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組織人事ストラテジストのつぶやき、業務連絡など。。

その人は「代えがたい」人材ですか?-「人件費」というパイの分け方(1)

 こんにちは、組織人事ストラテジスト 新井 規夫です。東京地方は梅雨入りのようですね。個人的には暑いのも嫌いですが、雨や湿度もダメです。なので、この時期から9月までの4か月は私にとっては辛い時期です。乾燥していて涼しい土地(息ができない位寒いのも困るのですが)への移住が解決策ですね。世の中的にも技術進歩などにより、リモートワークが今後どんどん推進されていくとになると思います。ぜひともそのような流れには積極的に乗っていきたいところですね。巷では既に「Web飲み会」「スカイプ飲み会」なるものをやっている人達もいるらしいですし。。

 さて、先週のエントリでは、人事評価制度による人件費コントロールの課題を取り上げました。

貴社の人事評価制度は人件費をコントロールできますか? - hrstrategist’s blog

その中で、経営者と従業員が考えるべき人件費配分の課題について以下の3点を挙げ、1と2について解説、説明をいたしました。。

1.利益をいかに最大化するか
2.利益からの人件費配分をどの割合にするか
3.人件費を個別の従業員にどう配分するか

 今回のエントリは、上記3の「人件費を個別の従業員にどう配分するか」の話となります。

 この、「従業員同士のパイの分け方」の議論は、最終的には評価制度と報酬制度をどうするかという話に行き着きます。上記2の「利益からの人件費配分をどの割合にするか」では単純な労使の二項対立で済みましたが、この場合は従業員側の思惑がはるかに複雑になるので、何らかのロジック(評価制度、報酬制度)を作り、それに賛同する人だけが従業員になってくださいね、という形を取っている訳です。

 故に、この議論をしようすると、「あるべき評価・報酬制度」の形、ゴールがどのような形であるべきかという議論になりがちです。

 その中で、例えば「モチベーションを高める為にはこうすべきだ」といった(心理学寄りの)アプローチや「日本人にはこれが合っている」「エンジニアは~」といった(文化論的な)アプローチなど、様々な考え方、意見が出てきたりします。

 それぞれの意見については相応の正義があり、その優劣についてここで議論する気は、実はありません。

 結局それらの議論は、テクニカルな方法論の話であり、「時代、文化(国家、地域、企業)、産業・業種、競合環境等の背景により、企業によって、または同じ企業でも時期によって最適解は異なりますねえ。」という、実務的にはあまり役に立たない結論にしかたどり着けないように私には思えます。

 一方で、実務家として我々が知りたいのは、『現時点でこの会社に最適な「パイの分け方」はどのような方法か』であり、さらには、『時代に応じて最適な「パイの分け方」になるようにアジャストしていくにはどうすれば良いのか』ではないでしょうか。「魚を与えるより魚の釣り方を教えてほしい」という事です。

 よって、この問題に対するアプローチとしては、いきなり方法論にジャンプするのではなく、パイの分け方に対するそもそもの「あるべき姿」について抽象化して考えることが大事であり、その上で各種の外部、内部要因と照らし合わせてどのような制度・仕組みに落とし込むのかという方法論に繋げていくという段階を踏むプロセスを経ることにより、状況に応じた「魚の釣り方」が分かるようになるのではないかと考えます。

 では、経営者にとってあるべき「パイの分け方」とはどのような分け方でしょうか。

 まず自然に考えられるのは、「貢献度の高い人により多く配分する」というやり方です。歩合制などは、まさしくこの考え方に沿っています。

 しかし、この際に、「貢献度の高さをどう測定し評価するのか?」という問題が発生します。例えば「パイ」で考えれば、より多くの材料を調達した人、一生懸命生地をこねてくれた人、上手く焼いてくれた人、味付けを決めた人、それぞれ違う形で貢献をしてくれています。しかもそれぞれの役割は異なりますから、単純に比較することはできません。

 よく、「できるだけ評価は定量化せよ」と言われたりしますが、現実にそれをやろうとしても運用はうまくいきません。例えば「味付け」の良し悪しを定量評価することは難しいので評価の対象にはしませんとなったら、パイの味はいったいどうなるでしょう。

 つまり、定性評価の要素をしっかりと反映をしない限り、曖昧だが重要な部分が評価からこぼれ落ちてしまいます。結果、それをだれも積極的にやらなくなり、組織のパフォーマンスは低下します。歩合制(的なもの)が利く職種はもちろんありますが、それはあくまで一部に過ぎないということです。

 これに対するクリアな代替案は、(少なくとも私には)ありませんが、一つやり方としてあるのは、「評価は社長または経営陣の主観で決めてしまえ」というものです。私の私見では、もし上司が部下の行動をちゃんと把握できており、かつ上司がまともであれば、上司の直観で評価してもそうそう間違える事はありません。この辺の話は以前のエントリにも書きましたので、こちらも参考にして下さい。

人事評価制度なんていらない - hrstrategist’s blog

給料の決め方はシンプルで良い - hrstrategist’s blog

 上記の通り、私は経営者の方には、「まず被評価者の順番を付け、その後にその順番に従って報酬を決めて下さい」という話をします。とはいえ、純粋な直観だけだと、「好き嫌い」の感情が多く入ったりする恐れもあります。

 それをできるだけ避ける意味もあり、私はいつも、「辞められたら困る順番を考えて下さい」と言っています。単に「困る」と言っても、「その人が抜けたら人手不足になって大変」という話でなく、その人自身の「代えがたさ」について考えてもらうためです。「代えがたい」人が組織にとってより価値がある人だからです。

 では、ここで言う「代えがたさ」とはどのようなものでしょうか?

という所で残念ながら行数が尽きました。続きはまた来週!

 Have a nice weekend!(意地悪ですねえ)

その人は「代えがたい」人材ですか?-「人件費」というパイの分け方(2) - hrstrategist’s blog

その人は「代えがたい」人材ですか?-「人件費」というパイの分け方(3) - hrstrategist’s blog