hrstrategist’s blog

組織人事ストラテジストのつぶやき、業務連絡など。。

会社を適切にハンドリングするための、報酬(制度)とは

 こんにちは、組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。

 最近の東京地方は、すっかり気温が下がり、空気も冬の匂いになってきました。個人的には暑いより寒い方が得意なのですが、それにしても「快適な季節」は本当に短いですね。

 さて、本日は「評価」と「報酬」の関係についてのお話です。

 仕事柄いろいろな会社の人事制度(特に評価、報酬関係)についてお話をお伺いする機会が多いのですが、その中で感じることです。

 「人事評価・報酬制度」という呼び方をすることが多いですが、「評価制度」と「報酬制度」は密接に関連はするものの、それ自体は別のものです。

 「評価制度」とは、従業員を評価するために、評価者・被評価者の認識を合わせるための基準・ガイドラインのことです。一方、「報酬制度」とは、評価を基に従業員を処遇するために、評価者・被評価者の認識を合わせる、狭義では給与・賞与・諸手当、広義では各種福利厚生施策を含めた仕組み・枠組みのことです。

 また、「評価」と「評価制度」、「報酬」と「報酬制度」の違いは、それが「基準・枠組み」として明示されているのが「制度」であるといえます。よって、必ずしも制度化されていなくても「評価」、「報酬」それ自体を行うことは可能です。

 というのが前提となる話で、ここからが本題になります。

 今日の私の主張は、「報酬(制度)は車のハンドルのようなものである」というものです。

 車のハンドルというのは端的な言い方で、広義での「足回り」というのがより正確な表現かもしれません。その心は、「ハンドルの遊び、反応の鋭さ(Quick or Dull)の違い=報酬制度の違い」、ということです。

 例えば、ハンドルの遊びが少なく、少しハンドルを切っただけで俊敏に曲がるようなセッティングの車は、ドライバーにとっては思い通りに動かすことができ、サーキットなどではより速く走ることができます。ただし、俊敏さというのは人によっては「過敏」になり、自らの意図以上に反応してしまうこともありますし、それを防ぐためには常にハンドルさばきに細心の注意を払う必要があります。つまり、ドライバーには高い技量と集中力が必要とされます。

 一方で、ハンドルの遊びが多く、反応が鈍いセッティングの車は、サーキットのよう瞬間の反応が必要な環境は苦手ですが、例えば長距離を高速道路で移動するような場合には、ドライバーは疲労が少なく快適に移動が可能です。高級セダンなどは、あえてそういうsettingにしている車もありますね。

 報酬(制度)についても同様ではないかと感じます。評価(制度)をどれだけ改良しても、報酬制度=ハンドルがボトルネックになり得るということです。
 
 Quickなハンドリング=評価と報酬の関連性が強い(差が付きやすい)と、会社は経営者の思い通りに動きやすくなります。ただし、Quickになるほど、ドライバー=経営者の技量がより強く問われるようになります。下手なドライバー(経営者)だと、正しくハンドル操作が出来ず、車(会社)はまっすぐ進まなくなり、かえって危なくなります。レーシングカーを速く走らせることができるのはレースドライバー(プロフェッショナルな経営者)だけなのです。

 一方で、ハンドルがDullすぎる=評価と報酬の関連性が薄い(差が付かない)と、高速道路をまっすぐ走っている分(安定した市場・外部環境)には、ドライバー=経営者は何もしなくて良いので楽ちんです。ところが、外部環境が変わり、あたかも峠道を走るような会社のかじ取りが必要になった場合には、このようなセッティングだと、ハンドルを切ってもワンテンポ遅れてしまい、速く走ることが出来ません。気を付けて慎重に運転すれば事故を起こすことは無いかもしれませんが、企業間の競争に勝つことは無理でしょう。

 見受けられる事例としては、評価制度ばかりあれこれいじくり回して、報酬制度に手を付けないために、「評価が良くても悪くても報酬はあまり変わらない」、という状況にある会社です。その企業の報酬水準が絶対的に高い場合は別ですが、従業員も人の子ですので、報酬に反映されない、実際に変化が見えないのであれば評価制度を変えた所で真剣に評価に取り組んではくれませんし、いくら良い評価制度を導入したとしても宝の持ち腐れになります。

 もちろん、どんな場合でも評価と報酬の関連性を強めれば良いという訳でなく、企業が置かれた環境によって、評価・報酬制度を適切にsettingする必要があります。そして「Settingが必要」ということは、業者から「制度」のパッケージを「吊るし」で買ってきてはめ込んでも上手くいかないということでもあります。制度導入時、または導入後の運用フェーズにおいて、各社ごとの最適化のプロセスが必要だという側面を理解することが、経営者、人事担当者に必要ではないかと考えます。

 そして、新井の仕事は、組織人事面で、「勝てるレーシングカーにするためのチューンナップ」である、と考えています。その会社にとってベストのセッティングを出すのは簡単ではない事ですが、喜んでお手伝いいたしますよ!

 では、Have a nice weekend!