hrstrategist’s blog

組織人事ストラテジストのつぶやき、業務連絡など。。

給料の決め方はシンプルで良い

 おはようございます。組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。

 先日、「人事評価制度なんていらない」というエントリーを書いたところ、なかなか好評のようで何名かの方にはFacebook上でシェアをして頂きました。ありがとうございます!

人事評価制度なんていらない - hrstrategist’s blog

 上記エントリのメッセージは、「評価制度は社長の直観評価にできるだけ近くなるように作るべし」ということでしたが、今回はその続きの話です。

 今回はより具体的に、どう制度を作れば良いかを書こうと思っていたのですが、ある方のメールマガジンで、私と全く同じ考えを先に(笑)書かれてしまいました!

【IndigoBlueメルマガ】柴田励司の人事の目
Vol.523 評価表をなくす - 柴田励司の人事の目

 Indigo Blueの社長、柴田励司さんは人事コンサルティング会社、マーサーの社長を務められた後に、著名な各社の役員も歴任されている人事の業界では有名な方です。

http://profile.hatena.ne.jp/jinjinome/

 以下、引用させて頂きます。

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「私の提案はこれです。

『年に1回、または2回、組織の長が自分のメンバーのランキングをつけ、その順位に応じて給与や賞与を決める。』」

「その際に大事なことは、なぜこのヒトはこのランキングなのか、何がいいのか、または何が悪いのか、を明らかにすることです」

「このプロセスを繰り返すことで評価者の「目」が研ぎ澄まされてきます。同じ部署の他の長がどんな「目」をもってつけているのかを知ることで更に自分の「目」の感度が上がります。」
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 はい、全くおっしゃる通りです。私も同じことを書こうとしていました。

 多くの日本企業において、評価する側、される側双方が気持ち悪く感じるのは、
「その人の「価値」と報酬額の相関が薄い」のと、「評価から報酬決定に至るまでのプロセスの不透明さ」ではないかというのが私の考えです。

 もし評価者に、「予算の枠をあげるから部下の給料を好きに決めていいよ」と言ったら、ほとんどの人は、今までよりも真剣に人事評価をするのではないでしょうか(評価の巧拙はここでは置いておきます)。

 現状では、評価作業を一所懸命に行っても、その結果で報酬に反映される範囲はとても少ないし、報酬制度の仕組み上、どんなに若手が頑張って成果を出しても、働かないオジサンの方がずっと高い給料をもらっている状況は変わらなかったりします。それでは、忙しい評価者たちが真剣に評価を行うインセンティブが起きません。

 評価をされる側も同じです。評価の違いによって報酬がほとんど変わらないのであれば評価面談なんで時間の無駄だし、評価プロセス自体が茶番であると感じる人も少なくないでしょう。

 国家公務員のある人から聞いた話です。数年前より公務員も人事評価により月給に差が付くようになったそうですが、その人の職場では、なんと「パフォーマンスの悪い人ほど良い評価が付く」のだそうです。なぜだか分かりますか?(Thinking time!)

 

 

 

 

 

 彼が言うには、

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・ローパフォーマーに高い査定を与えることで、他部署に異動させやすくするのが目的(低評価を理由に異動を断られないように)
・「差が付く」といっても金額はたかが数千円なので、誰も気にしない
・査定の点数に関わらず、誰が優秀かそうでないかは別に把握されているので、査定結果は出世に影響しない
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 とのことでした。まあ、これは極端な(悪い)例かもしれませんが。。

 また、多くの従業員は、「他社との比較」よりも「となりの人」との比較による不公平感を強く感じます。同業他社より給料が多少安くても(程度問題ですが)、「あっちの会社の方が儲かっているから」とか「向こうの方が忙しそうだから」と、差分を合理化する言い訳が思いつきます。

 一方で、同じ会社の中で明らかに自分よりも貢献していない(と思われる)ヤツがより多くの給料を貰っているのは、「自分が間違えている」か「会社が悪い」かどちらかしか理由はありません。どちらにしても自分にとっては都合が悪い状況であり、本人が取り得る選択肢は、我慢する・割り切るか、会社を辞めるかしかありません。

 ところが、もし、「順位に応じて給与や賞与」が決まるのであれば、どちらかの見立てがよほど大きく狂っていない限りは、評価する側、される側双方にとってある程度納得感のある結果に収まります。

 「何のためにやっているか」がクリアになり、納得感があれば、評価という作業に対するモチベーションも高まり、評価者も被評価者もより真剣に取り組むようになるでしょう。そういう中で、柴田さんのおっしゃるように、評価者の評価スキルも上がっていきますし、評価者同士や評価者と被評価者の間での評価に対するレベル感の目線合わせも進んでいきます。

 そこまで来れば、しめたものです。評価に対する目線は、そのまま採用時に候補者を見る目線に応用できますし、教育研修を実施する際の優先順位付けにも活用できます。そして、何より大事なことは、組織の中で「人」に対する関心が高まることです。

 現状では「上司が部下に興味が無い」「同僚のやっていることに関心が無い」という組織は少なくないと思いますが、お互いに興味・関心を持つ事で無用な軋轢を避けられるだけでなく、互いにRespectしながら、全体最適志向で業務も進むようになっていくでしょう(そして、そのように動ける人でないと評価の「順位」を上げていくことが出来なくなるはずです)。

 柴田さんも「今やっている評価制度の仕組みは40年ほど前に定型化されたものです。」とコメントされておりますが、現代に生き、未来に羽ばたこうとするベンチャー・成長企業にとっては、40年前の仕組みをそのまま踏襲するのはナンセンスだと思いませんか。ぜひ、自社の評価制度をどうするか、真剣に考えてみて下さい(私もお手伝いしますので(笑))。