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記事公開: ローパフォーマーへの対応 「月刊 人事マネジメント クラウド人事部長に聞く経営人事のQ&A」

 こんにちは、組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。

 「月刊 人事マネジメント」の2016年7月号(連載6回目)が、記事掲載より1ヶ月経ちましたので、記事内容をシェアをさせて頂きます。みなさまの参考になればと思います。

※こちらは前回のエントリです。

記事掲載:ローパフォーマーへの対応 「月刊 人事マネジメント クラウド人事部長に聞く経営人事のQ&A」 - hrstrategist’s blog

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以下、記事内容です。雑誌のページをJPG化して一番下にも貼りましたので、どちらか読みやすい方でご覧頂ければと思います。

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 急成長するなかで組織と人事に関する課題に日々悩むベンチャー企業の創業社長と、俯瞰的視座から人事アドバイザリーとして社長を助ける「クラウド人事部長」との対話の第6回目。今回はなかなか表だっては取り上げづらい、しかし経営者・人事担当者には避けて通れない、ローパフォーマーへの対応がテーマです。

・第6回:ローパフォーマーへの対応

“ロー”と“ノー”の峻別
社長:前にも相談したかもしれないけど、”ローパフォーマー”への対応に悩んでいるんだ。

クラウド人事部長:頭が痛い問題ですよね。とはいえ、本人だけでなく周囲に与える悪影響を考えると放置はできません。
 ちなみに、いわゆる”ローパフォーマー”には2つの種類があることは認識されていますか?

社長:いや、意識したことがなかった。それってどういうこと?

クラウド人事部長:もしその人がいなくても、業務を行ううえで全く困らないかどうかです。ちなみに、社長の言う”ローパフォーマー”はどちらですか?

社長:うむ、どっちだろう…

クラウド人事部長:もしその人抜きでも職場は困らない、その存在自体がむしろ他の人たちに迷惑になるような人を私は“ノーパフォーマー”と呼んでいます。このような人はごく稀ですが、残念ながら一定の確率で存在します。この方たちには、いかにして「お引き取り願うか」を考える必要があります。

社長:なるほど。あまり考えたくない話ではあるけどね。

クラウド人事部長:一方、いないよりいた方がましですが、給料に見合った働きはしていない人たちは、本当の「ローパフォーマー」です。この人たちには、その働きに見合った報酬水準を見極め、適用すればよいのです。

社長:それはつまり、その人たちの給料を減らすということだよね。それって、口で言うほど簡単ではないのでは?

クラウド人事部長:もちろん簡単ではありません。とはいえ、そもそも働きに見合わない報酬を与えていた会社と経営者にも責任があります。その人たちが余分に受け取っていた報酬は、本当はより頑張っている別の従業員がもらうべき分だったはずです。それを「あるべき姿」に是正するために、経営者はリーダーシップを発揮すべきと私は考えます。

社長:おっしゃる通り、俺の責任だよね。それについては異論はない。だからこそ君にアドバイスをお願いしているんだ。

クラウド人事部長:ありがとうございます。社長が同じお考えで安心しました。

準備は周到かつ手際よく
社長:それで、具体的にはどうすればいいんだ?

クラウド人事部長:自社の報酬制度が「減給」を想定していない場合には、まずはその制度を変えることから始めないといけません。人事制度の変更ですから、ある程度の準備・移行期間が必要です。さらには、制度変更後も数年間の調整期間を設ける場合もあります。

社長:長期に渡る周到な準備が必要ということだね。それだけ時間が掛かるのでは、思いつきでやるという訳にはいかないね。

クラウド人事部長:とはいえ、対策を先送りして、事態が悪化してから慌てても手遅れです。禁煙や生活習慣病の予防と同じです。

社長:耳が痛いな。でも、制度を変えたとしても、本当に減給をしたら本人のやる気がなくなるのでは?

クラウド人事部長:元々やる気があり、会社に貢献している人には関係ない話です。もしやる気があるのにパフォーマンスが低いなら、その仕事に向いていないと判断せざるをえないです。

社長:最悪、その人が辞めてしまうかもしれないよ。

クラウド人事部長:別の仕事をするのがおそらく本人にとっても幸せではないでしょうか。それに、パフォーマンスに見合わない報酬を会社が長期間払い続けることはできません。会社に貢献している人たちが不公平に感じ、会社へのロイヤリティが下がったり、離職やモチベーション低下の原因となるほうがよほど重大な損失です。

社長:でも、誰が本人に伝えるんだ?俺はやりたくないなあ。

クラウド人事部長:直属の上司が伝えるのが基本です。もしその上司では頼りない場合はその上の上司ですね。
 伝え方も慎重に行う必要はあります。本来は、人事評価のフィードバックや日頃のコミュニケーションでちゃんと「ダメだし」をしておくことが大前提です。「今のあなたはここを改善しないといけない」と率直に伝え、それを受けて本人が改善に取り組むのに十分な時間を与える必要があります。このプロセスを経ることで、パフォーマンスが改善する場合もあります。まあ、確率としては多くないのですが。

社長:いきなり伝えるのでなく、あらかじめアラームは出しておくということだね。

クラウド人事部長:おっしゃる通りです。本人に「会社が悪い」と言い訳をさせないためにも、単に給料を減らすだけでなく、会社として改善の手立ては尽くすべきです。そうしないと本人としても納得感が生まれません。そして、そもそも「なぜそんな従業員を採用したのか」と振り返り、反省しないと、また会社は同じ失敗を繰り返します。

責任は経営者が負うべし
社長:なんであんな人を採ったんだろう。魔がさしたのか。

クラウド人事部長:「あんな人」でも通ってしまう甘い採用基準が原因でしょう。または、基準がその時によってブレたりしませんか?候補者が少なければ来た人の中で決めてしまうとか。欠員補充が至上命令だと、そのような「数合わせ採用」が横行します。

社長:確かにそれは身に覚えがある…

クラウド人事部長:応募者は自分から悪いことは言いませんし、ボロが出ないように取り繕います。それに騙されて採用しても、入社後に化けの皮ははがれます。でもその時は手遅れです。そういう人は「自分は(この会社では)ローパフォーマーだ」と自己認識していませんから、反省も改善もあまり期待できません。

社長:だからこそ適切な対応が大切なんだよね。

クラウド人事部長:はい。現場の上司がローパフォーマーと向き合い、適切な対応を行うことが大事です。そして同時に重要なのは、対応を「現場任せ」にはしないことです。実際には、現場のマネージャーは自身の業績目標を達成することに必死で、任せておくとローパフォーマーには積極的に介入せず、「放置」しがちです。でも、その場合にあおりを受けるのは周りの社員です。「放置」はその人たちのモチベーションに悪影響を与えます。

社長:では、どうすればいいんだ?

クラウド人事部長:専門知識を持つ(または専門家の支援を受けた)人事が現場のマネージャーを積極的に支援することです。そして経営者が「何かあれば責任は自分が取る」というオーナーシップの姿勢を示すことも必要です。「自分は関係ない」という経営者の態度を感じたら、現場は失望し、腐ります。その意味で、社長も覚悟を決め、腹を括る必要がありますよ。そして、最も避けるべきは、「問題の先送り」です。先に送ったところで問題が悪化することはあっても無くなることはありません。原因を取り除く決断をどれだけ早くできるかです。

社長:わかった。俺も腹を括ってがんばるよ。
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