hrstrategist’s blog

組織人事ストラテジストのつぶやき、業務連絡など。。

「集団の傾向≠個別の特徴」である話(2) 採用編

 おはようございます。組織人事ストラテジスト新井です。

 もうお昼になってしまいましたが。。

 

 昨日は、お手伝いをさせて頂いている会社の経営幹部・人事担当者と一緒に都内某所にて丸1日「合宿」形式でカンヅメになり、今後の組織・人事戦略の方向性について議論を行いました。

 最初に会社の経営理念を再確認し、その上でどのような組織にしたいのか、どんな人にJoinして欲しいか、会社は社員に何を提供していきたいかを言語化していきます。その上で、あるべき方向性と現状のギャップを認識し、緊急度・重要度を勘案しながら、個別施策の方向性を決めていくことが出来ました。

 「どうすれば良いか」という不安の状態から、「何をすべきか」という心配の状態までステージを進めることが出来たのではないかと思います。あとは「時間軸を持ち、いかに実行するか」ですので、引き続き頑張りたいと思います(頑張りましょう!)。

 さて、昨日は、家族旅行で行った韓国で感じた事を元に、ステレオタイプではなく個人の個性を理解することの意味についてコメントしました。

「集団の傾向≠個別の特徴」である話(1) 国籍・民族編 - hrstrategist’s blog

 この話では、国籍・民族の話を取り上げましたが、それに限らず、いろいろな所で「一般化(あるグループの一部の事物について成り立っていることから,そのグループ全体について成り立つように論をおしすすめること。普遍化 by 大辞林 第三版)」によるミスリーディングが起きていると感じます。

 例えば、、

ディープインパクトの仔はよく走る」

とは、以下のどちらの意味でしょうか?(競馬を知らない方はゴメンナサイ)

ディープインパクトを父親に持つ馬の中には競走成績の良い馬が多い
ディープインパクトを父親に持つと、その馬は必ず競走成績が良い

 競馬に詳しい方ならまず間違えないと思いますが、前者が正解です。

 では、これはどうでしょう?(野球を知らない方はゴメンナサイ)

横浜高校出身者はプロ野球で活躍する」

横浜高校出身者がプロ野球で多く活躍している
横浜高校からプロ野球入りすると必ず活躍することができる

 こちらも当然前者が正解です。

 「当たり前だろう」と思われるかもしれませんが、では、この場合ははどうでしょう?

 「東大生は優秀である」

・東大生(OB,OG)は学業成績が優秀なだけでなく、仕事においても活躍する人が多い
・東大生(OB,OG)は学業成績が優秀なので、仕事においても必ず活躍する

 このような書き方をすると、後者に不自然さを感じるかもしれませんが、例えば採用の場などで、「彼(彼女)は○○大だから仕事も出来るに違いない」といった先入観を持ち、後者の発想で評価をしたりすることはしばしばあるような気がします。

 ところが、前回も言及した通り、「集団の傾向≠個別の特徴」です。個別の能力にはばらつきがある以上、東大生であるから仕事上も優秀だとは限りません。

 競馬の世界では、ディープインパクトの産駒100頭とあまり冴えない種牡馬の産駒100頭を比較すれば、間違いなく前者の中から活躍馬が多く出ているはずです。同様に、東大生100人とどこかの中堅校生100人を比較すれば、これも前者の方がより(仕事の面で)優秀な方が沢山いるのだと思います。

 一方で、ディープインパクトの仔でも1勝もできない馬は沢山いますし、東大生でも仕事の面でパフォーマンスをあまり出せない人は少なからずいるはずです。

 つまり、母集団のパフォーマンスを平均すると他の母集団より優秀ではあるが、個別のパフォーマンスにはばらつきがあるので、「ディープインパクト産駒」や「東大生」というのはそれ自体で品質保証にはならなず、結局は個体を見極めて判断をするしかないという事です。

 ここから「強者の戦略」「弱者の戦略」双方の教訓が得られます。

 優秀な母集団に容易にアクセスできる強者は、優秀な母集団に対象を限定し、その中からスクリーニングを行う事が(おそらく)最も効率が良い手法となります。

 新卒採用で言えば、黙っていても応募が集まる大企業はその中から特定の学校にのみターゲットを絞り込むことで優秀な学生を効率よく抽出できますし、資金が潤沢な馬主は、ディープインパクトなど、産駒の成績が優秀な種牡馬の仔(ただし値段も高い)を選んで買うのが(おそらく)Bestな戦略です。

 一方で弱者は強者と同じことをしてはダメです。強者と同じ母集団を狙っても、そこには強者のセレクトに漏れた売れ残りしか残っていません(もちろん、売れ残りだから必ずダメな訳ではありませんが)。

 弱者は取るべき戦略は、自身の相馬眼を研ぎ澄まし、独自の手法で強者が狙わない母集団の中から、優秀な個体をピックアップするというものです。これには採用担当者、面接者の「判断軸」と「人を見る目」が非常に重要になります。競馬の世界でも、配合や馬体等の判断軸を元に、いわゆる安馬を選んで活躍させている馬主の方が確実にいらっしゃいますし、最近ではライフネット生命さんやドワンゴさんなど、新卒採用でいろいろな工夫をされている企業も数多く出てきていますね。

ライフネット生命 定期育成採用

株式会社ドワンゴ 新卒採用

 ちょうど昨日8月14日の日経朝刊、「経済教室」にて、服部泰宏さん(横浜国立大学准教授)が、新卒採用において日本企業が「他社と似た、横並びのもの(施策)」を取る「結果として非効率やコスト増大につながっている可能性も高い」、「日本企業が軽視しがちだった『期待のマッチング』の重要性」といった指摘をされておりました。

 漫然と横並びの施策を行うのは、人事担当者としては失敗した時に言い訳がしやすい、消去法の選択でしかありません。人材採用とは企業の中で最も重要であるリソースを調達するという最重要な施策です。トップがしっかりとコミットし、もっともっと真剣に、頭を使った独自の採用施策が、今後各社で展開されていくことを期待します!