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hrstrategist’s blog

組織人事ストラテジストのつぶやき、業務連絡など。。

どのくらいが、適正な離職率(定着率)なのでしょう?

 おはようございます。組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。朝晩は涼しくなるのでまだ良いですが、最近の東京地方の昼間の日差しには耐えられなくなりつつあるのが目下の悩みです。今日は雨(止みましたね)ですが、雨はもっと嫌いです。。

 最近は雑誌(月刊人事マネジメント)やWeb(Bussiness Nomad Journal) の連載記事の紹介ばかりで、Blog用の記事をしばらく書いておりませんでした。正直なところ、後回しになっています。プロである新聞記者さんのような「文章を書く修行」を積んでいないので、原稿書きは毎回煮詰まり、苦労しております。それよりダービーの予想に心が惹かれますね。。

 とはいえ、依頼された原稿とは別にBlog記事という形でアウトプットを出すことは、自身の頭の整理になると共に、後から再確認もできる(さらには依頼された原稿のネタになる)ので、相応の価値はちゃんとあると思っています。

 という訳で、今回のテーマは、会社における従業員の離職率(または定着率)の話を取り上げたいと思います。

 まずは離職率(英語では、turnover(rate)と言います)と定着率(Retention rate)の定義から押さえましょう。離職率は、通常「年間〇%」という形で表現されます。期初の人数が分母、期末までの年間退職退職者数を分子とするというのが最も単純なパターンです。一方で、期初にいた人のうち年間何%退職したかをみるという方法もあります。後者は「期中に入社して期中に退職をする人」がカウントされないので、その分離職率は低く現れることになります。定着率は、いずれにしても「1-離職率」ですね。

※「入社後3年の離職率(定着率)」もよく使われる指標ですが、今回は取り上げません)

 「あの会社は離職率が高いからブラック企業だ。気を付けたほうがよい。」「あの会社は離職率が低いから良い会社だ。」といった類の話はよく聞きます。また、多くの企業において、従業員の離職率は、人事が追うべきKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)とされていますね。

 では、高い離職率とは何パーセント以上で、低い離職率とは何パーセント以下を指すのでしょうか?考えてみたことはありますか?

 実は、「適正な離職率」の絶対値というものはありません。というのも、国や業種、企業の規模やライフサイクルの段階によって、適正なレベルは異なるからです。加えて、企業の人材に対する思想によっても異なってきます。

 私が関わっていた某社の経営会議で、各国のグループ企業による離職率の差が課題として取り上げられたことがあります。具体的には「〇国の△社は離職率が高すぎる!もっと下げろ!」といった類の話です。その場にいた人たちは、「その通りだ」と思ったのかもしれません。

 ところが、実際には国によって雇用環境・慣習・労働法制は大きく異なります。その結果現れる数字だけを単純に比較しても意味はありません。上記の〇国に関していえば、国全体の傾向として離職率が非常に高い(特にホワイトカラーの人材に対する需要は逼迫しており、労働者は条件の良い求人があればいとも簡単に転職をする)傾向がありました。また、△社では、営業職の社員は数か月間の試用期間を設けて、優秀な社員に限り契約を続けるというようなスタイルを採っていたのです。もちろん、その国の労働法制には抵触せず、かつ一般的な方法です。

 そのような国において、離職率が30%というのは不思議ではないのかもしれません。国によって状況が異なるのであれば、それに合わせた妥当な離職率目標を設定し、それに対してどの程度達成しているかを本来は追うべきなのです。

 そのような「目標レベルの違い」は、国だけでなく、業種の間にも存在します。例えば、変化の少ない古くからある成熟(または衰退)業界と、IT産業のような変化が激しい新興業界では適正値は異なるはずです。日本企業(日本国内にある事業)に対する私の感覚では、前者が3~5%程度、IT業界(Web系)では恐らく5~10%程度が適性値ではないかというのが私のイメージです(あくまで目安です)。

 なお、ネットで業種別の統計データを探したのですが、見つかりませんでした。国が「雇用動向調査」というものをやっているようですが、これを見てもよく分かりませんね。。よい統計資料がありましたら、ぜひ教えてください。

www.mhlw.go.jp

 離職率・定着率の議論で注意しなければいけないのは、離職率が単に「低ければ良い」というものでは無いという点です。というのも、適正なレベルより低い離職率が、本来は会社に残るべきでない人材が「居座る」、風通しの悪い、生産性の低い状況であるかもしれないのです。

 さらには、単純に数字を追うと見えなくなることがあります。例えば、同じ退職者数、率であっても辞めた人が「会社に残って欲しい人」か、「そうでない人」かによって、意味合いが大きく異なります。本当に大事なのは、会社にとって残っていて欲しい人が離職しているか否かです。

 (離職率が高かった)過去と比べて減っているか、あるべき姿(目標値)との差分、同業他社等と比べて適正か等を知るために離職率を調査することは非常に意味があります。ただし、それだけでなく離職状況の中身についても、リテンションすべき人材を繋ぎとめることが出来ているか、それ以外の人材についても適正な定着率が保てているかはそれ以上に大事なポイントです。これらについて、企業は自社の基準と目標を決め、適正化のための施策を実行していくことが肝要です。

 ぜひ、皆さまの会社でも「適正な離職率」について議論をしてみて下さい。

 では、久々に、Have a nice weekend!