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hrstrategist’s blog

組織人事ストラテジストのつぶやき、業務連絡など。。

トヨタ自動車の「賃金体系見直し」について(1)

労務 経営 人事評価・報酬

こんにちは、組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。

 昨日1月27日の日経新聞朝刊の1面に、トヨタ自動車の賃金体系の変更について大きく記事が出ておりました。

 

www.nikkei.com

新聞記事の内容を要約すると、

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・「技能員」と呼ばれる「工場で働く従業員」の賃金体系を見直す
・「技能員」は単体従業員6.8万人の約6割にあたる約4万人
・若手社員の賃金を「手当の増額」などで引き上げる
・若手への配分原資を「年功部分の圧縮」「能力重視の体系への変更」で捻出する
・総人件費は増える
・賃金体系変更は、1989年に「完全な年功序列に一部能力給的要素を取り入れた」時以来
・2016年1月の導入を目指す
・60歳以降の定年後の処遇も見直し、「極めて高い能力を持つ人」は処遇を変えずに65歳まで再雇用する
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という事のようです。見直しの理由としては、若手社員の賃金引上げについては、「少子化で確保が難しくなっている」ため、定年後の処遇見直しは、「困難になっている若手への技術伝承を円滑にするため」というものが、記事の中では言及されています。

 なお、同日に、トヨタの労務担当 上田常務が、経団連の講演でこの話をされたようですね。

www.sankei.com

 こちらの記事では、「少子高齢化で確保が難しい優秀な若手社員を囲い込む狙い」「団塊世代の大量退職による技術力の低下を防ぐ」とあります。

 なお、上記の日経、産経の両方の記事に、「賃金カーブ」という言葉が出てきております。1日遅れで掲載された読売、朝日の記事にも、日経の記事とほとんど同じ「賃金カーブ」の図が出ています。おそらくトヨタの広報から「賃金カーブ」の資料が配られ、各社でそれをそのまま書き起こしたのでしょう。

http://www.yomiuri.co.jp/job/news/20150128-OYT8T50034.html?from=ytop_ymag

www.asahi.com

 なんとなく、「ふーん」という感じなのですが、さっと新聞記事を読んだだけではよく分からないこともあります。

 まず、若手に手厚くという説明で「賃金カーブ」の図が示されていますが、ここで言う「賃金」とは、報酬のうちどの範囲までを指すのでしょうか。

 下記の記事(放送)によれば、上田常務は、「若年層は、子育て支援という形で、一番、生計費がいるところには、家族手当の見直しで賃金カーブを立てたい」と講演で発言されているようなので、賃金カーブの内訳に手当は含まれているようです。

トヨタ、「賃金カーブ」見直しへ 若手中心に水準引き上げを検討

http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00285228.html

 家族手当の見直しの内訳については、日経の記事によれば、「配偶者手当をすべて子供手当に振り替えることも検討中」とのことです。話を総合すると、「配偶者手当の廃止と年功部分の圧縮を原資として、子供手当を増額する」ということなのでしょう。

 もしそうだとすると、「子供手当の増加」が賃金カーブに与える影響ってどの程度のものなのでしょうか。

 この変更によって得をするのは、成人前の子供がいる社員、損をするのは配偶者が「専業主婦(夫の可能性もありますが)」かつ(扶養する)子供がいない社員、損も得もしないのは「共働きで扶養する子供がいない」または「独身」となります。

 となると、子供が成人して配偶者手当のみを貰っている年配社員から(扶養対象の)子供のいる社員への世代間の移転が多少ありそうですが、それだけで「賃金カーブ」云々をいうのはちょっと大げさすぎる気がします。

 また、新聞記事の「賃金カーブ」の図(上記の通り、おそらく元資料の出所はトヨタと思われる)によれば、新賃金体系では18歳の時点から現行よりも賃金が増えていくような「カーブ」になっています。しかし、最近の初婚年齢は、男女共に30歳前後となっています。そのような中で、10代、20代前半で結婚・出産して子供手当を貰う従業員がそれほど多くいるとは想定しづらいです。

読売新聞の「賃金カーブ」の図

http://www.yomiuri.co.jp/job/photonews/article.html?id=20150128-OYT8I50020

※参考:都道府県別にみた夫・妻の平均初婚年齢の年次推移

http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/suii09/marr5.htm

 つまり、「賃金カーブの見直し」をトヨタはアピールしていますが、実は上田常務が言う「子供(家族)手当の増加」は、トヨタが意図する賃金カーブのシフトの主な要因にはなり得ないが、トヨタはあえてそれをぼかしているのではないか、という気がするのです。

 この話、続きます。


トヨタ自動車の「賃金体系見直し」について(2) - hrstrategist’s blog

トヨタ自動車の「賃金体系見直し」について(3) - hrstrategist’s blog

トヨタ自動車の「賃金体系見直し」について補足(賃金カーブ等) - hrstrategist’s blog

トヨタ自動車の「家族手当見直し」の件について(あれから半年後) - hrstrategist’s blog

 

※「賃金カーブ」については以下のエントリもご一読ください。

「定期昇給」「賃金カーブ」を疑え! - hrstrategist’s blog