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「AI読み」の傾向と対策(3)「AI読み」な方とのコミュニケーション

 こんにちは、みぜん合同会社 組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。

あっという間にゴールデンウイークも後半ですね。最近の東京地方は湿度も低く、適度に涼しい気候でした。もしかしたら、1年で最も快適な季節かもしれません。暑さと湿気が大の苦手な私としては、これからどんどん暑くなっていくこれからの季節は、できれば勘弁して欲しいのですが…

 という訳で、ゴールデンウイーク最中の更新になってしまいましたが、前回、前々回のエントリの続きとなる、「AI読み」の話の続きです。これまでに、「多くの日本人(大人も含まれます)の読解力が意外な程低い」(上記記事ではその傾向を「AI読み」と表現をしています)という記事の紹介と、それを改善するために、論理性(論理的思考)と国語力をどう鍛えていくかについて取り上げてきました。

hrstrategist.hatenablog.com

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 今回のエントリでは、ちょっと視点を変えてみます。

 前回までに取り上げた、「論理性と国語力の強化の必要性」は、それはそれで重要なのですが、往々にしてそれだけでは問題が解決しません。というのも、コミュニケーションとは「送り手」と「受け手」の双方向で情報をやり取りするものであり、どちらか一方(例えば送り手)のみが読解力向上の努力をしても、もう一方(例えば受け手)の読解力が低いままでは、質の高い正確なコミュニケーションは成り立ちません。

 「AI読み」をして理不尽に「逆ギレ」する顧客や従業員が少なからず存在するという前提で、そのような人たちとどのようにコミュニケーションを取るかという問題は、意外と重要かつ、見落としがちな観点ではないでしょうか。そこで、「AI読み」な方たちとのコミュニケーション対策について考察したいと思います。

 現実的な喫緊の課題として、日々の仕事やプライベートにおいて、「AI読み」な方たちとどのようにコミュニケーションを取り、意図を正しく伝えるか、そのためには何を気を付けるべきか等について知っておくことは、決して損にならないはずです。

 そもそも、少なくない割合の人が「AI読み」レベルの読解力である以上、まずはその現実を認めた上で、「AI読み」な方たちに合わせ、コミュニケーションの手法に工夫をする必要がある事は納得できるでしょう。

 そのような人たちに対しては、(文法上正しい)「書いてある通り」の意味で理解してもらえるという期待をしてはいけません。何らかの言いがかりを付けられた際に、「そこに書いてある通りの意味なのですが、何か?」といった「理屈」で反論しても相手には通用しないと思った方が良いです。

 「AI読み」な方たちは、(当然ながら)「AI読み」をしている訳ですから、文章の意味を書いてある通りに正しく理解していない確率が高いのですが、その人たちがどうやって新たな(間違えた)「解釈」を「捏造」するかというと、前段階として、その人たちが元々持っている、そもそもの「思い込み」というものが存在し、それが彼ら彼女らの「解釈」に影響します。

 彼ら彼女らは、こちらが書いたり話したことから、自身の「思い込み」に沿って、都合の良い部分だけつまみ出して勝手に解釈し、時には(元の論旨とは異なった自身の解釈により」)「あなたは間違えている」と相手を非難したりします。

 残念ながら、そのような反応を完全に防ぐことは難しいでしょう。よって、このような事が起こり得ると認識し、その上で対策を考える必要があります。

 まず第一に、「AI読み」な方たちは(自身の思い込みに応じて)勝手に曲解しますので、こちらから伝えようとするメッセージの意図・論旨自体を相手に合わせて変える必要はありません。ただし、無用な誤解、曲解を減らす(テクニカルな)ための努力はすべきです。
 
 具体的には、複雑な言い回しは出来る限り避けるのが賢明です。直感的に意味が取りにくいような表現を使うなという事です。「レトリック」などは極力使わないことです。

 後世に残る芸術作品を作る訳ではありません。どんなに高調な美しい文書、演説であっても、伝えたい相手に伝えたい意味が十分に伝わらないのであれば、そのようなものに価値はないのだ、と割り切りましょう。

 思い返してみれば、「AI読み」の特徴とは、以下の通りでした。

「『……のうち』とか『……の時』『……以外』といった機能語が正確に読めていない。」

 と、このように指摘されている訳ですから、「機能語」を出来る限り使わず、その中でも特に、「…以外」といった、意味がひっくり返るような語を使わずに、ストレートな流れで書く(話す)という手法は、「AI読み」な人たちへの有効な対応策になり得るでしょう。

news.yahoo.co.jp

機能語(キノウゴ)とは - コトバンク

 

 簡潔かつストレートな表現を心掛けることによる別のメリットもあります。私もやりがちなのですが、抜け漏れなく情報を伝えようとして情報を詰め込んでしまうと、本当に伝えたいメッセージの焦点がボケてしまい、かえって意図が伝わらなくなります。(役所などの資料でありがちな)小さいフォントでスライドに沢山の文字を詰め込むと、見る側がゲンナリしますよね。

 「余白」「引き算」の美学といった言葉があるように、伝える情報を絞ることにより、本当に伝えたい大切なメッセージはよりストレートに、強く伝わります。

 まずはシンプルに、短く、最低限に。あとは必要に応じて付け加えればいいのです。

 もう1点、気を付けた方が良いポイントがあります。それは、「AI読み」な方たちとは、議論で勝敗の決着を付けようとしない、言い換えれば、いわゆる「論破」を目指さないことです。

 そもそも、「論破」とは、(再々度)「新明解 第三版」によれば、

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論破:議論して相手を言い負かすこと。
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というのものです。言い負かすというのは、もちろん「怒鳴り合って声の大きさを競う」のでなく、より筋の通った(論理的な)主張をどちらがしているかを判断するものです。

 ところが、「AI読み」の方たちは読解力が低いので、議論の優劣を判断できません。お互いのルールの解釈が違う(勝敗を決める採点基準が異なる)ので、競うことができないのです。こちらが勝ったと思っても相手はいつまでも負けを認めることがありませんし、逆に向こうが一方的に「勝った」と宣言するかもしれません。

 そのようなやり取りが不毛かつ徒労であることは言うまでもありません。

 もし、「AI読み」の方たちに(当方からすれば筋違いだと思われる)言い掛かりを言われた時には、まともに取り合わず、先方に事実誤認がある場合にはその訂正を(最低限)した上で、「けしからん」等の感情的な意見に対しては、「貴重なご意見ありがとうございます。参考にします。」と返せば、それで良いのです。

 「論理」と「感情」の話はこのBlogでも何度か取り上げていますが、原則は、「論理が前提で感情に配慮(相手への共感を持つ)」です。個人的には、この辺の機微は、以前に経験した労働組合との交渉でだいぶ鍛えらえました。

 以上、3回に分けて、AI読みの話を取り上げましたが、何らかの形でみなさまの参考になれば幸いです。

 では、Have a nice Golden Week!

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