hrstrategist’s blog

組織人事ストラテジストのつぶやき、業務連絡など。。

賞与の決め方は配当性向で(1)

 こんにちは、みぜん合同会社 組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。

 会社の決算作業や、諸々対応が必要な会社としての事務作業が重なり、Blogの更新が滞ってしまいました。もちろん、今年の猛暑が影響していない、とは言えません。とにかく暑さと湿気は大の苦手です。お盆を過ぎて真夏のピークが去った(笑)はずが、東京地方の今日の暑さは異常ですね。台風の影響もあるのでしょうか?

 さて、「人事制度の構築」に関する支援業務は「組織人事ストラテジスト」の得意分野です。今日はその中でも「賞与」についての話を取り上げます。

 自社の成長・発展のために必要な「優秀人材」の獲得・退職抑止を実現するには、「頑張った人が報われる」人事(評価・報酬)制度の構築・運用は必須です。

 いい加減な評価制度や、高い評価を得ても処遇に差が付かない報酬制度、さらには制度を運用・活用できない経営者・管理職は、自社の価値を創造できる優れた人材を獲得する上で決定的な劣位となります。評価・報酬の仕組みとそれを活かした適切な運用は、もはやグローバルレベルにまで競争範囲が拡大した優秀人材獲得競争の中で、他社との差別化を図るための重要な要因となっております。

 そのような環境の下で人事制度改革を実施する際によく問題になる検討課題の一つに、「賞与額の決め方」があります。

 「賞与額の決め方」には2つの要素があります。例えるなら「(賞与という)パイの大きさをどう決めるか」「(その)パイをどのような大きさに切り分けて従業員に配るか」ということです。

 後者は評価結果(評語)に対応した評価係数(例えば、A評価だと標準のB評価と比べて+〇%とする)と、その分布の決め方です。

 例えば最高評価で標準+50%、最低評価で-50%とした場合、賞与額に最大3倍の差が付く設計となります。通常は月給と賞与を合計した理論年収額を参照しながら決めますが、その会社で良しとされる「よい塩梅」の水準が何となくあり、割とあっさり決まることが多いです。

 一方、前者(例えば、「月給の〇ヶ月分」の「〇ヶ月」をいくらにするか)については、なかなか難しい問題です。

 最もシンプルで分かりやすいのは、「会社の(賞与控除前の)営業利益の〇%を賞与額に充てる」という方式です。賞与とは会社の業績に応じて変動すべきで、その中でも特に従業員の貢献が直接反映されている(はずの)営業利益と連動させるべきというロジックに対して私も異論はありません。

 ただし、その場合、営業利益が赤字になってしまうと、賞与原資はゼロ=個別の賞与もゼロになってしまいます。従来はある程度の賞与額が実質的に保証されていたような会社では、このような変更には従業員の抵抗も大きそうです。

 一定の固定金額を賞与の最低額として設定し、固定+変動賞与とするパターンも考えられますが、この場合は、固定賞与額+月給額の合計を「年俸」とみなされ、固定賞与額分も残業(時間外労働)等の算定基礎額に算入すべき、という話になってしまう恐れがある点は配慮が必要です。

※参考

www.f-syaroushi.jp

 別の問題もあります。もし当期の営業利益がそこそこだったとしても、「来期は業績が悪化して営業赤字の見込み」「今期に大幅な特別損失が発生」という場合はどうでしょうか?

 業績が右肩上がりであれば純粋に業績連動でも問題ありませんが、来期に業績が赤字になったからといって、従業員に「赤字分をマイナス賞与として控除します」などと宣言する訳にもいきません(結果、2期を合わせた賞与額は2期通算の営業黒字(赤字)額と比べて過大となります)し、営業黒字分の賞与を払っても特損の影響で資金繰りが悪化し、極端な話ですが、「賞与を払ったせいで資金がショートし、会社が倒産」となる可能性もあります。また、そのような意思決定は株主も納得しないでしょう。

 よって、このような場合、経営者の本音としては、「来期に備えて」「特損を受けて」賞与額はできれば少なめにしたいと考えるでしょうし、実際に経営の安定を考えると、少なくともそうするかもしれないという意思決定のオプションを経営者は持っておきたいと考えるのは自然です。

 では、どうすれば良いのでしょうか?

 私が参考になると考えるのは、企業における「配当性向」の決め方です。

 次回へ続きます。

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