副業・兼業を推進する前に押さえておくべきこと(1)
こんにちは、組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。
東京地方は桜の季節です。我が家(マンション)の前の公園のサクラは満開ですが、今年は場所によって開花の状態にかなりバラツキがあるそうですね。
さて、先日「副業採用」というエントリを書きましたが、これに関連して副業の話をもう少し掘り下げてみようと思います。
「副業採用」のススメ - hrstrategist’s blog
そもそも、「副業」という単語の定義とはどのようなものなのでしょうか。久々に手元の「新明解国語辞典 第三版」で調べてみました。
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副業:
内職
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なんと、シンプルな。
仕方がないので、「内職」の意味も調べます。
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内職:
一 本来の仕事の片手間にする仕事。〔俗に、授業・(会議)中に、本題を聞いているふりをして、別の事をする場合にも使われる〕
二 主婦が家計の、学生が学費・生活費の足しにするための賃仕事。〔後者は特に、アルバイトと言う〕
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最近使われる「副業」のニュアンスとは多少異なりますね。私の「新明解 第三版」は1981年に発行なので、当時はサラリーマンが副業をするという事は全く想定されていなかった雰囲気が伝わります。裏を返せば、「副業」の位置づけや人々の意識も近年変わってきているということでしょう。
その中で、多くの企業がなぜこれまで「副業禁止」のスタンスを取っている(いた)かについては、一応押さえておく必要があると考えています。
大まかにいうと、以下の3点が理由と考えられます。
1.複数の雇用元に雇用されることによる労働時間管理と安全配慮義務の問題
2・競業・情報漏洩の問題
3.レピュテーションリスクの問題
まずは、労働時間管理と安全配慮義務について。労働基準法第38条では、
「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。」
としています。よって、本業と副業を通算して8時間を超える労働をすると、時間外労働(残業)の割増賃金を払わなくてはいけなくなります。その場合に、割増賃金を本業の会社と副業の会社のどちらが負担すべきかが問題となります。これについては、明確な決まりは存在していないようです(「後から雇用契約をした側」が負担すべきなのでは、という解釈をされる方が多いようですが、特に判例なども無いようですね)
※参考
正直なところ、この辺の考え方がはっきりしないと、従業員が副業を始めた結果として従来の労働時間に対して追加で割増賃金が発生するというリスクを会社は考えないといけない訳です。
問題は割増賃金だけではありません。例えば、もし副業を行っていた従業員が死亡し、その原因が(例えば)通算で月100時間以上の時間外労働を行った結果であると類推される場合に、それが労災認定されるのか、また民事上の損害賠償が発生した場合に本業・副業の雇用主の責任(按分)はどのようにして決まるかなど、不透明な部分が多くあります。
※参考
このように不確定な要素が多くある中では、少なくとも「雇用される労働者」という立場での従業員の副業・兼業に関して会社が「禁止」することは、リスク回避の点では無理もないかなという気がします。
この話、続きます。。