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組織人事ストラテジストのつぶやき、業務連絡など。。

在宅勤務(テレワーク・リモートワーク)がブームです - ワークスタイル(働き方)変革の流れに気付いてますか(2)

 こんにちは、組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。東京地方は暑さのピークが過ぎたようで、今日もだいぶ過ごしやすい気温です。日差しも薄い今日のような薄曇りが、今頃の時期にはちょうど良いですね。あとは、自分が室内にいるとき限定で夕立ちが降ってくれると、夜も快適ですが。。

 在宅勤務の話、先週の続きとなります。

在宅勤務(テレワーク)がブームです - ワークスタイル(働き方)変革の流れに気付いてますか(1) - hrstrategist’s blog

 前回のエントリでは、リクルート社ホールディングス(と一部子会社)の在宅勤務導入の新聞記事を紹介いたしました。

 実はすでに多くの会社で、在宅勤務は部分的に導入されて、または試行されています。

前回のエントリでも何社かの事例が載った記事をリンクでを取り上げましたが、これらの記事を見たり、各社の事例をお伺いしていると、在宅勤務のメリットとデメリット(課題)はどの会社でも概ね同様の話が出てきます。ざっとまとめると以下のような感じです。
(本人にとってと会社にとってのメリット、デメリットが混ざっていますが、重複する部分や厳密に分けることが難しい項目もあるので、ご勘弁を。。)

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■メリット
・育児、介護など制約のある人でも働き(かせ)やすい

・居住地域に関わらず働いてもらえる
「東京在住」でない優秀人材を拾える(採用の母集団が広がる)

・結果として離職防止、離職率低下

・集中して働き、生産性向上
オフィスの雑音がない、電話を取ったり呼び止められない
余分な会議に参加しなくて良い
結果、創造性を発揮しやすい

・通勤のストレス、時間消耗が無い

(副次的に)
・通勤費削減

・座席削減によるオフィスコスト削減

■デメリット
・(言語、非言語)コミュニケーション量が減ることによる生産性の低下
具体的には、
コミュニケーションロスによる業務の手戻り、重複等の発生
納期管理、進捗管理の難易度が上がる(意識的なチェック、確認が必要)

・新人・部下育成への悪影響
「見て覚える」「まねて覚える」OJT学習機会の減少
実は、オフィスを「フリーアドレス」にした会社でも同様の問題が出ていると、実施されている会社の方からお伺いしたことがあります。

・「サボり」問題の懸念
サボり社員が発生する懸念
発生した場合の生産性低下、対処の手間
往々にして、現場の上司は「見て見ぬふり」をしがちです。そうなると「やったもん負け」の世界になり、チーム内の別のメンバーに負荷が掛かってモチベ―ション低下が起きたりすることもありますね。

・評価の問題
「成果で評価」するとして、何をもって「成果」を判定・判断するかが明確でないと、 「在宅勤務で働くと評価で不利になる」となり(がち)、モチベ―ションが下がります。

・在宅勤務のためのルール作りが大変
実は事務局、人事担当者としてはこれが一番大変かもしれません。
一度決めた労働条件を変えるのは、「不利益変更」の問題もあり結構大変だったりしますので。

また、人事的には結構いろいろと考慮しなければいけない課題がありまして、例えば、情報セキュリティ問題(情報漏えい対策)、労災適用のルール決め、通信費や設備、通勤費等の費用負担ルール作り、様々なケースを想定した勤怠の扱い等のルール決め、などなど、決めなければいけないことが沢山あります。

・オフィスへの求心力低下
これをデメリットと呼ぶべきか否かは議論が分かれると思いますが、在宅勤務のスタイルが定着すればするほど、「オフィスに行って働く」ことの意義、意味を積極的に見出していく必要が高まります。在宅勤務に慣れた従業員は「わざわざオフィスに行く価値があるの?」と疑問を抱くようになります。そこで「従業員があえてオフィスに集まり、働くメリットは何なのか」を意識してオフィスを作り、従業員に活用してもらうための「仕掛け」がオフィスに必要になるのです。
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 これを見て頂くと、意外と考慮すべきことは多くあり、「メリットがありそうだから」という程度の認識では、そう簡単に取り入れる訳にも行かないのだな、という感覚がご理解頂けるのではないかと思います。

 だからこそ、多くの会社(何もしない会社が大多数な訳ですから、これらの会社は十分に「先進的」だと言えると思います)が対象者を限定して、在宅勤務を試行したり、場合によってはUSのYahoo!のように撤回、禁止したりしている訳なのです。
Yahoo!の件は2年半前に大騒ぎになりました。以下、関連記事です。)

www.nikkei.com

business.nikkeibp.co.jp

www.nikkei.com

 そのような中で、リクルート社は、

「対象社員を限定せず、在宅勤務をしなければならない理由も不要で誰でも在宅勤務を選ぶことが出来る」

仕組みとしました。上記にある全てのデメリット(の可能性)を受け入れ(または何らかの方法で回避して)、その結果として「全員参加」のメリットが上回ると判断し、「全員在宅勤務可能」な制度を導入するという経営判断をしたのですね。

 ちなみに、新聞記事によれば、リクルート社では、在宅勤務のトライアル導入時に4割の対象者の労働時間が減る効果が出たそうです。ということは恐らく残業代も削減され、「フリーアドレス導入」によるオフィス費用削減も加えた費用削減効果がそれだけ大きいと判断したのでしょう。

リクルート、在宅勤務を全社員対象に 上限日数なく :日本経済新聞

 一方で、これは「中の人」に実情をお伺いしないと分かりませんが、リクルート社の場合、新卒の新入社員の方達の(研修後の)配属は「ホールディングス」ではなく各子会社であり、実は「ホールディングス」や今回の制度が適用される「(おそらく)リクルートマーケティングパートナーズ」で働く人たちは、実はほぼ裁量労働制の適用対象者(企画業務型、専門業務型)なのではないか、という疑問(仮説)も私は持っていたりします。この辺はいつか何かの機会で、「中の人」にお伺いしようと考えております。

 リクルート社の先進的なこの取り組みについて、引き続き注目していきたいです。

 では、Have a nice weekend!