hrstrategist’s blog

組織人事ストラテジストのつぶやき、業務連絡など。。

働き方改革実現会議 「同一労働同一賃金ガイドライン案」 について(1)

 こんにちは、組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。大変ご無沙汰しております。なかなかBlogに書きたいネタと執筆に踏み切る気力が不足し、更新が間隔が空いてしまいましたが、ようやく大物ネタが(笑)。

 安倍首相の「私的諮問機関」である、「働き方改革実現会議」において、12月20日に「同一労働同一賃金ガイドライン案」というものが発表されました。

働き方改革実現会議 - Wikipedia

www.nikkei.com

 この「ガイドライン案」、21日の日経新聞朝刊などでも1面で報道されていますが、一次資料はこちらになります。双方とも10数ページの分量なので、興味のある方は一度目を通されることをおススメします。

 第5回 働き方改革実現会議

働き方改革実現会議 議事次第

 同一労働同一賃金の実現に向けた検討会 中間報告

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/hatarakikata/dai5/siryou2_2.pdf

同一労働同一賃金ガイドライン

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/hatarakikata/dai5/siryou3.pdf

 上記の報告書を読んで気付いた点をいくつか取り上げ、いくつかコメントしたいと思います。

■そもそも「同一労働同一賃金」とは何を指すのか

 Wikipediaによれば、同一労働同一賃金とは、以下について指すそうです。

「同一の仕事(職種)に従事する労働者は皆、同一水準の賃金が支払われるべきだという概念。性別、雇用形態(フルタイム、パートタイム、派遣社員など)、人種、宗教、国籍などに関係なく、労働の種類と量に基づいて賃金を支払う賃金政策のこと。」

同一労働同一賃金 - Wikipedia

 概念としては理解できますが、具体的にこれを適用しようとすると、「同一の仕事(職種)」「同一水準の賃金」とは何か?を厳密に定義していく必要があります。ところが、実際にはなかなか簡単ではありません。上記「中間報告」ではこれについて、

「実は、どこまでが「同一の労働」とみなすべきなのか、何が揃えるべき「賃金」なのかと考えていくと、この同一労働同一賃金の考え方あるいは原則を、厳密に定義することはなかなか難しい。」(1ページ)

 としています。私と同じ考えですね(笑)。

 「中間報告」では、以下のようにも書いています。そもそもの問題は「正規」と「非正規」の処遇格差である、ということですね。

「正規・非正規間の待遇格差が大きいことが、大きな問題であることは、検討会のメンバーとして共有する問題意識である。」

「不合理な格差を是正し、非正規社員の待遇を改善させることが強く求められる。」(いずれも1ページ)

 一方で、「ガイドライン案」には以下の表記があります。

同一労働同一賃金は、いわゆる正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消を目指すものである。」(1ページ)

 なにやら日本語として意味が通っていない(苦笑)のですが、どうやら言いたいことは、「正規」と「非正規」の格差の解消が解消された状態を「同一労働同一賃金」というフレーズで表現しようということなのでしょう。政府の中の誰かが思いついて、検討会のメンバーが仕方なく付き合わされているニュアンスが「中間報告」や「ガイドライン案」の文章から滲み出ているように感じます。。

■Top Downか、Bottom upか
 「同一労働同一賃金」≒「正規雇用労働者と非正規雇用労働者の処遇格差解消」をどう進めていくのかについても「中間報告」では言及しています。

「日本でも長期的にみれば、企業横断的・雇用形態横断的に賃金が決定される、あるいは比較検討ができるようなシステムに移行していくことが、同一労働同一賃金を結果として実現させるための一つの方向性という考え方もできるだろう。その考え方に沿って整理するならば、労働市場改革を進めていく必要性も大きいといえる。」

「しかし、それを実現させていくためには、段階的に進めていく必要があるし、また長期的な方向性の在り方については、より慎重な検討も必要であろう。ただし、検討が必要と言って、何もせずに放置しておく期間が長くなること自体も問題である。」(いずれも2ページ)
 
 つまり、「同一労働同一賃金とはこうあるべきである」という方針を示し、それに向けていろいろと改革すべき、というTop Downのアプローチは実行に時間が掛かるし、そもそも国民の中で労働市場改革によって目指すべき「あるべき姿」のコンセンサスが現時点で全く取れていないという現状を鑑みると、それよりもBottom upのアプローチで「手を付けやすい所、できる所から変えていこう」「そのためのガイドラインを示そう」というのが今回のアプローチである、ということなのでしょう。

「(1) 正規社員・非正規社員両方に対し、賃金決定のルールや基準を明確にし、
(2) 職務や能力等と、賃金を含めた待遇水準の関係性が明らかになり、待遇改善が可能になるようにすること。
(3) そして、教育訓練機会を含めた「能力開発機会」の均等・均衡を促進することで一人ひとりの生産性向上を図ること。
これらの柱が、日本が同一労働同一賃金に踏み込み、非正規社員の待遇改善を実現させるためのポイントであり、ガイドラインはそのための重要な手段であり第一歩として位置付けられる。」(中間報告2,3ページ)

※このエントリ、まだ続きます。

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