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組織人事ストラテジストのつぶやき、業務連絡など。。

「ストレスマネジメント」のお話(3)

こんにちは、組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。

 そういえば、ノートパソコンを買い替えました。今まで3年使っていたPCが、二度目の液晶画面不調(以前は保証期間内で無料修理)となったため、そちらは修理の上「二番手」に降格し、メイン機を新調することにしました。

 機種は前の機種と(実質)同じモデルであるNECLavie HZです。なにしろこの機種は画面が大きいわりに重量が非常に軽い(本体重量1キロありません)のが売りでして、耐久性には不安があるものの、少し古めのモデルで値段の手頃な出物もあり、決めてしまいました。

nec-lavie.jp

 基本的な操作性等は前のPCと変わりませんが、電源の位置や液晶のヒンジの形状が変わっていたりと、それなりに改良はされているようですから、液晶画面もしっかりと改良されて、長持ちをしてほしい所です。

 さて、「ストレスマネジメント」のお話、続きです。これまで、ストレスマネジメントの定義や「誰」異なる2種類のストレスマネジメントについて、また、経営者や上司にありがちな「生存バイアス」の影響について解説しました。

「ストレスマネジメント」のお話(1) - hrstrategist’s blog

「ストレスマネジメント」のお話(2) - hrstrategist’s blog

■まずは関心を持つこと
 上記を受けて、本エントリでは「じゃあ、どうすればいいの?」という対応方法を考えたいと思います。とはいえ、具体的な「ストレッサーへのの対処方法」や「いかにストレスをやり過ごすか」等のノウハウは、それこそ、「ググる」ことで、専門家による解説を見ることができますし、関連の書籍もたくさん出ておりますので、専門家でない私からの説明ではここでは書かないことにします。

 一方で、「対処」に至る以前の話として、今ある状態が「何かおかしい、普通でない」と気付くことが実は非常にである、という点はぜひ強調したい点です。「問題発見」がすべての解決策の原点となるのは他のビジネス課題と同じですね。

 ところが現場では、そもそも本人や上司が気付かない、または、気付いたとしても問題を放置したまま先送りしてしまうというケースが少なくありません。私も以前に勤めていた職場でそのような事例を数多く見てきました。

 初期の時点で、何らかの「兆し」があったにも関わらず、それを見逃したり、気付いてもやり過ごした結果、問題がより深刻になり、結果的に取り返しのつかない事態になってしまうという事態もしばしば起こります。もしそうなったら、もう手遅れです。

 そうならない為に、どうすれば良いのでしょうか?

 経営者・上司(あと人事担当者)が、人に対して「関心を持つ」こと。それに尽きます。

 まずは、(生存バイアスを持ちがちな)経営者、上司が「ストレスマネジメント」の必要性・重要性に気付くことが始まりです(近頃の「働き方改革」の流れは(いろいろツッコミどころはありますが)追い風ですね)。

 その上で、上司は部下をよく観察して下さい。よく見ていれば通常状態との変化、異変に気付きやすくなります。「忙しい」などと理由を付けて逃げてはいけません。部下のマネジメント・育成は成果を出すのと同じくらい重要な上司の仕事です。意識して時間を費やしてください。自分たちに気を掛けてくれている、時間を費やしてくれていると部下に感じさせるのも、部下に対する大事なメッセージです。

※以下、過去のエントリからの引用です。
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「会社は上司(管理職)に、部下という「資産」を貸しているのです。そして、貸し手である会社は借り手である上司に対し、元本だけでなく、「部下の成長」という利子をつけて会社に返すことが求められているのです。」

部下は、"資産" - hrstrategist’s blog
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 その上で「部下のストレスマネジメント」をどうするかです。

 私は、これは身体の「健康管理」と似ているのではないかと考えます。健康管理で大事なのは、「予防」と「早期発見・治療」の2つです。例えば、生活習慣病を予防するために食事の節制をしたり、適度の運動をしたりしますよね。また、定期的に健康診断を受けて、病気の兆候を早く発見し、事態が悪くなるまえにできるだけ早く治療をしようとします。

 部下のストレスマネジメントも同じです。「予防」とはストレスの原因(ストレッサー)の除去、低減です。高い業績を上げるためには適度な緊張感を維持する必要がありますから、業績向上に正の相関があるストレッサーはストレスレベルをそれぞれの人の許容範囲を超えていないかコントロールするとともに、業績向上に相関がない、または逆相関のストレッサーに関しては徹底して減らす努力をします。

 そして、そのような予防措置にも関わらず、部下にストレス適応不全の兆候が現れたら、いち早くその兆しを察知して対処をするのです。

 「そんなの面倒くさい」「自分には関係ない」と思われるかもしれませんが、自分の感度の鈍さでもし部下がストレスの犠牲になり、取り返しの付かないことなったら、その責任を自身が(精神的に)一生負わなければいけなくなるのです(おそらくその方の家族からも責められ、恨まれるでしょう)。そう思えば、「部下のストレスマネジメント」が他人事で無くなるのではないのでしょうか。

 今回の記事を読んでいただき、少しでもストレスマネジメントについて関心を高めていいただき、日々の業務遂行に役に立てていただけると幸いです。

 では、Have a nce day!

「ストレスマネジメント」のお話(2)

  こんにちは、組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。

 東京地方は爽やかな秋晴れですが、部屋にこもってこのBlogの原稿を書いています。このところ週末はいつも雨(それも大雨)でしたが、今週末の連休はようやく秋晴れが望めそうです。

 「ストレスマネジメント」のお話、前回はストレスマネジメントの定義と、私の大学院時代の経験を書きました。今回は続きです。

「ストレスマネジメント」のお話(1) - hrstrategist’s blog

■「ストレスマネジメント」が適切でないと何が起こるのか
 ある人にとってストレスの原因(ストレッサー)が無視・放置できないレベルで存在し、かつ「ストレスマネジメント」がうまくいかないと、心と体が不調になるストレス反応が起こります。

 その程度は人により異なりますが、最悪の場合どのようなことが起きるかについては、河合薫さんのこの記事は大変参考になります。

wol.nikkeibp.co.jp

以下、記事の引用です。

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「過労死する人の多くが亡くなる直前まで「自分が死ぬほど疲れている」ことを自覚できず、「肉体の悲鳴」に気付くことができません。」

「もし、あなたが「忙しいのに慣れた」とか、「睡眠不足でも大丈夫」という状態になっていたとしたら、それは「見張り番が壊れてしまった」というシグナルであり、極めて危険です。」

「「過労自殺」は、単に「労働時間を短くすればいい」というものではなく、本人を追い詰める「仕事上のストレス」も同じように考慮する必要があります。」
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 過度なストレスと適切な対応の欠如により、「過労死」「過労自殺」という最悪の事態が起こりうるというリスクをよく認識すべきでしょう。

 また、河合さんが指摘されているように、往々にして本人は自身の不調・異常に気付けず、また正常な判断・意思決定ができない場合があります。だからこそ、周囲の人たちが本人の不調・異常に早く気付き、積極的に介入しなければならないのです。

■誰に対しての「ストレスマネジメント」か?
 「ストレスマネジメント」には、2つの種類があることに気が付きます。「自分自身」のストレスマネジメントと、「自分の部下(組織)」のストレスマネジメントです。

 前者は自分自身の問題です。自身が晒されるプレッシャー(ストレッサー)にどう対応するかの話です。セルフマネジメントですね。

 一方で後者は、「部下」という他人との関わり方の問題です(労務担当者の場合「同僚」が対象になりますね)。組織の成果に対して責任を持つ管理職にとって必須な視点です。あと、「上司」の立場であれば、自分が部下のストレッサーになってしまう危険性も認識する必要もあります。

■「ストレスマネジメント」クラスで気付いたこと
 とはいえ、そもそもの問題は、当事者自身が「ストレスマネジメントが必要なのだ」と気付かないことです。そういう人たちに「ストレスマネジメントが大事だよ」とただ言っただけでは聞く耳を持たれません。

 それに気付いたのは、大学院(慶應KBS、もう10年以上前です)時代、前回のエントリで書いた、「ストレスマネジメント」クラスを受講した時でした。

 このクラスは「選択科目」なので、「ストレスマネジメント」に特に興味がある学生のみが受講します。教室の中にいる学生の中で同級生たちを探して見てみると、ある傾向に思い当たりました。

 「戦略ゼミ」を選ぶような(そしてその後戦略コンサルティング会社にいくような)、いわゆる”優秀”な方たちは(確か)受講者の中に皆無だったのです(受講されていた方、ゴメンナサイ)。

 そのような方たちは優秀ですから、それまで仕事も完璧にこなし、これまで「ストレスマネジメント」を必要とする状況に遭遇したことも無かったのかもしれません。または、無意識に「自分自身」のストレスマネジメントをうまく行うこともできたのかもしれません。なので、「ストレスマネジメント」的な課題に対しては興味の優先順位が低く、他人事なのかもしれないとその時には感じました。

 そしてその時感じた直感、違和感は間違っていなかったのでは、と最近改めて感じるのです。

■「生存バイアス」の影響
 ストレスへの耐性には個人差があります。ストレス耐性が強い人は、そうでない人に比べて、より「無理をする」ことができます。その結果、実績を挙げ、より出世する可能性が高いと考えられます。

 結果、「強い」個人が出世競争で生き残り、上司・経営者となり、「弱い」人は出世競争から脱落していきます(個別に異なる事例はあるのは承知で、単純化・一般化しています)。

 そして、そのような人達が出世した結果「生存バイアス」が生まれます。そういう方は、往々にして、「自分は(例えば過重な労働時間、上司によるパワハラでも)これまで平気だった。耐えられないのはおまえが弱いからだ」という考え方(過剰な自己責任論)になりがちです。

 これは、いわゆる「生存バイアス」です。

※生存バイアスの解説
「脱落あるいは淘汰されていったサンプルが存在することを忘れてしまい、一部の「成功者」のサンプルのみに着目して間違った判断をしてしまうというバイアス。」

globis.jp

■「強者」の上司による「ストレスマネジメント」不全
 「自分の部下(組織)」に対するストレスマネジメントの初歩は、上司が部下の異変に「気付く」ことです。そのためには、上司は「ストレスマネジメント」的観点をよほど意識し、日頃から部下を観察するという行動が必要です。

 ところが、「強者」である上司はその必要性に気付かず、「自分は大丈夫だったから、部下も大丈夫だろう」という程度の軽い認識で、そのような行動を行う関心・優先順位は低くなります。

 それでは、「弱者」である部下がストレスへの適応不全を起こしている兆候に気付くことができませから、そのような上司の元では部下のメンタル罹患率等は相対的に上がりがちです。

 しかし、そのような上司は、問題を直視しません。あくまで部下の「自己責任」であって、自分に責任の一端があるとは微塵も思っていなかったりします。そして、「下らない」かつ「面倒くさい」、優先順位が低い問題として、事態を放置し、向き合わないのです。

 私自身の過去の企業人事の経験を振り返っても、部下のストレスマネジメントをきちんとやっている上司、部下が業務や人間関係で適応不全を起こしている時にきちんと向き合い、立ち向かえる人は、残念ながら非常に少なかったと感じます。

  この話、まだ続きます。

「ストレスマネジメント」のお話(3) - hrstrategist’s blog

 

「ストレスマネジメント」のお話(1)

 こんにちは、組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。

 東京地方はここ数日で一気に冷え込みましたね。個人的にはこの程度の気温はむしろウェルカムなのですが、。街中でダウンジャケットを着ている人がだいぶ増えたのを見ていると、寒がりの人は大変だろうな、と思います。ちょうど良い気候の時期って本当に短いですねえ。

 さて、今回は「ストレスマネジメント」について、少し書いてみようと思います。「ストレスマネジメント」って、どういうことなのでしょうか?

■「ストレスマネジメント」とは
 「ストレスマネジメント」でググってみると、以下のような記事が出てきます。大変参考になります。特に、「ストレス状況」「ストレス反応」に対して上手くつきあうのが「ストレスマネジメント」であるという説明は大変分かりやすいです。
(そういえば、「寒さ」「暑さ」もストレス状況と言えますね。。)

ストレスマネージメントとは

www.stresscare.com

 ちなみに、私自身もこれまで「ストレス」についていくつかエントリを書いています。

hrstrategist.hatenablog.com

hrstrategist.hatenablog.com

 上記の記事で、以下のような解説を書いています。

「プレッシャーというのは「外部からかけられる」もので、ストレスは「内面的に感じる」ものですね。なので、「プレッシャーが強くかかることによって、ストレスが生じる」という言い方ができます。」

 ストレスが発生する原因のことを、ここでは「プレッシャー」と呼んでいます。または、同様の意味として「ストレッサー」という言葉を使う場合もありますね。

ストレッサー - Wikipedia

 という訳で、何らかの原因(ストレッサー)によってストレス(反応)は心身に(往々にして良くない形で)発生する。それを予防したり、適切に対応する活動が「ストレスマネジメント」であると定義できるのではないでしょうか。

■「ストレスマネジメント」クラスの話
 大学院(慶應KBS、もう10年以上前です)時代に、「ストレスマネジメント」というクラスを受講しました。KBSは「ケースメソッド」という形式で授業を行うので、毎回「ケース」を予習し、当日のクラスでのディスカッションに備えます。

 そこでやった最初のケースが、「耳から脳が溶け出していると訴える公務員」でした。ケースの文章は、以下のように始まります。

「主訴:仕事をしてると、脳が溶け始め、溶けた脳みそが耳からあふれ出して止まらない感覚に襲われる。」

※以下のページから本ケースを購入できます。

www.bookpark.ne.jp

 なかなかショッキングではないですか。

 ところが、もっと衝撃的だったのは、クラス討議の後に渡辺直登先生がおっしゃった、以下のようなコメントでした。

「この人の症状はたいしたことありませんね。」
(とはいえ、「原因は深刻」ということでしたが)

 自分(達)がいかにストレスやその結果として表れる症状について知らないかを思い知らされました。そして、その後このクラスで、もっと(いろいろな意味で)凄いケース(笑)と、その対応方法などについていろいろと学ぶこととなりました。

(他にやったケースは、「自己臭恐怖で退職に至った技術者」など。。)

 以下は、このクラスで私が提出したレポートの中の一文です。

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(ケースを見て)私は「よくあることだな」と思うだけ。主観的な捉え方に大きな個人差があるからこそ、さまざまな症状の違いが表れる。実はそれが大きな問題で、特に職場では上司が自分の感覚で状況を判断し、大したことはない、何を我儘言っているのだ、と捉えがちである。結果、誤った対応をして会社と本人双方に不幸な結果(症状悪化、退職など)に至る事例は非常に多いと考えられる。私の過去で働いていた会社でも、会社側のケア不足で優秀な人が退職してしまうケースは本当に多い。
 
 私がストレスマネジメントを勉強した目的はまさにそれを防ぐことであった。自分が管理職の立場になった時に、従業員の事情を理解し、会社と従業員にとって最善の解決策を目指せるようになりたい。
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ここで書いた「目指す方向性」は、10年以上経ち、企業の管理職から「組織人事ストラテジスト」としてクライアントを支援する立場となった今でも変わりません。

 そういえば、この「ストレスマネジメント」を受講して気付いた、ある重要なことがありました。

 その話は次回のエントリでさせて頂きます。

 つづく。。

「ストレスマネジメント」のお話(2) - hrstrategist’s blog

「ストレスマネジメント」のお話(3) - hrstrategist’s blog

良い会議、悪い会議(3)「根回し」の功罪!?

 こんにちは、組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。

 いつの間にか10月です。日没も早くなりましたね。今年もあと3ヶ月、おそらくあっという間なのでしょう。

 さて、先日、「良い会議、悪い会議」についてのエントリを書きました。

hrstrategist.hatenablog.com

hrstrategist.hatenablog.com

 今回はその続き・番外編ということで、会議のあり方、進め方でよく議論になる、「根回し」について、取り上げようと思います。

 皆さんは、「根回し」と聞いて、どのような状況を想像し、どんな印象を抱くでしょうか?恐らく、それは人によってだいぶ異なったものになるような気がします。

 というのも、どうやら世の中には根回しに対する、「賛成派」と「反対派」がそれぞれ一定の数がいるようなのです。

 試しに、「根回し 賛成」「根回し 反対」というキーワードでググってみたところ、前者では約18万件、後者では約34.9万件ヒットしました(正直なところ、「反対」の多さに驚いています。

 試しに、「根回し 反対」の検索の一番上にある「weblio類語辞典」を見てみると、「根回し」の類語として、「スパイ活動」「裏工作」「権力争い」「腹の探り合い」「寝技」などの単語が並んでいます。なるほど、確かに印象は悪いですね。。

thesaurus.weblio.jp

thesaurus.weblio.jp

 一方で、恒例の(笑)「新明解 国語辞典 第三版」を引いて見てみると、

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根回し:(実りをよくしたり、移植に備えたりするために)木の回りを掘って、一部の根を切り落とすこと。(交渉などをうまつ成立させるために、関係方面にあらかじめしておく話合いに意にも用いられる。例、「-工作」)
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とあり、こちらの方がフラットなニュアンスです。

 ということは、元々「根回し」という言葉はネガティブな意味ではなく、後から人々の中で否定的なイメージが付いたのではないかと私は推測します。

 といった背景を押さえつつ、「根回し」の良い所、悪い所は何なのかを具体的に確認してみましょう。概ね以下のようなものではないでしょうか?

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■根回しのメリット
・意思決定者や、会議において影響力の強い人に対し、提案を事前に説明し、内容を理解した上で賛同をしてもらうことで、「決める」会議において、提案が承認させる確率を上げることができる(提案の否決、差戻、結論の先送り等の、提案者が望まない結果が起きる確率を下げる)
・根回しの際に相手より「ダメ出し」があった場合は、会議までに提案の修正を行うことができる

■根回しのデメリット
・根回しの分、意思決定までに時間が掛かる
・根回し作業に余分な手間・労力が掛かる
・「聞いてない」だけで反対するとかいうのがムカつく
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 こうして書き出して気付くのは、メリットの文章は長くなりがち(理解に手間が掛かる)のに対し、デメリットの文章は短い(直感的に分かりやすい)ことです。

 つまり、多くの人にとって、根回しとは感覚的に「やりたくない」、「面倒くさい」こととして認識されやすいのでしょう。

 ところが、「根回し 反対」の検索で上位に挙がってくる記事は、概ねその直感の存在を認めつつ、「いや、そうでないんだよ」という趣旨のものとなっています。

business.nikkeibp.co.jp

diamond.jp

 要は、「根回しってネガティブに捉えられやすいけど、やらなきゃだめ」ということです。

 人間の意思決定は「論理」と「感情」の両方で動いています。また、人によって「あるべき姿」「正しいこと」は異なります。よって、「正しいことは必ず実現するから根回しなんて無駄」とはならないのです。それぞれの人達の「正義」「感情」にも配慮せよ、という事です。

 あくまで目的を達成するための手段が「根回し」でありと割り切り、根回しを(しないより)することで良い結果が得られるならやるべきなのです。建前でなく実質を取るのです。

 これに対し、「そもそも1人の人間に権限を集中させ、意思決定させれば良い。その方が意思決定は速いし、根回しも要らない。」という考え方もあります。確かにその通りな点はあります。

 しかし、「1人で決める」前提であれば、そもそも「決める」会議を行う意味がなくなります。つまりそれは、「根回し不要論」ではなく、「決める会議の不要論」であり、意思決定の権限・プロセスに関わる話です。そしてそれは、根回しの是非とは別の次元の話である点は注意が必要です(この辺の整理ができてない意見が見受けられます)。

 つまり、組織において、「決める」会議によって意思決定をするというスタイルを採る限りは、「根回し」の否定は現実的でなく、たとえ面倒に感じたとしても、あえて「根回し」を行うことが結果的に自身にとって良い結果に繋がる、それが身の為である、という事ではないでしょうか。

 なんて、偉そうなことを書きましたが、私も若い頃は、あまり根回しが上手ではなかった覚えがあります。上記の秋山ゆかりさんの記事のように、「根回しは相手への思いやり」「相手の立場で物事を考えろ」ということを徐々に学んでいき、少しづつですが、マシになっていったように思います(元の上司や同僚から、「まだまだ下手くそだ!」と怒られそうですが)。

 という訳で、相手を思いやることが出来る人であれば、「根回し」の技術はいくらでも上達することはできると思いますので、苦手な方もぜひチャレンジを!

ドトール、「非正規従業員にも退職金」の狙いとは?

 こんにちは、組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。

 東京地方、今年は残暑が厳し過ぎやしませんか?お手伝いしている会社の方にお会いする度に、「今日も暑いですねえ。」「堪りませんねえ。」なんて話を毎度繰り返しているような気がします。最近のエントリを読み返していると毎回「暑い」ネタをマクラにしてますね。それだけ暑さが苦手なのですよ。。

 さて、昨日(9月26日)の日経新聞朝刊で、興味深い記事を見つけました。株式会社ドトールコーヒー(以下、「ドトール」)が、非正規従業員を対象とした退職金制度を導入するというものです。

www.nikkei.com

日経の記事は会員限定なので、こちらの記事もどうぞ。

www.huffingtonpost.jp

こちらが会社のニュースリリース

www.doutor.co.jp

確定給付年金を受託しているオリックスからもニュースリリースが出ています。

www.orix.co.jp

 最初に見出しを見た時は、単に「契約社員やパート、アルバイトに退職金を支払います」という話なのかと初めは思ったのですが、記事をよく読んでみると、なかなかトリッキーなことが書いてありました。

 今回のスキームは以下のようなものです。

--------------------
・非正規従業員の一部(社会保険に加入し、週30時間以上勤務する従業員、日経新聞記事によれば非正規従業員7千人のうち対象330名とのこと)に対し、自社の確定給付企業年金の対象とする。

・退職金として会社が負担するコストは、対象となる非正規従業員(上記)1人あたり月100円(プラス制度運営を受託するオリックスへの手数料)のみ。

・そもそも正社員にはこの年金基金を適用しているはずなので、会社の事務手間も大きく増える話ではない。

・従業員のメリットは、非正規従業員が自ら積立(上限2万円/月)し、それを退職金として受け取ることで、確定給付の利息分(年間利率が0.3%)の所得税を払わなくて済む+自己負担掛金が社会保険料控除の対象になるということ(程度)。
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 要するに、これは(対象となる)非正規従業員にとっては「ないよりはあった方が良い」という程度の福利厚生施策に過ぎません。具体的には、(よほど時給の高いスペシャル専門職的な非正規従業員がいる可能性はありますが)一般的に想定される非正規従業員の報酬レベルから考えると、所得税+住民税の税率20%×社会保険料控除額(最大約24万円)=最大4.8万円お得、といったところでしょうか(計算間違い等ありましたらご指摘下さい)。

 では、その程度の施策をどうしてドトール(とオリックス)がわざわざ大々的にニュースリリースを出し、その前に(さらに)日経新聞に情報をリークして記事にしてもらったのか?

 そこに今回の施策の本当の狙いがあります。そう、「ホワイト企業」アピールです。

 ドトールにとっては、こうして新聞やネットで大々的に取り上げられる宣伝効果は計り知れません。具体的には採用ターゲット層に対して「ドトールで働きたい」と思わせる採用力向上の効果と、今現在ドトールで働く従業員(正規、非正規共に)とその家族に「ドトールって素晴らしい会社なんだ」と思わせるリテンション(離職率削減)効果です。
(そしてオリックスにとっても、企業年金の売り込みネタになりますね。)

 何しろ最近の「低失業率、高求人倍率」の労働市場の環境の下、多くの企業は深刻な人出不足に悩んでいます。外食産業であるドトールも同様の状況に違いありません。

www.nikkei.com

toyokeizai.net

 
 今回のスキームでは(現状パート、アルバイトの95%対象外でありながら)「ドトールはパート・アルバイトに優しい、良い会社である」と、世間に印象付けることが目的なのでしょう。その意味では、「ドトール、うまいことやったな!」と感じます。今回のスキーム自体は他社がマネすることは難しくありませんので、「やったもん勝ち」「早いもの勝ち」ということですね。


 なお、今回の件と離れて、一般的に非正規従業員に対して退職金導入は有効な施策かどうかという件についてにも少し触れておきます。

 昨年12月に、安倍首相の私的諮問機関である、「働き方改革実現会議」から発表された、「同一労働同一賃金ガイドライン案」では、以下の通り、原則「正規」社員と同様・同一に、「非正規」従業員に賞与を支払うべきとしています。

「賞与について、会社の業績等への貢献に応じて支給しようとする場合、無期雇用フルタイム労働者と同一の貢献である有期雇用労働者又はパートタイム労働者には、貢献に応じた部分につき、同一の支給をしなければならない。」

hrstrategist.hatenablog.com

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 とはいえ、会社が支払える人件費には限りがある訳で、退職金を支払うためには、「別の部分の費用を減らして退職金費用に充当する」か、「経営判断として費用増加を受け入れる」のいずれかの経営判断が必要となります。

 前者の場合、必然的に「時給を下げる代わりに退職金を払います」という話になりますが、対象となる非正規従業員から予想される反応は、恐らく(当然ながら)「ふざけるな!」「やめてくれ!」というものでしょう。たとえ、給料として貰うより退職金として貰う方が支払う税金(税制優遇あり)や社会保険料等(退職金は算定対象外)で非常に有利だとしても。

 そして、後者に関しても、同様の反応が予想されます。「退職金はいらないから時給を上げてくれ」と。残念ながら人間は合理的でないのです。もちろん、そのような意見を押し切って退職金制度を導入するのは悪いことではないのですが、それを採用力向上、離職率低下に繋げるためには、今回のドトールの事例のように、何らかの「工夫」を凝らす必要があるという点は注意したほうが良いです。そういう意味では、ドトールの試みは、制度導入・定着の進め方の手本として、他社の人事企画担当者にとって注目すべき事例ではないかと思います。 

 では、Have a nice day!

良い会議、悪い会議(2)

 こんにちは、組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。

 東京地方は、厳しい残暑が過ぎ、だいぶ過ごしやすくなってきました。暑さが苦手な私にとっては、年に一度の苦行が終わった気分です。夏の間だけでも「避暑地に移住」なんて、憧れる生活ですね。リモートワーク(在宅勤務)がもっと普通になれば、十分可能ではないかと思うのですが。

 さて、先日のエントリで、「良い会議、悪い会議」について書きましたが、今回はその続きです。

良い会議、悪い会議(1) - hrstrategist’s blog

 上記のエントリの最後に、「「悪い会議」に該当するような経験は少なからず思い当たるところがあるのではないでしょうか?」というコメントをしましたが、私自身が経験した、忘れることのできない、「最悪の会議」がありました。

■「最悪の会議」とは

 数年前、あるプロジェクトをお手伝いしていた某社の事例です。プロジェクトは順調に進捗していたのですが、最終のフェーズで、先方の担当者が人事異動により交代しました。新しく担当になった人はこれまでの経緯などを前任者から聞いていないようなので、こちらでこれまでの経緯を説明しつつ、次回のミーティングまでに双方で「やるべきタスク」についても説明を行いました。その場で先方からは特に異論、意見等もなく、我々としては「やるべきタスク」について合意されたと認識していました。

 ところが、次のミーティングで驚愕の事実が判明しました。なんと、前回の会議で話し合った内容を、先方が全く覚えていないのです(「えっ、そんな話ありましたっけ?」)。結局、前回、今回と2回分のミーティングの機会が全く時間の無駄になり、プロジェクト自体も、結局自然消滅となってしまったようです。

 この時の虚脱感は今でも鮮明に覚えています。。

■「情報伝達の会議」について
 前回のエントリにおいて、良い会議の目的を以下のように(あえて)定義しました。

「「良い会議」において、会議の目的は「物事を決める」「アイデアを出しあう(ブレスト)」のいずれかです。」

 これに対し、多くの典型的な会議は、上記いずれでもなく(それが明示されていなくても暗黙的に)「情報伝達・共有」を目的としています。部署毎の「定例会議」などは典型でしょう。

 この手の会議について私は否定的です。単に(一方的に)情報を伝えるだけなら、別に大人数で集まる必要などなく、eメールやSlackのようなチャットツールを使えば済む話ではないですか。

 また、「決める」「ブレスト」会議に、ROM参加する(発言をせず、ただその場にいて聞いているだけ)をするのも時間の無駄です。誰かが議事録をきちんと作り、時間を置かずにそれをシェアすれば、情報伝達・共有として十分です。

■「リアルなコミュニケーション」のメリット
 とはいえ、私は人と会い、話し合うのを否定している訳ではありません。 リアルタイムで時間を共有し、会議等を行うメリットは、「双方向のコミュニケーション」です。

 一方的な「講義」であれば、好きな時に映像を見れば済みます。一方で、その場で質問等のやり取りが出来るのが、直接会うのであれ、電話や映像等リモート会議をするのであれ、リアルタイムで会議を実施する価値なのです。

 なので、「定例会議」と呼ばれるものであっても、上司と部下の一対一のミーティングでも、参加者の一人ひとりがが持っている課題・悩みに対して議論をする機会とする(「決める」「ブレスト」に該当しますね)のであれば、むしろどんどん行うべきです。

ファシリテーター的役割の重要性
 「良い会議」を行うために重要なのは「ファシリテーター」的な役割です。

ファシリテーターの意味、役割については、例えば以下を参照頂ければと思います。

ファシリテーター - Wikipedia

ファシリテーター(ふぁしりてーたー)とは - コトバンク

 ここで私が言う「ファシリテーター(的)」とは、「常に意見を述べず、意思決定しない」「常に中立である」といった厳密な定義でなく、議論の最中に(できるだけ)中立的な立場で意見の交通整理や議題の優先順位付けを行う役割を指しています。この役割は、必ずしも役職上の上位者である必要はありません(外部のコンサルタント等がこの役割を行う場合もあります)。

 ファシリテーターは、例えば会議の中で議論がずれたり、発言者の話が長くなりすぎたら、たとえそれが自身の上司であっても制止し、議論の方向性を戻します。そのような役割の人がいることで、議論は活性化し、質の高いアウトプットを生み出すことが可能になります。

※「ブレスト」会議においては、ファシリテーターの言う事に従わない人(上司?)は、議論の活性化を阻害するので参加させるべきでありません。

 もし、「うちの会社の会議ではいつも議論が迷走するし、話がくどい人もいるし、そんな状態で延々と意味のない議論がエンドレスで続くのだけど、結局結論が出なくて次回持ち越しになるんだよな」、という方がいらっしゃれば、「会議の目的・ゴールを定める」「参加者を最小限にする」と共に、ファシリテーターの役割をする人を決めておくというのも良い方法かもしれませんね。

 まだ話は続く(かも?)。

良い会議、悪い会議(1)

 こんにちは、組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。

 今月もやってまいりました「プレミアムフライデー」、皆さまにおかれましてはいかがお過ごしでしょうか?東京地方に限らず、今日は全国的に猛暑のようで、昼間に外出するのも命懸けですね。。

 さて、何だかんだで、Blogにちゃんとした記事を書くのは5月以来、3ヶ月ぶりとなります。忙しかったりと言い訳はいろいろあるのですが、サボリ癖が付くと良くないですね。反省です。

 という訳で、久々のまじめエントリのテーマは、「会議」です。

 会議の生産性向上については、多くの方が本を書かれたりしているので、興味のある方はすでにそのような本などを読まれているかもしれません。私がこれから書く内容はそのようなものと重複する部分もあるかもしれませんが、以下は私なりに考えた「秘訣」をまとめた物ですので、ぜひ広い心でご笑覧頂ければと思います。

 私が思うに、会議には「良い会議」と「悪い会議」の2種類があります。前者は、「やって良かった」会議で、後者は「やらなくて(も)良かった」または「時間の無駄だった」会議です。

 では、具体的にどのような会議が「良い会議」「悪い会議」なのでしょうか。いくつかの要件を挙げてみようと思います。

■「良い会議」は目的とゴールが定まっている

 「良い会議」において、会議の目的は「物事を決める」「アイデアを出しあう(ブレスト)」のいずれかです。その上で、会議において目的を達成したとみなされる何らかの到達点・ゴールが設定されます。会議の参加者はその目的・ゴールをあらかじめ認識・理解した上で会議に臨みます。目的・ゴールがはっきりしていれば、参加者は会議が生み出す「成果」に対して敏感になります。

 「悪い会議」では、参加者(時には主催者ですら)は会議の目的について理解しておらず、そもそも無関心です。目的が曖昧であれば、会議によって参加者が目指すゴールも明確になり得ません。

■「良い会議」は短い

 目的・ゴールが予め定まっている「良い会議」では、議論の方向性・焦点が定まっているので、不必要に議論が迷走したり、参加者の理解不足のために余分な説明時間を浪費したりすることはありません。よって、会議の時間は短くて済みます。

 例えば私の場合、ある方とテレビ会議をする機会がよくあるのですが、その方との会議は、毎回15分程度で済んでしまいます。双方ともに会議の目的・ゴールをを十分に理解しているからこそです。

 当然、このような生産性の高い会議は参加者の高い意識とスキルがあってならではなのですが、とはいえ「物事を決める会議」であれば、1つのテーマについて最大30分もあれば、会議のゴール(物事を決める)に達することは難しくありません。よって、1つのテーマに対する会議では、事前にスケジューリングする時間枠は30分単位(とても忙しい人は15分単位、その場合には社内での移動時間やトイレ休憩時間等も別途カウントする必要がありますが)、複数の議題がある場合でも最長1時間とするのが適切だと私は考えます。

 「アイデアを出しあう(ブレスト)」会議の場合は状況は異なりますが、それでも参加者の集中力の持続の限度を考えれば90分が限度、それ以上の時間を掛ける場合には間にしっかりと気分転換が出来る休憩を設ける必要があるでしょう。

 「悪い会議」は、目的・ゴールが定まっていないので、参加者は思い付きで好き放題に発言し、議論は拡散します。さらに、参加者同士のレベル感が合っていなかったり、準備・予習不足だったりすると、話が伝わらず、くどく、長くなります。さらには、往々にして「終了時間」も決まっておらず、数時間にわたり延々と会議が続く場合もあったりします。
 
 そして長い間議論(らしきもの)をしても結論は出ずに、「次回に持ち越し」となり、参加者には疲労感(徒労感)のみが残るのです。

■「良い会議」は参加者が最小限

 「良い会議」は参加者を最低限の人数(理想は5,6名以下)に絞り込みます。全員が遠慮せず言いたいことを発言できるようにするためです。また、役職・職位などのヒエラルキーで発言が阻害されることを是としません。「参加する以上は何らかの発言をして議論に貢献すべし」という意識が参加者に徹底されています。会議の主催者・ファシリテーターは誰でも発言できる雰囲気・空気を意図的に作らないといけません。

 一方、「悪い会議」では、やたらと大勢参加者がいますが、ほとんどの人は発言をせず、ただその場にいて議論を聞いている"ROM"の人達です。そのような人達は自身の時間と会議スペースを浪費するだけでなく、議論の活性化を妨げ、会議の生産性を下げる要因です。

■「良い会議」は臨機応変に開催される

 「良い会議」は会議開催の必要に応じて、臨機応変に開催されます。要は、「思い立ったらすぐにやる」のです。参加者が少人数であれば、わざわざ会議室を予約して、大げさに「会議」とせずに、食堂やオフィスの端の休憩スペース、または社外のカフェ等に集まっても構いませんし、顔を合わせなくてもテレビ会議や電話会議でも構わないのです。さっと集まってさっと決める、そういった瞬発力(Agility)は、特に緊急度の高い意思決定の場合には求められます。また、そのようなことが可能な職場環境を整備し、良い会議を促進するのも会社の役割でしょう。

 「悪い会議」の場合、緊急性が高い議題でも会議は招集されず、予め日時等が決まった「定例会議」まで待たされることになります。また、会議を開こうにも会議室は常に満杯で、予約を入れるのも大変だったりします。

 他にも思い浮かびそうですが、とりあえずこんなところでしょうか。いかがでしょう、皆さまの中で、以下に述べる「悪い会議」に該当するような経験は少なからず思い当たるところがあるのではないでしょうか?

会議の話は、まだ続きます。

良い会議、悪い会議(2) - hrstrategist’s blog