hrstrategist’s blog

組織人事ストラテジストのつぶやき、業務連絡など。。

記事公開:人事に求める役割とは 「月刊 人事マネジメント クラウド人事部長に聞く 経営人事のQ&A」

 こんにちは、組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。

 2月より連載が始まりました「人事マネジメント」の連載ですが、掲載から1ヶ月経ち、Webでの転載が可能になりましたので、以下、記事内容をシェアをさせて頂きます。みなさまの参考になればと思います。

※こちらは前回のエントリです。

hrstrategist.hatenablog.com

 

 Blogの仕様上PDFファイルを添付できませんので、もしPDFファイルがご希望の方は、arainoori[at]gmail.comまでご一方下さい!

以下、記事内容です。雑誌のページをJPG化して一番下に貼りましたので、さっと読むにはそちらの方が良いかもしれません。

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 急成長する中で日々組織と人事に関する課題に悩むベンチャー企業の創業社長と、人事アドバイザリーとして社長を助ける「クラウド人事部長」の対話を通じて、経営に貢献する戦略的人事のあり方について理解を深めて頂ければと考えております。

・第1回:人事に求める役割とは
社長:そもそも「人事」の仕事って何なのだろう?うちの会社では人事担当者は2人いるけど、仕事といえば採用がメインで、それ以外に何をやっているのか実はよく知らないんだ。給与計算も税理士だか社労士だかやってくれているみたいだし…

 人事の仕事なんて結局採用に関わる候補者とのやりとりや面接のスケジュール管理くらいなんじゃないか。人事担当のように直接売り上げに関わらない人間は極小化すべきだし、営業事務とか他の仕事ももっと兼務させようと考えているんだよ。

クラウド人事部長:人事の仕事の範囲は人と組織に関わる全般で、関わる業務範囲はとても幅広いです。極論すれば「人に関わること」は全て人事の仕事という事もできます。

 ご存知だとは思いますが、一般に人事部門の役割として見なされる業務は、採用や給与計算だけでなく、税金や各種保険料の計算・申告、教育研修、労務、制度・企画、戦略、予算・要員・人員管理・人事システム(データベース)管理、福利厚生、安全衛生、人員配置・異動管理、海外駐在関係、アルバイト・派遣社員等の管理、あとは・・・
 
社長:わかった、わかった。もういいよ。そうやって数え上げてみると、思った以上にいろいろな仕事があるんだな。

 でも、それって人が余っている大会社の話で、うちのような少数精鋭の会社とは全然関係ないんじゃないの?まだ海外拠点なんて持ってないし。そりゃあ将来はぜひともシリコンバレーあたりに開発拠点を作りたいけどね。

クラウド人事部長:さらには、会社によっては、社内広報・コミュニケーションやオフィスなどのファシリティ管理まで人事の担当範囲をしている所もあります。「人に関わること」と括ってみると、案外やるべきことは沢山あるのではというイメージは出来たのではないでしょうか。

社長:(まだ言うか!?)そうだね、確かに。ちかごろ退職者も増えてきている気がするので、我々も福利厚生とかはちゃんと考えないといけないのかなあと、ちょうど思っていたんだけど。

クラウド人事部長:本来的には、会社の大きさによって人事部門に求められる役割・機能自体が大きく変わる訳ではありません。

 とはいえ社長のおっしゃるように、経営資源が限られた中小・ベンチャー企業がこれらの全てに完璧に対応することは不可能です。結果、業態・規模や創業からの年数等、個社の状況によって求められる役割・機能の優先順位と業務量・頻度が変わってくるのです。

社長:ふーん、そういうもんなのかなあ。

クラウド人事部長:先ほど社長は、「うちの人事はほぼ採用しかやっていないのでは」という意味合いのことをおっしゃっていましたが、これはよくある経営者の誤解です。

社長:えっ?俺が何を誤解しているというんだ?

クラウド人事部長:社長はご自身の中で「人事の仕事はこうあるべきだ」というイメージがあって、そのイメージを元に人事担当者の仕事内容を想像して語っています。裏を返せば、そのイメージに外れた業務を担当者が実際にやっていたとしても、それを社長は「人事の仕事」として認識せず、「どうでもいい無駄な雑務ばかりやっている。困ったものだ。」と捉えるのではないでしょうか。

 経営者が気を付けなければいけないのは、人事担当者がどのような優先順位でどのような業務をすべきか、また実際にやっているかは、人事の専門家でない経営者には見えづらいという事です。業務量の割合が大きいものや、採用のように自分の関心の高い業務は相対的に重要そうに見えますし、一方で担当者が「本当は重要だが業務量はそれほど多くない業務」を折角やってくれていても、経営者はそれを「重要でないその他雑務」とみなすか、または無視しがちです。

 反対に、人事担当者が「重要だが業務量はそれほど多くない業務」を放置していたとしても、経営者はなかなかそれに気付きません。そして、未然に防ぐことが可能だった問題は地雷として放置され、いつかより大きく深刻な問題となって爆発し、経営者は事態の収拾に苦労することになるのです。

 そもそも本来人事というのは、それなり以上の成果を出すためには経理やエンジニアと同様に専門のスキルや経験が無いとできない仕事なのですが、多くの経営者はそのような認識を持っていません。もし「人を見る目に自信があるか?」とアンケートを取ったら、圧倒的多数の経営者は、“Yes”と答えるでしょう。

 要するに、「人事の仕事なんて、自分でも出来る」と思っていて、人事の仕事に特別なスキルや専門性が要るとは思っていないのです。経理やシステムだと、だいたい担当者に丸投げ、放置なのですが(笑)。

社長:指摘されると確かに経理やシステムはよく分からないから、担当者に任せっきりだけど、人に関しては何となく分かっている気がするし、分からないと認めたくない面もあるね。それに、「専門スキルのある人事担当者」と一緒に仕事をしたことが無いから、専門家が必要と言われても実感しづらい面もあるね。

クラウド人事部長:一度本当に優秀な人事プロフェッショナルと一緒に仕事をすれば、その価値は分かりますよ。

社長:「まずはお試しを」ということだね。

クラウド人事部長:そして、企業規模が大きくなると状況が変わります。一部例外はあるのですが、人事部門の業務量は人員数に原則比例します。

 その段階では、幅広い業務を「薄く広く」対応する人事担当者の数を増やすより、機能ごとに分業化し、「狭く深く」専門的に業務を分けるほうが(短期的には)効率は上がります。実際、多くの企業において人事組織は企業規模が大きくなり、従業員数が数百名以上になると機能・役割別に細分化されていきます。

 ところが、そこでまた別の問題が起きます。「各機能のタコツボ化」傾向です。全社・経営のための全体最適よりも、自部署、自分の担当の部分最適を優先し、視野の狭い「専門バカ」が増えてきます。
 
 概ね悪気はない人達なのですが、忙しくなればなるほど目の前の業務をこなすことが優先され、周囲を見渡し、他部署の都合や全社最適を想いやったりという高い視点を忘れがちになるのです。この段階になると、この状況を克服するための新たな仕掛けが必要になります。

社長:セクショナリズムというやつだね。うちの会社をそのようにだけはしたくないな。

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