあくまで必要条件であり十分条件ではない点はご認識ください)。ぜひ、自社の就業規則等の人事規程が適切かどうか、一度見直して見て下さい。私にお声がけいただければ、お手伝いいたします。まずは無料でご相談下さい(笑)!

 では、Have a nice day!