hrstrategist’s blog

組織人事ストラテジストのつぶやき、業務連絡など。。

すき家(ゼンショー)の調査報告書を読んで感じたこと(3)

 おはようございます。組織人事ストラテジスト 新井規夫です。

 ここ数日、東京は涼しくなって、長袖シャツを着ていても肌寒いくらいの時もありましたね。暑さの苦手な私にとっては非常に助かります。雨が降るとバイクに乗れないのが残念な面もありますが。。

 さて、すき家の件、前回・前々回の続きです。今回でようやく完結です。

すき家(ゼンショー)の調査報告書を読んで感じたこと(1) - hrstrategist’s blog

すき家(ゼンショー)の調査報告書を読んで感じたこと(2) - hrstrategist’s blog

 前回のエントリでは、ゼンショーすき家)の経営陣・人事が、状況を把握していた(報告書でもほぼ断定されています)にも関わらず、なぜ積極的な事態の改善がなされなかったかについて、掘り下げました。

 すき家社内に何が起きていたかを端的にまとめると、以下のようなストーリーではないかと思います。

・「24時間365日営業」という会社方針、プラス「社員の安全配慮より収益優先」という、(少なくとも2014年時点で見ると)世間から見たら非常識な「組織文化」が、これまでの事業の成功体験の元に自己肯定・強化されていった。

・そのために、「これまで何とかなってきた」という、「赤信号、みんなで渡れば怖くない」的な自分勝手な解釈が、経営幹部を始めとする社内に蔓延し、問題解決の優先順位が漫然と先延ばしにされてしまった。

・その歪みが、新メニュー導入、2月の大雪、景気回復による雇用情勢の変化など複合的な要因により、「アルバイト店員の大量退職」「大量閉店」という事象によって対外的に顕在化、問題化した

という事ではないでしょうか。

 残念ながら、すき家は、「当局の警告も無視し、法律を犯しながら労働者を搾取(極端な長時間労働)して収益を上げてきた」、と言われたとしても仕方がないのでは、と私には思えます。

 また、法令違反をした企業の存在により不公正な競争を強いられたという点で、競合の外食企業(特に同業の吉野家松屋あたり)は多大な損害を受けている訳で、その責任についても、本当はもっと世間的に取り上げられても良い気がします。アメリカあたりならゼンショーと競合他社の両方の株主から訴えられそうです。(日本の社会では、もともと「フェアな競争」という概念が薄いので、響かないのかもしれませんが。)

 なお、小川会長は、報告書が発表された際にも、取材に対して、

「(ブラック企業という)レッテルを貼られるということは非常に不本意」
「レッテル貼りはやめていただきたいという思いが強い」

という発言をされており、「本当に反省してるのか!」と改めて叩かれたりしていますが、まずは自社の過去の誤ちを、行動レベルだけではなく、考え方が間違えていたと素直に認め、報告書の提言を受けて、ゼロから組織文化を作り直すくらいの覚悟を持って問題解決に取り組んで頂きたいと、私は思います。そこまでの覚悟を持ってやらないと、おそらく組織は変わりませんし、どんな対策を取っても元の木阿弥になってしまいます(この動きを組織の「イナーシャ」と言ったりします)。それほど、成功した企業・組織文化を自己否定し変革するというのは大変なものだと思います。

すき家は「ブラック企業」か? 小川会長「レッテル貼りはやめてほしい」

http://www.bengo4.com/topics/1862/

 最後に、組織人である我々が、今回のすき家の事例から考えるべき事は、「もし自分がすき家の役員・社員だったら、何をしたか、何ができたか」という問題ではないでしょうか。

 もしあなたが、社長だったら、経営幹部・監査役・人事担当・コンプライアンス担当・内部監査担当・事業の管理職・現場のマネージャーだったら、何を考え、どう行動した(できた)でしょうか。

 はたして、TOPや周囲の経営幹部たちが「劣悪かつ慢性的な労働環境常態化(報告書より)」を是とする組織の中で、それに逆らって(評論するだけではなく)具体的な行動を社内で起こすことが出来たかどうか。

(報告書でも、すき家の経営幹部に対して「各自がそれぞれの立場から正論を言うだけで、具体的なアクションにつながらない、というすき家カンパニーの特徴」(28ページ)と、痛烈に皮肉っています。)

 正直なところ、私自身がその立場にあったとして、どこまでの行動が出来るかどうかは自信がありません。そう考えると、この事件は多くの人達にとって、決して他人事ではないと思います。
 
 すき家を叩くだけでなく(すでに各方面から言い尽くされていますし)、自身が属する組織でも(程度に差はあれ)今回のような「すき家」的な、「世間から見たら非常識な」悪しき組織文化が無いか、それにより本来なすべき正しい行いが阻害されていないか、もしそうであるなら、具体的にどのような行動を一人ひとりが起こすべきか、そのようなことを私自身でも考えたいし、折角の機会なので、ぜひ皆さんにも考えてみて欲しい、と思います。