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hrstrategist’s blog

組織人事ストラテジストのつぶやき、業務連絡など。。

シリコンバレーの社員食堂が凄い理由

 こんにちは、組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。

 日経ビジネスの少し前の記事になりますが、アップル本『沈みゆく帝国』著者のケイン岩谷ゆかり氏がシリコンバレーのIT企業の社員食堂について記事を書かれています。

シリコンバレーをやる気にさせる社内食堂(日経ビジネス

business.nikkeibp.co.jp

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 この記事では、フェイスブック、ゴープロ、グーグル、ツイッター、エバーノート、アップルといった会社の社員食堂と、そのサービス内容が紹介されています。

 「無料または安価」「豪華、グルメ」「健康志向」「幹部がバリスタ」などなど、各社のさまざまな取り組みが紹介されており、それぞれ羨ましい限りなのですが、ここで注意すべきは、表向きには「福利厚生」として行っているこれらの施策の真の目的は、実は各社によって異なるのではないかということです。

 各社のコメントをみると、それぞれの会社の目的・狙いが見えてきます。

「ランチがタダなんてあり得ません」(アップル)
「採用施策の一環にもなっているのです」(ツイッター)
「デザートも見つけにくい場所に置かれている」「なるべくなら体にいいものを食べてほしいと工夫しているのです」(グーグル)
「社員が喜びますし、その時間も社員同士の親睦が深まることになりますから」(エバーノート)

 一方で、各社に共通する、シリコンバレーという立地に密接に関わる理由も実はあります。さすが岩谷氏、鋭くそれを指摘しています。

「会社負担による食事の提供が爆発的に広がっているが、これには理由がある。お昼やおやつで社外に出ていけば、その分、仕事の時間が減ってしまう。会社によっては、ランチを食べられる店が近くにあまりない場合もある。食事を提供すれば社員は社内にとどまり、結果的に働く時間が長くなったりするわけだ。」

 結局、これが一番の理由なのではないかという気がします。

 実はわたくし、楽天に在籍時の最後の3年くらいはファシリティ管理も担当しており、先日発表された二子玉川への本社移転に関しては、移転先の候補地選定からプロジェクトの立ち上げ、運営等にも関わっておりました。

 予算の都合上(笑)私は参加できなかったのですが、関係者がシリコンバレーに行き、現地企業のオフィス見学も行いました(上記の会社のうちいくつかも見学済み)。

 実際に見学した彼らも、「外で食べる場所が近くにないので、移動時間を節約するために社内食堂を作るんだ」という事で、現場を見て腑に落ちたようでした。

 加えて彼らは、「特にグーグルあたりは、従業員(特にエンジニア)たちに、いかに仕事以外の余計な心配ことを取り除き、仕事だけに集中してもらえるかを、本当に真剣に考えている」と、言っておりました。確かに今回の記事においても、例えば従業員の健康管理に気を使っている様子が伺えますね。

 グーグルに関しては手厚い福利厚生が有名です。「グーグルバス」に関しては、地元民の反対運動も話題になりましたね。

グーグルバス問題とサンフランシスコの階級抗争を理解するためのキーワード ( 不動産 ) - アメリカ/米国不動産投資日記 - Yahoo!ブログ

Googleの新しい福利厚生、無料で「犬の散歩」「洗濯物を畳む」等のパシリを依頼できるように : ギズモード・ジャパン

 一方で、グーグル自身が、「福利厚生を目当てにするな」と採用ページでアピールしていたりします。

福利厚生ではなく情熱こそが人を動かします - Google 人材募集

※"perks"とは福利厚生のことを指します。

 彼らにとっては福利厚生施策は、それ自体で従業員の満足度を上げることを目的とするのではなく、あくまで従業員の生産性向上のためのひとつの手段として捉えていることが伺えます。高い給料で超優秀な人材を雇っている訳ですから、これらの施策により少しでも(労働時間だけでなく集中力・生産性も上げて)仕事を沢山してもらえばこの程度の投資は十分割に合うと計算しているのでしょう。

 翻って我々はどうすべきかです。この件から学ぶべきことは、概ね以下ではないでしょうか。

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・表面的な事象をマネするだけは意味がない
→本質的な目的と、経営理念・戦略との一貫性を見極めること
・(大ざっぱであっても)ROIは常に考えるべし。
→どれだけの費用を掛けて、どのような効果を見込むのかを事前に明示しておかなければ、途中の効果検証や改善施策も打てませんし、施策を止めることも難しくなります。
・「社員の要望」を聞くのは大事、ただし鵜呑みにはしない
→往々にして「声が大きい人」の意見が通りがちなので注意。
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 上記を勘案の上、例えば「社員満足度を上げるために豪華な社員食堂を(無料で)導入する」という施策が導き出されるのであれば、それはそれで良いのではないかと思います。

 という訳で、会社の成長発展に資するための「福利厚生」のあり方についても、一度真剣に考えてみてはいかがでしょうか?お呼び頂ければ、ブレストのお手伝いもいたします(笑)。

 では、Have a nice day!

〇今日の余談
 2007年に楽天の本社が六本木から品川シーサイドに移転をした際に、従業員等に対する社員食堂での朝食・昼食の提供を無料化しました(六本木時代も社食はありましたが、有料でした)。この施策は今でも続いております。いろいろな要因があり、単純に原因-結果と結びつけるのは難しいのですが、この前後で退職率が大幅に低下した事実があります。そのような事例も、参考になるかもしれませんね。