hrstrategist’s blog

組織人事ストラテジストのつぶやき、業務連絡など。。

企業にとって望ましい「人口動態」とは?(2)

 こんにちは、みぜん合同会社 組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。

 先日、12月に鎖骨を骨折して以来、久しぶりに志賀高原へスキーに行ってきました。やはり雪山は楽しい!スキーは楽しい!もう、スキーは生き甲斐ですね。ちなみに骨はまだ付いていません。

 そういえば、志賀高原でスキーやスノーボードを楽しまれている外国人(主にオーストラリアの人たち)が数年前と比べて非常に増えていることに驚きました。どうやら、以前に白馬や野沢温泉に訪れた人たちが、「Shigaも良い所らしい」と仲間の口コミで聞き、流れて来ているようです。もちろん、アジア系の人たちも大勢見かけます。こういったインバウンドの需要を取り込んでいくのは、とても良いことですよね。

 さて、前回のエントリでは、我が国において、人口動態の「少子高齢化」が深刻な社会問題として認識されているのと同様のことが多くの企業にも起きている現状について取り上げました。

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 問題は、現状、その状況に経営者や人事担当者がどの程度気付き、危機感を持っているかです。

 例えば、このような話もあります。某都銀(死語?)は90年代後半のいわゆる「就職氷河期」には新卒採用数を絞り込み、総合職の新卒採用数は百数十名程度だったのですが、その後景気回復と他行との合併・メガバンク化等の事由もあり、今では1,000名を大幅に超える人数を新卒採用しています。それだけの人数を確保するためには、採用者の「質」をいかに確保するかは、いろいろと悩まれているようではありますが。

 一方で、メガバンクはバブル世代の人員の社外への排出が進んでおらず、転籍先探しの「営業」を熱心にやっているらしいという話も漏れ聞こえてきます。資金調達の方法も多様化し、いわば「金余り」の現状において、企業に対する銀行の影響力が低下していますので、なかなか「営業」も大変なのだろうなと想像されるところです

メガバンクの人員問題については、このような分析記事がありました。なかなか参考になります。

www.financepensionrealestate.work

www.financepensionrealestate.work

www.financepensionrealestate.work

 別の事例もあります。複数の大手企業の出資により創立された某企業は、華々しい広告宣伝と同時に大々的に「即戦力」として、30歳代以上の世代の中途採用を大量に進めました。ところが程なく業績が低迷し、その後新規の(若手世代の)採用が進まない中で、平均年齢はそのまま上がっていった結果、20歳代はほぼ皆無で、30歳代後半~40歳代が従業員の大多数を占めるという非常にバランスの悪い人員構成となってしまったのです。さらにはその方たちは「前職見合いの給料」で入社し、当時の人事制度に則り、年功序列的に昇給していった結果、ただでさえ業績が低迷している中で、人件費が収益を圧迫する事態となってしまったのです(その会社がその後どうなったかはまた別の話…)。

 いずれの事例からも学べる教訓は、「人口動態は予め予測できるのだから、このような事態は防げたはずだ」ということです。極論すれば、こんなことは「ちょっと考えれば分かること」のはずなのです。

 ところが、実際には「失敗から学習」せずに、同様の事態が繰り返されます。日本の「少子高齢化」と同じで、企業の業績等を圧迫するような形で「人口動態」の問題が顕在化するまでにはタイムラグがあり、一方で企業の意思決定は短期(単年~長くても2,3年)の観点で最適化しがちです。つまり、経営陣が気にするのは「人口動態」でなく、欠員補充+α(部門からの積み上げの人員要求)の単純な「人員数」と「人件費」だけであったりするのです。

 さらには、採用の担当者・責任者が短期的に変わるため、過去の事例が引き継がれず、かつその人たちの評価指標が「単年での(指定校毎の)採用人数」などであったりすれば、彼ら彼女らが「いかに(経営から求められる)人数を(「前年並み」といった数字自体に疑問を持たず)確保するか」ばかりを追いかけるインセンティブを誘発することになります。

 そこで経営者、人事責任者が考えるべき観点は、上記の事態を見越し、いかに中長期的な観点で自社の「人口動態」を作り、または(どの程度の時間軸で)作り替えていくか、そのような視点を持ち、施策に反映できるかです。

 単に部署別の人員数だけを見ても「人口動態」は分かりません。本来あるべきは、各事業部門・職種ごとに等級(年齢)別の人員分布を確認、把握したうえで、各等級、職種ごとにどのような人材を何人採用し、かつ育成を行いながら、並行して(厳しい話ですが)どの程度リテンションと退出の施策を実行すべきかを計画・実施する姿です。現状を分析して全社的な人員計画(案)を作るのは人事部門の仕事であり、現状を把握した上で「あるべき人口動態」を定義し、それを実現させるのが経営者の仕事です。

 では、具体的にはどのような分析を行えば良いのでしょうか。

 多くの日本企業においては、まずは新卒採用で基礎的な人数を確保し、足りない分を中途採用で調達・補充するというやり方が一般的でしょう。各等級・職種ごと(企業規模によっては事業部ごとも)の「人口動態」が明らかになれば、どの職種、等級を何人くらい採用すべきかが明らかになります。この時に、
現場が要求する人員のニーズ(人数、スペック等)と異なる場合は、どちらを優先させるか検討します。

 もし、年齢と給料の相関が高く、また人材の流動性が低いのであれば年齢別構成の把握は重要になります。

 その上で、(「動態」なので)各等級ごとの昇格数・率をコントロールしつつ(これにより各等級ごとの平均滞留年数も変わります)、数年後を見越して有望人材を上位等級に送りこめるよう、(育成計画・戦略的人事異動などを)仕込んでいくという、いわゆる「リーダーシップ・パイプライン」的な仕掛けも取り入れていきたいところです。

globis.jp

 さらには、各職種、等級ごとの退職率・休職率などを確認・比較することにより、特定の部署や職種などにおける職場環境等の問題を発見するきっかけとすることもできます。

 なお、自社の「人口動態」に対して働きかける際には、「労働市場の環境」という外部要因も考慮する必要があります。

 企業においては、同程度のスキル・能力であれば、より長い在職期間とその間の貢献度(ライフタイムバリュー(LTV))を高く期待できる若年層へのニースが高い(中高年層ほど労働市場での流動性が低いという問題もあります)一方で、第二次ベビーブームの世代から比べると比べていわゆる「若年層」の人数が半減しているという現状があります。企業の人口動態問題は、実は、日本の人口動態における問題の相似形なのです。
 
 幸いなことに、企業における人口動態は、国家におけるそれと異なり、企業の意思において調整をする裁量が多くあります(「新卒・中途採用数の調整」、「希望退職の実施」、「(人材確保のために)他社を買収」等々)。そうであれば、企業は自社・自業態における時間軸(調整期間)を考慮しながら意識的・積極的にその機会を活用し、人口動態の最適化を目指すべきです。(経営戦略を実現するための)組織・人事戦略の一環として、貴社においても「人口動態」のあり方を考えてみてはいかがでしょうか?

 では、Have a nice day!

企業にとって望ましい「人口動態」とは?(1)

 こんにちは、みぜん合同会社 組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。

 東京地方、今年の冬は例年に比べて寒いですね。雪が降るのは仕方がありませんが、積雪のある道路をノーマルタイヤで走ろうとしてスタックし、大渋滞を引き起こしたり、衝突事故などを起こすのは明らかに「人災」ですから、そういう方たちには本当に自重して頂きたいものです。どうしても雪道を移動したいのであれば、あらかじめスタッドレスタイヤに交換するか、チェーンを装着すれば良いだけの話ですから。

 さて、表題の「人口動態(人口ピラミッド)」ですが、国などの年齢別の人口を表すもので、「通常は、出生数が多く、死亡等により、だんだん年齢を重ねていくうちに人口が少なくなる。このため、三角形のピラミッド状の形になることから、こう呼ばれる。」そうです(引用:下記のWikipedia)。私自身はたしか昔(小学校か中学校の頃?)に社会科で習ったような記憶があります。

人口ピラミッド - Wikipedia

平成29年我が国の人口動態 - 厚生労働省

http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/81-1a2.pdf

 人口動態の研究は「人口統計学」、またはデモグラフィ(demography)と呼ばれる学問になっています。

人口統計学 - Wikipedia

 上記厚生労働省の資料によれば、日本の「人口動態」は、1947年-1949年生まれの「第一次ベビーブーム」世代と、1971年-1974年生まれの第二次ベビーブーム世代の人口が突出しており、その下の世代は徐々に減少している、「逆ピラミッド状態」にあります。いわゆる「少子高齢化」の状態ですね。

※年次の出生数は第一次ベビーブーム期は250万人超、第二次ベビーブーム期は200万人超でしたが、最近では約100万人まで落ち込んでいます。

 そして、同様の「少子高齢化」問題が、今、多くの企業でも起きています。以下、私がお手伝いしたある会社の話です。

 その会社は、従業員数千人の大企業ですが、年齢別の人員構成は、いわゆるバブル世代(40歳代後半~50歳代前半)が最も多く、その下の世代は年次によりピークの半分以下の人数であり、頭でっかちの「逆ピラミッド」状態となっています。また、「等級」毎の人員構成では、非管理職の一番上と管理職の一番下が最も多く、それより下の等級の方が人数が少ないという構成になっています。

 採用に関しては、新卒採用がメインで中途採用はあくまで例外的という、典型的な日本企業です。新卒採用数も、近年はあくまで現状の人員規模を維持する程度の採用数(年間数十名)に留まっております。

 人事の方の問題意識としては、上記の「バブル世代」の管理職が多く、ポスト数は限られているために40歳代前半の世代の管理職登用も遅れて滞留気味になっているとのことでした。確かにそれは問題がありそうです。

 しかし、問題はそれだけでは無いのでは?と私は感じました。というのも、このまま何年か後にバブル世代が大量に定年退職すると、社員数は縮小均衡となり、管理職(に適切な人員)も不足する事が予想されます。抜けた人数分を新卒採用の増加でカバーしようとするのは現実的でありませんし、「中途採用により補充」というのも、中途採用に従来積極的ではない会社においては(抵抗が大きく)容易ではありません。

 よって、本来であれば、相当前からもっと多くの人数(少なくとも1.5倍~2倍)を新卒採用するか、中途採用の比率を徐々に上げていくといった方策を予め進めておくべきだったのでしょう。

 そういえば、先日、同様の問題意識を旭化成の社長が発言されていて、話題になっていましたね。

news.yahoo.co.jp

 「採用数を抑えたのだからそうなるのは当然だろうと多くの氷河期世代の指摘を集めたわけですが」と、上記記事で城繁幸さんは書かれていますが、まさにその通りで、目先の業績に囚われ、単純な人員の頭数合わせに走った多くの企業が、社内の「人員構成(人口動態)の歪み」という爆弾を抱えている状態です。

 問題は、現状、その状況に経営者や人事担当者がどの程度気付き、危機感を持っているかです。

 この話、続きます。

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大谷選手のエンゼルス移籍と「囲い込み」の功罪(2)

 こんにちは、みぜん合同会社 組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。先月中旬にスキーで転倒、骨折をしてしまい、更新が滞ってしまいました。。今年は健康第一で良い年でありますように。。

 前回のエントリでは、日本ハムファイターズ大谷翔平選手のメジャーリーグ移籍の話と、それに関連して、大谷選手を育て、メジャーリーグに送り出したファイターズと、比較対象として読売ジャイアンツの選手のキャリアに対する姿勢の違いについて解説しました。

前回のエントリ

hrstrategist.hatenablog.com

 「この構図って何かに似ていませんか?」と最後に書きましたが、その続きです。

 私が感じたのは、ジャイアンツの考え方は従来型の(就職ランキングの上位に入るような)日本の一流大企業に似ているな、ということです。

 昔のいわゆる「一流大学」の学生は、そのような(ドメスティックな)一流大企業への就職を目指しました。ところが、今や優秀な学生はむしろ外資系の投資銀行コンサルタントなどを就職先として優先的に選ぶようになり始めています。さらに、その中でも特に優秀な人なら、日本の企業に就職先を限定せずに、自分の希望に合った会社を海外で見つけて就職することも珍しくないようになりました。

 そのような意識の変化の前提として、彼・彼女達は最初に就職した会社で一生勤め上げることに重きを置いていません。一旦入社したら生涯安泰であっても、その代わりキャリアの選択肢は会社に委ねるという制約条件をリスクと考え、むしろ忌避しているようです。

 その代わりに、主体的に自分のキャリア・市場価値を高めるために何をどのタイミングですべきか、就職先(候補)がどのような職場環境で、どれだけ裁量を持てるのか、周りの同僚は優秀で互いに高めあうことができるのか、さらには自身の価値に対して十分に報酬が見合うのか、そのような考えで就職先も選ぶようになって来ているように見受けられます。

 そのような評価軸をしっかり持っているからこそ、より良い環境・条件が提示されればそちらに転職することを彼・彼女達は躊躇しませんし、雇う会社も「去る者は追わず」でそのような人をを強く引き留めません(大谷選手に対するファイターズの姿勢はまさにそうでした)。もし本気でその人を引き留めたいのであれば、雇い主はその人が満足するだけの好処遇を予め(ケチらずに)与えておくべきなのです。

※参考
「従業員から「辞めるぞ」と脅されて報酬額を上げるということは、その人にこれまで会社が払っていた報酬水準が誤りであったと会社が認めたということです。」

hrstrategist.hatenablog.com

 つまり、人材を囲い込む「ジャイアンツ」型企業よりも、一定の期間で貢献をしてくれればそれで良いという「ファイターズ」型企業の方が、少なくとも優秀(とされる)若者たちからは支持され始めているのです。

 こうした傾向は、従来の「ジャイアンツ」型大企業で採用活動を行っている担当者の中で認識している人たちも少なからず存在します。ところが、ほとんどの企業は残念ながら従来の「ジャイアンツ」型を維持し、「ファイターズ」型への移行を躊躇しているように思われます。

 なぜ、「ジャイアンツ」型企業は変わることができないのでしょうか。

 それは、過去の成功体験に囚われた年配者(概ね50歳前後(バブル世代)以上)が変化を阻害しているからではないでしょうか。

 多くの従来型大企業の場合、典型的な出世のパターンは、役員登用が50歳代、社長になるのが60歳過ぎというものでしょう。現場の担当者(20歳代~30歳代)やその直接の上司(40歳代)が、採用市場の変化を痛感し、自社の採用選考基準や報酬制度の変更を提案したとしても、現時点で自社にいる(特に幹部)人材は皆旧来型の基準で採用され、社内でキャリアを作ってきた人たちなので、新しいやり方に対して漠然とした不安を持ち、否定的になるのも無理がないかもしれません。

 また、その組織がいわゆる「減点法」の人事評価を行い、「とにかく失敗しない(会社がさせない)人」が出世するような組織風土の元では、新しい「ファイターズ」型を目指して失敗するリスクよりは、従来のやり方を踏襲して将来的にジリ貧になったとしても、自分が在職している間に逃げ切れればその方がマシ、と考え、変化を嫌うインセンティブが働くのも無理がありません。いわゆる「茹でガエル」状態です。

 さらには、外野の「世論」が変化を阻害する要因になる場合もあります。ジャイアンツの場合には、ファンはおそらく「ファイターズ」型のチームにジャイアンツが変化することは望まず、あくまで従来の「ジャイアンツ」型で、昔のように強くなることを望んでいるのでしょう。

 企業の場合は、「相談役」などのOB役員がそのような存在になっているのかもしれません。「(自分たちが現役の頃の)昔はうまくいっていたからやり方は変えてはいけない。今うまくいかないのは、(現役の)お前たちの努力と根性が足りないからだ」という理屈(?)です。

 この手の「OBの理屈」の典型が、よく話題になる元プロ野球選手の張本勲氏のコメントです。自分たちが現役の頃と比較して、「昔は良かった。今はダメ」と今のプロ野球の現状を批判します。
(このようなコメントをすると、実際にテレビを見て視聴率に貢献している、(主に高齢の)視聴者が喜ぶということは計算済みでしょう)

「(大谷選手に)あれぐらいのバッティングは米国なら掃いて捨てるぐらいいる」

www.sanspo.com

「(イチロー選手に)戻ってほしくないわね。行ったり来たり、芝居の幽霊じゃない。荒らされますよ、日本のプロ野球界が」

www.sanspo.com

※年齢が高い人が皆そのような傾向を持つ訳ではない点は注意。たとえばイチローの師匠の故・仰木彰氏は張本氏(1940年生まれ)よりも5歳年上(1935年生まれ)です。

 では、この場合どうすれば良いかというと、結局現役の方たちが内部から変革を進めるしかないのでしょう。たとえそれが容易ではないとしても。。それができなければその企業は優勝劣敗で市場から淘汰されていくか、または(JALやシャープのように)資本と経営者が刷新されることになります。


 以下、結論です。

 「優秀な人は囲い込むことができない」という前提で企業は人材を採用、処遇し、たとえその人材が数年間しか在籍しないとしても、その期間にしっかり貢献してもらえばよいと割り切るという姿勢を示さないと、本当に優秀な人材は獲得できなくなっています。

 真の優秀人材を獲得するためには、その契約が雇用契約でも業務委託契約でも構わないし、場合によっては副業で関わってもらう形態もあり得ます。ただし、これは単に相手の希望に合わせれば良いという訳ではありません。あくまでその人材と会社の双方にメリットがある形を常識に囚われず追求しましょうということです。そのような(大谷選手の二刀流をあえて認めるような)処遇を柔軟に提示できる、「ファイターズ」型の企業には優秀な人材が自ずと集まります。

※参考

hrstrategist.hatenablog.com

 一方で、そこそこの人材を集めて、そこそこ以上の業績を目指すという戦略もあり得ます。その場合、従来の「ジャイアンツ」型にも依然メリットはあります。プロ野球の世界でいえば、メジャーリーグMLB)「を目指すほどのレベルではない選手であれば、日本(NPB)のチーム中で相対的に処遇の良いチームを選ぶのは合理的です。ただし、そのような企業には真に優秀な人材は集まらないというリスクは認識する必要はあります。

 張本氏のような年配者が「昔は良かった。現状は嘆かわしい。」といくら文句を言っても大谷選手やイチロー選手のような超一流人材や、清宮選手のような「超一流候補」は「ファイターズ」型企業に集まるという大筋の流れが逆戻りすることは、もうありません。現実を直視し、自社の経営理念に適合し、経営戦略の実現に必要な採用戦略・人事戦略はどのようなものか、ぜひ考えてみてください。

 では、Have a nice day!

大谷選手のエンゼルス移籍と「囲い込み」の功罪(1)

こんにんちは、組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。

 風邪をひきました。おそらくはちょっとした不注意が原因だと思いますが、できるだけ静養するようにして、なんとか悪化しないように保っております。クライアントの皆さんにご迷惑を掛けないように、体調管理はしっかりしないといけませんね。

 今日のエントリは、野球の話からです。プロ野球NPB)日本ハムファイターズ大谷翔平選手の、メジャーリーグMLB)への移籍が大きな話題となっています。

 「ポスティングシステム」により海外移籍を目指した大谷選手は、代理人を通じた交渉の結果、アメリカンリーグ西地区所属のエンゼルス(Los Angeles Angels)への入団で合意しました。

www.nikkei.com

ロサンゼルス・エンゼルス・オブ・アナハイム - Wikipedia

 当初はヤンキースなどの著名な有力球団が獲得に名乗りを上げていたようですが、最終的にエンゼルスを選んだのは、お金や球団のブランド等でなく、彼がこだわる投手と打者の「二刀流」を続けていくための条件、環境が最も整っているのがエンゼルスだ、と本人が判断したようです。自分を成長させる機会、キャリアの目標を最優先したということです

「彼はエンゼルスこそが、自分が成長でき、次のレベルにたどり着き、キャリアの目標を達成する最高の環境と見ている」

news.livedoor.com

 実は、現在のポスティングシステムでは、25歳未満の選手が移籍する際には本人に支払われる契約金が制限され、さらに年俸も格安のマイナー契約しか結ぶことができません。

www.asahi.com

www.nikkansports.com

 現在23歳の大谷選手は、あと2年待てば上記の制限が無くなり、初年度からより多額の年俸を得ることも可能でした。しかし、それよりもできるだけ早くメジャーリーグの環境に挑戦する道を選んだわけです。

 元はといえば、高校卒業後に直接メジャーリーグへの挑戦を志望していた大谷選手に対し、日本ハムファイターズはドラフト1位で強行指名しました。その上で、「二刀流への理解」「メジャー挑戦への理解」などをプレゼンで示し、大谷選手を翻意させて獲得したという経緯があります。

 つまり、今回のポスティング移籍に関しても、ファイターズは元から想定していたのであろうと思われます。数年間の在籍でもその期間の活躍だけで十分にペイできると計算し、結果その通りに大谷選手は大活躍してくれました。

 このファイターズ球団の判断で特筆すべきは、大谷選手が入団してから後の損得計算でなく、その前段階である、「入団してくれるか、否か」まで遡って期待値を分析し、計算したことです(「デシジョンツリー」のイメージです)。 

mba.globis.ac.jp

 今のところ日本のプロ野球界では、「1つの球団で生え抜きで過ごす」「フリーエージェントの権利を得て移籍する」というのが(少なくとも球団側が望む)常識的な選手のキャリアです。しかし、チームの都合・希望を優先させて条件を出しても、大谷選手には入団してもらえません。また、入団時の約束を後から反故にしてしまう手もありますが、そうなると、今後大谷選手に匹敵するレベルの大物選手には入団してもらえなくなってしまいます。

 今年のドラフトでファイターズが清宮選手をクジで引き当てたのは運ですが、結果的に清宮選手が入団してくれたのは、過去の大谷選手、ダルビッシュ選手をファイターズ球団が育て、メジャーリーグに送り出したた実績があったからこそ、信頼ができたのでしょう。

 一方で、これと対照的なのは読売ジャイアンツです。昔は他球団のドラフト指名を拒否してジャイアンツに入団した選手たち(江川卓氏、元木大介氏、菅野智之選手(当時の原監督の甥であった特殊事情がありますが)などが有名ですね)もいた昔と異なり、メジャーリーグへ挑戦する選手が珍しくなくなった今となっては、メジャー挑戦を視野に入れているような超一流選手にとって、ジャイアンツの環境は魅力的で無くなってきているようです。

 確かに報酬水準は12球団でトップレベル(今やホークスが1位で、ジャイアンツは2位)ですし、引退してOBになってからも「巨人の選手」という知名度は解説者などの仕事を得るのにも有利だそうです。

日本プロ野球選手会 公式ホームページ

 しかし、12球団内での報酬格差など、メジャーリーグとの差分(下記の通り、10倍近いです)を思えば、「誤差の範囲内」に思えます。

「メジャーリーガーの給料事情。平均年俸は4億9800万円!」

【MLB】メジャーリーガーの給料事情。平均年俸は4億9800万円!最も稼いでいる選手は・・・? | ベースボールチャンネル(BaseBall Channel)
 メジャーリーグへの移籍の経緯(下記)を振り返っても、松井秀喜氏や上原浩治選手に対する扱いは、少なくとも選手にとって寛容ではない、ネガティブな印象を感じます。

「何を言っても裏切り者と言われるかもしれないが、」

www.nikkansports.com

「球団首脳陣は頑としてポスティングシステム行使を容認せず、「わがまま」であると評した」

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%8A%E5%8E%9F%E6%B5%A9%E6%B2%BB#ポスティング移籍問題

 昔は今と違い、野球選手として活躍する選択肢は実質的に日本のプロ野球NPB)だけであり、その中の差分で球団を比較するしかありませんでした。そしてそのヒエラルキーの一番上がジャイアンツでした。

 あれ、この構図って何かに似ていませんか?

 この話、続きます。

 

※Appendix
日本プロ野球フリーエージェント実績をよく調べると、大変興味深いです。

ジャイアン
・生え抜き選手からFAで国内他球団に移籍したのは、駒田徳広氏(1993年)のたった1名のみ、その後24年間なし。
・海外移籍は松井氏、上原選手、高橋尚成氏の3名
ポスティングシステムによる海外移籍は無し
・一方、FAで他球団から獲得した選手は、先日獲得が決まった野上亮磨選手を含め延べ24名(!)
・そのうち、ジャイアンツで現役生活を終えて引退したのは、川口和久氏、金城龍彦氏、片岡治大氏、相川亮二氏の4名のみ(うち片岡氏、相川氏は2017年限りの引退)。残りの人たちは他球団に移籍の後、選手生活を終えている。

■ファイターズ
・生え抜き選手からFAで国内他球団に移籍したのは、片岡篤史氏、小笠原道大氏など7名+大野選手、増井選手(オリックスバファローズに移籍決定)
・海外移籍は建山義紀氏、田中賢介選手(後にファイターズ復帰)の2名
ポスティングシステムによる海外移籍は、ダルビッシュ有選手と今回の大谷選手の2名
・一方、FAで他球団から獲得した選手は、稲葉篤紀氏(メジャー移籍を希望していたが獲得希望球団が無く、ファイターズが「拾った」形。)の1人のみ

⇒12月18日に、鶴岡慎也選手の獲得を発表(ファイターズ出身選手の出戻り)。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%A8%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%B3%E3%83%88_(%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%83%97%E3%83%AD%E9%87%8E%E7%90%83)#FA権を行使し日本の他球団へ移籍した選手

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9D%E3%82%B9%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%82%B7%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%A0



人事評価のフィードバックで考慮すべき4つのポイント

 こんにちは、組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。東京地方、今日は冷え込んでいます。冬の季節の到来ですね。

 先日、お手伝いをしているある会社の方から、人事評価の結果を上司から部下に伝える「フィードバック」について、「こうすれば良い」「あるべき姿」のアドバイスが欲しいと依頼されました。

 せっかくの機会ですから、自分なり整理した「フィードバック」のあり方について、シェアをしてみようと思います。以下、参考にしてみてください。

 そもそも、「フィードバック」という言葉の意味は何なのでしょうか?私自身が「フィードバック」という単語を初めて聞いたのは、おそらく桑田佳祐さんの"KUWATA BAND"の曲名だった気がします(ちなみに、この曲のボーカルは桑田さんでなく河内淳一さんです)。

NIPPON NO ROCK BAND Keisuke Kuwata KUWATA BAND

https://www.amazon.co.jp/dp/B00005L9AJ

 それはさておき、いつも通り、手元の「新明解 第三版」をまず参照してみましょう。

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フィードバック:
(オートメーションの基礎となる自動制御に欠かせない方式で)ある個所で得られている効果や結果を、自動的にその発生源にもどして、その後の修正や調節の資料とすること。
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 なんだか分かったような分からないような感じですが、元は電気工学系の用語だったのですね。それが転じて、別の意味を持つようになったようです。

 Wikipediaも見ましたが、どうにもピンとこないので、いろいろと調べてみましたが、こちらにある、「大辞林 第三版」の解説が一番分かりやすいような気がします。ちょっと物足りないですが。。

kotobank.jp

「心理学・教育学で、行動や反応をその結果を参考にして修正し、より適切なものにしていく仕組み。」

 元の意味から転じて、「人の行動等に対して何らかの評価を行い、その人の行動の改善を促すことを目的としてそれを本人に伝えること」が、人事評価等におけるフィードバックの定義であるという解釈でよさそうです。

 重要なのは、「その人の行動の改善を促すことを目的として」という点です。つまり、評価結果を単に伝えるだけでは、フィードバックとしては不十分なのです。なぜその評価になったのか、どこを改善し、どこを伸ばせばより良い評価を得られるかを本人に示さない限り、何が良くて何が悪いのか本人は気付くことができませんから、本人が自ら改善の行動を起こすきっかけとなり得ません。

 最近話題になっている、「ゲーミフィケーション」(課題解決のためにゲームの要素を取り入れる)の考え方でも、フィードバックは重要な意味を持っています。スコアが示される(フィードバックされる)ことで、それを向上させるモチベーションが刺激されるということです。

ゲーミフィケーション - Wikipedia

「たとえば、「スコアカードのないボウリング」を考えてみてください。ただピンを倒すだけで楽しいでしょうか?」

www.salesforce-assistant.com

 では、人事評価のフィードバックを行う際に、具体的にはどのような点を気を付けると良いのでしょうか?

 本来的にフィードバックで伝えたい項目を私なりに整理すると、以下4点となります。

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1.業績に対するコメント(良い/悪い、期待に応えているか、否か)
2.1を受けて行動等に対するコメント(ここが出来ている/足りない)
3.目指す目標に対するコメント(こうすればもっと良くなる/昇格)
4.課題解決(2の課題改善&3の目標達成)へのアドバイス
 (「しっかりやれ」「がんばれ」等の曖昧なものでなく、具体的内容)
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 まずは、「1.業績に対するコメント」です。会社や上司の期待に結果がどの程度達していたか、いないかを伝えます。本人の自己評価とのギャップがある場合には、特に丁寧に話し合い、そのギャップをできるだけ狭めるようにします。

 続いて、「2.行動等に対するコメント」です、これは、行動面での「ここが良い」「ここが要改善」という評価を伝えます。この時には、抽象的なコメント(「君っていつもこうだよね」的な)では、説明に説得力が欠け、本人は何を言われているかピンと来ません。そうでなく、できるだけ具体例(「あの時あなたはこう行動したが、そうでなくこうすべきだったのでは」的に)を示すことで、本人の納得度が高まります。

 上記2点は、過去に対する「振り返り」でしたが、加えて、その人の将来の成長に向けたアドバイスである「3.目指す目標に対するコメント」(例えば「管理職を目指すには対人コミュニケーションのこの辺を改善しよう」等)を伝えます。これには日頃から、本人のモチベーションや将来のキャリア目標などを予め聞いておく必要がありますね。

 最後に、2、3で提示した課題を解決、改善するために、具体的にどのような行動をしていくか、「4.課題改善のアドバイス」をします。そもそも、期待された成果が挙がらないのは、その人の行動の方向性が間違えているのか、行動量が足りないのか、能率が悪いのか、いずれかに原因があるはずです。そして本人は何が問題なのかに気付けていない(無意識)からこそ、行動が改善されていないのです。

 よって、ここでのアドバイスは、「もっとがんばれ」とか「適切にやりなさい」といった抽象的なものでなく、その人が、「適切な行動」をするのを妨げる原因を掘り下げた上で、それを改善するための具体的な指導を行うのです。

※例えば、遅刻が多い社員に対して、原因が「深酒による前夜の夜更かし」である事を突き止めた上で、「1日〇時間以上の睡眠時間を確保すること」「深夜〇時以降の飲酒を止めること」「決められた酒量を守ること」を約束させ、さらには定期的に順守状況を申告させるといった対処法が考えられます。もちろん、すべての部下にそこまで踏み込む必要はありません。相手に合わせて、本人が納得して迷わずに行動できるレベルまで「やるべきこと」を細かくブレイクダウンしていく事が要点です。

 そして、上記のような「行動の変容」を促進するインセンティブもしっかり明示します。端的にいえば「信賞必罰」です。日本の多くの企業ではこれが出来ていないように思えます。上司の求める成果・行動を挙げなくても許され、放置される、かつ人事評価もネガティブな評価を上司が付けるのを恐れ、さらには人事制度上で降給等の処遇悪化の仕組みがなかったりします(これは制度上の問題なので「評価・報酬制度を変えましょう」という根本の問題になってしまいますが)。

 という訳で、これらの4つのポイントを意識し、実践してみてください。手間は掛かりますが、長期的にはそれ以上の果実がもたらされるはずです。

 という訳で、Have a nice weekend!

「ストレスマネジメント」のお話(3)

こんにちは、組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。

 そういえば、ノートパソコンを買い替えました。今まで3年使っていたPCが、二度目の液晶画面不調(以前は保証期間内で無料修理)となったため、そちらは修理の上「二番手」に降格し、メイン機を新調することにしました。

 機種は前の機種と(実質)同じモデルであるNECLavie HZです。なにしろこの機種は画面が大きいわりに重量が非常に軽い(本体重量1キロありません)のが売りでして、耐久性には不安があるものの、少し古めのモデルで値段の手頃な出物もあり、決めてしまいました。

nec-lavie.jp

 基本的な操作性等は前のPCと変わりませんが、電源の位置や液晶のヒンジの形状が変わっていたりと、それなりに改良はされているようですから、液晶画面もしっかりと改良されて、長持ちをしてほしい所です。

 さて、「ストレスマネジメント」のお話、続きです。これまで、ストレスマネジメントの定義や「誰」異なる2種類のストレスマネジメントについて、また、経営者や上司にありがちな「生存バイアス」の影響について解説しました。

「ストレスマネジメント」のお話(1) - hrstrategist’s blog

「ストレスマネジメント」のお話(2) - hrstrategist’s blog

■まずは関心を持つこと
 上記を受けて、本エントリでは「じゃあ、どうすればいいの?」という対応方法を考えたいと思います。とはいえ、具体的な「ストレッサーへの対処方法」や「いかにストレスをやり過ごすか」等のノウハウは、それこそ、「ググる」ことで、専門家による解説を見ることができますし、関連の書籍もたくさん出ておりますので、専門家でない私からの説明ではここでは書かないことにします。

 一方で、「対処」に至る以前の話として、今ある状態が「何かおかしい、普通でない」と気付くことが実は非常にである、という点はぜひ強調したい点です。「問題発見」がすべての解決策の原点となるのは他のビジネス課題と同じですね。

 ところが現場では、そもそも本人や上司が気付かない、または、気付いたとしても問題を放置したまま先送りしてしまうというケースが少なくありません。私も以前に勤めていた職場でそのような事例を数多く見てきました。

 初期の時点で、何らかの「兆し」があったにも関わらず、それを見逃したり、気付いてもやり過ごした結果、問題がより深刻になり、結果的に取り返しのつかない事態になってしまうという事態もしばしば起こります。もしそうなったら、もう手遅れです。

 そうならない為に、どうすれば良いのでしょうか?

 経営者・上司(あと人事担当者)が、人に対して「関心を持つ」こと。それに尽きます。

 まずは、(生存バイアスを持ちがちな)経営者、上司が「ストレスマネジメント」の必要性・重要性に気付くことが始まりです(近頃の「働き方改革」の流れは(いろいろツッコミどころはありますが)追い風ですね)。

 その上で、上司は部下をよく観察して下さい。よく見ていれば通常状態との変化、異変に気付きやすくなります。「忙しい」などと理由を付けて逃げてはいけません。部下のマネジメント・育成は成果を出すのと同じくらい重要な上司の仕事です。意識して時間を費やしてください。自分たちに気を掛けてくれている、時間を費やしてくれていると部下に感じさせるのも、部下に対する大事なメッセージです。

※以下、過去のエントリからの引用です。
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「会社は上司(管理職)に、部下という「資産」を貸しているのです。そして、貸し手である会社は借り手である上司に対し、元本だけでなく、「部下の成長」という利子をつけて会社に返すことが求められているのです。」

部下は、"資産" - hrstrategist’s blog
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 その上で「部下のストレスマネジメント」をどうするかです。

 私は、これは身体の「健康管理」と似ているのではないかと考えます。健康管理で大事なのは、「予防」と「早期発見・治療」の2つです。例えば、生活習慣病を予防するために食事の節制をしたり、適度の運動をしたりしますよね。また、定期的に健康診断を受けて、病気の兆候を早く発見し、事態が悪くなるまえにできるだけ早く治療をしようとします。

 部下のストレスマネジメントも同じです。「予防」とはストレスの原因(ストレッサー)の除去、低減です。高い業績を上げるためには適度な緊張感を維持する必要がありますから、業績向上に正の相関があるストレッサーはストレスレベルをそれぞれの人の許容範囲を超えていないかコントロールするとともに、業績向上に相関がない、または逆相関のストレッサーに関しては徹底して減らす努力をします。

 そして、そのような予防措置にも関わらず、部下にストレス適応不全の兆候が現れたら、いち早くその兆しを察知して対処をするのです。

 「そんなの面倒くさい」「自分には関係ない」と思われるかもしれませんが、自分の感度の鈍さでもし部下がストレスの犠牲になり、取り返しの付かないことなったら、その責任を自身が(精神的に)一生負わなければいけなくなるのです(おそらくその方の家族からも責められ、恨まれるでしょう)。そう思えば、「部下のストレスマネジメント」が他人事で無くなるのではないのでしょうか。

 今回の記事を読んでいただき、少しでもストレスマネジメントについて関心を高めていいただき、日々の業務遂行に役に立てていただけると幸いです。

 では、Have a nce day!

「ストレスマネジメント」のお話(2)

  こんにちは、組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。

 東京地方は爽やかな秋晴れですが、部屋にこもってこのBlogの原稿を書いています。このところ週末はいつも雨(それも大雨)でしたが、今週末の連休はようやく秋晴れが望めそうです。

 「ストレスマネジメント」のお話、前回はストレスマネジメントの定義と、私の大学院時代の経験を書きました。今回は続きです。

「ストレスマネジメント」のお話(1) - hrstrategist’s blog

■「ストレスマネジメント」が適切でないと何が起こるのか
 ある人にとってストレスの原因(ストレッサー)が無視・放置できないレベルで存在し、かつ「ストレスマネジメント」がうまくいかないと、心と体が不調になるストレス反応が起こります。

 その程度は人により異なりますが、最悪の場合どのようなことが起きるかについては、河合薫さんのこの記事は大変参考になります。

wol.nikkeibp.co.jp

以下、記事の引用です。

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「過労死する人の多くが亡くなる直前まで「自分が死ぬほど疲れている」ことを自覚できず、「肉体の悲鳴」に気付くことができません。」

「もし、あなたが「忙しいのに慣れた」とか、「睡眠不足でも大丈夫」という状態になっていたとしたら、それは「見張り番が壊れてしまった」というシグナルであり、極めて危険です。」

「「過労自殺」は、単に「労働時間を短くすればいい」というものではなく、本人を追い詰める「仕事上のストレス」も同じように考慮する必要があります。」
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 過度なストレスと適切な対応の欠如により、「過労死」「過労自殺」という最悪の事態が起こりうるというリスクをよく認識すべきでしょう。

 また、河合さんが指摘されているように、往々にして本人は自身の不調・異常に気付けず、また正常な判断・意思決定ができない場合があります。だからこそ、周囲の人たちが本人の不調・異常に早く気付き、積極的に介入しなければならないのです。

■誰に対しての「ストレスマネジメント」か?
 「ストレスマネジメント」には、2つの種類があることに気が付きます。「自分自身」のストレスマネジメントと、「自分の部下(組織)」のストレスマネジメントです。

 前者は自分自身の問題です。自身が晒されるプレッシャー(ストレッサー)にどう対応するかの話です。セルフマネジメントですね。

 一方で後者は、「部下」という他人との関わり方の問題です(労務担当者の場合「同僚」が対象になりますね)。組織の成果に対して責任を持つ管理職にとって必須な視点です。あと、「上司」の立場であれば、自分が部下のストレッサーになってしまう危険性も認識する必要もあります。

■「ストレスマネジメント」クラスで気付いたこと
 とはいえ、そもそもの問題は、当事者自身が「ストレスマネジメントが必要なのだ」と気付かないことです。そういう人たちに「ストレスマネジメントが大事だよ」とただ言っただけでは聞く耳を持たれません。

 それに気付いたのは、大学院(慶應KBS、もう10年以上前です)時代、前回のエントリで書いた、「ストレスマネジメント」クラスを受講した時でした。

 このクラスは「選択科目」なので、「ストレスマネジメント」に特に興味がある学生のみが受講します。教室の中にいる学生の中で同級生たちを探して見てみると、ある傾向に思い当たりました。

 「戦略ゼミ」を選ぶような(そしてその後戦略コンサルティング会社にいくような)、いわゆる”優秀”な方たちは(確か)受講者の中に皆無だったのです(受講されていた方、ゴメンナサイ)。

 そのような方たちは優秀ですから、それまで仕事も完璧にこなし、これまで「ストレスマネジメント」を必要とする状況に遭遇したことも無かったのかもしれません。または、無意識に「自分自身」のストレスマネジメントをうまく行うこともできたのかもしれません。なので、「ストレスマネジメント」的な課題に対しては興味の優先順位が低く、他人事なのかもしれないとその時には感じました。

 そしてその時感じた直感、違和感は間違っていなかったのでは、と最近改めて感じるのです。

■「生存バイアス」の影響
 ストレスへの耐性には個人差があります。ストレス耐性が強い人は、そうでない人に比べて、より「無理をする」ことができます。その結果、実績を挙げ、より出世する可能性が高いと考えられます。

 結果、「強い」個人が出世競争で生き残り、上司・経営者となり、「弱い」人は出世競争から脱落していきます(個別に異なる事例はあるのは承知で、単純化・一般化しています)。

 そして、そのような人達が出世した結果「生存バイアス」が生まれます。そういう方は、往々にして、「自分は(例えば過重な労働時間、上司によるパワハラでも)これまで平気だった。耐えられないのはおまえが弱いからだ」という考え方(過剰な自己責任論)になりがちです。

 これは、いわゆる「生存バイアス」です。

※生存バイアスの解説
「脱落あるいは淘汰されていったサンプルが存在することを忘れてしまい、一部の「成功者」のサンプルのみに着目して間違った判断をしてしまうというバイアス。」

globis.jp

■「強者」の上司による「ストレスマネジメント」不全
 「自分の部下(組織)」に対するストレスマネジメントの初歩は、上司が部下の異変に「気付く」ことです。そのためには、上司は「ストレスマネジメント」的観点をよほど意識し、日頃から部下を観察するという行動が必要です。

 ところが、「強者」である上司はその必要性に気付かず、「自分は大丈夫だったから、部下も大丈夫だろう」という程度の軽い認識で、そのような行動を行う関心・優先順位は低くなります。

 それでは、「弱者」である部下がストレスへの適応不全を起こしている兆候に気付くことができませから、そのような上司の元では部下のメンタル罹患率等は相対的に上がりがちです。

 しかし、そのような上司は、問題を直視しません。あくまで部下の「自己責任」であって、自分に責任の一端があるとは微塵も思っていなかったりします。そして、「下らない」かつ「面倒くさい」、優先順位が低い問題として、事態を放置し、向き合わないのです。

 私自身の過去の企業人事の経験を振り返っても、部下のストレスマネジメントをきちんとやっている上司、部下が業務や人間関係で適応不全を起こしている時にきちんと向き合い、立ち向かえる人は、残念ながら非常に少なかったと感じます。

  この話、まだ続きます。

「ストレスマネジメント」のお話(3) - hrstrategist’s blog