hrstrategist’s blog

組織人事ストラテジストのつぶやき、業務連絡など。。

新人とベテランの違いについて

 こんにちは、組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。東京地方ははっきりしない天気です。とはいえ気温的には暑くも寒くもないし、風も強くありません。ちょうど良い感じですね。天気が良ければ1年で最も快適な時期かもしれません。こんな時はふらっとバイクで海にでも行きたくなります。行きませんが。

 今回は、私の昔話をしようと思います。今を遡ること20年少し前、大学を卒業して最初に就職した会社はホテル業でした。本社要員としての採用だったのですが、最初の配属は品川御殿山にある某シティホテルでベルボーイをやっておりした。

 学生時代にスキーショップでアルバイトをしていたので、声を出したり接客したりという点での苦労はさほどありませんでしたが、夜勤シフトが主で(夕方に出勤して一晩中ホテルで過ごし、朝のチェックアウト対応後に昼前にあがる)、沢山寝ないと辛い体質の私はいつも眠かったことばかり覚えています。

 最初の夏休みにバイクで転んで足の骨を折り、3週間入院して当時の上司にエラく怒られ、松葉杖姿ではお客様の前に立てないので宿泊予約の電話番をしばらくやっていたという余談もあるのですが、それはさておき(笑)、ベルボーイは、「そこに立っていること自体が仕事」なので、考える(妄想する)時間が沢山ありました。そこで、暇な時は先輩方たちの動きをじっと観察したりしていました(観察対象が庭園のハトだったりもしましたが。。)。

 一緒に働くスタッフは同世代や少し年上の先輩方です。ベルボーイの仕事の多くは、荷物運びや最寄り駅までの案内(「品川駅まではどうやって行けばいいの?」)ですので、極論するとアルバイトでも大半の仕事はこなせてしまいます。ベテランでも新人でも(表面的には)差がつかないのです。

 しかし、ベテランと新人の違いは厳然とあります。特に違いが出るのはイレギュラー対応です。外国人客への対応や、酔客などトラブル対応、病人・怪我人が出たときなど、事象によっては月に1回、年に1回、何年かに1回にしか起こらないことが起きます。その際に、いかに適切・的確に対応できるかで、新人とベテランでは大きく違いが出る訳です。そしてそれが、ホテルにとってベテランを雇用し、配置する価値となる訳です。

 そして、ホテルの場合には難易度の高い顧客対応を一身に引き受ける窓口がコンシェルジュになります。業務量は多いが難易度が低いような仕事は、経験の浅い(コストも安い)スタッフがやり、「コンシェルジュがご相談を承ります」というシステムを明示することで、「難しいゴロ」がコンシェルジュに集まるようになるのです。このような分業の考え方はコールセンターのエスカレーションも同じ考え方ですね。

 では、かつての私のような新人は、どのようにして上記のような頼りになるベテランへと進化していくのでしょうか?

 「多くの経験を積み、そこから気付き、学ぶこと」。習熟の考え方はこれに集約されます。結局人間は経験によって学ぶしかないです。ただし、学び方には個人差がある点も事実です。同じ体験をしても、そこから何を気付き、学び、どう生かしていくかは人によって異なります。抽象化、パターン認識の差により成長度も差が付くのです。

 なお、特にサービス業などでは「マニュアルの是非」的な議論が良くされますが、マニュアルの目的は、マニュアル以下のレベルである新人や経験の浅い人でも、短期間で最低限のパフォーマンを発揮させるため(新人にとっては、「マニュアルを読んで覚える」事自体が経験であるとも言えます)と考えます。一方で、ベテランに求められる業務レベルは、「マニュアル通りに行うこと」ではなく、マニュアルに書いていない事態に的確に対応すること、また、マニュアル自体の質を上げていくこと、さらには自身の経験、スキルを若手、新人に継承して、彼ら彼女らを育成していくことである、と言えるでしょう。マニュアルは習熟の角度を上げて時間を短縮するためのツールに過ぎないのです。

 そこで組織が考えなければいけないのは、「いかに多くの経験を積ませるか」「その経験によっていかに多くの気付きを与えるか」「本人がそこから学び、行動変容に繋げられるか」の3つのポイントとなります。従業員側も同様です。自身が「いかに多くの経験を積むか」「その経験によりいかに多くの気付きを得るか」「気付きから学び、いかに行動変容するか」ですね。

 そのあたりの話を掘り下げていくと、とても深い話になってきます。長くなるので、また改めて続きを書くことにいたしますね。

 では、Have a nice day!