hrstrategist’s blog

組織人事ストラテジストのつぶやき、業務連絡など。。

「プレミアムフライデー」ってどうなのよ?

 こんにちは、組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。

 先月から始まった「プレミアムフライデー」(「プレ金」という略語も早速出ていますね)、本日が2度目となりますが、何だか全然盛り上がっていないような気がするのですが、気のせいでしょうか?

newswitch.jp

 上記の記事でも、「まだ手探り。」「実施・奨励の割合は企業規模に比例する」などという微妙な話が出ております。

 私の知り合いに聞いた意見も、「ニュースを見ても実施をしているのは大企業ばかり」「大企業勤めだけど自分に関係ない」「そもそも興味がない」「うちのお店ではセールをしています(お店の人達は働いている訳ですね)」といった冴えない意見ばかりです。

 実は私は「プレミアムフライデー」については元々懐疑的なので、「やっぱりな」という感想しかないのですが、そもそも「プレミアムフライデー」ってなぜ始まったのでしょうか?

■誰が「プレミアムフライデー」を始めたのか?
 まずはこちらをご覧ください。

premium-friday.go.jp

プレミアムフライデー事務局とは、平成28年度の経済産業省の委託事業を受託した株式会社博報堂プレミアムフライデーを広く普及させるための事務局です。」

とあります。経緯は以下にある通りです。

「主導する経産省は広告費などとして、2016年度の補正予算に2億円を計上。」

www.asahi.com

そして、このWebサイトに出ている「プレミアムフライデー推進協議会」なる組織の中身もなかなか興味深いものになっております。

プレミアムフライデー推進協議会委員名簿」

http://www.meti.go.jp/press/2016/12/20161212001/20161212001-1.pdf

委員の人達の大半が小売業界の団体の人達(あと旅行業界)であり、要するに経済産業省が広告代理店に予算を付けて、小売や旅行業界の販促をやるというのが真の狙いなのです。
(委員の方達の名前をググって経歴などを調べるととても興味深いです)

 ちなみに、この取り組みに厚生労働省は直接関わっておりません。「働き方改革」の一環で云々という話がよく出ますが、それは後付け、または単なる口実に過ぎないのです。

そういう目で見ると、この記事はなかなか皮肉で面白いと思いませんか。

プレミアムフライデー
初日 冷ややか 「大手と中小の格差感じる」 3時退庁は一部

http://mainichi.jp/articles/20170225/ddm/012/020/080000c

「「働き方改革」を担う厚生労働省の広報室は「3時をめどに退庁するよう庁内放送で呼びかけるなどしたが、職員の参加率は分からない」。ある職員は「人数の多い部署は何人か3時に退庁できるかもしれないが、少ない部署は無理。3時以降に役所の電話がつながらなくなれば苦情が来る。まずは民間で定着してほしい」と漏らした。」

 要は、政府の方針なので従わざるを得ないが、自分たちは積極的に関わらないというのが厚生労働省のスタンスなのです。

■「プレミアムフライデー」、実施事例
 私は人事が専門なので、プレミアムフライデーの「15時退社」を実施するために、各社はどのような取り決めをしているかに興味があります。

 いくら政府が、「プレミアムフライデーやります」と宣言しても、例えば就業時間が「9時~18時」と決まっていたら従業員は勝手に15時に帰る訳には行きません。よって、管理監督者裁量労働等の対象者以外にプレミアムフライデーを実施させるには、フレックスタイム制が導入されていない限り「有休を取らせる」または「15時退社に就業規則を変更する」しか方法はありません。

 厚生労働省が主導しているのであれば、「勤怠の扱いはこうすれば良いですよ」とか指針が出てくるのでしょうが、なにしろ他所の役所がやっていることですから、今のところ厚労省からは何の方針も出ていませんね(勝手にしろ、俺は知らん、ということなのでしょう)。

 そのような中で、「プレミアムフライデー」実施の各社の事例を拾ってみました。

日立ソリューションズ

プレミアムフライデーに賛同し、働き方改革を加速 年次有給休暇の取得推進や20時以降の残業の原則禁止、インセンティブの付与も導入|株式会社日立ソリューションズ

プレミアムフライデー」に賛同し、2月24日と3月31日に、15時退社または午後半日年休の取得を推奨します。
※4月以降は「労使でプレミアムフライデーを含む複数候補日を年休推奨日と定め、年休取得を強力に推進します。」
→15時退社 or午後半休の取得の推奨はせず、全日の有休取得を推奨しているようです。

大和ハウス

「プレミアムフライデー」を開始します|大和ハウス工業のリリース|会社情報 About Us|大和ハウスグループ

「今回の「プレミアムフライデー」では、推奨される「遅くとも午後3時までの業務終了」の一歩先を行く、「午後休」とします。」
「該当日は就業時間を「9~18時」等から、全社一律で「8~17時」に変更し、午後は半日有休とします。」
→有休を強制取得させるという事のようです。恐らく有休消化率が悪く、有休消化の促進策として好都合だったのかもしれません。迷惑に思う社員もいるのではないでしょうか。

日産

働き方改革/日産、月末金曜は15時退社−「プレミアムフライデー」推進 | 自動車・輸送機 ニュース | 日刊工業新聞 電子版

「勤務体系は毎日7時半―22時のうち原則8時間を労働時間に充てるフレックス制。1カ月間の総労働時間で勤怠管理しており、ハッピーフライデー実施日の出社時間は各部署や個人の裁量に委ねる。15時以降の会議を減らすことなどを呼びかける。」
フレックスタイム制の範疇でやれ、ということです。会議を入れない等の少しの工夫で対応すればよいので呼びかけは簡単そうです。

住友商事

「プレミアムフライデー」を導入 | 住友商事

「「プレミアムフライデー」当日を全休・午後半休取得奨励日とする。」
「有給休暇取得が難しい場合は、フレックスタイム制度を活用しコアタイム終了時刻(15時)の退社を奨励」
→日産も同様、フレックスタイムを活用の場合は導入(呼びかけ)は容易ですね。

■「プレミアムフライデー」は普及するのか
 そもそも導入の動機が不純であり、そのうさん臭さにみな気付いているように思えます。
企業としても、わざわざ就業規則を変更してまでの対応は考えづらいので、せいぜい「有休取得の推奨」レベルに留まりそうですし、そもそもろくに休みを取れない多くの中小企業にとっては、「うちには関係ない」とスルーされてしまうのが関の山かなという気がしまうす。
 その結果、結局大企業の社員だけしか休めないのであれば、金曜の夕方早い時間に食事や買い物をしている人達に対して「あいつらだけ何だよ」というねたみ、ひがみの空気が今後強くなるかもしれません。そうなるとますます、プレミアムフライデーの普及のハードルは高くなりそうです。

 もしかしたら、1年後には「E電(古い!)」のように、みんな忘れてしまうかもしれませんね。。

 では、Have a nice weekend!