hrstrategist’s blog

組織人事ストラテジストのつぶやき、業務連絡など。。

人事評価のフィードバックで考慮すべき4つのポイント

 こんにちは、組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。東京地方、今日は冷え込んでいます。冬の季節の到来ですね。

 先日、お手伝いをしているある会社の方から、人事評価の結果を上司から部下に伝える「フィードバック」について、「こうすれば良い」「あるべき姿」のアドバイスが欲しいと依頼されました。

 せっかくの機会ですから、自分なり整理した「フィードバック」のあり方について、シェアをしてみようと思います。以下、参考にしてみてください。

 そもそも、「フィードバック」という言葉の意味は何なのでしょうか?私自身が「フィードバック」という単語を初めて聞いたのは、おそらく桑田佳祐さんの"KUWATA BAND"の曲名だった気がします(ちなみに、この曲のボーカルは桑田さんでなく河内淳一さんです)。

 それはさておき、いつも通り、手元の「新明解 第三版」をまず参照してみましょう。

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フィードバック:
(オートメーションの基礎となる自動制御に欠かせない方式で)ある個所で得られている効果や結果を、自動的にその発生源にもどして、その後の修正や調節の資料とすること。
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 なんだか分かったような分からないような感じですが、元は電気工学系の用語だったのですね。それが転じて、別の意味を持つようになったようです。

 Wikipediaも見ましたが、どうにもピンとこないので、いろいろと調べてみましたが、こちらにある、「大辞林 第三版」の解説が一番分かりやすいような気がします。ちょっと物足りないですが。。

kotobank.jp

「心理学・教育学で、行動や反応をその結果を参考にして修正し、より適切なものにしていく仕組み。」

 元の意味から転じて、「人の行動等に対して何らかの評価を行い、その人の行動の改善を促すことを目的としてそれを本人に伝えること」が、人事評価等におけるフィードバックの定義であるという解釈でよさそうです。

 重要なのは、「その人の行動の改善を促すことを目的として」という点です。つまり、評価結果を単に伝えるだけでは、フィードバックとしては不十分なのです。なぜその評価になったのか、どこを改善し、どこを伸ばせばより良い評価を得られるかを本人に示さない限り、何が良くて何が悪いのか本人は気付くことができませんから、本人が自ら改善の行動を起こすきっかけとなり得ません。

 最近話題になっている、「ゲーミフィケーション」(課題解決のためにゲームの要素を取り入れる)の考え方でも、フィードバックは重要な意味を持っています。スコアが示される(フィードバックされる)ことで、それを向上させるモチベーションが刺激されるということです。

ゲーミフィケーション - Wikipedia

「たとえば、「スコアカードのないボウリング」を考えてみてください。ただピンを倒すだけで楽しいでしょうか?」

www.salesforce-assistant.com

 では、人事評価のフィードバックを行う際に、具体的にはどのような点を気を付けると良いのでしょうか?

 本来的にフィードバックで伝えたい項目を私なりに整理すると、以下4点となります。

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1.業績に対するコメント(良い/悪い、期待に応えているか、否か)
2.1を受けて行動等に対するコメント(ここが出来ている/足りない)
3.目指す目標に対するコメント(こうすればもっと良くなる/昇格)
4.課題解決(2の課題改善&3の目標達成)へのアドバイス
 (「しっかりやれ」「がんばれ」等の曖昧なものでなく、具体的内容)
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 まずは、「1.業績に対するコメント」です。会社や上司の期待に結果がどの程度達していたか、いないかを伝えます。本人の自己評価とのギャップがある場合には、特に丁寧に話し合い、そのギャップをできるだけ狭めるようにします。

 続いて、「2.行動等に対するコメント」です、これは、行動面での「ここが良い」「ここが要改善」という評価を伝えます。この時には、抽象的なコメント(「君っていつもこうだよね」的な)では、説明に説得力が欠け、本人は何を言われているかピンと来ません。そうでなく、できるだけ具体例(「あの時あなたはこう行動したが、そうでなくこうすべきだったのでは」的に)を示すことで、本人の納得度が高まります。

 上記2点は、過去に対する「振り返り」でしたが、加えて、その人の将来の成長に向けたアドバイスである「3.目指す目標に対するコメント」(例えば「管理職を目指すには対人コミュニケーションのこの辺を改善しよう」等)を伝えます。これには日頃から、本人のモチベーションや将来のキャリア目標などを予め聞いておく必要がありますね。

 最後に、2、3で提示した課題を解決、改善するために、具体的にどのような行動をしていくか、「4.課題改善のアドバイス」をします。そもそも、期待された成果が挙がらないのは、その人の行動の方向性が間違えているのか、行動量が足りないのか、能率が悪いのか、いずれかに原因があるはずです。そして本人は何が問題なのかに気付けていない(無意識)からこそ、行動が改善されていないのです。

 よって、ここでのアドバイスは、「もっとがんばれ」とか「適切にやりなさい」といった抽象的なものでなく、その人が、「適切な行動」をするのを妨げる原因を掘り下げた上で、それを改善するための具体的な指導を行うのです。

※例えば、遅刻が多い社員に対して、原因が「深酒による前夜の夜更かし」である事を突き止めた上で、「1日〇時間以上の睡眠時間を確保すること」「深夜〇時以降の飲酒を止めること」「決められた酒量を守ること」を約束させ、さらには定期的に順守状況を申告させるといった対処法が考えられます。もちろん、すべての部下にそこまで踏み込む必要はありません。相手に合わせて、本人が納得して迷わずに行動できるレベルまで「やるべきこと」を細かくブレイクダウンしていく事が要点です。

 そして、上記のような「行動の変容」を促進するインセンティブもしっかり明示します。端的にいえば「信賞必罰」です。日本の多くの企業ではこれが出来ていないように思えます。上司の求める成果・行動を挙げなくても許され、放置される、かつ人事評価もネガティブな評価を上司が付けるのを恐れ、さらには人事制度上で降給等の処遇悪化の仕組みがなかったりします(これは制度上の問題なので「評価・報酬制度を変えましょう」という根本の問題になってしまいますが)。

 という訳で、これらの4つのポイントを意識し、実践してみてください。手間は掛かりますが、長期的にはそれ以上の果実がもたらされるはずです。

 という訳で、Have a nice weekend!