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組織人事ストラテジストのつぶやき、業務連絡など。。

中途入社時の給料の決め方(1)

 こんにちは、組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。

 いよいよ12月、師走となりました。各地の降雪のニュースを見て、スキー好きとしては、ワクワク、ソワソワし始めているところです(落ち着け、オレ!)。

 それはさておき、私も独立してほぼ半年になりました。いつもお世話になっている皆さまのお蔭て元気に生き長らえております。感謝しております!

 今日のテーマも「中途入社時の給料の決め方」というマニアックな人事ネタですが、どうぞお付き合いください。

 以前に比べて、中途採用を積極的に行う企業は増えていると思います。むしろ、中途採用をしない企業の方が少数派になっているかもしれません。では、各社ではどのように中途入社者の給料を決めているのでしょうか。

 これは、大まかに分けて「会社に合わせる」か「応募者に合わせる」の2つのパターンがあります。前者は、新卒採用が中心で、年齢・年次による報酬管理(いわゆる「賃金カーブ」)を行っている場合や、自社で独自の基準を決めている、または査定をしている場合です。後者は、いわゆる「前職給料保証(考慮)」タイプです。

※「賃金カーブ」については、以前のエントリもご一読ください。

「定期昇給」「賃金カーブ」を疑え! - hrstrategist’s blog

 会社側、採用側で確固たる基準がある場合は、前者を採る場合は多いですが、応募者にとっては「現職または前職の給料との比較」は最大の関心事の一つであり、その意向を全く無視する訳にも行かず、何らかの配慮をするケースも少なくありません。

 まして、「あなたの給料はいくらです」と断言できる根拠を企業側が持たない場合は、「前職給料」という決め方は分かりやすいですし、少なくとも応募する社員にとっては妥当性があります。

 一方で、「前職給料」で採用をしている(かつ、成果主義志向の)会社において、採用した人の給料水準に対して課題感を持つ企業・経営者の話はとてもよく聞きます。曰く、「前職給料」が「他の社員と比べて高すぎる」人がいる、「成果に対して高すぎる」人がいる、などなど。

 まあ、「安すぎる」場合は会社としては課題でない訳で、結局会社にとっては、一旦決めた給料を(いろいろな理由・事情で)なかなか下げられないのが問題ということです。

※なお、本人との給料交渉においては、本人の希望が控えめであっても、会社側はあまり安く買い叩くべきではないと考えます。自分が「安く買い叩かれた」と本人はいつか認識するものです。そうなるとその人は会社へのLoyaltyを無くします。

 この問題に関しては、実は2つの別の話が複合しています。「入社時の給与の決め方(前職給料見合い額)が妥当なのか」と「入口(入社時)に値付けを間違えた時に、修正が出来る仕組みとなっているか」ということです。

 まずは「決め方」の問題です。「会社に合わせる」方法で入社時の給料を決めたのであれば、それが正しいか、間違っているかはあくまで会社の見立ての問題(自業自得)です。「応募者に合わせる(前職保証)」場合は、結局、前職の会社がどのような方式で給料を決めているかに依存することになります。

 現実的には、一部のベンチャー企業を除くと、未だ「年功・年次管理・賃金カーブ」という従来のいわゆる日本型年功序列(的)賃金制度(とその変化形)を取る企業が多数だと思われます。つまり、年功的な決め方をされた前職の給料をそのまま踏襲することになります。

 年功型賃金制度とは、「年齢・勤続年数に応じて給料が右肩上がり上がっていくもの」というのが一般的な認識だと思います。しかし、実はそれだけでは認識として十分でありません。歴史的にみると、第二次世界大戦直後、日本が貧しい時代の労使の認識は、いかに「会社が社員の生活を保障するか」が最も重視され、それを反映した形で、生計費を考慮した賃金=生活給を考慮した年功型賃金制度と賃金カーブが採られることになったのです。

 ここで、独身で生活費が多く掛からない若年時には給料は低く抑えられ、結婚して子供が生まれ、育てていく中で教育費等のコストが掛かる40歳代、50歳代により多くの給料を払い、かつ家族手当等の各種福利厚生を手厚くするという体系が出来上がりました。皆が定年までに勤め上げるという前提で、(退職金を含めた)生涯賃金が会社への貢献度とバランスするように賃金カーブが設計されたのです。

 その後、「職能資格制度」などの変化はありましたが、多くの(特に古くからある)日本企業では、未だに「生活給」「長期にて精算」という発想から完全には脱することが出来ていません。

年功型賃金制度における年齢・勤続年数と賃金・生産性の関係(イメージ)

http://next.rikunabi.com/tech/contents/ts_report/img/200402/000165/zu_2.gif

 上のグラフを見て頂くと分かりやすいですが、新人から一人前になるまでの時期(イメージとしては2,3年位でしょうか)、と、キャリアの後半(40代半ば以降あたり)においては、貢献度が給料を上回りますが、逆に20代後半~40代前半あたりは、給料に対して貢献度が上回る時期となります。

 これを考慮すると、中途入社時における前職給料の保証が必ずしも合理的でないことは理解出来ると思います。特に、「旧来型の日本企業に勤めている40代以上の人」は、「前職保証」でオファーをしてしまうと高値掴みとなるリスクが高いということになります。(ただし、これはあくまで一般論ですから、その人がハイパフォーマーであれば、差のつきにくい年功型賃金の元では「前職給与」がその人の価値を十分に反映しれていない(割安)という可能性もあり得ます。)

 とはいえ、それに代わる「絶対に間違えない給料の決め方」も存在しない、というのも一方で事実です。
 
 よって、「入社時給料は必ず間違える」ことを前提として、最初に決めた給料を「修正できるかどうか」「どう修正するか」が重要な問題になりますが、この話は次回に続きます(笑)。お楽しみに! 

中途入社時の給料の決め方(2) - hrstrategist’s blog