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組織人事ストラテジストのつぶやき、業務連絡など。。

新垣結衣さん演じる、「 獣になれない私たち(けもなれ)」の主人公、”深海晶”の給与額について考察してみた。

 こんばんは、みぜん合同会社 組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。

 今年もあと1日となりました。「組織人事ストラテジスト」として独立して4年半、今年もなんとか生き延びることができました。いつもお世話になっている皆さまに感謝です。ありがとうございます。そして、来年もよろしくお願いいたします。
 
 などと今年を振り返っていたら、なんとBlogの更新が1ヶ月以上滞り、12月の投稿がまだゼロであったことに気付きました。Blogを始めた当初(4年前)は「週2回投稿が目標!!」などと寝言を言っておりましたが、ここ2年は月イチ更新がやっとです。「原稿書きの時間を取れない」というのは言い訳で、要するに(面白そうな)ネタを見つけるのがとても大変なのです(と、言い訳をする)。RIZAP様ありがとうございますw。

 「月イチ更新」を維持すべく、かつネタ切れ対策のために今回は趣向を変えて、この間まで楽しく見ていた(ハマッたと言って良いでしょう)ドラマ「 獣になれない私たち(けもなれ)」をネタにしてみようと思いつきました。このドラマをご覧になっていない方は全く興味がないし理解できない内容かと思います、と予め予告しておきます(申し訳ございません)。

www.ntv.co.jp

 本作ですが、「空飛ぶ広報室」の大ファンとしては、野木亜希子さんと新垣結衣さん(ガッキー)の「最強タッグ」(4たび)再来ということで、放送開始前から期待をしていました。世間的にも前評判、期待は高かったようです。

www.tbs.co.jp

 ところが意外にも視聴率は(予想より)伸びず、内容についても「内容が重い」「予想と違った」などと否定的な意見がネットでも見受けられ、賛否両論といった感じです。
(「視聴率」をもって(未だに)作品の成否を評価する風潮には全く賛同しませんが)

realsound.jp

 個人的には、「さすが野木さん、素晴らしい、ありがとう!」というのが感想です。「逃げるは恥だが役に立つ」のヒットで誤解も多いようですが、野木さんの素晴らしさは、どの作品においても「仕事」の描き方の秀逸さであり、その点では期待以上であったと思います。かつ、(録画して)何度も見返すほどに新しい発見がある「味わい深い」コンテンツであったというのが私の評価です。

www.tbs.co.jp

 作品自体への(個人的な)感想を書くとキリがありませんので、本エントリでは「組織人事ストラテジスト」目線で気付き、かつ、おそらくこれまでネット上でもあまり分析されていない(と思われる)視点につき、書いてみようと考えました。
※ネタバレ注意ですが、本作品を視ていないと記述内容はほぼ理解できないと思われます。

 主人公の(新垣結衣さん演じる)”深海晶”というキャラクターへの否定的な意見として、「オシャレな服装を沢山持ちすぎ」「クラフトビアバーに頻繁に行きすぎ」「普通のひとり暮らしのOLがそんなにお金を持っているなんて非現実的で共感できない」といった感想をネット上でチラホラ拝見しましたが、はたして、晶さんのような人は現実ではどのくらいの給料をもらっているのか?その給料でオシャレな服を沢山買ったり、クラフトビアバーに通い詰めることは可能なのか、推測してみました。

 彼女が勤務しているのは、「ツクモ・クリエイト・ジャパン(以下、TCJ社)」という、東京にあるITベンチャー企業で、業務内容は(当初は)「営業アシスタント」です。

 年齢30歳、中途入社で勤続4年、かつ、いろいろと重要な仕事(と、そうでない雑務も)を任されている(第9話では、「特別チーフクリエイター部長」(笑)まで昇進しました)という晶さんの状況を考えると、市場価値として基本給で月給30万円以上は貰っていて全然不思議ではありません(なお、ベンチャー企業における中途入社社員の給料の決め方として、「年齢×1万円=月給」をひとつの「目安」として用いる場合は割とあります)。

 加えて、ドラマ内で描写されている彼女の勤怠状況(恒常的に過剰労働、かつ、深夜残業もあり)では、残業時間もかなり多いはずです。「営業アシスタント」である晶は「管理監督者」ではないし、「裁量労働制」が適用される職種でもありませんから、所定労働時間を超えた「時間外労働」には、時間数に応じた(1.25倍以上の)割増賃金が支払われているはずです。

www.njh.co.jp

www.kaonavi.jp

 計算を簡単にするために所定労働時間を150時間(完全週休2日で概ね1日あたり7.5時間相当)、月給30万円と推定すると、時給は2,000円、残業(時間外労働)25%増の単価は2,500円となりますから、月40時間(1日2時間)残業で残業代は10万円、60時間(1日3時間)で15万円となります。

www.kisoku.jp

 つまり、基本給と残業代の合計で額面月収は最低でも40万円超、賞与を基本給の3~4ヶ月分と推定すれば、年収は600万円を超えます。

 借家の契約更新の書類を見ると家賃は63,000円(文京区であの物件でこの値段は安い!羨ましい!)ですし、ファッションと飲み代以外では浪費をしている感じもありません(仕事と彼氏対応で忙しいし、趣味も無さそうだし)から、多少お高い服や靴を買ったり、バーに通ったり、「生き残り頭脳ゲーム」を(松田龍平さん演じる)"根元恒星"兄弟のために自腹でネットオークションで買ってあげたり(結構な高値が付いているようです)してもまあ問題なさそうな報酬水準と言えるでしょう。

 第2話で恒星が、晶について「小金溜めてそう」と発言していましたが、(晶の服装の変化には気付かない鈍い男の割には)なかなか鋭い指摘をしていますね。

 要は、彼女は能力的にも、処遇的にも、もはや「普通のOL」ではないのです。

 「樫村地所」で働いていた派遣社員時代はそこまで残業も多くなかったでしょうから年収もおよそ300万円台だったでしょう。第2話の、(田中圭さん演ずる)"花井京谷"との回想シーンでの晶の服装(やヘアスタイル)は、いかにも「カツカツなOLの仕事着」風でした(このドラマはそこまで念入りに演出されています)。

 そこから転職して(ようやく)正社員になり、自分の実力で(残業代込みですが)「年収600万」(中間管理職レベル)まで出世したとすれば、晶がたとえ過剰労働に加えてパワハラ、セクハラを受けていたとしても、会社を辞めて今の立場を失うことに大きな不安感、恐怖感を感じるのも理解が出来ます。

 ちなみに、「私の会社では残業代なんて出ない。だからこのドラマは非現実的だ!」という意見も出そうですが、世の中には「きちんと残業代をフルに出す」会社も少なからず存在します(単なる法令順守ですけど)し、ドラマの中でTCJ社従業員たちは、残業代に対する不満の発言を誰もしていなかったので、残業代はきちんと払われていると解釈するのが自然だと思います。

 もう1点、解説します。最終回(第10回)で晶はTCJ社を退職し、「失業手当を貰って、ゆっくり考える」(by晶)ことになりますが、本件に関し、晶は「失業手当」をいつ、どのくらい貰えるのでしょうか?

 「失業手当(雇用保険の基本手当)」の支給要件は、「退職理由」「年齢」「勤続年数(被保険者であった期間)」によって決まります(以下のリンクに解説されています)。

ハローワークインターネットサービス - 基本手当について

ハローワークインターネットサービス - 基本手当の所定給付日数

 晶の場合、自己都合(自ら申し出て)退職、かつ勤続1年以上~10年未満(現職4年+前職2年)の場合、給付日数は「90日(約3ヶ月)分」となります。
(第9話で、晶は(山内圭哉さん演ずる)九十九社長に「さっさと辞めえ、今すぐ辞めえ!」と怒鳴られており、これを「会社から退職を強要された」として争う余地は多いにありますが、最終話で晶は自ら退職届を提出して辞めたので、一応「自己都合退職」として考えます)

 退職理由が自己都合の場合は、「離職票の提出と求職の申込みを行った日」から手当の給付までに7日間の「待機期間」+3ヶ月の「給付制限」期間があります。通常離職票は退職により最後の給与が支給された後に会社より発行されるので、退職日から最初の「失業手当」を受け取るまで、概ね4ヶ月以上間隔が空くことになります。

ハローワークインターネットサービス - 失業された方からのご質問(失業後の生活に関する情報)

 そして「失業手当」額は、30歳以上で月給40万とすると、給付率50%で400,000÷30日×50%=日額6666円(端数切捨て)、月額で約20万円となります。(厳密には、通勤手当等も含めた過去6ヶ月の平均給与額により算定します。)残業代が多ければ、手当ももう少し増えますね。

www.situho.com

tanabota-life.com

 つまり、晶のケースでは、退職してから「約4ヶ月後」から、「約20万円」が、「3ヶ月」分だけ貰えるという計算になります。よって、退職後4ヶ月は自身の貯金で食い繋ぐ必要がある訳です。最終話の、TCJ退職後の恒星との電話での会話(「ビール飲もうよ、一緒に飲みたいよ。」の名場面!)にて、今は「節約生活!」と晶は言っていましたが、4ヶ月間無収入+あと3ヶ月も従来の半分の月収(さらにその先は働かないと無収入)で暮らすのは確かに辛いですが、それでも平気な程度十分な貯金と、生活のための再就職ならいつでも出来るという自信を晶は持っているのでしょうね。

 まあ、節約生活の割には誘われて恒星に会いに(かつ「ナインテールドキャッツ」ビールをおごって貰いに)那須高原まで行っているのですが(愛ですね)。
(東京⇒那須塩原、新幹線で行くと自由席でも片道5,390円(ドラマ設定での12月16日の運賃・料金)します)

※15時前に現地着だと、この列車か?

東京 → 那須塩原|乗換案内|ジョルダン

 という訳で、年末休みの気安さもあり、本業から少し離れて(?)ドラマの設定に対して突っ込んでみましたが、改めて感じるのは、この「獣になれない私たち」というドラマがいかに細かく(矛盾が無いように)設定を突きつめ、ドラマの世界観を作りこんでいるか、ということです。良質な作品からは、いろいろと学びを吸収することが出来ますね。数え上げればきりがありませんが、例えば、最終話での「終わってないよ。変わっただけ」「それでも飲む」という晶のセリフ(長くなるのでやめておきます…)。

 ご本人のTwitterコメントによれば、2019年の新作は無いそうですが、いちファンとして、野木さんの次回作を大いに期待して、じっくり待ちたいと思います!

 

 ではでは、みなさま良いお年を。Have a Happy New Year!

RIZAP社 「赤字70億円」の衝撃。会社の内情を想像してみます。

 こんばんは、みぜん合同会社 組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。

 RIZAPの決算下方修正の件、非常に話題になっていますね。

www.nikkei.com

 2019年3月期の連結最終損益(国際会計基準)の予想を、従来の「159億円の黒字」から「70億円の赤字」と大幅に下方修正した上で、M&A(合併・買収)による拡大路線を転換し、当面は事業の選択と集中を進めることを明らかにしています。

 この決算発表での記者との質疑応答のやり通りが記事になっており、大変興味深い内容になっております。

www.wwdjapan.com

 Twitter界隈では既に多くの人からRIZAPの状況に対してコメントが上がっていますね。
「人材もノウハウもないのに、しかも、ものすごい速度で買収進めて、その能力をはるかに超えたことをしたら落とし穴にはまったという、当たり前の話だ。」

kabumatome.doorblog.jp

 RIZAP社(RIZAPグループ株式会社)についての歴史は以下の通りですが、世間的に注目されたのは数年前より「結果にコミットする」というトレーニングジムの広告を大量露出し始めた時期からでしょう。

www.rizapgroup.com

 その後、本業(?)との関連性を見出しづらい、傍から見たら「無節操」な企業買収を次々に行い、さらには「カルビー」の前会長、松本晃氏を今年6月よりCOOとして招聘したことでも話題になっていました。

 ところが今回の「急転直下」の決算下方修正&経営方針の転換です。いったいRIZAP社に何が起きているのでしょうか?メディアに出ている情報等から私なりに推測してみました。

※以前に書いた「会社の内情妄想」系記事。相当ビンゴで後で自分で驚きました。

WELQ問題と、感じる既視感(組織の「あるある」) - hrstrategist’s blog

 ■なぜ今回、RIZAP社は決算下方修正&経営方針の転換を行ったのか?
 これは明らかに、松本氏が主導したのでしょう。上記の質疑応答によれば、松本氏はグループ会社を回り、その中で、「面白そうなおもちゃなんだけどこわれてんじゃないか、という会社」「不況産業じゃないの?という会社」「(瀬戸)健さんのビジョンにそぐわない会社」を認識したようです。これは想像以上におかしなことになっているぞ、と。

 そこで、「悪いニュースはいち早く出す」とともに、ここで膿を出し切って、これからのV字回復を目指すべきだ、と松本氏が瀬戸氏を説得したようです。

■なぜ、RIZAP社の「積極的なM&Aで急拡大」は失敗に終わったのか?
 上記日経新聞の記事によれば、
「13年3月期に10社だった連結子会社は18年3月時点で75社に膨らんだ。この半年でも買収を続けており、11月時点での連結子会社は85社にものぼる。」
そうですが、
「フリーペーパー発行のぱどやCD・ゲームソフト販売のワンダーコーポレーションといった子会社が損失計上を迫られ」「「再建は現場の力でやる」(瀬戸氏)という基本方針でやってきたが、赤字企業を短期間に再生させるには困難が伴った」
とのことです。

 私が思うに、RIZAP流M&A戦略のシナリオって以下のようなものだと思うのです。

1.「負ののれん代」で利益が出る(ボロ)会社を買収し、当期の利益を上乗せする
2.買った企業を立て直して収益化する
(3).立て直した企業を(買い手がいれば)高値で売却してそこでもう一度儲ける

(3)については実現していないので、あくまで予想です。

 では、何が問題だったのか。2点あると思います。

 1つ目は、「負ののれん代」で利益を得ることが目的化してしまったことです。本来であれば、企業における事業投資としてのM&Aは、自社の既存事業と何らかの形で「シナジー」が見込めそうな会社を対象とするのが常道です。ところが、RIZAPの買収先を見ても、どのように「シナジー」が起きるのか、全くイメージできません。そのような会社をあえて買う理由は、「負ののれん代」狙いであると考えれば説明がつきます。そのような買収方針の中で、松本氏が懸念する(経営努力によって回復が不可能な)「不況産業」も紛れ込んでしまったのでしょう。

 2つ目は、「買った企業を立て直す」(いわゆるPMI(Post Merger Integration))のプロセスを(かなり)甘く見ていたのではないかということです。上記の質疑応答によれば、
「本来は買収前に、再建のシナリオがあってしかるべきだった。ないものはこれから作らないといけない。」
ということです(呆れます)。企業再生に関しては私も当事者の経験があります。前職で買収子会社に出向し、経営再建に携わった経験から言えば、「現場まかせ」でシナリオもない状況で企業の再建などできる訳がないのです。

 うまくいかない会社にはうまくいかない理由があります。一番の理由は、うまくいかない会社は「やるべきことをやらず、やるべきでないことをやっている」。要は(従来からいる人たちの)意思決定の優先順位の判断基準がおかしいのです。それを是正するには、外部から来た「よそ者」が(買収元企業の威光を借りつつ)「これはおかしい。変えるべき」と訴え、変革を行動に移していくプロセスが不可欠です。

 そして、そのようなプロセスを進めるには、各社に最低でも1名~数名の(常勤の)担当者が張り付く必要があります。子会社全てにそのレベルの人を充てるとすると最低85名、実際にはその数倍の「経営者」人材が必要です。残念ながらRIZAP社の手持ちの人材がそれほど豊富であるとは思えません。

 結局、「買収したは良いが、経営改善は従来の経営メンバーに丸投げ」というパターンが多かったのでしょう。そのような手法で「結果にコミット」は到底期待できないだろう、というのは、企業再生の経験者からすれば議論の余地もない話だと思うのですが。
 
■なぜ、松本氏はRIZAPに入社したのか
 これはとても興味深いです。入社の経緯については以下の記事で、瀬戸氏について、「彼は面白くて、魅力的な男」「あれほどの規模の会社のトップをやっているのに、性格がいい。」と言っています。先日の決算発表の質疑応答でも「入社を決めたのは瀬戸健(社長)に惚れたからだけど」とコメントしているように、RIZAPという会社より、瀬戸氏個人に対して「絆された」のだろうなと思われます。

business.nikkeibp.co.jp

 一方で、事業に対しては「わからないことが面白い」と言っているように、そこは入社してから考えようとしていたと推測されます。結果がある程度予測が付く「外資系企業の雇われ経営者」より、オーナーに寄り添って一つの企業を創り上げていくことに魅力を感じられたのは、前職のカルビー社における成功体験が、この意思決定に影響したのでしょうね。

カルビー創業家と松本氏の関係性について。良記事。

www.nikkei.com

■なぜ、松本氏は「COO」を辞めたのか
 「COO辞任」については、日経ビジネスでこのような記事が出ましたが、結論から言えば、COOを「外された」訳ではなく、「構造改革」の仕事が当初の想定以上に「重い」仕事であったが故に、あえて、その業務に集中できる体制を作った、というのが真実のようですね。

business.nikkeibp.co.jp

 上記の日経新聞記事でも「RIZAPでも松本氏に課せられた使命はガバナンスだ。」とあるので、こちらの記事の方がだいぶ「芯を食っている」感があります。

 なお、1点指摘しておきたいのは、松本氏がCOOから外れても、「代表取締役」は外れていないという点です。代表取締役の「代表」を外れるには「辞任届」を出せば済む話です(取締役会決議すら不要)。それをしていないというのは、経営体制として松本氏がトップであるという状態は、たとえCOOを外れても不変であったという証拠だったと言えるのではないでしょうか。

■なぜ、「プロ経営者、生かし切れず RIZAP松本氏、COO外れる」という日経ビジネスの記事が出たのか
 これもなかなか興味深いです。執筆した記者に対しては「残念でした」で終了なのですが、そもそもこのような、結果的には全く見当違いな記事を書かせるインセンティブは瀬戸氏、松本氏いずれにも無い訳で、裏返せばこういう記事を書かせたい経営メンバーがRIZAP社内にいるということですね。

 では、なぜこのような記事を書かせたいかというと、松本氏が進める経営改革の方向性が彼らにとって「困る」ことだからです。というのも、今回の「経営方針の転換」により、実態として「ダメ」な(実質的に経営改善できていない)子会社に関しては担当幹部は当然責任を問われることになります。上記質疑応答で、松本氏が
「経営に功績のあったエグゼクティブ・コンペンセーション(役員報酬)にも不備があると思っている」
と(あえて)言及しているのは非常に味わい深いです。

 松本氏はカルビーの前に外資系企業で雇われ経営者をされていたので、いわゆる「外資」的な、短期的収益に過度に連動した経営者への報酬体系に関して、良し悪しを知り尽くしているでしょう。そのような方からみて、今のRIZAPの役員報酬のスキームは、過度に「短期志向」であるのだろうと推測されます。

 典型的なケースは、当期の「利益」と役員報酬を連動させるものです。そもそも数年単位で転職する前提で、現在のポジションで獲得できる収入を最大化させようとする(外資系企業の経営者にありがちな)インセンティブがある人であれば、損失計上は可能な限り(自分が辞めた後に)先送りしつつ、利益は可能な限り(長期的な利益は犠牲にしても)焼畑農業的に前倒しで計上させようとします。どうせ直ぐに辞めるので、会社がそのあとどうなっても知ったことではありません( ;∀;)。

 そういう思考の方が、「まずは膿を出し切れ!」という松本氏と意見が合うはずがありませんし、そういう方たちが何を考えているかは、松本さんにとっては手に取るように分かるのではないでしょうか。

 この方たちの誰が「抵抗勢力」なのか、想像してみるのも面白いですね(笑)。

www.rizapgroup.com

■RIZAPは今後どうなるか?
 現状が相当に「危機的」な状況にあるのは間違いなさそうです。上記の「市況かぶ全力2階建」でも、「資金繰りの懸念」が指摘されています。

 一番重要なのは、瀬戸氏が松本氏を信頼し、支援し続けることが出来るか否かでしょう。松本氏が手腕を発揮できるかどうかは、瀬戸氏との信頼関係が持続できるかどうかに依存しています。逆に、瀬戸氏がハシゴを外してしまえば、松本氏に対する求心力は失われてしまいます。もしRIZAPが松本氏が成果を出す前に不本意な形で退出を迫ることになれば、そのような仕打ちをする会社に優秀な後任者を招聘することも難しくなります(L*x*l社のように)。 

 幸いにも、松本氏は「(瀬戸氏の)性格がいい」「瀬戸氏に惚れた」と発言しており、さらに今回の松本氏が主導した経営方針転換に瀬戸氏が従っていることを見ると、「経営者の器」という点で瀬戸氏には見るべき所があるのではないか、と感じられる要素があります。

 現状の状態は決して楽観すべきものではないでしょう。実は私自身も(ビジネスパーソンとして、または、個人投資家としても)RIZAP社に関しては、「宣伝だけうまいどうでも良い会社」と認識して全く興味はなかったのですが、今回の決算修正の経緯を観察していると、「もしかして今後面白いことが起こるかもしれない」と興味を持つようになりました(その勢いでこの記事を書いています)。

 という訳で、松本氏の経営手腕を信じて、今後のRIZAP社の業績回復と発展を期待したいと思います!

温泉リモートワーク、始めました!(2)

 こんばんは、みぜん合同会社 組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。

 11月の東京地方ですが、なかなか快適な気候です。暑くも涼しくもなく、湿度も少ない、私にとってはまさに理想的な天候です。まあ、こんな時期は1ヶ月も続かないのですが…

 「温泉リモートワーク」の話、続きです。

hrstrategist.hatenablog.com

 前回のエントリでは、「リモートワーク(またはテレワーク、モバイルワーク)」と「温泉」を結びつける「温泉リモートワーク」活動で、より楽しく、気持ちよく、刺激的な活動を目指したいという考えを書きました。

 では、「温泉リモートワーク」は具体的に何が「おいしい」のでしょうか?その、「目的・狙い」について考えてみます。

 まず思いつくのは「(仕事・居住の)拠点を変える」ことの効果です。

 私自身は、「一か所にずっと留まる」ことが苦手で、落ち着かない性分です。生まれてから今まで通算15回引っ越しを経験し(いちいちカウントするのが几帳面ですね)、1か所の居住が6年強が最長記録です。また、仕事でも何度も転職をしております。前職の会社(楽天)に8年在籍したのが最長で、しかもうち半分くらいの期間は子会社や海外に行っていたので、実質的には1つの仕事にいるのは最長でも3,4年くらいがせいぜいです。

 そういう「飽きっぽい」私にとって、旅行&リモートワークにより環境を変えることで新鮮な刺激を脳に与えるのは、仕事に対する集中力を高めるのに役立っているように感じられます。

 環境を変えたり、オフィスの外に出ることによる生産性の向上の記事は、(英語で)調べてみると沢山ありますね(なぜか日本語の記事は全然見つかりません)。

blog.trello.com

生産性を上げるには「太陽光を多く浴びる」事がよいという記事

www.nbcnews.com

www.inc.com

 加えて、私自身が「非都会好き」だからという理由もあります。元々横浜の外れの中途半端な「トカイナカ」で育ったので、都心部のように人口密度が高い環境では「人酔い」してしまいます。また、(いつもBlogでも書いていますが)コンクリートアスファルトで地面が覆われた(夜でも気温が下がらない)都会の湿気を帯びた暑さは苦手です。しかも最近どんどん酷くなっていますよね。

東京都の統計資料 東京における雷日数や真夏日等の日数 | 東京管区気象台

 一方、寒さは相対的に苦にならず(むしろ大好き)、かつスキーや温泉好きなので、長野や新潟のような場所には非常に魅力を感じます。また、気候が体に合うのは健康にも良いです。さらには食べ物もおいしいし、バイクや車のドライブも楽しめますし!

 なお、私は将来的にはどこか地方に拠点を持ち、「二地域居住」に移行したいとの野望を持っています。よって、「温泉リモートワーク」は、「ときどきナガノ」の補助を受けながら、長野県内の各地を訪れ、2拠点目の適地を探す「お試し」を行うという目的もあります。ですから、訪れた先では物価や生活環境、その地域の人たちの傾向(開放的か、閉鎖的か等)などを観察をするという「重大な任務」も同時に行わなければいけません(笑)。

 さらには、「地方に行ってリモートワークを試してみる」という働き方を、自分自身が「実験台」となって試してみたいと考えたことは、前回のエントリでも触れました。

 とはいえ、楽しくて気持ち良い(はずの)「温泉リモートワーク」も、メリットばかりではありません。以下、デメリットをいくつか列記します。

 まずは当然ながら「移動のコスト」です。交通費だけではなく、時間のコストも含まれます。お金に関しては、今は「ときどきナガノ」の補助を頂けるので、その分は助かっていますし、高速バスを使える地域なら概ね片道2~3000円台で済みます(新幹線など比べると時間は掛かりますが)。また、宿泊費は「楽天トラベル」あたりで探せば意外と安くいけます(ちなみに、長野県の担当者の方によれば、「ときどきナガノ」の対象者の中には、「テント泊」をしている人もいるとか!)。

 移動時間に関しては、公共交通機関(電車やバス)であれば、その時間に仕事をしたり、本を読んだり、時にはビールを飲んだりなど、活用の仕方は色々あります。週に往復1回程度の移動であれば、片道2時間~3時間位であれば、まあ許容範囲かなというのが私の実感値です(個人差はあると思います)。

 あとは、リモートワークをする場所による制約です。コワーキングスペースを使用する際には、その場所の利用料(無料の場所もあります)や、印刷する場合の費用等が掛かります。また、テレカン(テレビ会議含む)をする場所が確保できるかも懸念事項になり得ます(とはいえ、カフェでやるよりはマシですが)。

 もちろん、そもそも「リモートワーク」でできる仕事とできない仕事があり、あくまで相応の業務量が前者にあるというのは大前提ですね。

 もしその条件が満たされるなら、(あと温泉が好きなら)「温泉リモートワーク」、オススメですよー。

 何だか続きます。

温泉リモートワーク、始めました!(1)

 こんばんは、みぜん合同会社 組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。

 前回の投稿が9月上旬ですから、そこから約2ヶ月弱経ちました。東京地方は気温30℃台の暑さ(今年は特に暑かったですね)から、上着が必要な「涼しい」気候にすっかり変わってしまいました。今の時期は、5月下旬と並んで東京地方では最も過ごしやすい気候の時期かもしれません。このような時期がもう少し長ければと思ったりもしますが、こればかりは、引っ越すか、我慢ずるかのいずれかしか対策はない訳で、まあ仕方がありません。

 という訳で夏物もすっかりしまい込んで冬物を引っ張りだす「衣替え」も先日決行いたしましたが、それとは関係なく、この2か月くらいは(久々に)仕事が忙しく、なかなかBlog記事の執筆に時間を割くことができなかったなあ、というのは言い訳ですが...

 バタバタしていたのは他にも理由があります。実は9月より、ほぼ毎週、長野に遠征をしておりました。というのも、実は、「ときどきナガノ」という、長野県が実施するリモートワーカーを支援するプロジェクトに応募し、対象者に選ばれたのです。

tokidoki.otameshinagano.com※「そもそもおまえはIT関連の事業に携わっているのか?」とのツッコミがありそうですが、一応応募時に書類審査を通過して選ばれたので、そこに関しては大丈夫なようです。

 元々暑さがとても苦手で、毎年夏場に東京地方に居ることに苦痛を感じている上に、冬場はスキーに情熱を燃やす我が家にとって、長野県のような寒冷地(かつスキー場の近く)の居住にはとても魅力を感じます。

 一方で、「組織人事ストラテジスト」業、または「クラウド人事部長」業のクライアント様は、(現実的に)東京都心部に拠点を持つ会社がメインですから、相応の配慮が必要なことは言うまでもありません。

 そのような状況の下で、住む場所に囚われずに業務を行う「リモートワーク(テレワーク)」という方法論は、なかなか魅力的です。とはいえ、現実的に、オフィスに出社せずに働く「リモートワーク(テレワーク)」という働き方は可能なのでしょうか?

 実は以前より、リモートワーク(テレワーク)の実態や効用について、以前から本ブログや外部投稿でも記事にしてきました。

hrstrategist.hatenablog.com

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 サラリーマンを辞め、独立してからもうすぐ5年。渋太く生き延びてきた私自身も、実態として「リモートワーク」的な働き方をしています。自前のオフィスを独立して持たず、仕事に費やす時間の大半は自宅(川崎市に在住)で過ごしていますし、客先とのやり取りもほぼ100%、ネット上のやり取り(メール、チャット、SNSメッセンジャーSkypeなどをつかった電話会議、テレカン等)で完結していますので、「リモートワークを実施してますよ」と言っても過言ではない現状です。

 そして、このような働き方をしていると、しばしば考えてしまいます。「ネットでやり取りするのなら、別に川崎に居る必要は無いのでは?」「今ここでやっているテレカンも、別に旅先から参加してもなんら問題ないよなあ。」などと。

 それが正しいかどうかは分かりませんが、頭で考え、口先で偉そうな御託を並べるだけでなく、まずは自ら行動し、自身で体験するのが良いだろうと考え、「地方に行ってリモートワークを試してみる」という実験を、「ときどきナガノ」の補助を活用して、ぜひやってみようと思い立ったのです。

 そして、幸運なことに「ときどきナガノ」の対象者に選ばれ、縁あって補助を頂けることになりました。

 こうして長野県に行く機会がせっかく出来たのですから、単にリモートワークを実践するだけでなく、追加的な別の楽しみ・目的を持つことにしました。それが、数多くの「温泉」を巡ることです。

 温泉とリモートワークを組み合わせて(単純ですが)この活動を、「温泉リモートワーク」と名付けました。

 単に地方で「リモートワーク」をするだけではなく、地方に赴く「あえて」の理由として付加的な(かつ純粋な)楽しみを追求し、「温泉」を絡めることで旅路をより意義あるものにするという方法論は、自身のモチベーションを存分に刺激し、ポジティブな効果を発揮していると感じます。

 なにしろ、「温泉」は楽しくて気持ち良いですから!

 この話、まだまだ続きますよー。

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賞与の決め方は配当性向で(2)

 こんにちは、みぜん合同会社 組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。

 お盆も過ぎ、例年では残暑が残るものの何となく「真夏のピークが去った」感があるのがいつもの東京地方ですが、今年は猛暑が続きますね。本当に今年はちょっと異常な暑さですね。わが家のエアコンも例年になくフル稼働しております。

 そのような中で、関西地区の台風や、北海道での大地震など、災害が立て続けに起きてしまいました。被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。

 さて、前回エントリでは「賞与」について取り上げましたが、その続きとなります。

hrstrategist.hatenablog.com

 賞与原資を決める考え方として、「企業における「配当性向」の決め方」が参考になる、と前回は締めました。本エントリは続きとなります。まずは「配当性向」の説明が必要ですね。

 企業が企業活動により得た純利益のうち、今後の成長・利益増大のために手元に残した分が「内部留保」であり、株主に対して出資比率・株式数に応じて現金を配分するのが「配当」です。

 「配当性向」とは、「企業がその期の純利益額からどの程度の割合を配当として株主に還元しているかを比率で表したもの」です。計算式で表すと、以下のようになります。

 純利益=配当+内部留保

※参考

配当性向│初めてでもわかりやすい用語集│SMBC日興証券

kotobank.jp

 配当をしなければ配当性向は0%、純利益の全てを配当で払えば配当性向は100%となりますは。多くの企業はあらかじめ配当性向の範囲(〇%程度、〇~〇%の間など)を決めており、その上で諸々の要素を考慮しながらその期の配当性向、配当額を決めます。

※配当性向が100%を超える場合、好ましくないものとして「タコ足配当」などと言われます。

タコ足配当│初めてでもわかりやすい用語集│SMBC日興証券

※余談ですが、REIT不動産投資信託)の場合、内部留保はせずに利益を全て配当に回す仕組み(配当性向100%)となっています。

www.toushin.com

※もう一つ余談ですが、REITとはReal Estate Income Trustの略ですが、不動産に限らず、一般の企業をIncome Trustとして所有するという形態もいくつかの国で存在し、特にカナダでは盛んなようです(昔カナダに留学していた時にさんざん勉強した覚えがあります)。

Income trust - Wikipedia

 ところが、各企業において配当性向を何パーセントにすべきかという「正しい」答えはありません。財務的な話になるので詳しい説明は避けますが、要するに、配当性向をどうするか各企業の経営者の裁量に任されているのです(厳密には株式会社では株主総会の決議が原則、一定の条件下で取締役会決議が可能)。

 とはいえ、特に上場企業に関しては、年によって大幅に配当性向や配当額が変わるのは(株式を所有する側にとって不確定要素が増えるため)あまり好ましくありません。投資家にとって不確定要素は「リスク」であり、リスクが増えると(理論上は)株価下落の要因となります。

 そこで、多くの企業は自社の配当性向について幅を持たせた表現で目標を定め、公表しています。前回のエントリで賞与原資を「純粋な業績連動」とすると都合が悪い理由を述べましたが、配当に関しても同様のことが言えます。

「経営者の本音としては、「来期に備えて」「特損を受けて」賞与額はできれば少なめにしたいと考えるでしょうし、実際に経営の安定を考えると、少なくともそうするかもしれないという意思決定のオプションを経営者は持っておきたいと考えるのは自然です。」
(前回エントリより)

 配当原資は純利益なので、特損については「そのまま連動」の考え方でも良いかもしれませんが、「来期に大幅減益見込み」「毎期の純利益の増減が激しい」といった場合は、何らかの「塩梅」をしたいと経営者は考えるでしょう。

、そのため、自社の配当性向は業績連動を基本としつつ、経営サイドが「諸般の事情を鑑みて」配当性向の決定についてある程度の裁量、幅を持たせるというのは、ある意味「落としどころ」なのでしょう。

※参考:日本生命の(投資先に対する)「国内株式議決権行使の方針と判断基準 」
原則「配当性向25%未満」「100%以上」は反対
ただし、例外として「中長期のROE向上」「配当性向向上」が判断できる場合等を例示

https://www.nam.co.jp/company/responsibleinvestor/pdf/voting.pdf

www.nikkei.com

 で、賞与にこの考え方をどう反映するかです。

 大原則として、「賞与は業績に連動させる」こと。これは譲れません。あとは「業績」をどう定義するか、どの範囲で業績を測るか、計算式としてどのように「連動」させるか、この3つが問題となります。

 「業績の定義」に関しては、選択肢はそれほど多くありません。損益責任を負う事業単位が対象の場合は、「営業利益額」「営業利益の目標または予算に対する達成率」あたりが一般的に用いられる業績の指標になるでしょう。管理会計における事業部単位の場合、「配賦額」「減価償却費」等を反映させるか、除外すべきかは議論が分かれる所です。また、従業員のとっての「分かりやすさ」という観点も重要です。そういう意味でも「営業利益」というのは理解されやすい指標と言えます。

「業績連動型賞与の指標に何を選ぶか」

www.hrpro.co.jp

 「どの範囲で」というのは、例えば1つの会社に複数の事業部がある場合に、賞与原資を決める単位が「全社」とするか、「事業部ごと」とするかです。どちらにしても一長一短があるので、自社におけるメリット・デメリットを勘案していずれかに決めるしかありません。

 最後の「連動」に関しては、工夫が必要です。単純に「営業利益の〇%」「予算目標達成率」としてしまうと、あまり具合がよろしくないのは、前回ご説明した通りです。

 そこで配当性向と同様に、例えば「賞与原資は営業利益の〇%~〇%の間」としてしまえば良いというのが私の主張です。

 毎回の賞与で「〇%~〇%」の間でどの値を取るかは、納得感のある根拠を経営者が従業員(会社によっては労働組合にも)に説明する必要があります。その場合も、幅の中でどの値を用いるかを示す「最低の数字である〇%を取るのは大幅な特別損失が発生した場合など」といった基準も作成して公表すれば納得感もだいぶ高くなります。

 このような話をすると、「従業員や労組にいちいち説明するのは面倒だから」「うちの社長はどうせ気分で恣意的に決めてしまうから」計算式で自動的に決まったほうが良いと反論される場合があります。

 しかし、前者は経営者としての説明責任放棄であり、後者はそもそもそういう人が社長をやってはいけないのでは?(従業員の方たちに同情しますが)と私は考えます。
 
 人事評価でも同様の話があって、「目標の達成度で評価が自動的に決まり、評価者の主観が入らないのが良い人事評価制度である」と考えている管理職も未だ少なくありません。

 この考え方がどうダメかは、さんざん当Blogで書いてきましたので(例えば以下の記事)繰り返しません。

hrstrategist.hatenablog.com

 人事評価の精度を高めるためには、評価者が非評価者をよく観察し、評価者が認識したその人の「貢献度」を定性的に評価してあげる必要があります。実は、真剣で責任感がある評価者であればあるほど、(何らかのガイドラインはあるにせよ)自分の主観を反映したいと思っているものです。

 賞与原資の決め方も同じです。経営者が従業員の貢献に対してどれだけ報いてあげたいかを示すのが、業績に応じて(時には「この業績にも関わらず」)賞与をどれだけ出すかなのです。

 当期中の貢献度は当期の利益としてリニアに反映されていないのは明白ですから、そこに裁量の余地はあって当然です。経営者が裁量を働かせて「これでどうだ!」と賞与原資額を決めた上で、説得力を持ってそれを従業員に説明できて初めて、その人は経営者として役割を果たしたと言えるのではないでしょうか。

 賞与という人件費項目は月給と比べて経営サイドの決定の裁量・自由度が高く、それが故にどんなルールが「正しい」のか、「納得感が高い」のか、簡単に答えの出ないものです。
 
 ここで私が提案した方法も、どの会社にも適するものではありません。あくまで一つの考え方として、ぜひご自身の会社における賞与の決め方の参考にしてみて下さい。