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hrstrategist’s blog

組織人事ストラテジストのつぶやき、業務連絡など。。

トヨタ自動車の「家族手当見直し」の件について(あれから半年後)

労務 経営 人事評価・報酬

 こんばんは、組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。

 昨日(7月7日)にトヨタ自動車の「家族手当」について下記の新聞記事が出ました。

www.asahi.com

 この記事を見た人たちが私の半年前のエントリを見に来てくれたようで、昨日はやたらBlogのアクセス数が増えました。

トヨタ自動車の「賃金体系見直し」について(1) - hrstrategist’s blog

トヨタ自動車の「賃金体系見直し」について(2) - hrstrategist’s blog

トヨタ自動車の「賃金体系見直し」について(3) - hrstrategist’s blog

トヨタ自動車の「賃金体系見直し」について補足(賃金カーブ等) - hrstrategist’s blog

 という訳で、この件を簡単に総括しておこうと思います。

 半年前(1月末)の時点では、日経の記事によれば、「配偶者手当をすべて子供手当に振り替えることも検討中」という、まだ抽象的なニュアンスの話でした。

 これについては、上記のエントリで以下のようなコメントをしました。

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 家族手当の見直しの内訳については、日経の記事によれば、「配偶者手当をすべて子供手当に振り替えることも検討中」とのことです。話を総合すると、「配偶者手当の廃止と年功部分の圧縮を原資として、子供手当を増額する」ということなのでしょう。

 もしそうだとすると、「子供手当の増加」が賃金カーブに与える影響ってどの程度のものなのでしょうか。

 この変更によって得をするのは、成人前の子供がいる社員、損をするのは配偶者が「専業主婦(夫の可能性もありますが)」かつ(扶養する)子供がいない社員、損も得もしないのは「共働きで扶養する子供がいない」または「独身」となります。

 となると、子供が成人して配偶者手当のみを貰っている年配社員から(扶養対象の)子供のいる社員への世代間の移転が多少ありそうですが、それだけで「賃金カーブ」云々をいうのはちょっと大げさすぎる気がします。
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 そして、この件についての詳報が、朝日新聞の記事となります。さらに、今回は具体的な手当の金額まで出てきました。

 この記事によれば、従来の配偶者手当は廃止し、子供に対する手当は1子あたり2万円となるということで、従来の制度と比べてシンプルになるようです。

 「シンプルな仕組み」は、会社のメッセージとして重要です。今回の制度変更は、「あくまで子供の養育費として、会社は月2万円の補助を出す」と、メッセージはシンプルかつ明確化されました。

 日本を代表するエクセレントカンパニーとして、少子化防止の施策を会社が打ち出すことは、非常に良いことだと思います。一方で、ここまでやるかどうかは、あくまで各社の判断であるべきと考えます。ここでは、あくまでトヨタ個社の判断としての是非の話をしています。

 おそらく、今回の変更を企画された担当者の方は、今回の制度変更による費用の増減等の影響のシミュレーションは間違いなく行っているはずです。よって、おそらく制度変更の前後で人件費の総額の変動は、少なくとも大きく増加していることは無いと思います。

 なお、ケース別に従業員の損得をみると以下のようになります。

・子ども無し、専業主婦(夫)家庭:減額 -19,500円/月
・子ども無し、共働き家庭:変化なし
・子ども1名、専業主婦(夫)家庭:減額 -4,500円/月
・子ども1名、共働き家庭:増額 +500円/月
・子ども2名、専業主婦(夫)家庭:増額 +10,500円/月
・子ども2名、共働き家庭:増額 +15,500円/月

 要するに、子供2名以上であれば必ず得をする制度となっている訳です。

 一方で、子ども無し、専業主婦家庭では約2万円の減額となっています。子供2名以上の家庭の増額分の原資がこの層の減額から(おそらく)出ている訳です。直観的には、そんなにこの層が多いのかと思ってしまいますが、本当のところはどうなのでしょうか。

 実は、狙いはそこ、なのではないかと気づきました。

 「子供なし、専業主婦」のパターンですが、イメージとしては、そもそも子供がいない若いカップルを想像します。ところが、おそらく実際には、被適用者は以外にも、「子供が大きくなって独立して、現時点では扶養家族となる子供がいない」という、年配の社員が少なからずいるのではないでしょうか。

 たとえば、20代で子供が出来れば、その子たちが大学を卒業して独立しても、親はまだ50歳前後です。そのような形で子供が独立した世帯に、配偶者手当を支払うべきかどうか、を、トヨタ社内では問題視(?)され、議論がされたのではないかと推測します。

 その結論として、その方達にとっては(従来からは)不利益になるかもしれないが、それは道義的(?)に甘受してしかるべき、それよりはむしろ子供を(より多く産んで育てる)若い世代により手厚く報いるべきであるとトヨタ自動車の経営陣は考え、結果的に労働者側=労組がその考え方について容認した、というのが今回の経緯と考えて良いと思います。

 そしてそれが、トヨタが言う、「より若手に手厚く」という方向性にも合致しています、というのがこの制度改正で訴えたい所なのでしょう。
 
 そういう意味では、半年前に打ち出された方向性から今回の話はブレておらず、会社の目指す方向性に労働組合が同意した、というのが、今回のニュースの意味合いなのではないかと解釈します。

 皆さまで本件について、もしご意見・知見等ありましたら、ぜひお聞かせ下さい。よろしくお願いいたします。!