hrstrategist’s blog

組織人事ストラテジストのつぶやき、業務連絡など。。

良い会議、悪い会議(3)「根回し」の功罪!?

 こんにちは、組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。

 いつの間にか10月です。日没も早くなりましたね。今年もあと3ヶ月、おそらくあっという間なのでしょう。

 さて、先日、「良い会議、悪い会議」についてのエントリを書きました。

hrstrategist.hatenablog.com

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 今回はその続き・番外編ということで、会議のあり方、進め方でよく議論になる、「根回し」について、取り上げようと思います。

 皆さんは、「根回し」と聞いて、どのような状況を想像し、どんな印象を抱くでしょうか?恐らく、それは人によってだいぶ異なったものになるような気がします。

 というのも、どうやら世の中には根回しに対する、「賛成派」と「反対派」がそれぞれ一定の数がいるようなのです。

 試しに、「根回し 賛成」「根回し 反対」というキーワードでググってみたところ、前者では約18万件、後者では約34.9万件ヒットしました(正直なところ、「反対」の多さに驚いています。

 試しに、「根回し 反対」の検索の一番上にある「weblio類語辞典」を見てみると、「根回し」の類語として、「スパイ活動」「裏工作」「権力争い」「腹の探り合い」「寝技」などの単語が並んでいます。なるほど、確かに印象は悪いですね。。

thesaurus.weblio.jp

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 一方で、恒例の(笑)「新明解 国語辞典 第三版」を引いて見てみると、

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根回し:(実りをよくしたり、移植に備えたりするために)木の回りを掘って、一部の根を切り落とすこと。(交渉などをうまつ成立させるために、関係方面にあらかじめしておく話合いに意にも用いられる。例、「-工作」)
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とあり、こちらの方がフラットなニュアンスです。

 ということは、元々「根回し」という言葉はネガティブな意味ではなく、後から人々の中で否定的なイメージが付いたのではないかと私は推測します。

 といった背景を押さえつつ、「根回し」の良い所、悪い所は何なのかを具体的に確認してみましょう。概ね以下のようなものではないでしょうか?

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■根回しのメリット
・意思決定者や、会議において影響力の強い人に対し、提案を事前に説明し、内容を理解した上で賛同をしてもらうことで、「決める」会議において、提案が承認させる確率を上げることができる(提案の否決、差戻、結論の先送り等の、提案者が望まない結果が起きる確率を下げる)
・根回しの際に相手より「ダメ出し」があった場合は、会議までに提案の修正を行うことができる

■根回しのデメリット
・根回しの分、意思決定までに時間が掛かる
・根回し作業に余分な手間・労力が掛かる
・「聞いてない」だけで反対するとかいうのがムカつく
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 こうして書き出して気付くのは、メリットの文章は長くなりがち(理解に手間が掛かる)のに対し、デメリットの文章は短い(直感的に分かりやすい)ことです。

 つまり、多くの人にとって、根回しとは感覚的に「やりたくない」、「面倒くさい」こととして認識されやすいのでしょう。

 ところが、「根回し 反対」の検索で上位に挙がってくる記事は、概ねその直感の存在を認めつつ、「いや、そうでないんだよ」という趣旨のものとなっています。

business.nikkeibp.co.jp

diamond.jp

 要は、「根回しってネガティブに捉えられやすいけど、やらなきゃだめ」ということです。

 人間の意思決定は「論理」と「感情」の両方で動いています。また、人によって「あるべき姿」「正しいこと」は異なります。よって、「正しいことは必ず実現するから根回しなんて無駄」とはならないのです。それぞれの人達の「正義」「感情」にも配慮せよ、という事です。

 あくまで目的を達成するための手段が「根回し」でありと割り切り、根回しを(しないより)することで良い結果が得られるならやるべきなのです。建前でなく実質を取るのです。

 これに対し、「そもそも1人の人間に権限を集中させ、意思決定させれば良い。その方が意思決定は速いし、根回しも要らない。」という考え方もあります。確かにその通りな点はあります。

 しかし、「1人で決める」前提であれば、そもそも「決める」会議を行う意味がなくなります。つまりそれは、「根回し不要論」ではなく、「決める会議の不要論」であり、意思決定の権限・プロセスに関わる話です。そしてそれは、根回しの是非とは別の次元の話である点は注意が必要です(この辺の整理ができてない意見が見受けられます)。

 つまり、組織において、「決める」会議によって意思決定をするというスタイルを採る限りは、「根回し」の否定は現実的でなく、たとえ面倒に感じたとしても、あえて「根回し」を行うことが結果的に自身にとって良い結果に繋がる、それが身の為である、という事ではないでしょうか。

 なんて、偉そうなことを書きましたが、私も若い頃は、あまり根回しが上手ではなかった覚えがあります。上記の秋山ゆかりさんの記事のように、「根回しは相手への思いやり」「相手の立場で物事を考えろ」ということを徐々に学んでいき、少しづつですが、マシになっていったように思います(元の上司や同僚から、「まだまだ下手くそだ!」と怒られそうですが)。

 という訳で、相手を思いやることが出来る人であれば、「根回し」の技術はいくらでも上達することはできると思いますので、苦手な方もぜひチャレンジを!