hrstrategist’s blog

組織人事ストラテジストのつぶやき、業務連絡など。。

WELQ問題と、感じる既視感(組織の「あるある」)

 こんにちは、組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。今日の東京地方は真冬に近い寒さですね。電車に乗っていても咳をしている人も目立ち始めていますので、体調管理には気を付けたいものですね。

 さて、ネット界隈で盛り上がっている、DeNAが運営する「ヘルスケア情報を扱うキュレーションプラットフォーム」である(らしい)「WELQ」の問題です。

blogos.com

www.buzzfeed.com

 各所からの批判を受け、DeNAは11月29日に「全ての記事を非公開」という処置を行ったようです。

 問題とされているのは、このサイトに掲載されている記事の多くが不正確で問題のある「医療デマ」であり、かつ他のサイトから内容をパクりつつ文章をリライトしている(らしい)ことのようです。

toyokeizai.net

togetter.com

note.mu

 私はこの件については専門家ではありませんので、「何がどう問題か」については上記の記事等をご覧いただければと思いますが、私が興味を持ったのは、「なぜ、こんな公序良俗に反する(と思われる)ことを、これまでDeNAは堂々とやっていたか」です。

 実際にDeNA社員に直接ヒヤリングをした訳ではないので、以下はあくまで憶測に過ぎませんが、「だいたいこんなことが起きていたんだろうな」と私自身の過去(に所属したいくつかの組織で)の経験上、既視感があり、ある程度想像ができますので、妄想をしてみることにしました。

■経営トップは無関心だった(のでは?)
 概ねこの手の問題が起きる場合、いわゆる「企業ぐるみ」で故意に悪質なことを行っているケースは意外と多くありません。おそらく経営トップ(社長や創業者の方ですね)は、この事業に関して熱意・関心は高くなかったのではないかと推測します。もし日頃から関心を持って記事の内容を見ていたら、「こんなのを流していたらマズい」、かつ、「自社のブランドに悪影響を与えるのでは」という認識は働くはずです。ところが、外部に指摘されるまで自浄作用は働かず、対応も後手に回っていることから察するに、トップは事業の収益やKPI等の「数値」だけをチェックしており、サービスの中身には全く関知していないし興味も無いのでしょう。日頃からサービスを見ておらず、状況を理解していなかったが故に、問題が拡散し「炎上」するまで危機感を持てず、適切な対応の指示を出せなかったのだろうと思われます。

■他部署の社員は冷ややかに見ていた(のでは?)
 恐らく多くの社員はこの問題を以前より認識しており、「まずいよな」と思っていたはずです。一方で、彼ら彼女らには他部署がやっているサービスに口を出す権限はありませんし、そもそも自分の仕事で忙しいので、わざわざそのようなお節介なことをするインセンティブもありません。社員数十名の会社ならともかく、もはや社員数数千名の大企業ですから、いち担当者が声を上げたところで事態が変わるとも思えませんですし。

■担当部署の社員も、嫌々やっていた(のでは?)
 彼ら彼女らも所詮はサラリーマンです。上司に指示命令されればそれに逆らうことはなかなかできません。特に新卒入社の若手社員にとってはなおさらです。まだ自分の価値観を確立していない若い人達にとっては、経験豊富で、かつ人事権を持つ上司に対して、「それはおかしいでしょう」「やりたくありません」と主張することがいかに難しいかは想像に難くありません。
(先日の電通過労自殺の件も、「逆らえない」という意味では、似たような状況だったのでしょう)

hrstrategist.hatenablog.com

■ではだれが悪いのか?
 確信犯的に意図して、この方向性を指示しているのはごく限られた人でしょう。具体的には事業の損益に責任を持つ事業責任者(と数名の取り巻き)です。その目的は、自身の手柄を誇り、経営者により高く評価をしてもらう(結果として高いRewardを得る)ことです。「自分の都合」を優先する人がリーダーの座に付いて大きな権限を握ってしまうと、このような事態は起こってしまいがちという典型的事例であると見受けられます。 
(あと、「いったい法務は何をやっているんだ」という話もありますが)

■これからどうなる?
 先日のPCデポの事件の際に、事件発生後の会社の自浄作用に関して、以下のようなコメントを書きました。同じことがDeNAにも当てはまるのではないでしょうか。

「その「実績」を基に社内で出世し、大きな権限を持つようになっているでしょう。たとえ、会社が過去の行いを懺悔し、悔い改めると宣言したとしても、経営陣が積極的にその人たちを要職から外すことは期待できません(これまでの業績を築いた手法を否定するという事は、今の経営陣の存在価値を自己否定することになりかねません)。

 結局、経営陣も含めて皆、「同じ穴のムジナ」だからです。会社が「方針を転換する」と謳ったところで、従来のやり方でのし上がった人達がいままで通り自分の上司として残るのであれば、従業員はその人たちのいう事を無条件に信じることができるでしょうか。」

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 DeNAに関しては、数年前にも「コンプガチャ」が社会問題になったこともありました。この手の問題が繰り返されるという事は、そもそも企業の組織文化、姿勢に問題があるのではないかと疑われても仕方がありません。もしそうでないのなら、このような事件の再発を防止する抜本的な対策を打ち出し、トップのコミットの元、(評価・報酬の仕組みの見直しも含めた)組織文化の改革をトップダウンで推し進めていかなければならないでしょう。

 「多くの人に、長期的に、ウソをつき続けることはできない」と仰っていたのは、確かライフネット生命会長の出口治朗さんだったと思います。「医療情報」という、社会的に影響の大きい問題でもあり、企業の姿勢が問われています。

 

※追記

本件に関し、DeNA守安社長のインタビュー記事が出ました。私の妄想、ほぼ全部当たっていたようですね。。(12/1)

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