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hrstrategist’s blog

組織人事ストラテジストのつぶやき、業務連絡など。。

その人は「代えがたい」人材ですか?-「人件費」というパイの分け方(2)

 こんにちは、組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。前々回のエントリ(以下)で「また来週」と言いつつ、1週遅れになってしまいました。申し訳ございません。

その人は「代えがたい」人材ですか?-「人件費」というパイの分け方(1) - hrstrategist’s blog

 そこでは、上司が部下の評価を決める方法について、以下のようにアドバイスをしました。

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・まず被評価者の順番を付けて下さい
・順番は、辞められたら困る「代えがたい」順を考えて下さい
・その順番に従って報酬を決めて下さい
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 今回はこの続きの話となります。では、「代えがたさ」とは何なのでしょうか?

 よく私は以下のような例えを使います。

 プロ野球において、コンスタントに打率3割を打てるバッターと、コンスタントに2割しか打てないバッターがいたとします。(能力、性格、年齢等も含めた)他の要素・条件が全く同じとすると、双方の年俸を比較した場合、3割打者のそれは2割打者の1.5倍ではとても利かないような高い金額になるはずです。つまり、同じ打席数でもヒット1本あたりの報酬は前者が高くなります。そして、それについて誰も不思議に思いません。

 年俸の差は単純にヒットを打てる数の差で決まるのではなく、その能力の希少性で決まるのです。2割バッターはプロでも沢山いますが、3割バッターは1チームに多くても2,3人しかいません。

 打率2割の人に価値がないのではありません。コンスタントに1割しか打てない人と比べたら2倍ヒットを打てる訳ですから。でも、より希少価値が高く、代えがたい3割打者は、圧倒的により高い報酬を貰えるのです。

 一方で、2割打者のように、それなりの貢献をし、価値を生み出しても、それが他の人でも出来る、代わりが利くものであれば、その人に高い報酬を与える必要が無くなります。代わりがいくらでもいるので、同等か、より報酬が安い人にいつでも交換が可能だからです。

 この仕組みは他のスポーツでも当てはまります。100メートルを9秒5で走れる人は、10秒5で走る人より、(わずか1秒の差で)圧倒的に価値があり、賞賛されます。

 ポイントは、3割打者や9秒5のランナーは2割打者や10秒5のランナーより圧倒的に出現数が少ない、希少な人達であるということです。かつ、スポーツのルール上、彼らの代わりに「機械を使う」「全打席でイチローが打つ」といったことは起こり得ません。彼らには代替品が無いのです。

 つまり、「希少性」×「代替困難性」=「代えがたさ」である、というのが私の定義です。

 会社という組織における人材の場合も同じことが当てはまります。

 例えば、1人で平均的な営業担当者の2倍の売上をあげることが出来る人がいるとします。その人は確かに「希少」でしょう。しかし、取引先が限られていない(経済学でいう所の「競争市場」)のであれば、平均的な営業担当者を2名投入すれば、その人と同じ額の売上を作ることができます。よって、2倍売ることができる人に、平均的な営業担当者の2倍以上の報酬を与える必要はありません。この人の貢献度は平均的営業担当者2名と代替が効くのです。

 一方で、(川村隆さんが言う所の「ザ・ラストマン」である)「社長」という職種は、会社のかじ取りをし、1人で責任を負って重要な決断を下さなければならない立場です。意思決定の際にいろいろと助言してくれたり、判断材料を提供してくれる人がいても、最後に物事を決めて決断するのは、最終的には社長1名の責任となります。それなりの人を何名投入しても優秀な社長1名の代わりを務めることはできません。「代替困難」な訳です。

参考図書

www.amazon.co.jp

 そして、社長として高い成果を挙げることができる人材は多くありません。そもそも企業の活動に競合他社との競争は付きものであり、競争の中で勝ち上がる企業は相対的に限られてきます。その中で競争に勝つためには、「誰がやっても同じ」レベルでなく、より優秀な人物が社長を務めた方が有利なのは必然です。つまり、「優秀な社長」というのはあくまで相対的な存在であり、それが故に「希少」なのです。平凡な社長≒2割打者、優秀な社長≒3割打者という、プロ野球と同様の構図な訳です。

 希少であり、かつ代替困難な訳ですから、ほとんどの企業において、社長は最も「代えがたい」人材であるべきで、かつ実際にそうなっているのではないかと思われます。一般的に社長の給料が最も高い会社が多いのは、その人が一番偉いからではなく、その人が最も会社にとって「代えがたい」人材だからなのです(個別事例では必ずしもそうなっていませんが、それはさておき)。

 裏返すと、社長以上に「代えがたい人材」がもしいるのであれば、社長以上にその人が報酬を取っても何ら問題ないし、むしろそうあるべきだということになります。プロ野球で監督よりスター選手の方が高い年俸を取るのも、その監督がいるかどうかより、その選手がいるかどうかの方がチームの成績(勝敗)により大きく影響し、また入場料やグッズ等により球団にもたらす利益が多いからですね。
 
 この話、まだ続きます。

その人は「代えがたい」人材ですか?-「人件費」というパイの分け方(3) - hrstrategist’s blog