hrstrategist’s blog

組織人事ストラテジストのつぶやき、業務連絡など。。

「即戦力採用」の罠(2)

 こんにちは、みぜん合同会社 組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。

 東京地方、ついこの間まで20℃台前半の最高気温、かつ低湿度の(おそらく1年で最も)快適な気候でしたが、本当に一瞬で、最高気温30℃越えの真夏日が連続する大変なことになっています(今日は少し涼しくて助かっています)。

 幸いにも先週末は標高1800メートルの万座温泉(群馬)に行っておりましたので、その間は比較的マシでした。高温多湿の東京から気候が良いところへの移住、もしくは最低でも二拠点居住をぜひ実現したいところです。それが万座のような温泉地だと最高ですねえ(社会復帰できなくなりそう)。

 さて、前回のエントリは、「多くの会社(極論するとほとんどの会社)において、「即戦力採用」した人材は実は全然「即戦力」になっていなかった」のでは?という話でした。

hrstrategist.hatenablog.com

 本エントリでは、私がそう考える理由を説明いたします。

 前回エントリで、「即戦力」とは「すぐに使える」戦力であり、「すぐに使える」ことを採用基準として人を採ることが「即戦力採用」であると定義しました。では、「すぐに使える」人ってどのような人でしょうか。「前任者の穴を100%以上の貢献で埋める人」?「新規事業を早期に立ち上げる人」?

 なんとなく思い浮かびそうなのは、プロ野球やサッカーなどの、スポーツ選手のトレード(または新人のドラフト)のようなイメージでしょうか。

 野球やサッカーであれば、選手に求められるスキル、能力、経験などはある程度「即戦力になるかどうか」の見極めはできそうですが、それでも加入先のチームがその選手にどのような貢献を期待しているかどうかで、その人が結果的に「即戦力」になるかどうかの確率は変わるように思えますし、実際にトレードされた選手が必ず活躍する訳でもありません。

参考:巨人 FA選手獲得リスト

www.my-favorite-giants.net

 翻って企業が従業員を採用する場合、本来ならいつまでに、どのような成果を挙げれば「即戦力」として合格なのか、そのためにはどのようなスキル・経験・能力等が必要なのか(さらには不要なスキル・経験・能力は何か)という、Job Description*のような「基準」を募集各ポジションごとに具体的に定義する必要があります。そうしないと、採用の際に「この人は即戦力となりそうかどうか」をどう判断したかの説明が付きません。

*ジョブ・ディスクリプション(job description) 

www.hrpro.co.jp

 でも、そこまできちんと事前に準備している会社はどの程度あるのでしょうか。少なくとも日系の企業ではあまり聞いたことはありません。「即戦力」の意味が関係者内で明確化されず曖昧なまま、「大企業や同業他社出身」「学歴が良い」「社長と仲良し」という(だけ)の人を「即戦力」として採用しがちな企業では、「即戦力(のはずだった人)」が成果を挙げられず燻りながら社内に滞留し、人材の穴が埋まらない企業はさらなる「即戦力」の獲得を続けることとなります。

 仕事の定義や成果基準が比較的しっかりしているはずのスポーツの世界ですら、「即戦力」の補強は容易でないのに、企業が曖昧な定義や基準のまま「即戦力」を獲りに行っても上手くいくはずがないと思いませんか? 

 「即戦力採用に即戦力なし」。一般にイメージされているほど、即戦力採用は簡単でないのです。

 では、どうすればよいでしょうか。私からの提案は2点です。

 まずは、「即戦力採用」という言葉を使うのを止めましょう。禁止です。

 募集ポジションごとに「即戦力」としての合格基準を設定し、その基準を達成できそうな人を採用応募者の中から高い確率で確実に採用し、活躍させられるという確信があれば別ですが、定義・基準が曖昧なまま「即戦力採用」という言葉に拘るのはむしろ害悪になります。

 中途採用であっても、「(短期だけでなく)中長期的に活躍・貢献できる人」の獲得を優先的に目指すなら、わざわざ「即戦力」というフレーズを使う必要も意味もありませんし、短期の結果だけを期待してその後はどうなっても知らない(この手の求人は少なくありません)というのも、企業の態度としてはあまりに無責任ではないか、と私は感じます。

 企業にとって(この国において)中長期的な雇用の義務(現実的に解雇は困難)がある限り、「即戦力採用」であろうが無かろうが、採用した人には中長期的に貢献してもらわなければ困ります。それならむしろ、「中長期の活躍を見込んで採用し、そのがたまたま結果として即戦力となることを期待する」という採用方針を採る方がよほど良いのではないでしょうか。これが2点目の提案です。

 この話、もう少し続けますね。 

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