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組織人事ストラテジストのつぶやき、業務連絡など。。

ノーベル賞学者が教える、正しい「行動経済学」的な面接とは?

 こんにちは、みぜん合同会社 組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。

 毎年、ゴールデンウイークの翌週は比較的道路も空いていますし、気候も良いのでよく遠出をします。 この週末は家族と野沢温泉に行ってきました。野沢温泉には過去に何度か旅の途中に立ち寄ったことがあり、外湯にも入浴したことがあったのですが、今回は旅館に宿泊し、ゆっくり滞在することができました。おかげ様で(?)旅館の内湯だけでなく、2日間で外湯も6か所制覇を達成です。今度は連泊をして、全ての外湯(13か所あります)の制覇を目指してみたいですね。

外湯の紹介 : 北信州野沢温泉 観光協会オフィシャルウェブサイト

 温泉に来ると、生来の貧乏性で多くの回数を入らねばと(あまり長く漬かっていられない体質)頑張ってしまいます。湯治は忙しいのです。そんな合間に読んでいた本の中で、大変興味深い内容がありましたので、紹介をさせていただきます。

 「ファスト&スロー」という本ですが、行動経済学への業績でノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カールマン氏の著作です。

 カールマン氏とこの本に興味を持ったきっかけは、「マネーボール」で有名なマイケル・ルイス氏の著作、「かくて行動経済学は生まれり」を読んだことです。この本ではカールマン氏と研究の盟友であったエイモス・トヴェルスキー氏の交友と、彼らの研究によって「行動経済学」という学問が生まれる経過が描かれています。
(ルイス氏の本はどれも面白いのでお勧めです)

  

 「ファスト&スロー」については、「人間がいかに合理的に判断しないか」という、脳のバイアスについて書かれており、(多少冗長でありつつも)大変面白く興味深い内容なので、興味がある方はぜひご一読いただければと思います。

 その中で、ひときわ目を引いたのが、上巻の21章、「直感&アルゴリズム」の中にある、「面接のやり方」の話です。この章では、専門家の判断(臨床的予測)よりも、単純な統計的アルゴリズム(統計的予測)を使った予測の方が、より精度の高い結果が出る(言い換えれば、専門家はアルゴリズムに負ける)事実と、なぜそのような事が起こるか、さらには、そのような事実は(特に専門家にとっては都合が悪いので)無視されがちである事を解説しています。

 その中で、カールマン氏自身の経験として、自身がかつて母国イスラエルの軍隊にいた際に、召集された新兵を面接で各部隊に振り分ける為の面接のやり方を改善した話が出てきます。彼が採用した方式は以下のようなものだったそうです。

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・面接官がいくつかの人格特性(責任感、社交性、誇りなど)を評価し、個別に点数をつける
・それぞれの特性について一連の質問を準備した
・質問は、「過去の事実」を訊ねるもの(就いた職業の数、遅刻・欠席(欠勤)の頻度、友人と交際する頻度、スポーツへの興味と参加の度合いなど)で、それぞれの分野で過去にどれだけうまくやってきたかを客観的に評価するのが趣旨
・(ハロー効果を防ぐため)面接官は6つの特性を決められた順序で質問し、次の質問に移る前に5段階で採点する(それ以上のことをしてはいけない)
・面接が終わったら、面接官は最後に5段階の総合評価を付ける
・上記7つの項目を計算式に従い、コンピュータ処理した結果に従い、配属を決める
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 上記の方式を採用したのは1955年頃だそうですが、その面接方式は有効性が確かめられ、45年後(カーネマン氏がノーベル賞を獲った後)でも、当時とほぼ同様の方式が採用されていたとのこと。とはいえ、カーネマン氏によれば、この面接方式でも「もちろん完璧にはほど遠く、「まったく役立たず」から「いくらか役に立つ」へと進歩した、というのが適切」とのことですが…

 ここで注目すべきポイントは、まず「面接官に最終判断をさせないこと」です。「ハロー効果」とは、面接官や評価者研修では必ず出てくるキーワードですが、繰り返して注意喚起をしないと(してもなお)、無意識に面接官や評価者が陥ってしまう、強いバイアスです。そこで、上記の面接プロセスでは個別の特性評価が他の評価に影響を与える影響を下げるための工夫がされています。

 また、直感的判断による最終評価については、当初はカーネマン氏は懐疑的だったそうですが、評価結果は他の項目と同様の精度だったそうです。カーネマン氏は(「大きな驚き」だったそうですが)ここから得た教訓として、「客観的な情報を厳密な方法で収集し、ルールを守って個別に評価した後」に限って、直感的評価は信用できるとしています。

 実は、上記のような方法は、「構造化面接」と言われる面接方法です。構造化面接とは、事前に決められた質問と評価項目を準備し、面接官がそれを実施する面接で、構造化しない面接(面接官が自分の好きな質問をする)よりも、評価の妥当性が高いという研究結果が出ています(詳しく知りたい方は、下記の「採用面接評価の科学」をご一読下さい)。

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 人材採用における、各社の面接のやり方はそれぞれだと思いますし、熱心な担当者の方はこのような話はすでにご存じかと思いますが、もし、本記事をご覧になった方が、面接方法や採用プロセスについて新たな発見をして頂き、自社の採用プロセス改善の助けになれば幸いです。なお、お声がけ頂ければ、私がプロセス改善をお手伝いする事も吝かではありません!

 では、Have a nice day!

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