hrstrategist’s blog

組織人事ストラテジストのつぶやき、業務連絡など。。

ノーベル賞学者が教える、正しい「行動経済学」的な面接とは?

 こんにちは、みぜん合同会社 組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。

 毎年、ゴールデンウイークの翌週は比較的道路も空いていますし、気候も良いのでよく遠出をします。 この週末は家族と野沢温泉に行ってきました。野沢温泉には過去に何度か旅の途中に立ち寄ったことがあり、外湯にも入浴したことがあったのですが、今回は旅館に宿泊し、ゆっくり滞在することができました。おかげ様で(?)旅館の内湯だけでなく、2日間で外湯も6か所制覇を達成です。今度は連泊をして、全ての外湯(13か所あります)の制覇を目指してみたいですね。

外湯の紹介 : 北信州野沢温泉 観光協会オフィシャルウェブサイト

 温泉に来ると、生来の貧乏性で多くの回数を入らねばと(あまり長く漬かっていられない体質)頑張ってしまいます。湯治は忙しいのです。そんな合間に読んでいた本の中で、大変興味深い内容がありましたので、紹介をさせていただきます。

 「ファスト&スロー」という本ですが、行動経済学への業績でノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カールマン氏の著作です。

 カールマン氏とこの本に興味を持ったきっかけは、「マネーボール」で有名なマイケル・ルイス氏の著作、「かくて行動経済学は生まれり」を読んだことです。この本ではカールマン氏と研究の盟友であったエイモス・トヴェルスキー氏の交友と、彼らの研究によって「行動経済学」という学問が生まれる経過が描かれています。
(ルイス氏の本はどれも面白いのでお勧めです)

  

 「ファスト&スロー」については、「人間がいかに合理的に判断しないか」という、脳のバイアスについて書かれており、(多少冗長でありつつも)大変面白く興味深い内容なので、興味がある方はぜひご一読いただければと思います。

 その中で、ひときわ目を引いたのが、上巻の21章、「直感&アルゴリズム」の中にある、「面接のやり方」の話です。この章では、専門家の判断(臨床的予測)よりも、単純な統計的アルゴリズム(統計的予測)を使った予測の方が、より精度の高い結果が出る(言い換えれば、専門家はアルゴリズムに負ける)事実と、なぜそのような事が起こるか、さらには、そのような事実は(特に専門家にとっては都合が悪いので)無視されがちである事を解説しています。

 その中で、カールマン氏自身の経験として、自身がかつて母国イスラエルの軍隊にいた際に、召集された新兵を面接で各部隊に振り分ける為の面接のやり方を改善した話が出てきます。彼が採用した方式は以下のようなものだったそうです。

--------------------
・面接官がいくつかの人格特性(責任感、社交性、誇りなど)を評価し、個別に点数をつける
・それぞれの特性について一連の質問を準備した
・質問は、「過去の事実」を訊ねるもの(就いた職業の数、遅刻・欠席(欠勤)の頻度、友人と交際する頻度、スポーツへの興味と参加の度合いなど)で、それぞれの分野で過去にどれだけうまくやってきたかを客観的に評価するのが趣旨
・(ハロー効果を防ぐため)面接官は6つの特性を決められた順序で質問し、次の質問に移る前に5段階で採点する(それ以上のことをしてはいけない)
・面接が終わったら、面接官は最後に5段階の総合評価を付ける
・上記7つの項目を計算式に従い、コンピュータ処理した結果に従い、配属を決める
--------------------

 上記の方式を採用したのは1955年頃だそうですが、その面接方式は有効性が確かめられ、45年後(カーネマン氏がノーベル賞を獲った後)でも、当時とほぼ同様の方式が採用されていたとのこと。とはいえ、カーネマン氏によれば、この面接方式でも「もちろん完璧にはほど遠く、「まったく役立たず」から「いくらか役に立つ」へと進歩した、というのが適切」とのことですが…

 ここで注目すべきポイントは、まず「面接官に最終判断をさせないこと」です。「ハロー効果」とは、面接官や評価者研修では必ず出てくるキーワードですが、繰り返して注意喚起をしないと(してもなお)、無意識に面接官や評価者が陥ってしまう、強いバイアスです。そこで、上記の面接プロセスでは個別の特性評価が他の評価に影響を与える影響を下げるための工夫がされています。

 また、直感的判断による最終評価については、当初はカーネマン氏は懐疑的だったそうですが、評価結果は他の項目と同様の精度だったそうです。カーネマン氏は(「大きな驚き」だったそうですが)ここから得た教訓として、「客観的な情報を厳密な方法で収集し、ルールを守って個別に評価した後」に限って、直感的評価は信用できるとしています。

 実は、上記のような方法は、「構造化面接」と言われる面接方法です。構造化面接とは、事前に決められた質問と評価項目を準備し、面接官がそれを実施する面接で、構造化しない面接(面接官が自分の好きな質問をする)よりも、評価の妥当性が高いという研究結果が出ています(詳しく知りたい方は、下記の「採用面接評価の科学」をご一読下さい)。

www.hrreview.jp

 人材採用における、各社の面接のやり方はそれぞれだと思いますし、熱心な担当者の方はこのような話はすでにご存じかと思いますが、もし、本記事をご覧になった方が、面接方法や採用プロセスについて新たな発見をして頂き、自社の採用プロセス改善の助けになれば幸いです。なお、お声がけ頂ければ、私がプロセス改善をお手伝いする事も吝かではありません!

 では、Have a nice day!

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「AI読み」の傾向と対策(3)「AI読み」な方とのコミュニケーション

 こんにちは、みぜん合同会社 組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。

あっという間にゴールデンウイークも後半ですね。最近の東京地方は湿度も低く、適度に涼しい気候でした。もしかしたら、1年で最も快適な季節かもしれません。暑さと湿気が大の苦手な私としては、これからどんどん暑くなっていくこれからの季節は、できれば勘弁して欲しいのですが…

 という訳で、ゴールデンウイーク最中の更新になってしまいましたが、前回、前々回のエントリの続きとなる、「AI読み」の話の続きです。これまでに、「多くの日本人(大人も含まれます)の読解力が意外な程低い」(上記記事ではその傾向を「AI読み」と表現をしています)という記事の紹介と、それを改善するために、論理性(論理的思考)と国語力をどう鍛えていくかについて取り上げてきました。

hrstrategist.hatenablog.com

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 今回のエントリでは、ちょっと視点を変えてみます。

 前回までに取り上げた、「論理性と国語力の強化の必要性」は、それはそれで重要なのですが、往々にしてそれだけでは問題が解決しません。というのも、コミュニケーションとは「送り手」と「受け手」の双方向で情報をやり取りするものであり、どちらか一方(例えば送り手)のみが読解力向上の努力をしても、もう一方(例えば受け手)の読解力が低いままでは、質の高い正確なコミュニケーションは成り立ちません。

 「AI読み」をして理不尽に「逆ギレ」する顧客や従業員が少なからず存在するという前提で、そのような人たちとどのようにコミュニケーションを取るかという問題は、意外と重要かつ、見落としがちな観点ではないでしょうか。そこで、「AI読み」な方たちとのコミュニケーション対策について考察したいと思います。

 現実的な喫緊の課題として、日々の仕事やプライベートにおいて、「AI読み」な方たちとどのようにコミュニケーションを取り、意図を正しく伝えるか、そのためには何を気を付けるべきか等について知っておくことは、決して損にならないはずです。

 そもそも、少なくない割合の人が「AI読み」レベルの読解力である以上、まずはその現実を認めた上で、「AI読み」な方たちに合わせ、コミュニケーションの手法に工夫をする必要がある事は納得できるでしょう。

 そのような人たちに対しては、(文法上正しい)「書いてある通り」の意味で理解してもらえるという期待をしてはいけません。何らかの言いがかりを付けられた際に、「そこに書いてある通りの意味なのですが、何か?」といった「理屈」で反論しても相手には通用しないと思った方が良いです。

 「AI読み」な方たちは、(当然ながら)「AI読み」をしている訳ですから、文章の意味を書いてある通りに正しく理解していない確率が高いのですが、その人たちがどうやって新たな(間違えた)「解釈」を「捏造」するかというと、前段階として、その人たちが元々持っている、そもそもの「思い込み」というものが存在し、それが彼ら彼女らの「解釈」に影響します。

 彼ら彼女らは、こちらが書いたり話したことから、自身の「思い込み」に沿って、都合の良い部分だけつまみ出して勝手に解釈し、時には(元の論旨とは異なった自身の解釈により」)「あなたは間違えている」と相手を非難したりします。

 残念ながら、そのような反応を完全に防ぐことは難しいでしょう。よって、このような事が起こり得ると認識し、その上で対策を考える必要があります。

 まず第一に、「AI読み」な方たちは(自身の思い込みに応じて)勝手に曲解しますので、こちらから伝えようとするメッセージの意図・論旨自体を相手に合わせて変える必要はありません。ただし、無用な誤解、曲解を減らす(テクニカルな)ための努力はすべきです。
 
 具体的には、複雑な言い回しは出来る限り避けるのが賢明です。直感的に意味が取りにくいような表現を使うなという事です。「レトリック」などは極力使わないことです。

 後世に残る芸術作品を作る訳ではありません。どんなに高調な美しい文書、演説であっても、伝えたい相手に伝えたい意味が十分に伝わらないのであれば、そのようなものに価値はないのだ、と割り切りましょう。

 思い返してみれば、「AI読み」の特徴とは、以下の通りでした。

「『……のうち』とか『……の時』『……以外』といった機能語が正確に読めていない。」

 と、このように指摘されている訳ですから、「機能語」を出来る限り使わず、その中でも特に、「…以外」といった、意味がひっくり返るような語を使わずに、ストレートな流れで書く(話す)という手法は、「AI読み」な人たちへの有効な対応策になり得るでしょう。

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機能語(キノウゴ)とは - コトバンク

 

 簡潔かつストレートな表現を心掛けることによる別のメリットもあります。私もやりがちなのですが、抜け漏れなく情報を伝えようとして情報を詰め込んでしまうと、本当に伝えたいメッセージの焦点がボケてしまい、かえって意図が伝わらなくなります。(役所などの資料でありがちな)小さいフォントでスライドに沢山の文字を詰め込むと、見る側がゲンナリしますよね。

 「余白」「引き算」の美学といった言葉があるように、伝える情報を絞ることにより、本当に伝えたい大切なメッセージはよりストレートに、強く伝わります。

 まずはシンプルに、短く、最低限に。あとは必要に応じて付け加えればいいのです。

 もう1点、気を付けた方が良いポイントがあります。それは、「AI読み」な方たちとは、議論で勝敗の決着を付けようとしない、言い換えれば、いわゆる「論破」を目指さないことです。

 そもそも、「論破」とは、(再々度)「新明解 第三版」によれば、

--------------------
論破:議論して相手を言い負かすこと。
--------------------

というのものです。言い負かすというのは、もちろん「怒鳴り合って声の大きさを競う」のでなく、より筋の通った(論理的な)主張をどちらがしているかを判断するものです。

 ところが、「AI読み」の方たちは読解力が低いので、議論の優劣を判断できません。お互いのルールの解釈が違う(勝敗を決める採点基準が異なる)ので、競うことができないのです。こちらが勝ったと思っても相手はいつまでも負けを認めることがありませんし、逆に向こうが一方的に「勝った」と宣言するかもしれません。

 そのようなやり取りが不毛かつ徒労であることは言うまでもありません。

 もし、「AI読み」の方たちに(当方からすれば筋違いだと思われる)言い掛かりを言われた時には、まともに取り合わず、先方に事実誤認がある場合にはその訂正を(最低限)した上で、「けしからん」等の感情的な意見に対しては、「貴重なご意見ありがとうございます。参考にします。」と返せば、それで良いのです。

 「論理」と「感情」の話はこのBlogでも何度か取り上げていますが、原則は、「論理が前提で感情に配慮(相手への共感を持つ)」です。個人的には、この辺の機微は、以前に経験した労働組合との交渉でだいぶ鍛えらえました。

 以上、3回に分けて、AI読みの話を取り上げましたが、何らかの形でみなさまの参考になれば幸いです。

 では、Have a nice Golden Week!

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「AI読み」の傾向と対策(2)

 こんにちは、みぜん合同会社 組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。前回のエントリから1ヶ月以上空いてしまいました(クライアント某社向けの管理職研修の準備に忙殺されていました)が、その続きとなります。

前回の記事と、関連書籍

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 前回は、「多くの日本人(大人も含まれます)の読解力が意外な程低い」(上記記事ではその傾向を「AI読み」と表現をしています)という記事の紹介(最近では、テレビなどのでも取り上げられているようですね。)と、この「AI読み」を克服するために必要な訓練は、論理性(論理的思考)と国語力を鍛えることではないか、とした上で、論理性を鍛える方法として注目されている「プログラミング的思考」について紹介しました。
 
今回のエントリでは、もう一方の要素である、「国語力を鍛えるにはどうすれば良いか」について考えてみたいと思います。

 まずは、ここで言う「国語力」をどう定義するかです。

 再度「新明解 第三版」で調べてみると、「国語力」という単語はありませんでしたが、「国語」については以下のように書かれていました。

--------------------
国語:一 それぞれの国家を支えている国民の使用する言葉を、自分たちのものとして意識した時の称。[わが国では日本語を指し、かつ それが公用語となっている]
二 教科の一つ。「国語」を正しく読む・書く・聞く・話す能力を段階的に高めることを目的とする。国語科。
--------------------

 国語力は、2番目にある、「正しく読む・書く・聞く・話す能力」と捉えてよさそうです。
 
 また、「国語力」というキーワードでググってみると、文部科学省のサイトにたどり着きました。どうやら平成14年~16年に文部科学省内の「文化審議会」にて議論され、最終的に答申されたもののようです。

(それぞれのページにリンクが貼られていないのが微妙な感じですが…)

これからの時代に求められる国語力について−はじめに

これからの時代に求められる国語力について−I これからの時代に求められる国語力について−第1 国語の果たす役割と国語の重要性

これからの時代に求められる国語力について−I これからの時代に求められる国語力について−第2 これからの時代に求められる国語力

これからの時代に求められる国語力について−I これからの時代に求められる国語力について−第3 望ましい国語力の具体的な目安

文化審議会 - Wikipedia


 ここでは、国語力を以下の2つの領域で捉えているようです。

--------------------
1.考える力,感じる力,想像する力,表す力から成る,言語を中心とした情報を処理・操作する領域
2. 考える力や,表す力などを支え,その基盤となる「国語の知識」や「教養・価値観・感性等」の領域
--------------------

 そのうえで、4つの力を以下のように定義しています(もっと端的に表して欲しいところですが)。
--------------------
【考える力】とは,分析力,論理構築力などを含む,論理的思考力である。

【感じる力】とは,相手の気持ちや文学作品の内容・表現,自然や人間に関する事実などを感じ取ったり,感動したりできる情緒力である。

【想像する力】とは,経験していない事柄や現実には存在していない事柄などをこうではないかと推し量り,頭の中でそのイメージを自由に思い描くことのできる力である。

【表す力】とは,考え,感じ,想像したことを表すために必要な表現力であり,分析力や論理構築力を用いて組み立てた自分の考えや思いなどを具体的な発言や文章として,相手や場面に配慮しつつ展開していける能力である。
--------------------

 ここでの定義ですと、論理性(論理的思考)は国語力の一部である「考える力」に含まれていますね。残りの3要素に関しては、「AI読み」とは、感じ取ったり、推し量る以前に「そこに書いていることを書いてある通りの意味に読み取れない」という、「そもそもの問題」なので、ここでは脇に置いておいてよさそうです。

 そうなると、ここで考慮すべき国語力の要素は、「国語の知識」や「教養・価値観・感性等」の領域であるということになります。

 上記答申では、「国語の知識」や「教養・価値観・感性等」について、以下のように言及されています。

--------------------
・基本的には読書などの方法を通じて生涯にわたって形成されていくものであるが,前者の「国語の知識」については学校教育の果たす役割が極めて大きい。

・「国語の知識」とは具体的には,
(例) 1 語彙(個人が身に付けている言葉の総体)
2 表記に関する知識(漢字や仮名遣い,句読点の使い方等)
3 文法に関する知識(言葉の決まりや働き等)
4 内容構成に関する知識(文章の組立て方等)
5 表現に関する知識(言葉遣いや文体・修辞法等)
6 その他の国語にかかわる知識(ことわざや慣用句の意味等)
といったようなものである。
--------------------

 この答申は、「国語力」を定義することが目的であり、これらの要素を鍛えるには具体的にどうすれば良いか、という点については残念ながら言及されておりませんが、要はテクニカルな「国語の知識」と、文章を読んで意味を取る際に「あれ、おかしいな」と気付くための「知識・常識」の蓄積(例えば1+1=3という式を見ておかしいと感じるには、数字と記号のそれぞれの意味を知っており、さらに1+1=2であるということを知っている必要がある)が必要であるということでしょう。

 これは、英語がそれほど得意でない人が英語で文章を読む状況にそのまま置き換えることができます。単語力と文法力が高くないと、簡単な文章ならともかく、難しい単語や慣用句、文法の意味を正確に取るのが難しくなります。分からない箇所があっても辞書に頼らずに文章を理解しようとすると、「書いてあることの意味が読み取れない」AI読みと同様の結果になります。よって、上記の「国語の知識」とは、(母国語である)「日本語の語学力」と言い換えることが出来ます。

 これを克服するためには、語学の勉強と同様に、時間を費やして単語力、文法力を上げていくしかないのでしょう。

 もう一方の、「教養・価値観・感性等」については、これはもう、良質の本や記事を読むことや、知人・友人たちとの交友などによって質量共に高いインプット(時にはアウトプット)をしていくしかないのでしょうね。


ライフネット生命から立命館APU学長に就任された出口治明さんの「教養」本はこちら。

  この話、まだ続きます。

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「AI読み」の傾向と対策(1)論理性(論理的思考)を鍛える

 こんにちは、みぜん合同会社 組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。東京地方は寒さのピークが過ぎたと思ったら、ここ数日は逆戻りですね。春が近づくのはよいですが、同時に花粉が飛び始めているのが少し憂鬱ではありますね…

さて、少し前になるのですが、とても興味深い、気になる記事がありました。

news.yahoo.co.jp

 (僭越ながら)一言で要約すると、「多くの日本人(大人も含まれます)の読解力が意外な程低い」という話です。

 以下、記事からいくつかのコメントを抜粋・引用してみます。また、記事中にある、回答者の読解力を試すいくつかの例題もぜひ試してみてください。

--------------------
「(例題の正答率が低いことに対し)文章を読んでいるようで、実はちゃんと読んでいない。キーワードをポンポンポンと拾っているんです。」

「『……のうち』とか『……の時』『……以外』といった機能語が正確に読めていない。実は、それはAIの読み方に近いんです。」

「これを選んだという人は、『…のうち』『…以外』という機能語が読めていない。意味が分かっていないか、読み飛ばしていたということです。」

「(学力の差は)『読める』かどうか、が大きい。読めている人は、それほど痛痒なく受験勉強をやって、入試を突破する」

「(AIは)その場で瞬時に、どれが重要かを判断したり、何らかの例外が起きた時の処理は難しい。そうした能力がある人は、AIが導入されても重宝されて、賃金も上がる。」

「読めるか読めないかが格差を生む。」

「「英語なら、文法なども教えますね。国語を体系的に教えるのは、多様化するこれからは、ますます必要です。」

「学校で、子供たちが教科書も読めない状況で先生方は困っているという現実は、みんなが共有する必要があります。」
--------------------

 という訳で、なかなか衝撃的な内容です。
※こんな感想記事もありました。

blog.tinect.jp

 確かに、会話の中でこのような「AI読み」的反応・対応を受けた覚えは少なくありません。文章のつながりを理解できず、目立つキーワードだけを拾って表面的に理解する「読み飛ばす」人たちや、同様に「聞いた話を理解していない人」は少なくない気がします。

 また、連想して思い出したのは、(前職でさんざんやったw)英語のTOEICテストのリスニング問題のコツとして、会話で出てきた単語(キーワード)が回答の選択肢にあった場合、それは引っ掛け問題で、その選択肢は選んではいけないという話を思い出しました。さらに、自分が英語の文章を読む際には、分からない単語や表現が出てきても、(いちいち辞書で調べず)なんとなく読み飛ばして全体で意味を掴む(結果、意味を取り違えているかもしれない)ことをしている、ということにも気付きました。

 つまり、人は無意識的、直感的には読んだり聞いたりしたことを一連の「文章」としてではなく、単語(キーワード)で意味を捉える傾向があり、それを防ぎ、文章として理解するためには、(読むにせよ、聞くにせよ)相応の訓練が必要だということなのでしょう。

 では、これを改善するには、どうすれば良いのでしょうか。とにかくたくさん本を読めば良いのでしょうか?
 
 おそらく必要な訓練は、大まかに2種類あるのではないでしょうか。論理性(論理的思考)を鍛えることと、国語力を鍛えることです。

 「論理性(論理的思考)が鍛えられた」状態とは、話したり、文章で書くことによって論理的に整合した説明ができる、かつ、他人による説明を論理的に検証し、理解ができる(論理的に不整合であれば、それを指摘できる)状態と言えます。

 ちなみに、(いつもお世話になっている)「新明解 第三版」では、「論理」「論理的」という単語が以下のように定義されています。

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論理:一 与えられた条件から正しい結論が得られるための考え方の筋道
二 現象を合理的・統一的に解釈する上に認められる因果関係

論理的:前提とそれから導き出される結論との間に筋道が認められて、納得が行く様子
--------------------

 そして、論理性(論理的思考)を鍛えるための方法として、「プログラミング的思考」が注目されています。確かに、「条件分岐」をちゃんと書けないとプログラムは動かないですからね。2020年度よりプログラミング教育が小学校で必修化されることになりましたが、そこでは「プログラミング的思考」を育むことが目的とされています。

--------------------
「将来どのような職業に就くとしても、時代を超えて普遍的に求められる力としての「プログラミング的思考」などを育むことであり、コーディングを覚えることが目的ではない。」

topics.buffalo.jp

小学校段階におけるプログラミング教育の在り方について(議論の取りまとめ):文部科学省
--------------------

 論理的思考とプログラミング的思考の関係性については、こちらの記事が分かりやすいです。

「(プログラミング的思考は)仕組みや、環境、計算式や、論理的な思考全てをひっくるめて課題を効率良く解くための考え方です」

t-knit.jp

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 上記の記事でも懸念されているように、この「プログラミング教育」を今の小学校の先生方がちゃんと教えられるのか、という問題はありますが、もしこれが本当に効果的に実施され、子供たちが論理性(論理的思考)を向上することが出来るなら、この国の前途は明るくなるのかもしれません(2020年以降に、実施状況の検証が必要になりますね)。

 この話、続きます。

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企業にとって望ましい「人口動態」とは?(2)

 こんにちは、みぜん合同会社 組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。

 先日、12月に鎖骨を骨折して以来、久しぶりに志賀高原へスキーに行ってきました。やはり雪山は楽しい!スキーは楽しい!もう、スキーは生き甲斐ですね。ちなみに骨はまだ付いていません。

 そういえば、志賀高原でスキーやスノーボードを楽しまれている外国人(主にオーストラリアの人たち)が数年前と比べて非常に増えていることに驚きました。どうやら、以前に白馬や野沢温泉に訪れた人たちが、「Shigaも良い所らしい」と仲間の口コミで聞き、流れて来ているようです。もちろん、アジア系の人たちも大勢見かけます。こういったインバウンドの需要を取り込んでいくのは、とても良いことですよね。

 さて、前回のエントリでは、我が国において、人口動態の「少子高齢化」が深刻な社会問題として認識されているのと同様のことが多くの企業にも起きている現状について取り上げました。

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 問題は、現状、その状況に経営者や人事担当者がどの程度気付き、危機感を持っているかです。

 例えば、このような話もあります。某都銀(死語?)は90年代後半のいわゆる「就職氷河期」には新卒採用数を絞り込み、総合職の新卒採用数は百数十名程度だったのですが、その後景気回復と他行との合併・メガバンク化等の事由もあり、今では1,000名を大幅に超える人数を新卒採用しています。それだけの人数を確保するためには、採用者の「質」をいかに確保するかは、いろいろと悩まれているようではありますが。

 一方で、メガバンクはバブル世代の人員の社外への排出が進んでおらず、転籍先探しの「営業」を熱心にやっているらしいという話も漏れ聞こえてきます。資金調達の方法も多様化し、いわば「金余り」の現状において、企業に対する銀行の影響力が低下していますので、なかなか「営業」も大変なのだろうなと想像されるところです

メガバンクの人員問題については、このような分析記事がありました。なかなか参考になります。

www.financepensionrealestate.work

www.financepensionrealestate.work

www.financepensionrealestate.work

 別の事例もあります。複数の大手企業の出資により創立された某企業は、華々しい広告宣伝と同時に大々的に「即戦力」として、30歳代以上の世代の中途採用を大量に進めました。ところが程なく業績が低迷し、その後新規の(若手世代の)採用が進まない中で、平均年齢はそのまま上がっていった結果、20歳代はほぼ皆無で、30歳代後半~40歳代が従業員の大多数を占めるという非常にバランスの悪い人員構成となってしまったのです。さらにはその方たちは「前職見合いの給料」で入社し、当時の人事制度に則り、年功序列的に昇給していった結果、ただでさえ業績が低迷している中で、人件費が収益を圧迫する事態となってしまったのです(その会社がその後どうなったかはまた別の話…)。

 いずれの事例からも学べる教訓は、「人口動態は予め予測できるのだから、このような事態は防げたはずだ」ということです。極論すれば、こんなことは「ちょっと考えれば分かること」のはずなのです。

 ところが、実際には「失敗から学習」せずに、同様の事態が繰り返されます。日本の「少子高齢化」と同じで、企業の業績等を圧迫するような形で「人口動態」の問題が顕在化するまでにはタイムラグがあり、一方で企業の意思決定は短期(単年~長くても2,3年)の観点で最適化しがちです。つまり、経営陣が気にするのは「人口動態」でなく、欠員補充+α(部門からの積み上げの人員要求)の単純な「人員数」と「人件費」だけであったりするのです。

 さらには、採用の担当者・責任者が短期的に変わるため、過去の事例が引き継がれず、かつその人たちの評価指標が「単年での(指定校毎の)採用人数」などであったりすれば、彼ら彼女らが「いかに(経営から求められる)人数を(「前年並み」といった数字自体に疑問を持たず)確保するか」ばかりを追いかけるインセンティブを誘発することになります。

 そこで経営者、人事責任者が考えるべき観点は、上記の事態を見越し、いかに中長期的な観点で自社の「人口動態」を作り、または(どの程度の時間軸で)作り替えていくか、そのような視点を持ち、施策に反映できるかです。

 単に部署別の人員数だけを見ても「人口動態」は分かりません。本来あるべきは、各事業部門・職種ごとに等級(年齢)別の人員分布を確認、把握したうえで、各等級、職種ごとにどのような人材を何人採用し、かつ育成を行いながら、並行して(厳しい話ですが)どの程度リテンションと退出の施策を実行すべきかを計画・実施する姿です。現状を分析して全社的な人員計画(案)を作るのは人事部門の仕事であり、現状を把握した上で「あるべき人口動態」を定義し、それを実現させるのが経営者の仕事です。

 では、具体的にはどのような分析を行えば良いのでしょうか。

 多くの日本企業においては、まずは新卒採用で基礎的な人数を確保し、足りない分を中途採用で調達・補充するというやり方が一般的でしょう。各等級・職種ごと(企業規模によっては事業部ごとも)の「人口動態」が明らかになれば、どの職種、等級を何人くらい採用すべきかが明らかになります。この時に、
現場が要求する人員のニーズ(人数、スペック等)と異なる場合は、どちらを優先させるか検討します。

 もし、年齢と給料の相関が高く、また人材の流動性が低いのであれば年齢別構成の把握は重要になります。

 その上で、(「動態」なので)各等級ごとの昇格数・率をコントロールしつつ(これにより各等級ごとの平均滞留年数も変わります)、数年後を見越して有望人材を上位等級に送りこめるよう、(育成計画・戦略的人事異動などを)仕込んでいくという、いわゆる「リーダーシップ・パイプライン」的な仕掛けも取り入れていきたいところです。

globis.jp

 さらには、各職種、等級ごとの退職率・休職率などを確認・比較することにより、特定の部署や職種などにおける職場環境等の問題を発見するきっかけとすることもできます。

 なお、自社の「人口動態」に対して働きかける際には、「労働市場の環境」という外部要因も考慮する必要があります。

 企業においては、同程度のスキル・能力であれば、より長い在職期間とその間の貢献度(ライフタイムバリュー(LTV))を高く期待できる若年層へのニースが高い(中高年層ほど労働市場での流動性が低いという問題もあります)一方で、第二次ベビーブームの世代から比べると比べていわゆる「若年層」の人数が半減しているという現状があります。企業の人口動態問題は、実は、日本の人口動態における問題の相似形なのです。
 
 幸いなことに、企業における人口動態は、国家におけるそれと異なり、企業の意思において調整をする裁量が多くあります(「新卒・中途採用数の調整」、「希望退職の実施」、「(人材確保のために)他社を買収」等々)。そうであれば、企業は自社・自業態における時間軸(調整期間)を考慮しながら意識的・積極的にその機会を活用し、人口動態の最適化を目指すべきです。(経営戦略を実現するための)組織・人事戦略の一環として、貴社においても「人口動態」のあり方を考えてみてはいかがでしょうか?

 では、Have a nice day!

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企業にとって望ましい「人口動態」とは?(1)

 こんにちは、みぜん合同会社 組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。

 東京地方、今年の冬は例年に比べて寒いですね。雪が降るのは仕方がありませんが、積雪のある道路をノーマルタイヤで走ろうとしてスタックし、大渋滞を引き起こしたり、衝突事故などを起こすのは明らかに「人災」ですから、そういう方たちには本当に自重して頂きたいものです。どうしても雪道を移動したいのであれば、あらかじめスタッドレスタイヤに交換するか、チェーンを装着すれば良いだけの話ですから。

 さて、表題の「人口動態(人口ピラミッド)」ですが、国などの年齢別の人口を表すもので、「通常は、出生数が多く、死亡等により、だんだん年齢を重ねていくうちに人口が少なくなる。このため、三角形のピラミッド状の形になることから、こう呼ばれる。」そうです(引用:下記のWikipedia)。私自身はたしか昔(小学校か中学校の頃?)に社会科で習ったような記憶があります。

人口ピラミッド - Wikipedia

平成29年我が国の人口動態 - 厚生労働省

http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/81-1a2.pdf

 人口動態の研究は「人口統計学」、またはデモグラフィ(demography)と呼ばれる学問になっています。

人口統計学 - Wikipedia

 上記の厚生労働省の資料によれば、日本の「人口動態」は、1947年-1949年生まれの「第一次ベビーブーム」世代と、1971年-1974年生まれの第二次ベビーブーム世代の人口が突出しており、その下の世代は徐々に減少している、「逆ピラミッド状態」にあります。いわゆる「少子高齢化」の状態ですね。

※年次の出生数は第一次ベビーブーム期は250万人超、第二次ベビーブーム期は200万人超でしたが、最近では約100万人まで落ち込んでいます。

 そして、同様の「少子高齢化」問題が、今、多くの企業でも起きています。以下、私がお手伝いしたある会社の話です。

 その会社は、従業員数千人の大企業ですが、年齢別の人員構成は、いわゆるバブル世代(40歳代後半~50歳代前半)が最も多く、その下の世代は年次によりピークの半分以下の人数であり、頭でっかちの「逆ピラミッド」状態となっています。また、「等級」毎の人員構成では、非管理職の一番上と管理職の一番下が最も多く、それより下の等級の方が人数が少ないという構成になっています。

 採用に関しては、新卒採用がメインで中途採用はあくまで例外的という、典型的な日本企業です。新卒採用数も、近年はあくまで現状の人員規模を維持する程度の採用数(年間数十名)に留まっております。

 人事の方の問題意識としては、上記の「バブル世代」の管理職が多く、ポスト数は限られているために40歳代前半の世代の管理職登用も遅れて滞留気味になっているとのことでした。確かにそれは問題がありそうです。

 しかし、問題はそれだけでは無いのでは?と私は感じました。というのも、このまま何年か後にバブル世代が大量に定年退職すると、社員数は縮小均衡となり、管理職(に適切な人員)も不足する事が予想されます。抜けた人数分を新卒採用の増加でカバーしようとするのは現実的でありませんし、「中途採用により補充」というのも、中途採用に従来積極的ではない会社においては(抵抗が大きく)容易ではありません。

 よって、本来であれば、相当前からもっと多くの人数(少なくとも1.5倍~2倍)を新卒採用するか、中途採用の比率を徐々に上げていくといった方策を予め進めておくべきだったのでしょう。

 そういえば、先日、同様の問題意識を旭化成の社長が発言されていて、話題になっていましたね。

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 「採用数を抑えたのだからそうなるのは当然だろうと多くの氷河期世代の指摘を集めたわけですが」と、上記記事で城繁幸さんは書かれていますが、まさにその通りで、目先の業績に囚われ、単純な人員の頭数合わせに走った多くの企業が、社内の「人員構成(人口動態)の歪み」という爆弾を抱えている状態です。

 問題は、現状、その状況に経営者や人事担当者がどの程度気付き、危機感を持っているかです。

 この話、続きます。

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大谷選手のエンゼルス移籍と「囲い込み」の功罪(2)

 こんにちは、みぜん合同会社 組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。先月中旬にスキーで転倒、骨折をしてしまい、更新が滞ってしまいました。。今年は健康第一で良い年でありますように。。

 前回のエントリでは、日本ハムファイターズ大谷翔平選手のメジャーリーグ移籍の話と、それに関連して、大谷選手を育て、メジャーリーグに送り出したファイターズと、比較対象として読売ジャイアンツの選手のキャリアに対する姿勢の違いについて解説しました。

前回のエントリ

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 「この構図って何かに似ていませんか?」と最後に書きましたが、その続きです。

 私が感じたのは、ジャイアンツの考え方は従来型の(就職ランキングの上位に入るような)日本の一流大企業に似ているな、ということです。

 昔のいわゆる「一流大学」の学生は、そのような(ドメスティックな)一流大企業への就職を目指しました。ところが、今や優秀な学生はむしろ外資系の投資銀行コンサルタントなどを就職先として優先的に選ぶようになり始めています。さらに、その中でも特に優秀な人なら、日本の企業に就職先を限定せずに、自分の希望に合った会社を海外で見つけて就職することも珍しくないようになりました。

 そのような意識の変化の前提として、彼・彼女達は最初に就職した会社で一生勤め上げることに重きを置いていません。一旦入社したら生涯安泰であっても、その代わりキャリアの選択肢は会社に委ねるという制約条件をリスクと考え、むしろ忌避しているようです。

 その代わりに、主体的に自分のキャリア・市場価値を高めるために何をどのタイミングですべきか、就職先(候補)がどのような職場環境で、どれだけ裁量を持てるのか、周りの同僚は優秀で互いに高めあうことができるのか、さらには自身の価値に対して十分に報酬が見合うのか、そのような考えで就職先も選ぶようになって来ているように見受けられます。

 そのような評価軸をしっかり持っているからこそ、より良い環境・条件が提示されればそちらに転職することを彼・彼女達は躊躇しませんし、雇う会社も「去る者は追わず」でそのような人をを強く引き留めません(大谷選手に対するファイターズの姿勢はまさにそうでした)。もし本気でその人を引き留めたいのであれば、雇い主はその人が満足するだけの好処遇を予め(ケチらずに)与えておくべきなのです。

※参考
「従業員から「辞めるぞ」と脅されて報酬額を上げるということは、その人にこれまで会社が払っていた報酬水準が誤りであったと会社が認めたということです。」

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 つまり、人材を囲い込む「ジャイアンツ」型企業よりも、一定の期間で貢献をしてくれればそれで良いという「ファイターズ」型企業の方が、少なくとも優秀(とされる)若者たちからは支持され始めているのです。

 こうした傾向は、従来の「ジャイアンツ」型大企業で採用活動を行っている担当者の中で認識している人たちも少なからず存在します。ところが、ほとんどの企業は残念ながら従来の「ジャイアンツ」型を維持し、「ファイターズ」型への移行を躊躇しているように思われます。

 なぜ、「ジャイアンツ」型企業は変わることができないのでしょうか。

 それは、過去の成功体験に囚われた年配者(概ね50歳前後(バブル世代)以上)が変化を阻害しているからではないでしょうか。

 多くの従来型大企業の場合、典型的な出世のパターンは、役員登用が50歳代、社長になるのが60歳過ぎというものでしょう。現場の担当者(20歳代~30歳代)やその直接の上司(40歳代)が、採用市場の変化を痛感し、自社の採用選考基準や報酬制度の変更を提案したとしても、現時点で自社にいる(特に幹部)人材は皆旧来型の基準で採用され、社内でキャリアを作ってきた人たちなので、新しいやり方に対して漠然とした不安を持ち、否定的になるのも無理がないかもしれません。

 また、その組織がいわゆる「減点法」の人事評価を行い、「とにかく失敗しない(会社がさせない)人」が出世するような組織風土の元では、新しい「ファイターズ」型を目指して失敗するリスクよりは、従来のやり方を踏襲して将来的にジリ貧になったとしても、自分が在職している間に逃げ切れればその方がマシ、と考え、変化を嫌うインセンティブが働くのも無理がありません。いわゆる「茹でガエル」状態です。

 さらには、外野の「世論」が変化を阻害する要因になる場合もあります。ジャイアンツの場合には、ファンはおそらく「ファイターズ」型のチームにジャイアンツが変化することは望まず、あくまで従来の「ジャイアンツ」型で、昔のように強くなることを望んでいるのでしょう。

 企業の場合は、「相談役」などのOB役員がそのような存在になっているのかもしれません。「(自分たちが現役の頃の)昔はうまくいっていたからやり方は変えてはいけない。今うまくいかないのは、(現役の)お前たちの努力と根性が足りないからだ」という理屈(?)です。

 この手の「OBの理屈」の典型が、よく話題になる元プロ野球選手の張本勲氏のコメントです。自分たちが現役の頃と比較して、「昔は良かった。今はダメ」と今のプロ野球の現状を批判します。
(このようなコメントをすると、実際にテレビを見て視聴率に貢献している、(主に高齢の)視聴者が喜ぶということは計算済みでしょう)

「(大谷選手に)あれぐらいのバッティングは米国なら掃いて捨てるぐらいいる」

www.sanspo.com

「(イチロー選手に)戻ってほしくないわね。行ったり来たり、芝居の幽霊じゃない。荒らされますよ、日本のプロ野球界が」

www.sanspo.com

※年齢が高い人が皆そのような傾向を持つ訳ではない点は注意。たとえばイチローの師匠の故・仰木彰氏は張本氏(1940年生まれ)よりも5歳年上(1935年生まれ)です。

 では、この場合どうすれば良いかというと、結局現役の方たちが内部から変革を進めるしかないのでしょう。たとえそれが容易ではないとしても。。それができなければその企業は優勝劣敗で市場から淘汰されていくか、または(JALやシャープのように)資本と経営者が刷新されることになります。


 以下、結論です。

 「優秀な人は囲い込むことができない」という前提で企業は人材を採用、処遇し、たとえその人材が数年間しか在籍しないとしても、その期間にしっかり貢献してもらえばよいと割り切るという姿勢を示さないと、本当に優秀な人材は獲得できなくなっています。

 真の優秀人材を獲得するためには、その契約が雇用契約でも業務委託契約でも構わないし、場合によっては副業で関わってもらう形態もあり得ます。ただし、これは単に相手の希望に合わせれば良いという訳ではありません。あくまでその人材と会社の双方にメリットがある形を常識に囚われず追求しましょうということです。そのような(大谷選手の二刀流をあえて認めるような)処遇を柔軟に提示できる、「ファイターズ」型の企業には優秀な人材が自ずと集まります。

※参考

hrstrategist.hatenablog.com

 一方で、そこそこの人材を集めて、そこそこ以上の業績を目指すという戦略もあり得ます。その場合、従来の「ジャイアンツ」型にも依然メリットはあります。プロ野球の世界でいえば、メジャーリーグMLB)「を目指すほどのレベルではない選手であれば、日本(NPB)のチーム中で相対的に処遇の良いチームを選ぶのは合理的です。ただし、そのような企業には真に優秀な人材は集まらないというリスクは認識する必要はあります。

 張本氏のような年配者が「昔は良かった。現状は嘆かわしい。」といくら文句を言っても大谷選手やイチロー選手のような超一流人材や、清宮選手のような「超一流候補」は「ファイターズ」型企業に集まるという大筋の流れが逆戻りすることは、もうありません。現実を直視し、自社の経営理念に適合し、経営戦略の実現に必要な採用戦略・人事戦略はどのようなものか、ぜひ考えてみてください。

 では、Have a nice day!