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記事公開: 人件費のコントロール 「月刊 人事マネジメント クラウド人事部長に聞く経営人事のQ&A」

 おはようございます、組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。

 「月刊 人事マネジメント」の2016年8月号(連載7回目、最終回!)が、記事掲載より1ヶ月経ちましたので、記事内容をシェアをさせて頂きます。みなさまの参考になればと思います。

※こちらは前回のエントリです。

記事掲載:人件費のコントロール 「月刊 人事マネジメント クラウド人事部長に聞く経営人事のQ&A」 - hrstrategist’s blog

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以下、記事内容です。雑誌のページをJPG化して一番下にも貼りましたので、どちらか読みやすい方でご覧頂ければと思います。

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 急成長するなかで組織と人事に関する課題に日々悩むベンチャー企業の創業社長と、俯瞰的視座から人事アドバイザリーとして社長を助ける「クラウド人事部長」との対話の第7回目。今回は、「人件費のコントロール」がテーマです。

・第7回:人件費のコントロール

現場はすぐには止まれない
社長:うーん、今期は売上の伸びがイマイチなんだ。赤字を回避するためにも、なんとか経費を減らさないといけないよね。何かいいアイデアある?特に人件費の比率が上がっているようだ。

クラウド人事部長:あまり安易に考えないほうがいいですよ。「経費節減」の掛け声のもとで、本当に必要な経費まで削ることは避けるべきです。一方、もし簡単に減らせる経費があるなら、これまで無駄遣いを見過ごしてきたということです。まずは会社にとっての費用の「優先順位」を見極めるべきです。

社長:個別の経費の必要・不要をまず判断するということだね。ただし、それを細かく見極めるには手間が掛かりそうだ。

クラウド人事部長:その手間をさぼるために、「一律〇%カット」の方法を採る会社もありますが、おすすめできません。ちなみに、「赤字になるかも」と判明したのはいつですか?

社長:先月の決算を締めたら、売上が予算をだいぶ下回っていたんだ。営業部長は、今月以降も「売上予算達成は厳しいかもしれない」と言っていた。

クラウド人事部長:費用はどうですか?予算で計上していても先送り・削減できそうな費用があるはずです。採用費などは最たるものですが。

社長:増員の計画は今のところ変えていないけど、今の成長ペースだと予算で見込んだ人数は必要ないかもしれないね。ただ、現場はいつも「忙しいから人を増やして欲しい」と言っているからな。

クラウド人事部長:早めに手を打たないと、現場は惰性で予算計画通り動き続けますよ。「売上予算は未達」にも関わらず「経費予算は達成」、「結果は赤字」というのはよくある話です。

社長:えっ、どういう意味?

クラウド人事部長:売上・利益の進捗に関わらず、予算の範囲内では好きに費用を使っても良いと現場が考え、売上が未達でも、経費は予算通りに使い切ってしまうのです。

人材の採用は「投資」
社長:うちの会社はベンチャーなのに、役所みたいな発想だね。困ったもんだ。そうならないためにはどうすればいい?

クラウド人事部長:利益目標の達成こそが「目標」であり、売上増、経費減は単なる手段であるという優先順位付けが従業員の中に徹底していないと、「利益より売上優先」「予算内なら経費は使い切ってよい」という、部分最適の発想になります。
 とはいえ、そもそも自社の売上・利益が最低でも月次で従業員に公開されていなければ、自身の活動がどう「利益達成」に結びついているか従業員は判断できません。全体最適が見えなければ、自身に課された局地的な部分最適目標をひたすら追うしかないのです。

社長:経営情報の公開をしなければ、「利益達成」を目標にできないということか。

クラウド人事部長:それだけではありません。個人の報酬に結び付く人事評価の基準が、「部分最適」の指標に基づくものであれば、行動がそれに従うのはやむを得ません。これは従業員に誤ったメッセージを伝えている会社側の責任です。

社長:従業員は「自分の得にならないことはやらない」と考えるわけだね。思ったより問題の根が深いなあ。そういえば採用費の話が出ていたけど。

クラウド人事部長:現場の責任者は、予算を立てる時に「この売上を達成するためにはこれだけの人員が必要です」といって、要員計画・採用計画を立てがちです。しかし、売上が予算比で全く足りないのに人員だけ増えると会社の収支はどうなるでしょうか?そもそも採用した人がすぐに売上・利益をもたらしてくれるでしょうか?

社長:どんな人でも会社に貢献できるレベルになるまでは最低数ヶ月は掛かるよね。

クラウド人事部長:その通りです。誰かを採用したら、その人の採用費・人件費は当期の売上・利益には貢献せず、その期の費用純増になると想定すべきです。

社長:とはいえ、継続的に人を採っていかないと、会社が成長していくことはできないよね。それに、退職者の欠員補充も必要だから採用を止める訳にはいかないよ。

クラウド人事部長:賛成です。人材の採用は、短期的には「費用増」ですが、長期的には収益に貢献する(可能性がある)という点で、「投資」として捉えるべきです。気を付けるべきは、発生する費用と会社が得る収益にはタイムラグがあることです。採用費や人件費は、資産計上・費用繰延等の会計処理はできませんので、会社は会計上の許容範囲内で「要員計画」「人員計画」を立てる必要があります。採用数とそのタイミングのコントロールが大事なのです。

社長:なるほど。でも、要員計画と人員計画の違いがよく分からないなあ。

クラウド人事部長:業務に必要なヘッドカウントを見積もるのが「要員計画」で、その業務に適した人の要件を具体的に定義し、誰を当てるかを決めるのが「人員計画」です。「要員計画」だけで予算はある程度策定できますが、「人員計画」まできちんと作りこむと、必要な人員を調達するための採用費などが具体的に見えてくるので、より詳細に予算に反映することができます。

社長:要員計画でヘッドカウントと人件費をある程度固め、人員計画で「誰」を充当するかの要件を明確化するわけだね。そこまで見えれば、かなり現実的な予算が作れるね。

クラウド人事部長:要員・人員計画は事業計画と連動すべきであり、特に売上・粗利(売上総利益)が予算に未達の場合、連動して随時修正すべきです。そして、このプロセスを実行するためには、綿密な予実(予算実績)管理を行う必要があります。
 現場は目先の多忙さを解消することを最優先に考えがちですから、採用活動を現場任せにすると、要員・人員計画のコントロールが効かなくなります。全社視点・長期的観点からの要員人員計画を立て、それに基づく当期の人員計画を予算に反映し、予算の達成状況(実績)に応じてそれを修正していくというプロセスが必要です。

社長:人事というより、むしろ経営企画的な仕事のようだけど。

クラウド人事部長:そうなのですが、人事の経験・専門性がないとできない仕事です。さらには、人件費のコントロール範囲として昇給率・賞与引当額等も戦略的に考える必要があります。加えて、等級別の人員構成を鑑みて5年、10年先を見越した人材ポートフォリオを組むことも大事です。ここまでできれば、新卒採用をメインにして足りない人材の補充を中途採用で補充するといった、戦略的な採用計画ができるようになりますよ。

社長:うちの会社もそこまでできるようにならないといけないね。頑張るよ!

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